2018.12.01 (公開 2018.12.01) 水槽・器具
【海水用】60cm水槽は初心者におすすめ!水槽・器材の選び方と予算について
初めて海水魚を飼育するのに多くの方が、「小さい水槽」を選びたがります。しかし、小型水槽では水質や水温が安定しにくく初心者アクアリストが上手く海水魚を飼育するのは難しいといえます。
逆に90cm、120cmと大きな水槽では、水温や水質が安定しやすいので飼いやすくなりますが、初心者がやりがちな「うっかりミス」により全換水が必要になったときなど対処が難しくなります。
以上のことから初心者には60cm水槽をおすすめしています。それなりの水量があり、万が一の事態が発生してもリセットが比較的容易だからです。
なぜアクアリウム初心者に60cm水槽がおすすめなの?
60cm水槽とは、一般的に幅が60cmの水槽をさします。観賞魚店だけでなく、ディスカウントストアやホームセンターでも黒い枠をもつガラス製の水槽が安価で販売されていますが、これにろ過装置やヒーター、クーラーなどを取り付けて海水魚を飼育することができます。60cm水槽は適したサイズのろ過槽や照明なども安価で入手でき、それらは多くの観賞魚店はもちろん、量販店などでも販売しており入手が容易、というメリットもあります。
60cm水槽は観賞魚飼育のスタンダードアイテムといえ、ろ過槽も、照明も、適したものをそろえることが容易です。同様に初心者にすすめられることがある45cm水槽よりもさまざまな用品を選択でき、さらに水量を多く確保することができます。もしあなたが初めて海水魚を飼育するのに45cm水槽を選ぶべきか、それとも60cmにするかで悩んでいるのでしたら60cm水槽をおすすめします。
水量
60cm水槽の標準的なサイズである60×30×36(cm)でも60リットル弱の水量を稼ぐことができます。これだけの水量があると、30cm水槽や40cm水槽(12~24リットル)と比べて倍~3倍近くの水量になり、これらの水槽と比べてずっと安定した水質で飼育することができます。
初心者アクアリストはどうしても魚を多めに入れたくなる傾向があるので、後から魚を追加することも考えると水量は多い方が安心です。
このほかニッソー(マルカン)から出ている「NS-7M」などのように60×45×45(cm)水槽もあります。この水槽だと水量も100リットル以上稼ぐことができおすすめといえますが、水量が多い分重量も増しますので置く場所に注意する必要があります。しっかりした台の上に置くようにしましょう。
60cm水槽の選び方
素材
一般的に販売されている水槽の素材はガラスとアクリルの2種類がありますが、どちらも一長一短です。ガラス水槽は安価で入手でき、掃除の際スクレーパーでがしがしコケを取っていても傷がつきにくいというメリットがあります。アクリル水槽は傷がつきやすい、変形するおそれがある、などのデメリットもあるのですが、軽くて割れにくいなどのメリットもあります。
初心者アクアリストであれば、ガラス水槽の方が安心といえるでしょう。
縁枠の有無は要チェック!
▲黒い枠がついている水槽。上部ろ過槽を置くことができる
比較的安価で販売されている60cm水槽の中には、水槽の上部縁辺に黒い縁枠がついているものがあります。この縁枠がある水槽では、ろ過能力の高い上部ろ過槽を使用することができるのでおすすめです。
この枠のサイズによっては外掛けろ過槽やプロテインスキマーの種類によっては使いにくくなるという欠点もありますが、外掛けろ過槽はろ材を入れられる量が少ないため60cm水槽では使いにくいといえます。
一方縁枠がないオールガラス水槽も販売されています。このような水槽はデザインに凝っていることが多いのですが、私がイチオシする上部ろ過槽を置きにくくなるという欠点があります。そのような水槽で魚を飼育する場合は、外部ろ過槽や外掛けろ過槽を使用することになります。
60cm水槽のろ過槽
上部ろ過槽
▲60cm水槽に上部ろ過槽を使用して魚を飼育している例
水槽の上に置いて使うろ過槽です。ろ材を入れるスペースを多く確保でき、開放的な構造でろ材につくバクテリアに酸素がいきわたりやすいため酸欠になりにくいという特徴があり、初心者にもたいへん使いやすく、最もおすすめのろ過槽です。
単体でも優れたパフォーマンスを発揮してくれますが、これにほかのろ過槽と組み合わせるとろ過能力を増強できます。外部ろ過槽との組み合わせがおすすめです。
