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2020.09.26 (公開 2018.07.29) 水槽・器具

外掛けろ過槽(外掛けフィルター)の使用方法~メリットとデメリット

外掛けろ過槽は、水槽のフチにかけるだけという手軽さから人気のろ過槽です。

しかし、ろ過能力がそれほど高くないというデメリットがあります。初心者向けのろ過装置としてこの外掛けろ過槽が紹介されることも多いのですが、はっきりいって外掛けろ過槽だけで海水魚を飼育するのは初心者にはおすすめしません

できれば外部ろ過槽など、ほかのろ過槽やプロテインスキマーなどと併用して使いたいものです。

外掛けろ過槽って何?

テトラのワンタッチフィルターを使って水槽を立ち上げた例

テトラのワンタッチフィルターを使って水槽を立ち上げた例

テトラ(スペクトラムブランズジャパン)から出ている商品名「ワンタッチフィルター」と呼ばれていることからもわかるように水槽の縁につけるだけ、という手軽さとコンパクトさから小型水槽用のろ過槽として人気です。

淡水の熱帯魚を飼育するのであればこれだけで足りることも多いです。一方、海水魚飼育初心者向けの「スターターセット」などにこの外掛けろ過槽が入っていることがありますが、コンパクトなろ過槽であるためろ材を入れるスペースが少なく、外掛けろ過槽だけで海水魚飼育をスタートするのは正直おすすめできません。

テトラ (Tetra) オートワンタッチフィルター AT-60

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外掛けろ過槽のメリット

メンテナンスが簡単

ろ過槽のフタを開けるだけで簡単にろ材の交換やチェックを行うことができます。これは上部ろ過槽と同様のメリットです。外部ろ過槽はろ材の様子をチェックするのにいちいち水を止めてからフタを開けなければならず、メンテナンスが面倒くさいといえます。

酸欠になりにくい

水がろ過槽の内部で動いており、ろ材につく好気性バクテリアにも酸素がいきわたりやすいという点も大きなメリットです。外部ろ過槽と比べて若干うるさいのですが、ばしゃばしゃ、という音がないということは酸欠になるリスクもあるということですので、静音のものが一概によいとはいいきれません。

水槽の上部が解放される

水槽の縁に引掛けるだけで使用できるため、上部ろ過槽と違い水槽の上がすっきりします。これにより、多くの照明器具を置くことができるようになります。このメリットは外部ろ過槽と同様です。

外掛けろ過槽のデメリット

ろ過能力は低い

手軽でコンパクトですが、同時にろ過槽は小さいためろ材を入れるスペースはあまりなく、ろ過能力は低いといえます。同じものをいくつか使用してももともとのサイズが小さいためろ過能力の向上にはつながりにくいです。そのためろ過装置を増強させるには外掛けろ過槽を複数個使うよりも、外部ろ過槽などほかのろ過槽と併用して使うことをおすすめします。

小型水槽向け

基本的に外掛けろ過槽は60cm以下の水槽で使用するものがほとんどです。これより大きな水槽では魚の種類や数にもよりますが、ろ過能力が追い付かなかったり、水槽に飛び出し防止のフランジがついているなどして物理的に外掛けろ過槽を取り付けられない場合があります。小型水槽でも大きな枠がついている場合外掛けろ過槽の仕様によっては取り付けられない場合があります。

90cm以上の大型水槽ではオーバーフロー水槽、上部ろ過槽、底面ろ過装置が適しています。外部ろ過槽でもうまく飼育することはできますが、酸欠には注意する必要があります。

水漏れ注意

マスターパルの外掛けフィルター。は水中ポンプを採用。水漏れのリスクが少ない

マスターパルは水中ポンプを採用。水漏れのリスクが少ない

外掛けろ過槽の水漏れの原因はモーター部にあります。ほとんどの機種ではモーター部がろ過槽の外部に位置するようにつくられており、インペラーのチェックなどのメンテナンスを行った際にこの部分の取り付けが悪いと水漏れのおそれがあります。このほかOリングも消耗すると水漏れのおそれがありますので交換するようにしましょう。

