2021.01.31 (公開 2021.01.30) 水槽・器具
【海水魚・サンゴ別】おすすめろ過槽とその選び方
海水魚の水槽のろ過システムには、上部ろ過槽、外部ろ過槽、外掛けろ過槽、底面ろ過装置など様々な種類があります。
オールインワン水槽でよくある、水槽の背面がろ過装置になっているものや、オーバーフロー水槽のようにサンプ(水溜め)を用いてその中でろ過を行うようなものもあります(上写真)。
またろ過システムとは異なりますがろ過槽を設けないナチュラルシステムや、ゼオビットなど硝酸塩を極力出さないようにするサンゴ水槽用のシステムも。
このようにたくさんの種類があり、自分の飼育環境においてどれを選べばいいのか迷ってしまいますよね?ここでは飼育したい生物にあわせ、どのようなシステムがよいのか考察しました。なお、ろ過装置の種類については以下でおおまかに解説しています。
飼育したい魚やサンゴに適したろ過槽
ろ過槽は水槽の心臓になるものですが、魚やサンゴにとって、どのようなろ過槽が適しているかは若干異なります。
オーバーフロー水槽にして、サンプでろ過を行う方式では様々な生物の飼育を楽しむことができますが、価格や設置場所の問題から、すべてのマリンアクアリストがオーバーフロー水槽を手にすることはできません。
ここではオーバーフローではない普通の水槽で使用するろ過槽を紹介します。
小型水槽で小魚とサンゴ:外掛けろ過槽と小型スキマー
小型水槽で海水魚!といえば外掛けろ過槽を使うアクアリストが多いようです。たしかに観賞魚店で販売されている海水魚飼育セットでも小型外部ろ過槽か、外掛けろ過槽が付属しています。しかし、ここに落とし穴があります。
外掛けろ過槽は小さくて使用しやすいのですが、外掛けろ過槽だけではろ過能力があまり高くないのです。そのため「他の器具」と組み合わせることをおすすめします。
小型の外部ろ過槽の併用も考えられますが、おすすめは小型のプロテインスキマーを組み合わせることです。
最近はゼンスイ「QQ1」やカミハタ「海道達磨」など小型水槽のフチに取り付けられるサイズのベンチュリー式プロテインスキマーが増えてきました。この装置を使うと小型水槽での魚の飼育がずっと楽になります。このほか、やはりカミハタから出ている「海道河童」のような、外掛けろ過槽とプロテインスキマーがセットされているものもあります。
もちろん、どんなにたくさんのろ過やスキマーをつけてももともとの水量が少ないですので、魚の入れすぎは禁物です。
魚のみを飼育:上部ろ過槽と外部ろ過槽の併用
サンゴを飼育しない、魚のみの飼育におすすめのろ過槽は上部ろ過槽です。
魚をメインに飼育している水槽で外部ろ過槽を使用するアクアリストも多いのですが、魚を中心に飼育するのであれば、外部ろ過槽だけで飼育する、というのは私はおすすめしません。これは外部ろ過槽は密閉式のろ過槽で酸欠を起こしやすかったり、「パワーフィルター」と呼ばれている割にはパワーがイマイチだったりするためです。
ただ上部ろ過槽を使うときは、外部ろ過槽も補助に使用するとよいでしょう。外部ろ過槽があればクーラーや殺菌灯の接続も楽になります。
ろ材はろ過槽を購入したら付属してくることもありますが、淡水魚用のものは海水魚に使用しませんので外します。活性炭も海水魚飼育にはおすすめしません(HLLEの発症のもとになるという説も)。生物ろ過用のろ材をメインにして、ウールマットなどの物理ろ過用のろ材は上部ろ過槽に使用します。ウールマットは1週間に1回ほど水道水で洗い流し、汚れが落ちないときは交換しましょう。
ウツボ・アナゴなど:外部ろ過槽もしくは上部ろ過槽
ウツボはユニークな姿をしており、よく人になれるので飼育していて楽しい魚です。アナゴの仲間のチンアナゴも水族館の人気者で、飼育は簡単というわけではないのですが飼育しているマリンアクアリストも多いです。
しかしウツボやアナゴ、ウミヘビを含むウナギ目の魚はその多くが「脱走の名人」で、水槽上の小さな隙間から脱走したりしてアクアリストを驚かせることがあります。
そのため水槽の上部に隙間ができやすい外掛けろ過槽を使用することはおすすめしません。しっかりとフタができる上部ろ過槽や、大型の外部ろ過槽などが適しています。外部ろ過槽を使用するときは酸欠にならないようにろ過槽から水が出る口を水面よりも上におくなどの工夫が必要になります。
大きなウツボは何かに驚き飛び出すときにフタを除けてしまうことがありますので、フタに重石も乗せたいところですが、薄いガラスの蓋だと割れてしまうことがあるので注意が必要です。