欠点としては照明を置くことができる場所が少なくなってしまうこと、より大きな水槽にステップアップするときにろ過槽が使えなくなってしまうことなどがあげられます。また先ほども述べたように、フレームのない水槽では使用できないというデメリットもあります。
外掛けろ過槽
水槽のフチにかけて使うろ過槽です。テトラ(スペクトラムブランズジャパン)の「ワンタッチフィルター」などの商品が一般的です。外掛けろ過槽はろ材を入れるスペースが狭く、ろ過能力はイマイチですので、このサイトでも何度か述べてきたようにほかのろ過槽と組み合わせて使うようにしましょう。上部ろ過槽と同じく外部ろ過槽との組み合わせがおすすめです。
基本的にこの手の商品は小型水槽向けですので、ほかのろ過槽と併用して使用する場合でも60cm水槽まで、と考えた方がよいでしょう。
海道河童
カミハタから販売されているプロテインスキマー付きの外掛けろ過槽です。ろ過を行うろ過槽と、小型のゴミやデトリタスを水槽から取り除くスキマーがセットになっており、小型水槽のろ過能力向上に最適の商品と言えます。ただしスキマーの種類としてはベンチュリーではなくエアーリフト式でややパワー不足に陥りがちなので注意が必要です。
なお、海道河童は「大」と「小」の二つのサイズが販売されていますが、60cm水槽で使用するなら「大」を購入しましょう。「大」の場合はメーカーも単体で「60リットル以下」とうたっていますが、実際に60cm水槽で使用するときは外部ろ過槽などほかのろ過槽と一緒に使用したほうが安全です。
海道河童については、こちらもご覧ください。
外部ろ過槽
▲外部ろ過槽を使用する場合はシャワーパイプを使用した方がよい
外部ろ過槽は「パワーフィルター」とも呼ばれるろ過槽です。ろ材は多く入れることができるのですが、密閉式の構造をしており外部ろ過槽単体だと酸欠になりやすいというデメリットがあります。やむなく外部ろ過槽のみを使用するならシャワーパイプを使用し酸素を溶け込ませるなどの工夫が必要です。できれば外部ろ過槽だけでなくほかのろ過槽と併用して使うようにしたいところです。
外掛けろ過槽、上部ろ過槽、底面ろ過装置と、どんなろ過方式とも併用でき、フレームのない水槽でも使用できるという点では使いやすいといえます。サンゴも飼育するならプロテインスキマーとの組み合わせもおすすめです。
底面ろ過装置
最近は少なくなりましたが、底面ろ過装置は水槽の底面をろ過槽にしてしまうというもので、高いろ過能力があります。にもかかわらず底面ろ過装置を使用するアクアリストが少なくなった理由としては、「毒抜き」という定期的なメンテナンスが必要不可欠でこれが意外と面倒くさいこと、砂を動かす魚を入れられないことなどがあげられます。しかし、ヤッコやクマノミなど、砂を動かさない魚だけを飼育する水槽であればこれもろ過槽選択のチョイスに加えてよいかもしれません。
オーバーフロー
▲60cmオーバーフロー水槽
最初からしっかりした設備で魚やサンゴを飼いたい!と思っている方はオーバーフロー水槽がおすすめです。初期投資はどうしてもかかってしまうのですが、他の水槽と比べてケタ違いの安定性・拡張性が魅力です。また、水温を調整するためのヒーター、ろ材などを水槽の下のサンプ(水溜め)に収納することができますので、魚を泳がせる水槽の見た目をスッキリさせることができるのも特徴といえます。
サンプ(水溜め)にろ材を詰めてウェットろ過にするのもよし、ろ材をなくしてプロテインスキマーなどを使用したベルリンシステムでもよいでしょう。ただしベルリンシステムは基本的にサンゴを飼育するためのシステムで、魚は多く入れることはできませんので注意が必要です。
60cm水槽の水温調整
魚をうまく飼育するのには水温が一定であることも重要です。水温が一定でないと魚が病気にかかってしまうおそれもあります。夏はクーラー、冬はヒーターを使用し水温を一定に保つようにします。
ヒーターは最低でも150Wが欲しいところです。オートヒーター式、電子サーモ式のどちらかから選ぶとよいでしょう。オートヒーターは単独で使用できますが、オートヒーターでないヒーターは電子サーモスタットと接続しなければなりません。またオートヒーターをサーモスタットに接続してはいけません。
