飼育難易度が高い(持て余しがちな)海水魚

飼育難易度が高い(持て余しがちな)海水魚

海水魚専門店ではさまざまな魚が販売されていますが、その中には、一般のアクアリストには最後まで飼育できるとは思えないような魚が販売されていることもあります。

最後まで飼育できなさそうな魚、持て余しそうな魚はどんな魚なのでしょうか。そしてそのような魚を最後まで飼育するにはどのような飼育環境が必要なのでしょうか。ここでまとめてみました。




持て余しがちな魚

海水魚専門店で販売されている魚について、持て余しがちな魚についてご紹介します。そのような魚としては、気が強くなり他の魚と飼いにくい、遊泳性が強く狭い水槽で飼いにくい、大きくなる、などの性質をもつ魚が多いです。

スズメダイの仲間

▲クロスズメダイは小さいころは綺麗だが…

スズメダイの仲間は、幼魚こそ派手な色彩をしているのですが、成長するにつれて気が強くなり、種によってはヤッコの仲間などとも張り合うくらいの強さになります。とくにクロスズメダイの仲間、ルリスズメダイの仲間、ソラスズメダイの仲間、ダンダラスズメダイの仲間、そしてクロソラスズメダイの仲間は幼魚と成魚では全く違う色彩になり、大きいものはヤッコの仲間より強くなるなどしますので、安易な気持ちで飼育しないように、後のことも考えて飼育する必要があります。

スズメダイを飼育するのであれば比較的温和な性格のデバスズメダイやヒメスズメダイなど温和な種から飼育するとよいでしょう。

大型ヤッコの仲間

▲ウズマキと呼ばれるタテジマキンチャクダイの幼魚。成魚は格好いいがその分気も荒い

通称、「ヤッコ」と呼ばれるキンチャクダイの仲間は観賞魚として人気がある仲間ですが、そのなかでも大型になる種の飼育については注意が必要です。

この仲間は幼魚と成魚では色彩や斑紋が全く異なり、色や模様の変化を楽しむことができますが、成長すると大型になり、さらに大きくなるにつれて性格もきつくなるということを忘れてしまうアクアリストも多いようです。

実際に瀬戸内海や静岡県、あるいは宮崎県などでセダカヤッコ(通称マクロスス)、和歌山でホクロヤッコ(クイーンエンゼルフィッシュ)が、新潟県でキホシヤッコ(フレンチエンゼルフィッシュ)などが採集されています。

セダカヤッコの瀬戸内海の記録は古く観賞魚を放したのかどうかは不明ですが、他の種は飼いきれなくなったアクアリスト、あるいは面白いものを見たいダイバーが放流したのは間違いがないところです。前に書いたように、飼いきれなくなっても、海に放すなどはしてはいけないことだ、ということを理解しなければなりません。

メギスの仲間

▲メギスの仲間は気が強い種類が多い

メギスの仲間もかなり強く種によってはかなり強く、ベテランのアクアリストでも持て余す可能性があります。メギス属の魚やそれによくにたオギルビーナ属の魚、ニセスズメ属の魚でも大型になる種には注意するようにします。

一般に飼育向けなのはクレナイニセスズメやバイカラードティバック、オーキッドドティバック(フリードマニ)などの小型種ですが、これらの種も小型水槽ではかなり強い性格を発揮してしまうので注意します。大きめのサンゴ水槽、それも混泳のメンバーをリストアップしておいて、最後に追加するようにしないといけません。

ベラの仲間(大型種)

▲メガネモチノウオの幼魚

▲水族館で撮影したメガネモチノウオの成魚

ツユベラやカンムリベラの幼魚は美しく丈夫なので初心者向けとも思われがちですが、ツユベラは成魚で45cm、カンムリベラに至っては成魚では1mを超えるようになってしまいますので、小~中型水槽を持つことが多い初心者向けの魚とはとても言えません。家庭の水槽ではそれより小型ですが、カンムリベラは2mくらいの大きさの水槽でないと満足に飼育できないでしょう。

