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2019.02.01 (公開 2018.09.30) 水槽・器具

ベルリンシステムの基礎知識~立ち上げに向けた心得、仕組みと必要なもの

ベルリンシステムの水槽

ベルリンシステムは、サンゴ飼育に適したシステムです。

とくにミドリイシなど、硝酸塩の蓄積に弱いSPSはこのシステムのおかげで飼育できるようになったともいえます。ろ過槽を使用せず、プロテインスキマーとライブロックの力で極力硝酸塩を排除するというものです。

ろ過槽がないというのは心もとないような気がしますが、現状このシステムでミドリイシなどを飼育しているアクアリストも多く、しっかりその仕組みを理解すれば難しいものでもありません。

ベルリンシステムとは

ベルリンシステムは水質悪化に弱いサンゴをうまく飼育するのに適した水槽システムです。ろ過槽を使用せず、魚の排せつ物や残餌などはプロテインスキマーを使用して水槽から取り除くというもので、硝酸塩がどうしても出てしまう強制ろ過と異なり、硝酸塩の蓄積を極力抑えるようにします。

魚の排せつ物や残餌、微生物の死骸などは生物ろ過がはじまり、アンモニアから亜硝酸、そして硝酸塩になる前にプロテインスキマーを用いて強制的に水槽から排除します。これによって硝酸塩の蓄積を極力減らし、残った僅かな排せつ物や微生物の死骸などはライブロックや砂の深くにすむバクテリアにより窒素にまで分解されます。

このように硝酸塩の蓄積を極力減らし、硝酸塩の蓄積に敏感なミドリイシなどのサンゴを飼育しようというものです。なお、名称はこのシステムがドイツのベルリンで開発されたことにちなみます。

ベルリンシステムで飼育できるサンゴ

ベルリンシステムで飼育しているナガレハナサンゴ

▲ナガレハナサンゴ。ミドリイシ以外のハードコーラル飼育にも適している

ベルリンシステムではソフトコーラル、ハードコーラル問わずどのようなサンゴでも飼育可能です。

たとえば硝酸塩の蓄積に弱いミドリイシやコモンサンゴ、ハナヤサイサンゴなどSPSとよばれるサンゴを飼育するのに最適のシステムですが、ハナサンゴやナガレハナサンゴ、キクメイシなどのLPSの飼育にも適しています。とくにナガレハナサンゴなどはLPSではありますがその中ではきれいな水を好むので、ベルリンシステムでの飼育がベターでしょう。

チヂミトサカやカタトサカ、ウミキノコ、ウミアザミといったソフトコーラルの飼育にも適していますが、ソフトコーラルの飼育にはある程度の栄養塩があったほうがよいという意見もあります。陰日性のサンゴは給餌が必須で、残り餌などで水質を悪化させてしまうおそれがあるためベルリンシステムで飼育するのであれば強力なプロテインスキマーを使用する必要があります。

ベルリンシステムの魚の数と不向きな魚

フウライチョウチョウウオの幼魚

▲チョウチョウウオの仲間は不向き

ベルリンシステムはあくまでサンゴをうまく飼育するためのシステムであって、魚を多く飼育するためのシステムではありません

ですから排せつを行い硝酸塩を蓄積させてしまう魚の数は抑えなければなりません。特に立ち上げ初期に魚を多く入れてしまうと失敗しやすいので注意が必要です。うまく立ち上がっても魚の数は控え目にした方がよいです。よく泳ぎ排せつ物の量も多い大型ヤッコなどはよほどの大型水槽でない限りはおすすめできません。

チョウチョウウオの仲間、セダカギンポ、マナベベラ、クロベラなどサンゴを捕食するおそれがある魚も避けたいところです。

チョウチョウウオの仲間を入れているアクアリストもいますが、チョウチョウウオの仲間は白点病やウーディニウム病などの病気にかかりやすい魚としても知られており、ベルリンシステムの水槽(を含むすべてのサンゴ水槽)では魚病薬の銅イオンやグリーンFゴールドなどを使用できないなどの問題もありますので、安易なマネは禁物といえます。

ベルリンシステムに必要な用品・環境

オーバーフロー水槽

水槽は単体のものではなく、オーバーフロー水槽をおすすめします。オーバーフロー水槽であればサンプにプロテインスキマーなど、ベルリンシステムを運用するために必要な器具を入れることができるからです。

またオーバーフロー水槽であればサンプも合わせて大容量の水量を確保できるので、この点もおすすめできる理由です。はじめてベルリンシステムを立ち上げるのであれば総水量200リットルを超える90×45×45cmオーバーフロー水槽がよいでしょう。

サンプ

オーバーフロー水槽のサンプ

オーバーフローした水槽を受ける「水溜め」をサンプと言います。このサンプの中にプロテインスキマーや各種センサーを入れて使用します。

循環ポンプ

アクリル製サンプ|レイシーのマグネットポンプ・水中ポンプ

▲我が家の水槽で使用しているレイシーのマグネットポンプ

オーバーフロー水槽をまわすのに重要なアイテムです。オーバーフロー水槽においては心臓部となりますので、絶対に値段だけで決めないようにしましょう。

パワーのあるマグネットポンプの使用がおすすめですが、サンプに穴をあけるのが嫌な場合などは水中ポンプの使用もよいでしょう。ただし水中ポンプを使用する場合はワンランク上のものでないと満足できないこともあります。また水中ポンプを使用するときはメンテナンスもこまめに行うようにしたいものです。

