2020.09.26 (公開 2019.10.24) 水槽・器具
ACポンプとDCポンプ どちらがおすすめ?用途別ポンプの選び方
海水魚飼育にはさまざまな種類のポンプがあります。オーバーフロー水槽の循環に使われるパワフルなマグネットポンプ、「コラリア」や「ボーテック」などの水流を産みだすためにのみつくられたポンプ、「マキシジェット」「リオ」などのように水流をつくるだけでなく循環をも担うポンプなど。これらはみな用途別の分け方ですが、ポンプへの電気の流れ方によっても分けることができます。「AC(交流)ポンプ」と「DC(直流)ポンプ」です。
DCポンプは「静か」「省エネ」と最近はやりのもので、水流ポンプ、プロテインスキマーからオーバーフロー水槽の循環まで用いられていますが、耐久性にはまだまだACポンプにはかなわないというデメリットもあります。今回はACポンプとDCポンプの違いをご紹介します。
ACポンプとは―メリットとデメリット
▲小型で人気のACポンプ「コラリアナノ」使用例
ACポンプは旧来からあるものでデータも使用実績も豊富、安価に入手でき、堅実な選択といえます。一方デメリットとしては動作音が大きい機種が多いことなどがあげられますが、近年発売されているものの中には動作音が静かなものも販売されています。初心者でオーバーフロー水槽の購入を考えるのであれば静かな動作音などよりも安価で使用実績もあり、何よりも耐久性にすぐれるこのAC水中ポンプか、長期メンテナンスフリーのマグネットポンプを選択したほうが安心かつ安全でしょう。ただし、ヘルツフリーでないものが多く、引越しが多い人は注意しなければなりません。
ACポンプは「マキシジェット」(ナプコ)「リオ」「エーハイム」(カミハタ)「コラリア」(エムエムシー企画)など欧州・台湾系が強く、日本、中国製もあります。
DCポンプとは―メリットとデメリット
▲ZOOXのDCポンプ「ファンタスティックウェーブ」のコントローラー
DCポンプが最近人気の理由としては動作音が静かであること、付属のコントローラーを用いた流量調節が容易なことなどがあげられます。ただしその結果電子部品が多いため、耐久性については難ありとの評価が多くきかれます。また一部商品は非常に高価であることもあって、初心者にはおすすめしにくいといえます。電力は省電力をうたう商品も多いのですが、実際にDCポンプを使用しているお店によれば「あまり感じられない」ということでした。またDCポンプはヘルツフリーなので転勤が多い人でも使いやすいかもしれません。
主なDCポンプのブランドとしては「ZOOX」(エムエムシー企画)、「Jebao」「OCTO」(LSS研究所)など中国ブランドが強いですが、中には「Abyzz」(LSS研究所)のようにドイツ製のものもあります(ただし非常に高価)。
用途別AC/DCポンプ
プロテインスキマーのポンプ
▲H&S社のプロテインスキマー「HS850」の水中ACポンプ
日本に登場して10数年の歴史があり、我が家でも使用しているH&S社(エムエムシー企画レッドシー事業部)のプロテインスキマーは古くからあるAC水中ポンプを使用しています。また最近の製品でもNYOS(ZEST:ゼンスイ)のプロテインスキマーなどは耐久性の点で有利なACポンプを採用しています。今は静かで流量調整できるDCポンプを使用したスキマーが人気ですが、耐久性となるとまだまだACポンプが有利なようです。その一方同じゼンスイから販売されているものでも小型のベンチュリースキマー「QQ1」は中国製で、静かなDCポンプを使用しています。
一方中国のOCTO(リーフオクトパス:LSS研究所)の主力製品はDCポンプを使用しています。このほかシンガポールのスキムズやカナダのRLSS(ともにオーシャンアース)など、最近のプロテインスキマーの主流はDCポンプとなっています。ただしOCTOの一部商品にもACポンプを使用しているものがあり、ACポンプの耐久性が買われています。
水流専用のポンプ
▲水流専用DCポンプ「ファンタスティックウェーブ」
水流専用のポンプは各社から色々な製品が販売されています。人気の低価格水流ポンプの「コラリア」はACポンプで安価、かつ耐久性に優れています。我が家でもインペラー交換だけで5年以上動いているコラリアナノがあります。このほかナプコから販売されている「ネワウェーブ」などもACポンプで、安価ながら耐久性にすぐれています。
水流用DCポンプとしては流量の調節が容易という、DCポンプの特性をいかしたものが多数販売されています。ZOOXの「ファンタスティックウェーブ」などは(コントローラ付属のDCポンプとしては)安価で、かつ力強い水流をつくることができますので初心者にもおすすめです。循環用ポンプとは異なり、故障しても致命的な問題にはなりにくく、手を出しやすいといえます。また同じく水流用ポンプである「マキシジェット」「コラリア」などの水流ポンプにはヘルツフリーでないものも多いのですが、この問題もヘルツに関係なく使用できるDCポンプであれば容易に解決できます。
オーバーフロー水槽の循環用ポンプ
▲オーバーフロー用ポンプはまだまだACポンプが安全か
オーバーフロー水槽の水を循環させるのに欠かせないポンプもDC水中ポンプが色々登場しています。人気のJebaoのほか、エコテックマリンや、ZOOXのアルティメットアクアリウムDCポンプなどの商品が出てきています。これまではオーバーフロー用の循環ポンプであればマグネットポンプか、水中ACポンプか、という決め方をしていましたが、将来的には水中DCポンプも選択肢に加わってくるかもしれません。
ただ、DCポンプはACポンプと比べてどうしても耐久性が劣るという欠点があります。故障すれば水が循環されず魚やサンゴが死んでしまうおそれもあり、まだまだ安心して使うのは難しいかもしれません。そして故障すればその修理のためにポンプを送付などする必要があります。LSS研究所が輸入販売するJebaoのポンプには「安心パック」と称し、モーターブロックをもう一つつけて販売するプランもありますが、個人的には魚やサンゴの生命を任せるのに、こわれやすいものを使うのはどうかと思います。
AC/DCポンプまとめ
- ACポンプは使用実績が多く耐久性に優れるがヘルツフリーでないものも多く要注意
- DCポンプは静かで流量調整が容易だが耐久性に難あり
- プロテインスキマーは近年はDCポンプが多いがACの耐久性が買われるケースも
- 水流ポンプは簡単に流量調節ができてヘルツフリーのDCポンプが人気
- オーバーフロー水槽の循環用ポンプはまだまだACポンプが安全で安心