2021.01.31 (公開 2018.11.01) 海水魚図鑑
イエロータイルフィッシュの飼育方法~餌や混泳の注意点
イエロータイルフィッシュはサンゴ礁に生息するアマダイの仲間です。サンゴアマダイ属の魚には紫色が鮮やかなもの、青色の繊細な色彩がきれいなものなどいろいろいますが、このイエロータイルフィッシュはサンゴアマダイ属の仲間ではもっとも飼育しやすいといえ、本種でサンゴアマダイの仲間の飼育を学ぶとよいでしょう。
標準和名 | なし |
通称 | イエロータイルフィッシュ |
学名 | Hoplolatilus luteus Allen and Kuiter, 1989 |
英名 | Yellow tilefishなど |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・キツネアマダイ科・サンゴアマダイ属 |
全長 | 15cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドMなど |
温度 | 22~25℃ |
水槽 | 90cm~ |
混泳 | 容易 |
サンゴ飼育 | 底の方にサンゴを置かないように |
そのほか | ハダムシに寄生されやすい。クリーナーシュリンプとの飼育がよい。 |
イエロータイルフィッシュってどんな魚?
イエロータイルフィッシュは、スズキ目キツネアマダイ科の魚です。キツネアマダイ科の魚はインド-中央太平洋(例外的に1種が東太平洋、1種が大西洋に分布)から2属16種類が知られていますが、食用としてよく知られているアマダイ科に近いとされ、研究者によってはアマダイ科をキツネアマダイ科の亜科とすることもあります。
東インド洋のアンダマン諸島から西太平洋のソロモン諸島にかけて生息しています。日本には分布していませんが、近縁のホタルビサンゴアマダイが八重山諸島近海に生息しています。ホタルビサンゴアマダイは灰色の体で頭部に黄色い斑紋があり色彩で区別できますが、体のシルエットはよく似ており、同種であるという説もとなえる人もいるほどです。
飼育に適した環境
水槽
60cm水槽でも飼育できますが、全長15cmと結構大きめに育ちますのでできれば90cm以上の水槽で飼育してあげるのがベストといえます。ほかの魚との混泳も考えているのであれば90cm水槽がよいでしょう。
水質とろ過システム
きれいな水を好みますのでしっかりとしたろ過槽が必要になります。外掛けろ過槽や外部ろ過槽は単用を避け、上部ろ過槽と外部ろ過槽を組み合わせるなどの工夫が必要になります。魚の数を減らせばベルリンシステムなどサンゴを飼育するためのシステムでの飼育も可能です。
水温
25℃でも飼育できますが、生息水深は20~50mとやや深めですので22℃前後と比較的低い水温で飼育するのもよいでしょう。もちろん水温が朝は22℃で、夜が25℃だったりするようではよくありません。水温は常に一定を保つようにしなければなりません。
ライブロック・サンゴ岩・砂
▲巣を作っているイエロータイルフィッシュ
イエロータイルフィッシュは小粒のサンゴ砂を動かし、ライブロックやサンゴ岩の下に巣をつくる習性があるようです。そのため砂を敷き、その上にライブロックやサンゴ岩を重ねてあげるとよいでしょう。底に敷く砂もパウダーサンドをメインに、巣をつくるのに必要な、やや粗めのサンゴ砂を少し入れてあげましょう。
フタ
ゆったりと水槽の底を遊泳するタイプの魚ですが驚くと飛び跳ねてしまうこともあります。飛び出し事故を防ぐためにきちんとフタをしなければなりません。
イエロータイルフィッシュに適した餌と添加剤
イエロータイルフィッシュは配合飼料もよく食べてくれます。口が大きいためメガバイトであればSサイズよりもそれなりに大きめの粒であるMサイズが向いているといえます。
どうしても配合飼料を食べないときはホワイトシュリンプなどのプランクトンフードや、魚やイカの切り身などを与えるとよいでしょう。ただし、これらの餌は与えすぎると水を汚すおそれがありますので注意が必要です。
添加剤はヨウ素やビタミン剤などの添加がよいでしょう。ビタミン剤は餌に添加することで栄養を強化することができます。ヨウ素は魚にとっても必要な成分ですので定期的な添加を心がけたいものです。