夏はクーラーを使用して水槽を冷却します。従来は非常に高価な商品でしたが、最近はゼンスイなどから低価格の商品が販売されるようになりました。同じゼンスイからはヒーターとクーラーの機能を併せ持つ「テガル」という商品も市販されていますが、これは60cm水槽には小さすぎるといえます。なお、クーラーを動かすのには水中ポンプとホースを使って水を循環させなければなりませんので、これらを別途購入する必要があります。
砂とライブロックの量
▲サンゴ水槽では砂を敷く
▲魚水槽では砂を敷かない方が管理しやすい
標準的な60×30×36(cm)の水槽で海水魚やサンゴを飼育する場合砂は10kgほど購入しておけば余裕でしょう。
ただしこれはあくまでも目安であり、60×45×45cm水槽ではより多くの砂を用意する必要がありますし、DSB水槽であれば必要な砂の量はさらに増えます。逆に海水魚だけを飼育し、サンゴを飼育しないのであれば砂は敷かない方が管理がしやすくなるともいえます。
ライブロックの量は3~5kgほど入れます。安価なものではなく、インドネシアの規制により高くなっているので徐々に買い足していったり、サンゴ岩を併用するとよいでしょう。魚の遊泳スペースや隠れ家、サンゴの置き場所などを考えてライブロックを組みあげていきます。
60cm水槽で飼育できる魚の量
▲スズメダイは飼育しやすいが気が強い。1匹しか入れられないことも
どんな魚を入れたいか、あるいはろ過槽がどんな種類を使用しているのかなどで変わってきます。しかし、ある程度の目安というものはあります。
大体60cm水槽で、上部+外部ろ過槽を併用するのであれば、5cm程度の魚10匹程度が安全でしょう。もちろんこれは目安で、ろ過装置やサンゴの有無などにより飼育できる数は変わってきます。また、スズメダイの仲間やメギスの仲間のある種のように性格がかなりキツいもの、カエルアンコウやミノカサゴのように小魚を捕食するもの、ハコフグなどのように危険が迫ったり、弱ったりすると毒を出すものもおりこのような魚は単独で飼育するしかありません。ただ、カエルアンコウやハコフグの仲間は初心者むきの海水魚とはいえません。
どんな魚を入れるにせよ、生物ろ過がうまく機能していない最初のうちは魚の量は少なくしなければなりません。魚よりも水質にうるさいサンゴも一緒に飼育したい!というのであればなおさらです。
60cm水槽購入に必要な初期投資(一例)
- 水槽(60cm規格ガラス水槽) 3000円
- フタ 600円
- 水槽台 5000円
- ろ過装置(上部ろ過槽) 4000円
- ヒーターとサーモスタット(150W)4000円
- クーラー 50000円
- 循環ポンプとホース 6000円
- 照明 10000円
- ろ材 2500円
- 底砂 2500円
- ライブロック 8000円
- 人工海水 初期投資として2000円前後、ランニングコストがかかる
- 水温計 500円
- 比重計 1600円
- はかり 1200円
- 中和剤 400円
- 掃除用具 2000円
計:103,300円
45cm水槽と比較すると初期投資にかかる費用が大きく増大します。これは海水魚飼育に必要となるクーラーが高額であることが大きいです。ネット通販やセールなどで比較的安価に購入できますが、やはり水槽用クーラーが高額であることが海水魚飼育のハードルを大きくアップさせる要因となっている、といえるかもしれません。
消耗品
ランニングコストにはこのほか水槽のろ過槽・照明・ヒーター・クーラーなどをまわすための電気代・人工海水を作るための水道代がかかります。
- 人工海水
- 中和剤
- 交換用ろ材
- 餌・添加剤・吸着剤 他
60cm水槽まとめ
- 45cmよりも器具の種類が豊富で水量も多くキープでき初心者におすすめ
- 60×30×36cm水槽が一般的だが、より豊富な水量を確保できる60×45×45cm水槽もある
- ガラス製水槽とアクリル製水槽があるが、ガラス水槽の方が扱いやすい
- 水槽の上に縁枠がないと上部ろ過槽を置けない
- おすすめは上部ろ過槽
- フチなし水槽なら外部ろ過槽と外掛けろ過槽を併用する
- 外部ろ過槽を使用するなら酸素がいきわたる工夫を
- オーバーフロー水槽を選択するのもよい
- 砂やライブロックの量は飼育生物に合わせて調整する
- 魚メインなら砂を敷かない方法も
- 水量は多いが魚の入れすぎは禁物
- とくに最初は魚を少量に抑える必要がある
- 気が強いスズメダイ、毒をだすハコフグなどは単独飼育
- クーラーが高価。45cm水槽と比べて高額な予算が必要になる