ウツボやアナゴ、ウミヘビの仲間は冷凍したイカやタコの足などを餌として与えることが多く、どうしても水を汚しやすいです。そのため他の魚よりはこまめに水替えをしたほうがよいでしょう。とくに外部ろ過槽はろ過能力が追い付かなくなりやすいので、上部ろ過槽と併用するか、かなり大きめのものを使用するようにします。
魚とサンゴ:外部ろ過槽と上部ろ過槽もしくはスキマー
サンゴ水槽には従来から外部ろ過槽がよいとされました。というのも、上部ろ過槽は水槽の上に置くため、照明器具が起きにくくなるという欠点があったからです。ですから水槽の上がすっきりする外部ろ過槽がサンゴに使われることが多かったのです。
しかし現在、水槽用の照明にスポット式LEDが多く採用されており、上部ろ過槽でもサンゴが飼いやすくなりました。上部ろ過槽はろ過能力が高く、サンゴ飼育にもおすすめです。
この上部ろ過槽に外部ろ過槽を組み合わせてろ過能力を高めたり、プロテインスキマーを組み合わせればさらに飼いやすくなるでしょう。魚を多く入れたいのであれば外部ろ過槽やプロテインスキマーは適合水量よりも大きめのものを使用する必要があります。
ただし、ミドリイシやハナヤサイサンゴなどのように硝酸塩の蓄積に弱いサンゴの飼育はおすすめできません。これらのサンゴはベルリンシステムやゼオビットシステムなど硝酸塩を極力蓄積しないシステムでの飼育が理想です。
クマノミとイソギンチャク:底面ろ過装置と小型スキマー
イソギンチャクはサンゴと異なり自力で移動する生き物です。この性質が大きな災いをもたらすことがあります。魚を食べたりサンゴを毒で弱らせたり、オーバーフローの管やろ過槽の給水口につまって水槽の水をあふれさせたり、水の循環をストップさせるなど壊滅的なレベルの問題をおこすこともあります。
イソギンチャクを飼育するのには外部ろ過槽、外掛けろ過槽、上部ろ過槽での飼育も可能ですが、底面ろ過装置を使用するのもよいでしょう。底面ろ過装置は、その名の通り水槽の底面に設置し、その上に底砂を敷いてろ過を行うものです。使用する上でのメリットとしては、上部ろ過槽や外部ろ過槽のような吸い込み口がなくイソギンチャクが吸い込まれるようなことがないこと、水槽の底面をフィルターにできるのでろ過能力が高いことがあげられます。
デメリットとしてはこまめなメンテナンスが必要ということがあげられます。底面ろ過装置のメンテナンスとしては、砂の中の清掃、通称「毒抜き」というものをしなければいけません。これが面倒ということで最近は底面ろ過装置はやや敬遠されがちです。底面ろ過装置はサンゴにはあまり向いていませんが、そもそも強い毒性を持ち、しかも自力で動いてサンゴにダメージを与えることがあるイソギンチャクはサンゴとは飼育しにくいものです。
イソギンチャクは粘液や残り餌をだすこともありますので、水質悪化を招きやすいこれらを水槽から取り除くものも欲しいところです。ベンチュリー式のプロテインスキマーを併用して使用するとよいでしょう。
ミドリイシ:ろ過装置を使用しない
ミドリイシの仲間を飼育するのであれば、ろ過装置を使用しないシステムが飼いやすいでしょう。上部ろ過槽や外部ろ過槽などを用いるとどうしても生物ろ過により硝酸塩が蓄積されてしまいますが、ミドリイシは硝酸塩の蓄積に弱いのです。
一般的にミドリイシを飼育するのに適しているのは「ベルリンシステム」などのようにプロテインスキマーを使用して餌や排せつ物などを生物ろ過がはじまる前に水槽から取り除き、硝酸塩の蓄積を防ぐシステムです。
このほかコケや病気対策のために紫外線殺菌灯をつけたり、水温25℃を維持するためにクーラーやヒーターをつけたりするほか、サンゴに適した水流をつくるために水流ポンプを複数つけてコントローラーで水流を操作したり、高KHを維持するためにカルシウムリアクターをつけたりするなど、ミドリイシ飼育はどうしてもほかのシステムよりコストがかかってしまいます。またこれらの器具を配置することを考えるとオーバーフロー水槽が有利といえます。
ベテランのアクアリストであればろ過槽をもったシステムでミドリイシを育成することもできますが、初めてミドリイシを飼育するのであればろ過槽を用いないベルリンシステムでの飼育が楽でしょう。もっとも、ミドリイシの仲間を上手く飼育するのには高価な器具やあるていどのサンゴ飼育の経験が必要ですので、ミドリイシを扱っている観賞魚店やベテランアクアリストの方から指導を受けるようにしましょう。