イエロータイルフィッシュの入手方法
▲イエロータイルフィッシュ購入時の注意点
イエロータイルフィッシュは主にインドネシアから入ってきます。従来はもう少し安く3000円前後で購入できたのですが、現在は若干高めで5000~7000円台となっています。また、サンゴアマダイの仲間はどの種も入荷量は決して多いとはいえませんので、イエロータイルフィッシュが飼育したいのであれば観賞魚店で見かけたら早いうちに購入することをおすすめします。
しかし、矛盾するようですが衝動買いは禁物です。やや深めの場所に生息する魚の場合、「減圧症」とよばれる症状が出ることがあります。できるだけ入荷してから時間がたった個体を購入するのが安全です。
選び方としては、痩せているもの、頭を下に向けるなど泳ぎ方がおかしいもの、白い点がついているもの、体表に赤いただれがあるもの、口に傷があるものなどは避けた方がよいでしょう。また、体表を岩などにやたらとこすりつけている個体も避けた方がよいでしょう。サンゴアマダイの仲間にはハダムシの類が寄生していることもあるため注意が必要です。水槽に導入するまえに淡水浴をすると予防に役立ちます。
イエロータイルフィッシュの混泳
他の魚との混泳
▲多くの魚と混泳ができる
スズメダイや性格のきついベラ(キュウセンの仲間、キツネベラの仲間など)には追いかけまわされて巣穴の中に引きこもってしまうこともあるので混泳は避けた方が無難と言えます。遊泳性ハゼ、カエルウオ、共生ハゼ、テンジクダイなどとの混泳は問題ないことが多いです。
威嚇を行い遊泳性ハゼなどにかみつくことがありますが、鋭い牙などをもっているわけではないようであまり問題はありません。逆にウツボなどには捕食されてしまうことおそれがあるので注意が必要です。クモウツボは本来はおとなしいのですが空腹時はほかの魚を襲ってしまうこともあります。写真のイエロータイルフィッシュもクモウツボに食べられてしまいました。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲LPSとの相性がよい。ただし砂の上にサンゴを置かないように
やや深場に生息するため浅場SPSよりは深場SPS、もしくはLPSなどとの飼育が適しているといえます。
サンゴには基本的に害は与えないのですが、クサビライシなど砂の上に置いてしまうと、イエロータイルフィッシュが砂を動かしてしまうことによりサンゴが生き埋めにされてしまう可能性があるためやめましょう。もっともサンゴを砂の上においてしまうとサンゴの下に硫化水素などが発生して死んでしまうなどの問題が発生してしまうことがあるので、おすすめできません。
甲殻類との飼育は注意が必要です。あまりにも小さいものはイエロータイルフィッシュの餌になってしまうこともあるため、おすすめできません。サンゴヤドカリやイソヨコバサミなどのヤドカリ類、フシウデサンゴモエビやペパーミントシュリンプなどのエビ類などは問題ありません。この仲間はハダムシなどが寄生していることもあるため、スカンクシュリンプやホワイトソックスなどのクリーナーを入れ、これらの寄生生物を取り除いてもらうのもよいでしょう。
あまりにも大きなエビ・カニ・ヤドカリなどの甲殻類はイエロータイルフィッシュを襲うことがあるため混泳は避けた方がよいでしょう。このほかイソギンチャクも魚を捕食することがあるため注意が必要です。
イエロータイルフィッシュの飼育まとめ
- 黄色い体が特徴のアマダイの仲間
- 水槽は90cm以上のものがよい
- 水温は22~25℃で安定していることが大事
- 砂はパウダー状をメインとし、粗いサンゴ砂も少し入れる
- 飛び跳ねるおそれあり。フタは確実に
- 餌はよく食べる。口が大きいため大きめの配合飼料がよい
- 減圧症に注意。泳ぎ方がおかしいものは購入しない
- 体表や鰭に傷、ただれなどあるものも購入を避ける
- ハダムシ対策のため淡水浴はしたほうがよい
- ほかの魚との混泳もできる。ただし肉食魚はだめ
- サンゴには無害。イソギンチャクには捕食されるおそれも
- クリーナーシュリンプを入れておくとよい