中にはマルカン・ニッソー事業部の「マスターパル」のように、外部モーターの代わりに水中ポンプが付属しているものもあります。このような商品だとモーターが外部に露出しないので水漏れがしにくいというメリットがあります。デメリットとしては水中ポンプがろ過槽の中にあるということで、ポンプから発せられる熱により水温が上がりやすくなることがあげられます。

外掛けろ過槽をうまく使用するには

ほかのろ過槽と併用

外部ろ過槽(パワーフィルター)

外部ろ過槽との併用により欠点が解消される

おすすめの方法です。

45cm以下の小型水槽で外掛けろ過槽にほかのろ過槽を併用するのであれば外部ろ過槽(パワーフィルター)との併用をおすすめします。

小さくパワーが足りないがメンテナンスが容易で、ろ材が酸素に触れやすい外掛けろ過槽と、外掛けろ過槽よりはろ過能力が高く、ろ材を多く入れられるが酸欠を起こしやすい外部ろ過槽とを併用することにより、互いの弱点を打ち消します。また、外部ろ過槽にクーラーなどを取り付けることもできます。

飼育する生物の種類によっては底面ろ過装置を組み合わせてもよいでしょう。上部ろ過槽とも組み合わせることはできますが水槽の上部が邪魔になりがちです。

また複数のろ過槽を使用すると、片方のろ過槽がろ材の詰まり、モーター部の故障など何らかの理由で停止しても、もう片方のろ過槽が動いていれば、魚やサンゴなどが全滅するのを免れることができます。

プロテインスキマーを併用

マンジュウイシモチ小型水槽での飼育例。水槽はアクアシステムのニューアール

スキマー付きの外掛けろ過槽「海道河童」で海水魚を飼育している例

外掛けろ過槽に小型のプロテインスキマーを併用する方法もあります。小型水槽で「プロテインスキマー」といえば「マメスキマー」や「オルカ ミニット」といった、エアリフト式のプロテインスキマーが主流と思われがちですが、ゼンスイ「QQ1」カミハタ「海道達磨」のようなベンチュリー式の外掛けプロテインスキマーもあります。

プロテインスキマーを使用すれば魚の排せつ物や残り餌、デトリタスなどを水槽から排除し、ろ過槽の負担を軽減してくれます。小型水槽で魚とLPSやソフトコーラルを飼育するのであればベンチュリー式のものが使いやすいでしょう。エアリフト式のスキマーはどうしてもパワー不足に陥りやすいためです。

なお、エアリフト式の小型プロテインスキマーと外掛けろ過槽が一体となっている「海道河童」という商品もあります。

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魚の数を抑える

外掛けフィルターで肉食魚キリンミノの幼魚を単独飼育

▲肉食魚キリンミノの幼魚を単独飼育

外掛けろ過槽はろ過能力がそれほど高くありません。そのため外掛けろ過槽だけで魚をうまく飼育したいのであれば、餌をよく捕食し水槽内に排せつをするなどして水を汚しやすい魚の数を抑えるのも大事です。外掛けろ過槽だけを使用して飼育をするのであれば、小さな魚数匹程度にとどめておきましょう。

そもそも外掛けろ過槽自体が小型水槽向きなので、あまり多くの魚を水槽に詰め込むのはよくありません。ろ過槽のパフォーマンス以前の問題として、小型水槽では遊泳のためのスペースが制限され、ストレスになったり、あるいは喧嘩をして魚が死んでしまうこともあります。

外掛けろ過槽のメンテナンス

外掛けろ過槽はこまめなメンテナンスが必要ですが、定期的にやるべきことはろ過カートリッジの交換とストレーナーにかぶせるスポンジの洗浄程度ですので、外部ろ過槽とことなり容易にメンテナンスができます。

ろ過カートリッジの交換

外掛けフィルター専用のろ過カートリッジ

▲専用のろ過カートリッジを使用する

外掛けろ過槽のろ材となるろ過カートリッジは定期的に交換することをメーカーは推奨しています。1~2か月ごとに1回交換すればよいでしょう。もちろん、各機種専用のろ過カートリッジを使用するようにします。いくつかのサイズがある場合にはそのサイズにあったカートリッジを購入しなければなりません。

