2019.03.20 (公開 2019.03.15) 海水魚の病気
白点病ってどんな病気?治療と予防のために気をつけたいこと
白点病はクリプトカリオン・イリタンスという微小な生物により引き起こされ、魚の体表や鰭に白い点がつく病気です。白点はついたり消えたりし、最後には体じゅうに白い点がつき死に至りますが、早期発見、早期治療を施せば完治させられます。しかし、当たり前のことですが海水魚飼育において病気はなるべく発生させないことが重要になります。今回は白点病の治療方法と予防方法をご紹介します。
白点病とは
▲白点病にかかってしまったデバスズメダイ。臀鰭や背鰭に白い点が見える
白点病は「クリプトカリオン・イリタンス」(白点虫)という微小な生物により引き起こされる病気です。
症状としては魚の体や鰭に白い点が付いたり消えたりしますが、やがて増殖し鰓などに寄生するなど最悪の場合は死に至ります。このほかこの病気に感染すると、魚はかゆいのかライブロックや水槽壁面などに患部をこすり付けたりすることもあります。なお、淡水の白点病と海水の白点病は別の生物によるものです。それぞれ異なる病気ですので混同しないように注意が必要です。以下、この記事における「白点病」はすべて海水の白点病を扱います。
白点病のライフサイクル
白点虫はずっと魚に付着しているというわけではありません。白点虫は成長すると魚から離れてしまいます。その後はシスト(耐性膜)を形成し、膜の中で増殖し仔虫を放出し、その仔虫が魚に寄生します。最初白点が数個であれば、サンゴ水槽などで飼育する場合自然治癒することもありますが、ついたり消えたりしているならば治療をしなければなりません。
もし白い点が鰭や体表につき、長い時間付着していたり、点が大きいとリムフォシスティス(リンホシスチス)というまた別の病気の可能性もあります。また白点病よりも小さい点が魚の体を覆うウーディニウムという病気もあります。
白点病にかかりやすい環境と状況
長期間水替えしない水槽や、コケだらけの水槽には白点病が出やすいかもしれません。季節としては春と秋がかかりやすいといえます。これはこの時期は水温の変動が激しくなり、魚の抵抗力が若干弱っているときにかかるおそれがあるからです。とくに小型水槽では要注意です。ヒーターだけでなくクーラーも必ずつけておくようにします。
新しく購入した魚に白点虫が寄生しており、水槽に入れた際に発症してしまった、なんていうケースもあります。こういうときはトリートメントタンクを用意し、数日間様子を見てから水槽へ入れます。もしトリートメントタンクで発症してしまったら後述の方法で治療します。
また、砂を巻き上げるようなことはよくありません。具体的にいえば大きなライブロックやサンゴ岩などをどかすと汚れが舞い白点病にかかってしまうことがあります。水槽のレイアウトを変更するときなどは要注意です。水流はよどみをつくらないことが大切です。理想は強い水流が水槽の壁面にあたり、そこから分かれた強い流れが水槽全体にいきわたるようにします。ただし、ポンプが落ちると水槽中の砂が舞い上がってしまい、それで白点病が発生したり、砂がサンゴにかかってサンゴが死んでしまうこともあります。ポンプは吸盤付きのものよりも、マグネットで水槽に固定できるもののが安心といえます。
白点病になりやすい魚
魚のなかには白点病になりやすい魚と、なりにくい魚がいます。
チョウチョウウオの仲間
▲チョウチョウウオは海水魚飼育初心者にはすすめられない
白点病にもっともかかりやすい魚はチョウチョウウオです。チョウチョウウオといえば従来はよく飼育されていましたが、現在ではあまり人気がありません。その理由はサンゴを食べてしまうので、最近主流となっているサンゴ水槽に入れられないこと、最初から配合飼料を食べない個体も多いことと同時に、病気になりやすいこともその理由のひとつといえるでしょう。
ヤッコの仲間
▲ヤッコの仲間にも白点病にかかりやすいものがいる
