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2022.08.09 (公開 2017.06.12) 海水魚図鑑

カクレクマノミと混泳・一緒に飼育できるおすすめの海水魚

海水魚飼育ではクマノミだけでなく他の魚もクマノミと一緒に飼いたいものです。しかしカクレクマノミと一緒に飼育することが出来る魚と、そうでない魚がいます。ここでは初心者の方がカクレクマノミと混泳する(一緒に泳がせること)のに適した魚、そうでない魚をまとめてみました。

カクレクマノミと混泳するための条件

海水魚飼育初心者の方がカクレクマノミと混泳することができる魚にはいくつかの条件があります。

カクレクマノミを捕食するようなことがない魚

▲ミノカサゴの仲間は小魚を好んで食べる

まず、魚の中にはカクレクマノミを食べてしまうものがいます。ハタの仲間、フエダイの仲間、モンガラカワハギの仲間、オコゼやカサゴの仲間、カエルアンコウの仲間、ウツボの仲間、サメ・エイの仲間などが当てはまります。とくにカエルアンコウの仲間などは自分と同じくらいの大きさの魚も食べてしまうことがあり、混泳には全く向きません。またハタやフエダイなどは幼魚のころはカクレクマノミと混泳することができるものの、成長して大きくなると、カクレクマノミを食べてしまうこともあります。

カクレクマノミをいじめたりしない魚

▲スズメダイの仲間は要注意

スズメダイの仲間はカラフル、かつ丈夫でカクレクマノミと一緒に入れたくなりますが、スズメダイの中には気性が荒いものも多いため、注意が必要です。このほかカクレクマノミと一緒に飼育しにくい、性格がきつい魚にはメギス(ドティバック)の仲間や、モンガラカワハギなどがいます。これらの魚はほかの魚との飼育が困難なものもおります。

また、同じクマノミの仲間は争うこともあり、あまりおすすめできません。ハマクマノミやスパインチークアネモネフィッシュなどの大きいものはカクレクマノミにとって脅威となることもあります。

毒を出したりしない魚

▲ヌノサラシは皮膚から毒をだし他魚を殺すほか、小魚を食することも

▲ハコフグの仲間も皮膚から毒を出す

魚の中には皮膚から毒を出すような魚がいます。主なものとしてはフグの仲間、ハコフグの仲間、イトマキフグの仲間、ハタ科のヌノサラシの仲間、ウバウオの仲間、コバンハゼの仲間、ミナミウシノシタなどです。

毒を出す魚は種類は多くありません。しかし、キイロサンゴハゼなどサンゴハゼの仲間は海水魚専門店でもよく見られます。安価でかわいいのでついつい入れたくなりますが、毒をだし狭い水槽などではほかの魚を殺すだけでなく、そもそもあまり飼育しやすい魚でもありませんので、初心者にはおすすめできません。このほかハコフグの仲間もかわいいため飼育したくなりますが、ハコフグの仲間は危険が迫ったり弱ったりすると強い毒を皮膚から出すことがあり、魚を殺してしまうためカクレクマノミとの飼育は困難です。ハコフグの仲間を飼育するときは、ハコフグの仲間だけで飼育するのが望ましいです。

60cm水槽でも飼育できる魚

▲ヒレグロコショウダイの幼魚

▲ヒレグロコショウダイの若魚。全長40cmくらいになる

海水魚専門店ではさまざまな魚を販売していますが、その中には幼魚と成魚の姿が大きく異なるものがいます。また姿が変わるだけでなく、大きく成長し、初心者におすすめの60cm水槽で飼育できないような魚もいます。

写真のヒレグロコショウダイのほか、イサキの仲間は大きく育ちますので60cm水槽での飼育には向きません。ほかヤッコの仲間のサザナミヤッコやタテジマキンチャクダイ、ベラの仲間のツユベラ、カンムリベラ、キツネベラ、タキベラといった魚も大きく育ちます。このような魚はより大きな水槽で飼育するべきです。また、大きく育つ魚の中にはカクレクマノミを襲って食べてしまうものもいます。

またナンヨウハギなどのニザダイの仲間も遊泳性が強く、大きく育ちますので水槽もその分大きなものが必要になることから、初心者には不向きです。よく500円玉に鰭がついているくらいのものが販売されていますが、60cmでの飼育にはムリがあります。ナンヨウハギをうまく飼育するのであれば、最低でも90cm水槽が必要になります。

