2019.11.08 (公開 2018.03.27) 水槽・器具
海水魚・サンゴ水槽の引越し方法~業者に頼まず自分で新居へ安全に移送するには
海水魚・サンゴ・水槽の引越しは非常に重労働であり、自分ひとりで行うことは困難です。また、移送前・移送中・移送後と魚やサンゴにとって目まぐるしく環境が変化することになるため非常にストレス・負荷がかかります。
私自身、家庭が転勤族でありこれまで石川県→福岡県→愛媛県→愛知県→茨城県と、幾度と水槽の引越しを経験しています。また知人の引越しをサポートした経験もあります。ここではその経験をたよりに、あなたが飼育している魚やサンゴと新居での新生活をはじめるにはどのようなことが必要なのか、具体的な引越し手順についてまとめています。
海水魚・サンゴを業者は運んでくれない
残念ながら引越し業者の方は、一部の業者を除き、犬猫、鳥類、爬虫類などの愛玩動物はもちろん、魚やサンゴも運んでくれませんので、海水魚の引越しは、原則自分で行う必要があります。
引越し業者は「モノ」を運ぶスペシャリストですが、「生き物」を運ぶことについては専門外であり、仮に移送中死亡させてしまった場合保証できないからです。
犬や猫、ハムスターなどの哺乳類、鳥類、爬虫類や昆虫などと異なり、魚類は原則水がなければ生きていけません。ですから、ケージごと移動すれば簡単なこれらの動物とは異なり手間がかかってしまいます。もし水を張った水槽ごと移動しようものならフタの隙間から水がはねたり、ライブロックが傾いて水槽にひびが入ったりするおそれもあります。そして海水というのは金属を錆びさせるということもあり、扱うには厄介なものなのです。
また引越し業者側も海水魚やサンゴの扱い方についても完全に素人であるため、業者に任せることは難しいといえます。
水槽の引越しに必要なもの
水槽・海水魚・サンゴの引越しに最低限必要なものは以下になります。
- 手網
- バケツ(複数)
- タライ
- ヒーター
- 水温計
- タオル(複数)
- エアポンプ・乾電池
- 投げ込み式ろ過槽とエアチューブ
- ホース
- ポリ袋(大きめ)
- ポリタンク
- 移送用の自動車又はレンタカー
一つづつ詳細や、具体的に準備すべき商品について解説していきます。
手網
手網といっても色々な種類がありますが、水槽の魚を掬うためにはあまり大きい網は役に立たないこともあります。小さな熱帯魚用の網が適していますが、逆にあまり小さくても魚を掬いにくいので注意します。異なるサイズのものを二つくらい用意しておくとよいでしょう。
バケツ(複数)
おすすめのバケツは観賞魚店でなく釣り具店でよく販売される白い四角形の「コマセバケツ」です。用量も小型のものから15リットル、20リットルと大容量のものが販売されており、積み重ねもできるので使い勝手がよいです。ただし、保管するときに場所を取るのがデメリットです。
▲フタの上にチューブを通す穴をあけるとよい
引越し準備のほか、海水作り、メンテナンス、病魚の治療、他の魚をいじめる魚の隔離、本水槽に導入する前のサンゴ薬浴や淡水浴、もちろん磯採集などさまざまな使い方ができるので是非購入することをおすすめします。
タライ
バケツよりも大きな入れ物で、たくさんの生物を飼育しているのであれば一時的に魚やサンゴなどを入れるのに最適です。また輸送中、器具などをまとめ入れしておくなど、色々使い道があります。ただし、フタがないものが多く、魚が飛び出してしまうおそれもありますし、運搬には適しません。また、コマセバケツ以上に保管時に場所をとるのもデメリットといえます。
ヒーター
とくに晩秋~春の引越しには必要なものです。引越しの最中バケツの中で寒くて凍えてしまうことのないように、ストックしているバケツの水をヒーターで温めるようにします。
長距離の引越しに自動車を使用する場合、車中では水槽用のヒーターではなく、カーエアコンを使用して水を温めるようにします。
水温計
▲一般的なガラス製の水温計。取扱いに注意したい
▲サービスエリアなどで休憩中に水温をチェック