ヤッコの仲間はチョウチョウウオと比べると比較的丈夫なほうではありますが、水槽に導入してすぐの期間は病気になることもあるためよく観察する必要があります。とくにキンチャクダイ属など肌が弱い種やクイーンエンゼルなどカリブ海や東太平洋産の種はやや病気になりやすいデリケートなところがあるので注意が必要です。また、治療の際に銅イオンを使用するとHLLEを発症することがあるようで注意が必要です。
ニザダイ(ハギ)の仲間
ニザダイの仲間も病気になりやすいといえます。とくにナンヨウハギなどの小さい個体は白点病になりやすいといえ、これが「ニモとドリーの世界」を水槽で再現することが難しい理由になります。ヤッコの仲間と同様に白点病治療に銅イオンを使用するとHLLEにもなるおそれがあります。
フグの仲間
▲ハコフグの幼魚。白点病にかかりやすいので万全の設備で
フグやハコフグの仲間も白点病にかかることがあります。特にハコフグの仲間は白点病にかかりやすいです。また別容器で治療すると毒をだして死んでしまうおそれもあるので注意が必要です。ハコフグを飼育したいのであれば、殺菌灯やオゾナイザーなどを使用し、もちろん水温を調整するクーラーやヒーターもしっかりしたものを使用し白点病の出にくい環境をつくらなければなりません。
テンジクダイの仲間
▲キンセンイシモチはとくに白点病にかかりやすいので注意が必要
テンジクダイの仲間も白点病にかかりやすい魚です。特にキンセンイシモチや体が透明な種などはかかりやすい感じがします。キンセンイシモチなどはきれいで飼育したくなる魅力的な魚ではありますが、かなり白点病になりやすいので注意が必要です。殺菌灯をつけた、水のきれいで水温が安定しているサンゴ水槽で飼育したい魚です。
白点病を引き起こす可能性がある魚
ベントスハゼの仲間
▲ベントス食性のミズタマハゼ
ベントス食性のハゼは、口に砂を含み砂の中にすむ餌生物を捕食、鰓孔から砂だけ出すという習性があります。この魚の習性で困ったことは、鰓から砂を排出するとき、砂の中に潜んでいる白点虫をも舞い上がらせてしまうことがある、ということです。ベントスハゼとの混泳を避けるということも白点病の予防方法の一つとなります。
大型のベラの仲間
▲砂に潜る大きめのベラは要注意
大型のベラの仲間もまた、白点病を引き起こすおそれがある魚のひとつといえます。これはベラが夜間眠る際に砂を舞い上げてしまうおそれがあるからです。砂に潜る習性のあるキュウセン類やススキベラ属、テンス属などの魚の飼育は注意が必要です。
一部のスズメダイ
▲ルリスズメダイなどは砂を巻き上げることも
スズメダイの仲間は巣穴を作るのに砂を巻き上げることがあります。デバスズメダイやヤマブキスズメダイなどの種はあまり砂を舞い上げませんが、ルリスズメダイの仲間の一部の種や、リボンスズメダイなどはこれで砂を舞い上げ、砂の中に潜む白点虫も同時に舞い上げてしまうことになります。我が家では白点病になりにくいデバスズメダイなども白点病になってしまいましたが、これが原因ではないかとも考えられます。
白点病の治療
銅イオン治療
20年ほど前はこの銅イオンでの治療が主流でした。もっとも治療効果が高いですが、量を間違えると魚を殺してしまう治療方法です。また魚によっては色褪せなどの影響が出やすく、あまりおすすめしません。この方法で治療するのであればテスターで量をきちんと計測することが重要です。もちろん、サンゴ水槽では絶対に使用してはいけません。
グリーンFゴールド顆粒を用いた治療
▲グリーンFゴールド顆粒
海水魚の白点病治療で一番おすすめの方法です。
グリーンFゴールド顆粒(GFG)も海水魚の白点治療に使うことができます(ただし、GFGのパッケージには海水魚用として使用しないこと、と明記されています)。銅イオンと比べると魚への負担が少なく、初心者でも安心して使えることがあげられます。ただしこれも銅イオンと同様にサンゴ水槽で使用することはできません。
