2020.03.16 (公開 2018.02.21) 海水魚の病気
海水魚の淡水浴の方法~寄生虫を安全に駆除するために
「魚がサンゴ岩やライブロックに体をこすり付けている」
「痒そうにしている」
そうした症状が見られ場合、魚の体表に寄生虫が付着しているかもしれません。そういうときにおすすめなのが「淡水浴」です。
淡水浴は淡水に海水魚を泳がせることで、薬剤をほとんど使わず、病気や外傷の原因となる寄生虫を魚体から離れさせることができます。ぜひとも淡水浴の方法を身に着けておきましょう。
淡水浴の目的と効果
淡水浴は文字通り、淡水(真水)に海水魚を泳がせ、体表や鰭、鰓など付着した寄生生物を体から脱落させたり、活動を止めさせたりする時によく行われる方法です。薬品よりも安全に寄生生物を駆除することができ、特に最近多くみられるハダムシと呼ばれる寄生虫にも有効で水槽に魚を入れる前に淡水浴を行うアクアリストも多いです。
しかし忘れてはいけないことがあります。海水魚は基本的に海水中でのみ生きられる魚です。淡水で長く泳いでいたら弱ってしまいます。必ず魚の調子を見ながら泳がせる時間を加減してあげましょう。
淡水浴で落とすことができる寄生生物
トリコディナ
クマノミの仲間は丈夫で飼いやすく、初心者にもおすすめの魚ですが、輸入直後の弱っているときなどはトリコディナという病気にかかることもあります。寄生生物がクマノミの体表に付き、組織を食い荒らす恐ろしい病気ではありますが、早期発見できれば淡水浴で治療することができます。
ハダムシ
ハダムシとは、属の学名から「ベネデニア」とも呼ばれる寄生生物です。この生物が魚に寄生すると魚がかゆがり、体表を岩などにこすりつけ、スレによる傷がついてしまうことがあります。
そうなると他の生物や細菌による感染症にかかるおそれもあり危険です。このハダムシはブリなどの食用魚につくことでよく知られていましたが、観賞魚にも同様の生物がついてしまうことがあります。繁殖力が非常に強く、気が付いたら多くの魚にハダムシがついていた…ということもあります。サンゴアマダイの魚などはハダムシがよくついていることがあるため、水槽に入れる前に淡水浴をしたほうがよいでしょう。
淡水浴をすることにより、寄生するハダムシを落とすことができます。
リムフォシスティス
リムフォシスティス(病気)に対しても淡水浴を行うことがあります。リムフォシスティスは感染力が強くなく、鰭や体表に付着していてもすぐに魚が死に至るというようなことはありませんが、放置していたら巨大化してしまうおそれもありなるべく早く治療してあげたいものです。
白点病には淡水浴は有効?
「白点病には淡水浴が有効だ」という人もよくいますが、白点病にはあまり効果がありません。
白点病の治療をするのであれば、淡水浴よりもバケツで水槽の水を全換水する方法のほうが安全であり、かつ高い効果があるように思います。
淡水浴を行うために準備するもの
- バケツ
- ヒーター
- カルキ抜き
- 水温計
- pHメーター
- pH調整剤
- 計量カップ
- 魚を掬う網
- 隔離ケース
- 魚病薬(エルバージュなど)
- エアチューブ
太字は必ず必要になるもの、それ以外は必須ではありませんができれば必要になるものです。なおpHメーターは電子式のものが手軽で正確なのでおすすめです。pH調整剤(バッファー剤)はデルフィス製のものを我が家では使用しています。
淡水浴の方法〜カクレクマノミで実践
我が家のカクレクマノミを例に、具体的な淡水浴の方法を解説していきます。
まずはバケツにカルキ抜きをした淡水をはり、ヒーターを使用して温度を合わせます。温度を確認するには、水温計を使用するのが確実です。
バケツの水にpH調整剤を入れて溶かし、水槽とバケツのpHを合わせます。pHを確認するにはpHメーターで確認します。
pHの測定方法としては試験紙タイプのものや試薬を使用して測定する方法もありますが、電子式のpHメーターが使いやすいです。pHは大体8.1~8.3くらいに合わせます。水槽とバケツのpHの変動が大きすぎると魚がショック死してしまうおそれもありますので、注意しましょう。
カクレクマノミを泳がせます。5分から10分ほど泳がせて、寄生虫が死んだり、魚体から離れたのを確認します。カクレクマノミのような小型の魚の場合は5分くらいがよいでしょう。トリコディナやリムフォシスティスなどを治療する場合は寄生生物を指の爪などでやさしく剥がしてやります。あらかじめスレ傷用の淡水魚用魚病薬である「エルバージュ」を溶かしておく方法もあります。
ヒラムシは白っぽくなって魚の体表からはがれるのが分かりますが、写真の様な白いバケツでは確認しにくいかもしれません。
ベラやハナダイの仲間など、淡水浴をすると弱ってしまう魚もいます。そのような魚は飼育水槽の海水を半分、淡水を半分くらいにした「半海水浴」にするようにします。
カクレクマノミを淡水ごと計量カップなどに掬い、淡水を少しずつ捨て、チューブなどを使用し飼育水槽の水を少しずつカップに入れて水合わせを行います。早く水槽に戻したくなりますが、水質の急変は魚を弱らせてしまうことがありますので、時間をかけて行いたいものです。
その後カクレクマノミだけを飼育水槽に移します。水槽に戻してしばらくは様子を観察しましょう。場合によっては、魚を水槽に直接入れるのではなく、隔離ケースの中に入れて様子を見てから飼育水槽に戻すとよいこともあります。例えばスズメダイやヤッコの仲間のように、縄張りを持つ魚の場合や、強い魚がいる場合です。
淡水浴のまとめ
- 魚体につく寄生虫を落とすのに適した治療方法
- トリコディナ、リムフォシスティスなどの治療にも適する
- ハダムシ(ベネデニア)駆除にも最適
- 白点病にはあまり有効ではない
- 真水に入れればいいというわけではなく、温度とpHを合わせておくのも重要
- トリコディナやリムフォシスティスの治療にエルバージュを溶かすのもよい
- ハナダイやベラなどは淡水浴に弱いので注意
- 元の海水に戻すときは少しずつ時間をかけて水合わせ