晩秋~春の引越しの途中、バケツの水が冷えていないか水温計でチェックするようにします。長距離引越しに伴う輸送中は車内でも水温や魚の様子をサービスエリアやパーキングエリア、道の駅などでの休憩時にチェックするようにするようにします。
タオル
引越しに限らず水槽のメンテナンスなどを行うとき、水がはねたり、水をこぼしてしまうことはたまにあります。そのようなときにタオルが役立ちます。また海水というのは乾燥すると塩になってしまい厄介ですので、引越しが一通り終わったあとで軽く水拭きをするとよいでしょう。
エアポンプ・乾電池
▲単1乾電池で動く「ニッソー Chikara α B-1」
▲エアチューブとエアストーンもついている。電池を入れればすぐに使える。
エアポンプは乾電池で動くものを少なくとも3つくらいは用意しておきましょう。バケツの数だけ用意しておくのが理想といえます。もちろん、ポンプを動かすための乾電池も必要になります。写真の「Chikara α B-1」であれば、単1乾電池がふたつ必要ですが、他に単3乾電池で動くものなどあります。必要な電池を確認しましょう。
投げ込み式ろ過槽とエアチューブ
▲投げ込み式ろ過槽は海水魚の輸送に最適。写真は水作エイト。
先ほど紹介したニッソー「Chikara α B-1」など、電池式のエアポンプを購入すると、エアチューブと、泡を発生させ水中に酸素をおくるエアストーンがついてくるものがあります。エアチューブはそのまま使うことができますが、エアストーンよりは投げ込み式ろ過装置を使ったほうがよいでしょう。
ジェックス「ロカボーイ」、水作「エイト」などの商品が販売されています。パワーが明らかに足りないため、これらのろ過装置に大型海水魚水槽のろ過を担うのは不可能ですが、引越しの準備、大規模メンテナンスのように魚やサンゴをバケツに一時的に避難させるときのろ過としては高いパフォーマンスを見せてくれます。
また磯で採集した魚を持ち帰るときの輸送にも役に立ちます。ただし航空機ではろ過槽を動かすために必要なエアポンプが原則使用不可であるため、使用できるのは車・電車・船舶での移動時に限られます。
ホース
水を水槽から吸い出すときに使用します。いつもの水替えに使用しているホースを使用して問題ありません。
ポリ袋
90リットルのポリ袋。60×30×33(cm)の水槽をつつむこともできます。できるだけ大きめのポリ袋を用意しておくのが望ましいです。
魚や底砂、ライブロックなどを入れたバケツや水槽などを包んで、自動車で運搬する際に水がはねて、濡れるのを防ぐようにします。またサンゴを運ぶときは小型のポリ袋を使用し、一つずつ運ぶようにします。
ポリタンク
海水やRO水などの保管に役立ちます。写真は水が20リットル入るポリタンク。引越しの際、水を抜くときにポリタンクなどに保存しておけば新居で海水を作る手間が省けますが、微生物が死んで腐敗するおそれもありますので自動車で運搬中はエアコンが効いているところに保管するとよいでしょう。ただし、砂を巻き上げてしまった後の海水はやめた方がよいかもしれません。
なお、ポリタンクは新品のものを使用しましょう。灯油などを入れるなどしたものを海水魚用の海水を入れるのに使ってはいけません。
自動車
自動車がなければ、水槽の遠距離引越しをすることは不可能といえます。もし自動車がないのであれば、レンタカーを借りる、あるいは自動車を有している人を頼るしか方法がありません。90cmほどの大型水槽であれば、SUVやワゴン、バンなどを借りる必要があります。
もちろん3月や4月になっても雪が残るような地域への引越しでは冬用タイヤやチェーンなどを装着するなどの備えが必要になることがあります。
商用電源周波数(ヘルツ)のチェック
海水魚用品には、一般的な家電とことなりヘルツフリーではないものも多く販売されています。あらかじめ引越し先の商用電源周波数を調べておかないと、「さあ、引越し先で新しい海水魚ライフをスタートさせよう!」というときに器具が動かない、異音がする、というトラブルが発生するおそれもあります。基本的には「東日本 50Hz・西日本 60Hz」と覚えておけばよいでしょう。