またGFGの主成分であるニトロフラゾン自体に発がん性があるとのことで、食用魚などへの使用が禁止されており、銅イオンほどではないのですが取扱いには注意が必要です。
GFGを使用した治療法はこちらでご紹介します。
オキシドールを使用した治療
オキシドール(過酸化水素水)が白点病に効果があるとされています。しかしながら前述のGFGほどの効果は望めません。市販されている製品の中にもオキシドールが主成分のものがいくつかあり、それらの商品では無脊椎動物にも無害と謳っていますが異常がみられることもあるということで注意が必要です。
全換水
薬品を使用しない一番安全な方法です。ようは白点虫が魚から離れたときに水を全部換えてしまうことで水槽から白点虫を取り除くのです。サンゴの入っていない魚水槽ではこの方法もおすすめです。
白点病の予防におすすめの器具
クーラーとヒーター
クーラーやヒーターには白点病の原因となる白点虫を殺す効果はありません。しかしながら病気を予防するのに大変重要な役割を果たします。海水の水温が上下すると、魚にとってはストレスとなってしまい、体調を崩しやすく、白点病だけでなくさまざまな病気にかかりやすくなってしまいます。こういうことを防ぐために水温は一定をキープするようにしたいものです。
殺菌灯
▲ナプコリミテッドが販売するQL-15
ナプコリミテッドの「QLシリーズ」やカミハタの「ターボツイスト」などが代表的です。筒状の中に紫外線を発する灯具を収納し、その筒の中に海水を通して海水を照射するというものです。ですから魚に寄生した白点虫は殺菌灯で殺すことはできません。白点虫のライフサイクルの中で、魚の体表から白点虫が離れて水中を漂い、殺菌灯内に取り込まれたものを殺すというものです。白点病に罹った魚に殺菌灯を照射すると魚が死んでしまうおそれがあります。
殺菌灯に限らずどんな器具もそうなのですが、水量に対して余裕あるサイズ、ワンランク上のサイズの殺菌灯の使用をおすすめします。ただし、ワンランク上のサイズのものを使うと殺菌灯の熱と水中ポンプの熱により水温も上がりやすくなってしまいます。そしてクーラーが中途半端なものだと水温も一定になりにくく魚の体調を崩してしまうことがあるため、クーラーも大きいものを用意してあげましょう。よく海水魚の雑誌などで「器具は大きい方がよい」というのは、このように器具をどんどん追加することを想定しているのです。
なお、薬で白点病を治療する際には殺菌灯を使用してはいけません。薬の成分が変質してしまうことがあるようです。
殺菌灯の仕組みや効果については以下のリンクをご参照ください。
オゾナイザー
オゾンの力で海水を殺菌する機器で、殺菌灯同様に水槽の海水を殺菌してくれます。殺菌能力はオゾナイザーの方が高いとされています。しかしながら調整などが若干難しく、魚に有害となる可能性もあるので、オゾナイザーを使用するのであれば経験のある海水魚店の方に取り付けたり調整してもらうことをおすすめします。
白点病のまとめ
- クリプトカリオン・イリタンスと呼ばれる微小生物により引き起こされる病気
- 淡水にも白点病があるがそれとは全く異なる
- 白点虫はずっと魚についておらず魚についたりはなれたりする
- 魚が患部をこすり付けるようなしぐさを見せることも
- 水が汚い水槽や水温が不安定なときは病気が発生しやすい
- 砂が舞い上がるようなことがあると白点病が発生することも
- チョウチョウウオやハギ、ヤッコ(の一部)、フグなどは病気にかかりやすい
- 水中ポンプの落下やベントスハゼなどの追加、レイアウト変更などは要注意
- 大型のベラやスズメダイなども砂を舞い上げることがある
- 治療には薬浴が有効
- 銅イオンは治療効果が高いが魚には有害
- GFG顆粒は治療効果があり魚に対しての害も少なくおすすめ
- 全換水治療も高価あり
- 予防にはクーラーとヒーター、殺菌灯やオゾナイザーが効果的
- 薬浴中は殺菌灯を使用しない
- 魚についた白点虫を殺菌灯で殺すことはできない