カクレクマノミ同様に熱帯性の魚

▲ダンゴウオの仲間は低い水温を好み、カクレクマノミとは飼育できない

カクレクマノミは熱帯のサンゴ礁に生息しており、23~28℃くらいが適温となります。そのため同じくらいの水温を好む魚と組み合わせることになります。これは飼育技術云々ではなく、さまざまな問題に対処できるベテランでも覆すことができない問題です。

幸いにも観賞魚店で販売されている魚はカクレクマノミと同じくらいの水温で飼育できますが、温帯性の魚や冷水性の魚とはカクレクマノミと組み合わせることはできません。例えば最近人気のダンゴウオやスナビクニンなどは冷たい海水を好みカクレクマノミの好む水温では暑すぎて死んでしまいますし、逆にダンゴウオが好むような低い水温ではカクレクマノミが凍え死んでしまいます。

初心者にも飼育できる魚

ツノダシ(ギル)

▲ツノダシは初心者向けではない

いくらクマノミと同じくらいの水温で飼育でき、協調性があるといっても飼育自体が難しいような魚は初心者向けということができません。たとえば「ファインディング・ニモ」で歯科医の水槽で「ニモ」とタンクメイトであったツノダシは、初心者には飼育が難しい魚として知られています。また、タツノオトシゴ、ニシキテグリ(マンダリンフィッシュ)、チョウチョウウオの仲間も安価で販売されていますが、これらの魚も飼育はかなり難しいため、初心者向けとはいえません。

以上のことを簡単にいえば、クマノミを捕食しない、クマノミにあまりいじめられたりしない、毒を出さない、初心者に多い60cm水槽で飼いやすい、初心者にも飼育可能な熱帯性の魚ということになります。

これらの条件を満たす魚だけが、初心者の方がカクレクマノミと一緒に飼育できる魚になります。しかしご安心を。種類も沢山あります。以下の項目では、初心者の方がカクレクマノミと一緒に飼いたい魚をご紹介します。

初心者向けの海水魚と注意すべきポイント

スズメダイの仲間

アカハラヤッコとスズメダイの混泳事例

▲デバスズメダイはおとなしく飼いやすい

クマノミの仲間が含まれるスズメダイの仲間です。スズメダイの仲間は性格がきついものが多く、注意が必要です。とくにきついのはクロスズメダイやヒレナガスズメダイ、セダカスズメダイなどでこれらは幼魚は可憐できれいですが成長すると色や模様が大きく異なります。

おとなしいスズメダイの仲間はデバスズメダイやクロオビスズメダイといったスズメダイ属の魚です。これらはカクレクマノミや遊泳性ハゼなど、多くの魚と混泳することができます。

ハゼの仲間

ハゼの仲間も初心者向けの魚です。多くの種類が丈夫で飼育しやすく人気の海水魚です。しかしどのハゼも同じような性格や生態をしているわけではないので注意が必要です。

遊泳性ハゼ

▲カクレクマノミとスミゾメハナハゼ

遊泳性ハゼはカクレクマノミには全くいたずらすることもないのでおすすめです。ただし、遊泳性ハゼは性格が非常におとなしく臆病なので、できるだけまずは遊泳性ハゼを先に入れ、慣れてきたころに小ぶりのカクレクマノミを入れるようにします。また遊泳性ハゼのうちクロユリハゼは群れをつくるため、水槽でも複数入れるようにします。ハタタテハゼは争うことがあり沢山入れない方がよいでしょう。

共生ハゼ

▲カクレクマノミとクビアカハゼ

テッポウエビと共生するハゼの仲間です。ダテハゼは眼が悪いテッポウエビの掘る孔にすみ、巣の見張りをします。一方テッポウエビはハゼに巣を供給します。

カクレクマノミを飼育している水槽に共生ハゼとテッポウエビを追加するならクビアカハゼやハチマキダテハゼ、ギンガハゼといった共生ハゼが最適でしょう。共生ハゼは大きすぎるものを選ばず、カクレクマノミと大きさを合わせるようにします。これは共生ハゼがカクレクマノミを攻撃してしまうこともあるからです。

底性ハゼ

▲底生のクモハゼ

一般的なハゼのイメージで、海の底を這っているようなハゼの仲間です。クモハゼやクツワハゼ、スジハゼ、オオモンハゼ、サンカクハゼといったハゼの仲間が多く含まれます。注意点としては動物食性のものが多く、性格もきついものが多いということです。丈夫で初心者向けの魚が多いです。

