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2020.06.17 (公開 2017.07.24) 餌・添加剤

海水魚・サンゴの「添加剤」の種類と使い方・選び方

海水魚やサンゴ、イソギンチャクなどの無脊椎動物。これらの生物の暮らしていた広大な海は、77種の元素からなる海水で構成されています。私たちが「趣味」と称して14億㎦の海から水量100リットルそこらの水槽に魚を連れてくるわけですから、せめてその飼育水を、自然の海に近いものにするように努力するのは、アクアリストのつとめともいえます。

ホンモノの海水を人間の手で生み出すことは困難ですが、水槽の飼育水を、ホンモノの海水に近づけてくれるものがあります。それが「添加剤」です。これを正しく使うことによって、飼育水を自然の海水に近くし、魚やサンゴを成長させることができるでしょう。

添加剤はなぜ必要なの?天然海水に含まれる元素

天然海水には77種類もの元素が含まれているといわれています。これらの元素をいちいち正確に添加する事は難しく、基本的には海水中に含まれる主要な元素や、各種微量元素を水槽内に添加することになります。

カルシウム

▲ミドリイシでなくても、ハードコーラルが中心の水槽には添加が重要

ハードコーラルの骨格をつくるのに重要な元素ですが、ソフトコーラルにも重要な元素であることがわかっています。ミドリイシなどのSPSにとっても重要な成分で、不足すると白化してしまう恐れもあります。

カルシウムリアクターを使う方も多いようですが、添加剤を使っても問題ありません。ただしイオンバランスを崩すようなことがないように、添加しすぎには注意が必要で、定期的に水替えをしてバランスをリセットさせるようにします。

マグネシウム

▲海水中にはカルシウムの約3倍のマグネシウムが溶け込んでいる

マグネシウムはハードコーラルやソフトコーラルに必要ですが、そのほかに海水の元素のバランスを整える役目もあります。カルシウム同様にサンゴ水槽では定期的に添加することが重要です。マグネシウムは大体カルシウムの約3倍の量が水に溶け込んでいるとされており、マグネシウムの濃度が低すぎるとカルシウムは炭酸塩イオンと結合して沈殿してしまうため、定期的な添加が必要となります。添加には添加剤を使用するほか、カルシウム同様にリアクターを使用して添加する人も多いようです。

ストロンチウム

▲ハードコーラルの骨格形成に重要

カルシウムと同様に、サンゴの骨格形成に重要な成分です。特にハードコーラルにとって重要な成分ですがソフトコーラルの成長や魚の骨格形成にも必要な元素で、カルシウム、マグネシウムとともにサンゴ水槽には添加しておきたい元素です。ただこの元素は水槽内では失われやすいため、定期的に添加しておきたいものです。

上記の3つの元素はそれぞれ添加してもよいのですが、最近は3つの元素を同時に添加できるような製品も販売されておりますので、そのようなものを使用するのもよいでしょう。

ポタシウム

▲サンゴの青色の色揚げに効果あり

カリウムのことです。カリウムはドイツ語で、ポタシウムが英語です。元素記号はKでドイツ語にちなみます。ちなみに元素記号Poはポロニウムというまた別の元素になります。ハードコーラルの骨格形成に効果がある元素のひとつですが、最近はサンゴ、とくにミドリイシなどのSPSの青色の色揚げにも効果があるとのことで、注目されている元素です。またライブロックにつく石灰藻の成長も促進されます。ただしポタシウムばっかりいれてもすぐに青くなるということはなく、逆に元素のバランスを崩してしまうおそれがあるため、添加のし過ぎは厳禁です。もちろんこれはポタシウムにかぎらず、そのほかの添加剤にもいえることですが。

ヨウ素(アイオダイン)

▲ソフトコーラルや魚中心の水槽でもヨウ素は添加するようにしたい

ヨウ素はサンゴにとってかなり重要な成分で、これを添加することによってサンゴがよく開くようになります。また魚や甲殻類、海藻・海草にとっても重要な成分です。しかし健康の維持に重要な成分であるにもかかわらず吸着剤で吸着されてしまったり、強力なプロテインスキマーによって水槽から排除されるなどしてしまうため、定期的に添加する必要があります。もちろん過剰な添加はするべきではありません。