ただし静岡県、長野県、新潟県のように、同じ県や市町村であっても50Hzと60Hzの地区があります。これは地区によって50Hzか、60Hzかという意味であり、50Hzでも60Hzでも使えるというわけではありません。あらかじめ確認しておく必要があります。
現在住んでいる場所と引越し先で周波数が異なっているのであれば、すぐに水槽で使っている電気製品のチェックを行いたいものです。とくに照明(蛍光灯やメタルハライドランプ)やポンプ(マキシジェットやコラリアナノなどの水中ポンプ)はヘルツフリーではないものが多いので、新たに買いなおすことになります。上部ろ過装置に付属するポンプや外部ろ過装置でも古いエーハイムの外部ろ過槽などはヘルツフリーでないものもありますので注意が必要です。
例1:ハイドール製の水中ポンプ「ピコ エボマグ」。60Hz専用であることを示す。
例2:ジェックス製エアポンプの表記。50/60Hz、どちらの周波数でも使用可能。
引越し先Hzの器具の購入方法
(50Hz地区である)東京に住んでいて、(60Hz地区である)大阪に引越したい。60Hz用の器具を購入したいけどどうすれば…
という場合、通販で引越し先Hz対応の器具を購入するとよいでしょう。
購入するタイミングは、遅くとも引越しの1週間前です。特に水中ポンプや外部式ろ過槽などは水槽内の海水の循環に必要で、魚やサンゴの命にかかわるものなので、早めに購入しておくことが重要です。
器具を通信販売で購入する際の注意点も、サンゴや海水魚を購入するときと同じですが、魚とは異なり地域によって動いたり動かなかったりするものなので、電話で問い合わせるのが一番確実といえます。
DCポンプを購入する
最近は商用周波数にとらわれないヘルツフリーのDCポンプという選択肢もあります。すでに水流ポンプではレッドシーの「ファンタスティックウェーブ」など安価なものもでてきました。引越しが多いというのであればこのようなポンプを購入すれば50Hz、60Hzを問わず使用できるというわけです。ただしDCポンプはACポンプと異なり流量調節などが容易にできる反面、電子部品を多く使っているようで耐久性はACポンプと比べてまだまだ劣るようです。詳しくはこちらをご覧ください。
海水魚の引越し~近距離引越しの例
まず、近距離(同県・同市区町村・100km以内)の引越し事例をもとに、水槽の移送方法を解説していきます。
①魚やサンゴを移動する
水槽は水やサンゴ、魚を入れたまま運ぶことはできません。重いのはもちろんなのですが、ライブロックやサンゴ岩が動いてしまい、魚が押し潰され死んでしまったり、水槽が割れるおそれがあるからです。
まず海水、ライブロックやサンゴを水槽からバケツなどに移し、魚を網やプラスチック容器でやさしく掬ってあげます。
魚を掬いにくいときは水槽の水を3分の1くらい抜いてから魚を掬うようにするとよいでしょう。抜いた水は捨てずに、容器などに入れてとっておきましょう。その後魚やサンゴ、ろ材などをバケツの中に活かしてキープするときに必要になることがあるからです。
魚やサンゴ、ライブロック、サンゴ岩、砂などは別にバケツなどで隔離しておく必要があります。そうしないと付着しているバクテリアが死んでしまい、水槽が立ち上がらなくなるおそれもあります。
また写真のようにエアポンプやエアストンなどを使って酸素を供給したり、ヒーターなどを使用してできるだけ温度を一定に保つように注意します。
魚や無脊椎動物を移送する
魚は概ね一つの大きなバケツに入れておけば問題ありませんが、他の魚と同じバケツに入れて運びたくない魚もいます。例えば、肉食性の魚、気が強い魚、毒を出すおそれがある魚などです。このほか好む温度があまりにも違う魚、淡水に生息する魚なども、同じバケツで運ぶことはできません。
気が強い魚・肉食性の魚
▲クマノミなどスズメダイの仲間は他の魚をいじめることも
スズメダイやメギスの仲間は非常に気が強く、狭いバケツの中で混泳相手をぼろぼろにしてしまうこともあります。