ベラの仲間で最大になる種は、インド-中央太平洋のサンゴ礁域にすむメガネモチノウオです。通称ナポレオンと呼ばれる、水族館でも人気の魚ですが、成魚は2mを超える大型種、小さいうちは臆病ですが大きくなるにつれ性格がきつくなり、小魚も捕食してしまうので注意が必要です。

ツユベラやカンムリベラは夜間の睡眠のときや危険が迫ったときには砂にもぐりますので、水槽の底に砂を敷いてあげる必要があります。メガネモチノウオは夜間は岩の隙間などで眠るため、砂を敷く必要はありません。

コショウダイの仲間

▲チョウチョウコショウダイの幼魚 (Jack Kurodaさんからお借りしました)。

▲石垣島公設市場で食用魚として購入したチョウチョウコショウダイ成魚。

▲ヒレグロコショウダイの幼魚。幼魚はデリケートな一面も。

沖縄や東南アジアの海域では食用になるイサキ科の魚も観賞魚として入ることがあります。成魚もそれなりに美しく、観賞魚としての需要があります。ただし成魚は大型になるので大型水槽が必要です。

観賞魚としてしばしば入荷するチョウチョウコショウダイは自然下では60cm、水槽でも40cmになり、アヤコショウダイは50cm、ヒレグロコショウダイも自然下では40cmになります。大型個体は120cm水槽でも狭いくらいで、せめて180cm水槽は用意してあげたいものです。小さな幼魚から飼育してみたくなるところですが、幼魚は比較的デリケートで混泳もしにくく、餌付きもよくないので注意が必要です。ある程度育った個体は丈夫で飼育しやすいです。

フエダイの仲間

▲水族館で撮影したイレズミフエダイ。50cm近くある。

▲ヒメフエダイはやや小ぶりだがそれでも35cmになるので注意する。

フエダイの仲間はイサキの仲間ほど観賞魚店でみることはありませんが、個性的な魚が多く知られています。とくに鰭が長く伸びるロングフィンスナッパーことイレズミフエダイは観賞魚店でよくみられるものですが水槽内でも50cmを超える大型種ですので、大型水槽が欲しいところです。成長は早く食性は動物食性なので小魚や甲殻類は食べてしまいますので要注意です。

フエダイの仲間は幼魚が磯や防波堤で採集できるので、何かわからず、家に持ち帰ってしまうことが多いのですが、60cmほどの水槽で飼育できるのは一部の種で、少なくとも90cm水槽が欲しいところです。理想は120cm水槽です。飼いきれなくなったら海に逃がすのではなく、観賞魚店などに相談するようにしましょう。

アジの仲間

▲コバンアジの幼魚。10月に神奈川県で採集

▲コバンアジの成魚 鹿児島県の漁師さんからいただいた

遊泳性が強いアジの仲間は小型水槽では飼育することが難しいものです。にもかかわらず、コガネシマアジやロウニンアジなどの種類はお店で販売されています。

実際、このような魚は水族館なみの設備がないと飼育することは不可能です。アジの仲間としては小さなコバンアジの仲間も遊泳性がかなり強いため、成長することも考えると、150cm以上の大型水槽で飼育するべきでしょう。

ツバメウオの仲間

▲枯葉によく似たナンヨウツバメウオの幼魚

波間に漂う枯葉の様なすがたのナンヨウツバメウオも含まれるツバメウオの仲間も、小型水槽では飼育がしにくい魚です。性格は大型魚としてはおとなしめで、スズメダイなどと飼うと鰭などをつつかれるおそれがあるので注意します。巨大水槽で大型ヤッコなどとともに、ゆったり余裕をもって飼育するようにしたいものです。