ベントス食性ハゼ

▲初心者にもおすすめのミズタマハゼ

口に砂を含み、餌を探して鰓から砂だけ排出するハゼで、主なものにはアカハチハゼ、ミズタマハゼ、オトメハゼなどのクロイトハゼの仲間や、サラサハゼ、ジュウモンジサラサハゼ、クラブアイドゴビー(カニハゼ)などがいます。

アカハチハゼやサラサハゼは水槽の中層を泳いで、砂を広範囲にばら撒きます。それによりサンゴが砂に埋もれて死んでしまうことがあります。サンゴ水槽で飼育するならミズタマハゼかオトメハゼがおすすめです。

サンゴと共生するハゼ

コバンハゼやキイロサンゴハゼなどですが、白点病などにかかりやすいなど、あまり初心者にはおすすめできないハゼの仲間です。またこの仲間は毒を出して水槽やバケツなどで一緒に飼育しているほかの魚を殺してしまうこともあるため、注意が必要です。

カエルウオの仲間

▲ヤエヤマギンポは丈夫で飼育しやすいカエルウオの仲間

カエルウオの仲間は自然下では磯の岩にはえたコケを食べ、水槽でもライブロックや水槽壁面のコケを食べてくれます。可愛いものも多くて人気があります。初心者でも飼育できるものが多いですが、飛び出しに注意が必要なのと、餌に植物質のものを与えることがポイントです。

ヤエヤマギンポやカエルウオ、インドカエルウオといった種類がコケをよく食べてくれます。ヒトスジギンポなど小型のニラミギンポの仲間も人気がありますが、この仲間はコケはあまり食べず、サンゴの表皮をなめるようなものもおり、注意が必要です。カエルウオの仲間の飼育方法は、こちらをご覧ください。

ベラの仲間

ベラ科は海水魚の中でも大きなグループで、世界中の暖かい海から550種ほどが知られています。熱帯域が分布の中心で、カクレクマノミと混泳可能なものも多くいます。

イトヒキベラの仲間

▲ハナビラクマノミとレッドヘッドフェアリーラス

イトヒキベラやクジャクベラの仲間は色がカラフルで美しいため、マリンアクアリウムでは極めて人気がある種類です。60種以上が知られ、どの種もカクレクマノミと飼育することができますが、イトヒキベラの中にはハリオイトヒキベラ(ピンテールラス)や、クロヘリイトヒキベラなどのように大きいもの(それでも15cmほどですが…)がいます。また遊泳性も強いため、あまり小型の水槽での飼育には向いていません。60cm水槽であればファイティングラス(ソーシャルラス)やラボックスラス、マッコスカーズラスといった小型種がよいでしょう。

キュウセンの仲間

▲もっとも有名なキュウセンの仲間、コガネキュウセン(イエローコリス)

キュウセンの仲間で有名なのはイエローコリスことコガネキュウセンで、全身が黄色いのが特徴です。また全身が緑色のライムラス(パステルグリーンラス)や、独特な模様をもつニシキキュウセン、カザリキュウセン、トカラベラなどがいます。この仲間は夜間砂に潜る習性があるので底にサンゴ砂を敷いてあげましょう。その点にさえ注意すれば飼育は比較的容易なものが多いです。ただし甲殻類は食べられてしまいます。

なお、キュウセンの仲間に似たものにカンムリベラの仲間がいます。この属の魚にはツユベラやカンムリベラなど大きく育つものがいます。これらは60cm水槽では終生飼育できないので、注意が必要です。

ニセモチノウオの仲間

▲ニセモチノウオ(左)とヒメニセモチノウオ(右)

ニセモチノウオはベラの仲間でも小型で7cmほどの種です。体側には縦縞が数本あり美しい種類で、性格もタフ、丈夫で飼いやすい種類です。唯一の欠点は気が強いことと動物食性が強いことで、同種同士の混泳は不可能ですが、クマノミの仲間との混泳はできます。

右の写真のヒメニセモチノウオも同じように飼育できます。「ヒメ」という名前がついていると「温和」というイメージもありますが、ニセモチノウオよりも大きくなり、性格も・・・。

クマノミとの飼育はおすすめできないベラ

▲大型になるミツバモチノウオは魚食性が強い。要注意だ

ベラの仲間はどの種も動物食性が強いのが特徴です。動物プランクトンを食べるものや甲殻類を食べるもの、サンゴのポリプを食べるもの、そして小魚を食べるものがいます。小魚を食べるものはモチノウオの仲間、タキベラの仲間などで、大きくなる種類ほど魚食性が強いようです。また多くのベラは甲殻類を好んで食べるので、小型の甲殻類は入れにくいです。