隠れ家としてライブロックやサンゴ岩を入れると、移送中にこれらが動いてしまい魚をつぶしてしまうおそれもあります。捕食性の魚、気が強めの魚がいて心配というのであれば、隔離ケースのひとつひとつに魚を入れて運ぶ方法もあります。
毒を出すおそれがある魚
▲フグやハコフグなど、毒を出すおそれがある魚は他の魚とは別のバケツで運ぶ
▲可愛いキイロサンゴハゼも毒を出すことがある
注意しなければいけないのがフグ、ハコフグ、ヌノサラシ、コバンハゼ、ウバウオ、ミナミウシノシタなどの仲間です。これらの魚は皮膚から毒を出すことがあり、同居の魚を殺してしまうこともあります。またハコフグも、自分の毒で死んでしまうことがあります。これらの魚を運ぶときは隔離ケースでなく、別のバケツで運ぶようにします。
ナマコ
▲ナマコは死ぬと毒を出す
ナマコは底砂の浄化に役に立つ、として入れられることも多いのですが、死亡したときに魚に致命的な毒となるサポニンを放出してしまうことがあります。
やはりハコフグなどと同様に別のバケツなどで運んだほうがよいでしょう。またうっかり岩を崩してナマコがつぶれてしまったときもこの毒を出す恐れがありますので、ライブロックやサンゴ岩と一緒に運ばないようにします。
エビ・カニ
▲エビやカニを上手く運ぶのには掴まるものが必要
エビやカニなどの甲殻類の仲間を運ぶときは、これらの生物が掴まることができるように海藻や綿などを入れてあげるようにします。観賞魚店でこれらの生き物を購入するときも、掴まることができるように、綿や海藻などを入れてくれているはずです。
サンゴの移送方法
▲写真は悪い例。サンゴ同士が接触してしまいやすい
サンゴは刺胞毒を有しており、サンゴ同士が接触すると毒性の強いサンゴは毒性の弱いサンゴを溶かしてしまうおそれがあります。引越しの時にサンゴを運搬するときは、購入したときのように面倒でもひとつひとつ厚めのポリ袋に酸素と海水を吹き込み、それにサンゴを一つずつ入れて運搬することをおすすめします。
観賞魚店でもやってくれることがありますので、相談するのもよいでしょう。
②電源を抜く
水を抜く前に、ポンプやヒーター、サーモスタット、クーラー、プロテインスキマーなどの電源を抜きます。
特にヒーターは水からあげて空気中に触れると火災をおこすおそれがあり危険です。今では火災を防ぐための装置がついているヒーターもありますが、そのようなヒーターでも空気中に触れるとその後使えなくなり、魚が死んでしまうおそれもあります。
なお、ヒーターは水槽から出す、もしくは水を抜く直前に電源を抜くのではなく、必ず15分くらい前に電源を抜いておくようにします。万が一に備えて予備のヒーターやサーモスタットを準備しておくのもよいでしょう。照明はつけておいたままでも問題ありません。
③ろ材を抜いて保管する
ろ材を抜きます。ろ材は海水を張ったバケツに入れて保管しますが、魚などの生物が入っているバケツとは別のバケツに入れておきます。同じバケツにいれておくと、ろ材の汚れが水槽に舞ってしまい、魚が病気になるおそれもあります。やはりエアレーションして空気をおくるのが望ましいでしょう。
④水を抜く
▲ろ過槽の中の水を抜く
ポンプとバケツを使って水槽とろ過槽、サンプの海水を全部抜いてしまいます。海水がはねてしまうことがありますので、はねた海水はタオルで拭きとるようにします。
抜いた水槽の水は捨ててしまってもよいのですが、バケツなど、ほかの容器に入れておくと水を大量にこぼしてしまった、などのエマージェンシーにも対応できます。ただしろ過槽やサンプなどの水に魚を泳がせるのはやめた方がよいでしょう。ろ過槽などはゴミのたまり場ですので、魚が病気になってしまうおそれがあるからです。
砂は魚とは別のバケツで運びます。砂中もゴミのたまり場になりやすく、舞い上がってしまうと魚が病気になるおそれがあるからです。
⑤水槽を運ぶ
魚やサンゴは運んでもらえませんが、水槽や水槽台、照明などの器具類は引越し業者に運んでもらうことができます。
ガラス製の水槽ですので運搬も慎重になります。頻繁に引越しをしなければいけない場合は軽いアクリル製の水槽が有利なこともあります。