マンジュウダイ科の観賞魚としてはこのほかにアカククリやバタビアツバメウオ(通称ゼブラバットフィッシュ)なども知られますが、これらの種類も大型になるので注意します。またこれらの種は飼育も難しく、初心者どころか上級者も手が出しにくい種といえます。

ハタの仲間

▲小さな赤みを帯びた斑点を持つハタのなかには大型化するものもいるので注意。

ハタの仲間はヤミハタやカンモンハタなどの小型種もいますが、メーターオーバーの大型種も多く、飼育には注意が必要です。

最近海水魚店のほか、熱帯魚を扱うお店でも見られる「ジャイアントグルーパー」はタマカイのことで、全長2.5mを超える巨大種です。黄色と黒のマーブル模様が綺麗ではありますが、大きい個体では白い斑紋と尾鰭のまだら模様が特徴で、大きく見た目が変わります。ハタの仲間は人によくなれ長寿、巨大な水槽を所有できるのであれば是非飼育してみたい魚です。

ハタの仲間を飼育する上での注意は、事前にそのハタがどのくらいのサイズになるのか、情報を集めておくことです。本州沿岸で釣れる、体側に茶色い小さな点々があるのは、キジハタなどの一部の種を除き大型になることが多いです。

テングハギの仲間

▲テングハギ属の魚は大きくなり家庭の水槽での飼育は困難。写真は水族館で撮影。

ニザダイ科のうち、テングハギの仲間(テングハギ属)は20種が知られ、観賞魚としてもたまに販売されています。とくに頭部にツノのような突起があるものはユニークな顔つきから飼育してみたくなるものなのですが、この仲間は大きいものでは1m近くになるので、家庭の水槽での終生飼育はよほど巨大な水槽を用意できる人でない限りはほぼ無理といえます。

テングハギの仲間のうち家庭の水槽での飼育に向いているのは、やや小形の種であるボウズハギとミヤコテングハギくらいでしょう。しかしそれでも成魚まで飼育するには120cm以上の水槽が欲しいところです。

モンガラカワハギの仲間

▲この仲間ではもっとも一般的な種であるモンガラカワハギ

▲モンガラカワハギの仲間を飼うなら設備についても注意する必要がある。

かなり凶暴な性格、他の魚を食べたり、大きい魚でもかじったりするなど、どうしても持て余してしまいがちな魚です。幼魚は本州以南の太平洋岸、年によっては日本海岸でも夏から秋にかけて採集可能で、面白い泳ぎ方や姿からついつい飼育してみたくなりますが、他の魚との飼育は止めた方がよいでしょう。

また強い歯で色々齧るという悪癖もありますので、その点も対策が必要など課題も多いといえます。この仲間を飼育するには混泳のことだけではなく、設備についても考える必要があると言えます。初心者におすすめできるような魚ではありません。

衝動買いは禁物

海水魚飼育に限らず、淡水の魚、キンギョ、最近はやりのメダカ、あるいは愛玩動物だってそうなのですが、生き物を飼育するのに衝動買いというのは絶対にやってはいけないことです。

まずは、飼いたい魚がどんな性格をしていて、それを飼育するのにどのような大きさの水槽が必要なのか。他の魚と一緒に飼育することはできるのか、どんなものを食べるのか。そのようなことをきちんと本や雑誌などで調べる必要があります。そして「こんなに性格が悪いならウチでは飼えない」「そんな大きな水槽、家におけない」と思うのであれば、飼育開始前のうちにその魚の飼育をあきらめることも大事といえます。

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まとめ

  • スズメダイの大型になる種やモンガラカワハギは気が強く持て余しがち
  • コショウダイ、ハタなどの巨大になる種も注意
  • アジやテングハギの仲間など広い遊泳スペースが必要な魚は飼育困難
  • 衝動買いは禁物
  • 飼いたい魚について雑誌などで性質をよく調べる

クロスズメダイおよびチョウチョウコショウダイの写真はJack Kurodaさんからお借りしました。ご協力ありがとうございました。

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