ハナダイの仲間

▲カクレクマノミとフチドリハナダイ

ハナダイの仲間は肉食魚であるハタ科の魚なのですが、多くの種は小型でクマノミを捕食することもありません。カクレクマノミとの混泳でおすすめなのはキンギョハナダイ、ケラマハナダイ、バートレッツアンティアスといった種類です。これらの種類は丈夫で飼育しやすく、クマノミの仲間との混泳もこなします。

一方初心者に飼育しにくいのはハナゴイ、パープルクイーン、アカボシハナゴイ(タイガークイーン)など「ハナゴイ」と呼ばれるグループで、これらの魚は臆病で飼育しにくいものです。スミレナガハナダイやスジハナダイ、ペインテッドアンティアスという種はやや大きくなり小型水槽では飼いにくいといえます。

ハナダイ類の仲間は痩せやすいものもおりますので、多く餌をあげたいところです。またホワイトシュリンプなども与えるとよく食べます。ただしこのような餌は水を汚しやすいので注意しましょう。

小型ヤッコの仲間

▲カクレクマノミとアブラヤッコ。ただしアブラヤッコはあまり初心者向けではない

小型ヤッコはしぐさが可愛らしく、色や模様も特徴的でチョウチョウウオに並ぶマリンアクアリウムの花形的存在です。初心者でも飼育できないことはないのですが、スズメダイやハゼと比べてやや水質に敏感なところがあります。まずは小型ヤッコをいきなり入れるのではなくクマノミの仲間やハゼの仲間を入れて、ろ過が安定してから入れるようにします。

またヤッコの仲間は最初から配合飼料を食べるとは限りません。最初のうちはアサリなどに餌付かせる必要があるものもいます。さらにヤッコの仲間にはサンゴのポリプをつつくものもおり、サンゴ水槽での飼育には向いていないところがありますのでその点も注意が必要です。

テンジクダイ(イシモチ)の仲間

▲イトヒキテンジクダイ

テンジクダイの仲間も観賞魚としてよく知られているものが何種かいます。バンガイカーディナルフィッシュ(カウデルニィ)やマンジュウイシモチ、イトヒキテンジクダイといった種は丈夫で飼育しやすく、ビギナーにもおすすめです。ただし、一部の種はスレ傷に弱いので、移動の際には水ごと容器で掬う、など配慮が必要なこともあります。

テンジクダイの中でも大きくなるシボリやリュウキュウヤライイシモチなどは動物食性が強めで小魚を捕食することもあるため注意が必要です。

ゴンベの仲間

▲クダゴンベ

ゴンベの仲間も丈夫で飼いやすいものが多く人気の海水魚です。しかし動物食性が強く、とくにヒメゴンベなど非常に気が強いため、混泳は注意しなければなりません。餌付きも非常によく、すぐ餌を食べてくれます。ただし写真のクダゴンベは人気が高いのですがどういうわけか拒食になることもあり、注意が必要です。

初心者がカクレクマノミと飼育するならサラサゴンベやベニゴンベ、ウイゴンベなどがおすすめです。またハナゴンベという魚は名前に「ゴンベ」とありますが、ゴンベ科ではなく、ハナダイの仲間になります。

安価=飼育が簡単、ということではない

安い値段で販売されている魚がいます。しかし、その安価な魚が本当に飼育しやすいかはまた別の話です。安価な値段で販売されている魚というのは、海水魚の主要な原産地であるフィリピンやインドネシアに多数みられる種類、または養殖がなされているというもので、決して購入しやすいものが飼いやすい魚とは限りません。チョウチョウウオの仲間、ピンク色が綺麗なパープルクイーンなどは安価で販売され、タツノオトシゴは養殖が可能で手に入りやすいといえますがこれらの魚は残念なことに初心者におすすめ、とはいえません。

またその一方で安い値段でしか売れない魚のためザツに扱われている種類も多いのです。青い色が綺麗ですが安価なスズメダイの仲間はフィリピンなど東南アジア諸国から送られてきますが、その時は驚くほど小さな袋で来ることもあります。これでは丈夫なスズメダイといえど体調を崩してしまいます。できれば魚は入荷してすぐ購入するのではなく、到着後何日か経過し、状態が落ち着いてから購入するようにしましょう。

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