魚やサンゴ、ライブロック、底砂、ろ材、海水などの「水もの」は自分で運んでいくしかありません。自動車がないと、このあたりのものを持っていくのは難しいかもしれません。
ハゼやカエルウオなどは飛び出してしまいやすいのでフタのついているバケツで運ぶようにしたいものです。
⑥環境を再度セット
引越し先ではできるだけ早く水槽のセットを行う必要があります。まずは人工海水を作成し、十分に溶けるまでの間に底砂を敷き、海水を張り、ろ材をセットしておきます。最近インターネットなどで海水が販売されていたり、海水をつくるための純水も販売していたりすることがありますので、新しい家の水道をまだ使いたくない…という人は、そのような水を利用するのもよいでしょう。
砂やサンゴ岩など、ろ材は海水で軽く洗うようにします。真水で洗うと付着しているバクテリアが死んでしまうのでやめましょう。洗うのに使った海水は捨ててしまいましょう。
⑦引越し完了
電気器具のスイッチをオンし、海水が透明になりつつあるか、ポンプがきちんと動いているか、水温が適温になっているかを確認したらライブロックを組み、サンゴを配置して、魚を入れて引越し終了です。ただし魚を水槽に入れて1週間くらいは、魚が病気になっていないか警戒したほうがよいでしょう。底砂やろ材をいじった後の水槽というのは病気などが発生しやすいためです。
なお淡水・海水問わず観賞魚水槽のセットは、他の電気製品などよりも早くセットする必要があります。とくに冬には、カクレクマノミなど熱帯性の魚は低水温に耐えることができず死んでしまうことさえあります。魚がかわいそうなので、引越しの際にはテレビやインターネット、台所まわりよりも、水槽のほうを優先してあげてください。
海水魚の引越し~遠距離引越しの例
一般的に春に多い引越しは就職・転職・進学における遠距離引越しです。
先ほども述べましたように、都道府県により周波数(ヘルツ)が違うこともありますので、引越しの前にあらかじめ確認しておく必要があります。また新潟県糸魚川市や妙高市、長野県の一部地域などのように、同じ市内でも50hzと60hzの地区があったりするので、しっかりチェックするようにしましょう。
東北電力(新潟県)
中部電力(長野県・静岡県)
遠距離の場合、自分一人で引越しすることは難しい
長距離引越しではどうしても「自動車」を使って移動する必要があります。バスやタクシーでは水槽や機材、魚やサンゴなどを大量に抱えて持って乗ったら迷惑というもので、自家用車かレンタカーを自分で運転して乗っていくほかありません。
長距離運転の後、水槽をおろし、水槽のセットを行うというのは重労働で、一人ではどうしても難しいものです。
また運転中に何か問題が起こっても、サポートしてくれる人がいないととても大変です。というのも「何も起こらず」海水魚の遠距離引越しを成功させることはほぼ不可能だからです。誰かほかの人に手伝ってもらうようにしましょう。
①魚・サンゴの移送~④水を抜く
ここまでの行程は、近距離引越しと変わりません。
⑤水槽を運ぶ
▲水槽は必ずビニール袋で包んで運ぶ
近距離の引越し例では、水槽運搬は業者の方にやっていただきましたが、長距離引越しではトラックの到着時間などの都合もあり、そうもいきません。
幅45cmまでの小型水槽であれば軽乗用車でも運ぶことができますが、60cm以上の中・大型水槽を軽自動車で運ぶのは無理があります。軽自動車しかない場合は、大きめのバンや軽トラックのレンタカーを利用しましょう。
水槽やバケツを車に積み込むときは、安定した場所に置くようにします。車が濡れたり、汚れたりするのを防ぐために、バケツや水槽をビニール袋で包装しておくことも忘れてはいけません。特にレンタカーなど、車が借り物であるときはなおさらです。
サンゴが入っておらず、魚もそれほど入っていないような小型水槽であれば移送は楽です。写真は60cm水槽の中に35cm水槽を入れ、35cm水槽の中に小型水槽で飼育していたハゼを入れています。ただし輸送中の水温と酸欠には注意します。