モーター部のチェック

外掛けろ過槽を動かすために必要なモーター部のインペラーはたまに掃除してあげるようにしましょう。

また、メーカーによって異なりますが大体1~2年位で交換することが推奨されます。このインペラーが動かなくなるとモーターも動かなくなり、ろ過ができずに魚が死んでしまうおそれがありますのできちんと交換することが大事です。このほかOリングなども定期的な交換を行う必要があります。

ストレーナースポンジの掃除

外掛けフィルターのストレーナースポンジ

ストレーナースポンジは定期的に洗う

ストレーナースポンジは外掛けろ過槽の本体にに大きなゴミが入るのを防ぐもので、ある意味物理ろ過の一種といえます。

これにも残り餌などのゴミが詰まってしまうことがありますので、たまに洗う必要があります。このスポンジを洗う水は水道水でも問題ありません。灰色っぽいデトリタス(プランクトンや微生物の死骸や排せつ物などの有機物)がたまってしまう前に洗浄しましょう。

外掛けろ過槽におすすめのろ材

外掛けろ過槽には専用のろ材が付属されていることが多いです。ほとんどのものがカートリッジ式で中に活性炭が入っていたりするものもあります。しかしそれだけでは足りず、隙間にサンゴ岩やリングろ材などを入れて生物ろ過を行わせるアクアリストもいます。ただしその場合はろ材がモーターのに入らないように注意しなければなりません。モーターにサンゴ岩などが入ってしまうと故障して動かなくなってしまうおそれがあるからです。できれば外部ろ過槽と併用し、外部ろ過槽で生物ろ過を、外掛けろ過槽で物理ろ過を行うのがベストといえます。

カミハタから販売されている「流動河童」という商品は、通常のカートリッジを用いたろ過のほか、流動ろ過のスペースがついている外掛けろ過槽です。流動ろ過専用のろ材であるバイオゲルが高いろ過能力を発揮するまで時間はかかりますが、耐久性が高く、バイオゲルに関しては一旦ろ過能力が発揮されれば長期間メンテナンスフリーとのことです。

ほかのろ過槽との比較

ろ過槽の名称 値段 ろ過能力 メリット デメリット

外掛けろ過槽

安価 低い 手軽で安価、酸素もろ材にいきわたりやすい ・小型でろ材をたくさん入れられない
・モーター部から水がもれるおそれも

外部ろ過槽

高価 外掛けろ過槽より高い ・ほかのろ過槽との併用が容易
・クーラーや殺菌灯などをつなげられる
・密閉式のため酸欠になりやすい
・メンテナンスが若干面倒くさい

上部ろ過槽

海水魚用のものは高価 高い ・ろ材を多く入れられ酸欠にもなりにくい
・メンテナンスが楽
・照明を置きにくい
・小型水槽用のものがない

底面ろ過装置

安価 高い。ただし定期的な「毒抜き」が重要 ・吸い込み口がない
・見た目がすっきりする
・サンゴや砂を掘る魚は入れられない
・メンテナンスが面倒

オーバーフロー

非常に高価 ほかのろ過槽と比べて圧倒的なろ過能力 ・ろ材を大量に入れられる
・見た目がスッキリする
・音がうるさく対策が必要な場合がある
・一度設置したら動かすのは難しい

外掛けろ過槽まとめ

  • 小型水槽でのメインとなるフィルター
  • 取りつけ容易で手軽だがろ過能力は低め
  • 外部ろ過槽などと組み合わせて使用したい
  • 開放式で酸欠になりにくくメンテナンスもしやすい
  • モーター部の取り付けが悪いと水漏れのおそれも
  • 大型水槽や枠がついた水槽には取り付けられないことも
  • プロテインスキマーと併用するのもおすすめ
  • 小型水槽では魚の数を抑えることも重要
  • ろ過カートリッジは専用のものを。サイズにも注意
  • インペラーはたまに掃除をする
  • ストレーナースポンジもよく洗浄する
  • サンゴ岩などをろ材に使用するときはモーターに詰まらないよう注意
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