鉄分

▲海藻を飼育するならば添加したい

サンゴや海藻・海草類など、光合成をする生物には必須の元素です。欠乏することがないように添加することが望ましいのですが、過剰に添加するとコケの大増殖につながることがあります。

また一般に販売される微量元素の中には鉄分を含むものがあり、過剰にならないように注意する必要があります。

微量元素

▲鉄分が含まれるものもある。過多にならないように

海水に含まれる元素の中で特に有用なものをまとめた成分で、「トレースエレメント」などとも呼ばれています。メーカーによって内容物には若干差があります。例をあげればブライトウェルアクアティクス社の「リプレニッシュ」という製品にはバリウム、亜鉛、ニッケル、クロム、マンガン、コバルト、ランタン、鉄といったものから名前を聞くことがほとんどないものまで29種類の元素が含まれています。メーカーによって成分はまちまちで、他のメーカーの製品との併用がしにくいといえます。

中には鉄分が含まれているものもあります。鉄分を供給する添加剤との添加は鉄分の過剰添加を起こしてしまうことがあります。鉄分は光合成のために重要ですが、光合成をする生き物はサンゴや海藻だけでなく、コケも含まれます。そのため鉄分を過剰に添加するとコケの大発生を招くことがあります。

添加剤にとして加えなければならないその他の成分

元素の他にも、水槽の海水をより自然の海に近づけることに役立つ添加剤がありますのでご紹介します。

ビタミン・アミノ酸

▲魚・サンゴに適したビタミンやアミノ酸を。

元素とは違いますが、魚やサンゴに必要なアミノ酸やビタミンを届けるための添加剤もあります。魚やサンゴ、それぞれに必要なものを選んで添加するようにしましょう。直接添加するものや、餌に浸して使用するものなどがあります。後者は小さなカップなども必要になります。

pH調整

▲魚中心の水槽ではpHが下がりやすいので注意。

pHとは水中の水素イオン濃度を示す単位のことです。pH7.0が中性、7.0より数値が小さいものを酸性、逆に7.0よりも数値が大きいものをアルカリ性といいます。海水のpHは大体8.0から8.3くらいです。

海水水槽、とくに魚中心の水槽では常にpHが下がっていく傾向がありますので、調整剤を使ってpHを上昇、安定させるようにするべきです。粉末状のものも多いですが液体状のものもあります。

KH調整

▲ミドリイシ飼育にはKHも重要な要素

KHとは炭酸塩硬度のことです。ミドリイシには10dKH前後が適していますが、他のサンゴはもう少し低くても大丈夫ですが、低くなりすぎるとハードコーラルは白化してしまいますので、添加剤を使用したり、カルシウムリアクタという器具を用いてKHを安定させるようにします。

添加剤の添加方法

水量何リットルに何滴添加するとか、水量何リットルに何mlを加えるとかいう添加方法が基本です。この場合注意しておきたいのは「水量」です。水量はメイン水槽の他にろ過槽も含み、オーバーフロー水槽であればサンプ(水溜め)なども含みます。

添加剤同士は決して混ぜて使ってはいけません。また、さまざまな元素を含むタイプの添加剤を使用する場合はなるべく同一メーカーのものを使うようにして、ある成分が過剰に供給されるのを防ぐようにします。

添加剤を入れても水替えは行う

▲定期的な水替えは必須

添加剤を添加しても、水替えをしなくてよくなるというものではありません。たとえばカルシウムやマグネシウムなどは正確に添加する量を守らないと長期的には水槽のイオンバランスが崩壊して生き物にかえって害になってしまう恐れがあるため、定期的に水換えしてイオンバランスをリセットしてやる必要があります。

添加剤とプロテインスキマーとの関係

微細な泡を発生させてハイパワーで有機物を水槽から取り除くのがプロテインスキマーですが、せっかくの元素も水槽から取り除かれてしまいますので、プロテインスキマーを付けた水槽では添加の重要性が増します。特にヨウ素は魚にも甲殻類にもサンゴにも、海藻・海草にも大事な成分であるのにもかかわらず水槽から取り除かれやすいので、定期的な添加が必須となります。