カーエアコンと投げ込み式ろ過槽は必須です。ただし、このような輸送方法は水槽が割れてしまうおそれもありますので、あまりおすすめできません。
⑥車で水槽・魚・サンゴを移動
移動中もできるだけ水温の温度に気を使いましょう。車を使って遠くまで魚を運ぶときはカーエアコンをつけるなどします。そうでないと特に晩秋、冬期や早春などは、魚が寒くて死んでしまうおそれもあります。逆に夏は炎天下で魚を死なせてしまわないようにやはりカーエアコンで冷却するなどの対策が必要です。
もちろん、常に安全運転を心がけなければなりません。当たり前ですが、これが最も重要なことです。急な転回や車線変更などが原因でサンゴやライブロック、水槽などが損傷したり、魚が死んでしまうおそれもあります。またハコフグの仲間などは皮膚から毒を出して死んでしまうこともあり、特に注意が必要です。
⑦引越し先に到着、慎重に荷降ろしする
▲夜間に到着したときは足元に注意
引越し先に到着しました。運転お疲れさまでした。運転の後水槽を車からおろし、器具をおろすのは重労働ですが、そのまま1日放置してしまっていたら、魚の調子が悪くなったり、最悪の場合は死んでしまうこともあります。
そのため先ほども述べたとおり、自動車を使用した遠距離引越しは、他の人に手伝ってもらいたいところです。到着が夜遅くになり疲れたからといって、魚やサンゴをそのままにすることはできません。また足元などよく注意して水槽を降ろさなければなりません。もちろん、うるさくするなど、近所迷惑になるようなことは避けます。
⑧水槽を再度セット
セットの方法も、近距離引越しと何も変わりませんが、長時間の運転はどうしても疲れてしまいやすいですので、誰かに手伝ってもらうべきです。
小型水槽であれば早くセットすることができますが、60cm、90cm水槽といった大型水槽はなかなかセットしにくく、立ち上げ時に病気などが出てしまうおそれもあります。もし時間と予算が許すのであれば、あらかじめ新しい水槽や器具を購入し新居に水槽を立ち上げておく方法もあります。
【補足】魚やサンゴを海水魚店に預かってもらう
安全に引越しを行うのであれば、あらかじめ行きつけの海水魚専門店に魚やサンゴを預かってもらったうえで引越しを行い、のちに発送してもらうことをおすすめします。
しかしながら、お店によっては預かってもらえなかったり、預かってもらえても配送を行っていなかったりすることもあるので注意が必要です。
海水魚・サンゴを新居へ持っていけない場合
海外や離島への引越し、寮生活など、引越し先に魚を持っていくことができない、もしくは難しい場合もあります。
その場合は里親になってくれる人を探すか、観賞魚店に引き取ってもらうしかありません。絶対にやっていけないことは、魚を海に逃がしてしまうことです。魚を海に逃がしてしまうと生態系のバランスを崩したり、寄生虫や病原菌を放すことにもなり、在来の生物や養殖している魚に病気をうつしてしまうおそれもあります。ですから海に逃がすのは慎まなければなりません。
海水魚・サンゴ・水槽の引越し方法まとめ
- 生き物であるため基本的に業者は運んでくれない
- 網やバケツは多量に用意する
- 水温には十分注意
- エアポンプで酸素を送り、投げ込み式ろ過槽でろ過
- あらかじめポリタンクに海水を作っておくとよい
- 自家用車、もしくはレンタカーがないと長距離の引越しは困難
- 商用電源周波数(Hz)はあらかじめ確認。とくに新潟・長野・静岡は注意
- クマノミなどの気が強い魚や肉食魚は注意
- 毒を出すハコフグやコバンハゼは他の魚と別のバケツに
- ナマコも毒を出すおそれあり
- エビやカニの輸送には綿や海藻を入れる
- ヒーターの電源は水を抜く15分前に切る
- ろ材や砂、ライブロックは魚と別のバケツに海水を入れて保管
- 引越し先ではできるだけ早く水槽のセットを
- 水の循環・温度を確認して、にごりがとれてきたら魚を入れる
- 自動車を使った長距離引越しは一人では厳しい
- 常に安全運転を。夜間水槽を降ろすときは足元にも注意
- 引越し先で飼育できない場合は引き取ってもらう
- 飼育できない場合も海に逃がしてはいけない