添加剤のブランド・おすすめ

日本国内外さまざまな添加剤のブランドがあります。ここでは日本のアクアリストに手に入りやすく、安心して使える添加剤をご紹介します。なおここでご紹介しているのは一例であり、ここで紹介していない商品が安心して使えない、というものではありませんが、ゼオビットシステムのような特殊用途の添加剤もあります。またここに掲載されていても、使い方を間違えたり、大量に添加してしまうと生物の調子が悪くなったりすることもありますので注意しましょう。

ライブシーシリーズ

デルフィスが展開する、人気の人工海水ライブシーソルトでお馴染みの国産ブランドです。

ヨウ素やカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、微量元素やpH調整剤などがラインナップされています。またヨウ素など、同社の添加剤の一部には1000mlの大容量の製品もラインナップされているところも大きなポイントです。我が家でも人工海水やバッファー剤などにライブシー製品を使用しています。

ブライトウェルシリーズ

海洋科学者が考案した添加剤シリーズです。日本では株式会社マーフィードが輸入販売元になっています。

1本でカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ポタシウムを供給しpH安定のためにアルカリ度を高める「リキッドリーフ」や、ストレスで白化したサンゴの回復や成長、再生を促進する「リストア」など、かゆいところに手が届くような商品の構成で人気があるシリーズです。我が家でも添加剤はこのシリーズをよく使用しています。

レッドシー

リーフケアプログラムと呼ばれる、添加剤を使用した4つのサンゴ育成プログラムがあります。バランスを取れた正しい値を維持する「リーフファンデーションプログラム」、栄養塩をコントロールする「アルジーマネージメントプログラム」、サンゴに栄養を届ける「コーラルニュートリションプログラム」、そしてサンゴの色揚げの「コーラルカラープログラム」で、それぞれのプログラムに使う添加剤とテスターが用意されています。

グローテック

欧州で人気の添加剤で、日本ではLSS研究所が取り扱う人気の添加剤です。成分が異なる3種類の添加剤で元素をバランスよく補給するコーラルABCという商品、KH+CAシリーズのようにイオンバランスを崩さない炭酸塩・カルシウム添加剤などを展開。液状のもののほか、KH、カルシウム、マグネシウムを添加するのにはコストパフォーマンスに優れた粉末タイプの製品もあります。

プロディビオ

エムエムシー企画レッドシー事業部が輸入販売しているフランスのブランド。他の製品と違いガラス製アンプルのなかに入っているため、劣化しにくいというメリットがあります。カルシウムとマグネシウムを維持するのに適したカルシリーフ+やストロンチウム、ヨウ素(アイオディン)、バクテリア製材などの商品があります。

QFI

国内ではハートトレードが扱う添加剤です。メーカーによれば、イオンバランスを崩しにくく安心して使うことができる添加剤といえます。カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、KH、微量元素のほか、高濃度のヨウ素が含まれるJODミックスの計6種。

コンティニュアムアクアティクス

こちらもハートトレードが扱う製品で、一般的な元素の多くがそろい、高濃度ヨウ素「ルゴールEX」などの商品もあります。サンゴ用の添加剤だけでなく液体フードや魚水槽用の添加剤なども取り扱っています。

トロピックマリン

バイオアクティフシステムという、特殊なシステムで有名なブランドですが、バイオアクティフシステム向けの商品のほか、一般的なサンゴ水槽にも使用できる高品質な添加剤も販売されています。リキッド状のもののほか、コストパフォーマンスに優れた粉末状の製品もあります。日本総代理店はオーシャンアースです。

添加剤のまとめ

全ての生き物に必要な元素

ヨウ素、微量元素、pH調整

ハードコーラル中心 (リアクタなし)の添加剤

カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、KH調整、+全ての生き物に必要な元素

ソフトコーラル中心の水槽向けの添加剤

ヨウ素と微量元素は重要、他ストロンチウム、マグネシウム、KH調整

魚中心の水槽向けの添加剤

ヨウ素、微量元素は重要、pH調整は極めて重要 (酸性になりやすい)

そのほかの元素は水かえで補う。

  • 何れも量をきちんと正確に測り、入れすぎないように注意する。
  • 水かえもきちんと行い、バランスをリセットする。
  • 添加剤同士を混ぜて使ってはいけない。
  • 複数の元素が入った添加剤を使う場合、同一メーカー・ブランドのもののみを使う。
  • 添加した元素がプロテインスキマーにより水槽から取り除かれることもある。
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