プロテインスキマー

既存のガラス製水槽を用いたサンプとプロテインスキマー

▲我が家で使用しているH&SのHS850。ベンチュリー式は初心者にも使いやすくおすすめ

ベルリンシステムの肝といえる装置がプロテインスキマーです。この良し悪しでベルリンシステムの水槽をうまくまわすことができるかが決まります。

プロテインスキマーにはエアリフト式、ベンチュリー式、ベケットヘッド式、ダウンドラフト式などがありますが、ベルリンシステムで使用するのであればエアリフト式はどうしてもパワー不足ですので、それ以外の方式のスキマーをチョイスするべきです。しかしベケットヘッド式やダウンドラフト式のスキマーはパワフルなのですが調整が若干難しいのが難点です。そうなると初心者にも扱いやすいのはベンチュリー式ということになります。

ベンチュリー式のスキマーは種類も豊富です。置き場所も外部式とインサンプ式、ポンプの種類もACポンプとDCポンプ、形状もコーン、ハーフコーン、円筒形などありますが、個人的にはインサンプでACポンプを用いたものが初心者にも扱いやすいのではないかと思っています。我が家で使用しているH&S(エムエムシー企画レッドシー事業部)のHS850はインサンプ式のACポンプ、形状は円筒形で水位の変動にも強く初心者にもとても使いやすくおすすめです。

水流ポンプとコントローラー

水流でなびくトサカ

▲トサカ飼育には強めの水流が欲しい

水中ポンプはサンゴ飼育の必需品です。これがないと水がよどんでしまい、サンゴにもほかの生物にもよいものではありません。デトリタスの蓄積をまねいたり、サンゴの病気が発生することもあります。

ミドリイシやコモンサンゴなどのSPSや、チヂミトサカ、ウミアザミなどはランダムで強めの水流を好みます。一方オオバナサンゴやハナガタサンゴなどはSPSの類よりはやや弱めの水流を好みますが、そのようなサンゴを飼育するにしても淀まないレベルの水流は必要になります。できればコントローラーを使用して水流量の調整を行うとよいでしょう。

ヒーターと水槽用クーラー

海水魚用クーラー

▲海水魚用クーラー

ミドリイシは熱帯性の生物ですが、高水温が続くと弱ってしまいます。逆に極端な低水温にさらされてしまっても死んでしまうおそれがあります。水温は25℃前後を確実にキープしなければなりません。そのためには水槽用クーラーとヒーターが必要です。もっとも、これはベルリンシステムに限らず、すべての海水魚・サンゴ飼育にあてはまることです。

照明

ハードコーラル、とくにミドリイシの仲間を飼育するための照明は従来はメタルハライドランプしかなかったのですが、現在はLEDやT5蛍光灯という選択肢もあります。

メタルハライドランプは従来はよく使われていましたが水銀問題のあおりを受けメーカーが製造から撤退するという事態も発生しています。これにより交換用のランプの入手などが難しくなるおそれがあるなどユーザーの悩みのタネになっています。

現在は自動車のヘッドライトから懐中電灯までLEDが普及しています。当然マリンアクアリウムにおいてもLEDが凄まじい勢いで普及していますが、サンゴの種類によってはLEDの発する強い光に耐えられないなどのデメリットもあり、実際にLEDでサンゴを飼育しているお店に相談するのがベストといえます。

このほかT5蛍光灯を使用するという選択肢もあります。現在ではレッドシーのT5蛍光管「リーフスペック」などミドリイシの飼育が可能なレベルの蛍光管も販売されています。T5蛍光灯の欠点はLEDとことなり熱を発生させること、蛍光管を取り換える必要があることなどです。

底砂とライブロック

ライブロック

▲ライブロック選びも重要

ライブロックはプロテインスキマーと同様に、ベルリンシステムの肝となるものです。

ベルリンシステムはスキマーの能力と、ライブロックについている微生物によって成り立つシステムです。ですからベルリンシステムを立ち上げるには良質なライブロックのセレクトが重要となります。腐ったライブロックを入れていたらいつまでたっても立ち上がりません。できればライブロックを購入する前に色や形だけでなく、ニオイもチェックします。温泉の様な、硫黄臭いのは絶対NGです。

底砂もバクテリアの繁殖のために必要です。パウダー状のサンゴ砂や、アラゴナイトサンドを若干厚めに敷いておきます。最近はバクテリアを付着させたライブサンドもよく出回っていますが、これは水槽を手取り早く立ち上げるのに役に立ちます。ただしライブサンドは一度開封してしまうと長期保存ができませんので注意が必要です。

添加剤

▲我が家のサンゴ水槽で使用している添加剤

カルシウム、マグネシウム、ポタシウム、ストロンチウム、ヨウ素、微量元素、ビタミン類の添加が重要です。カルシウムやマグネシウムは添加剤ではなく、カルシウムリアクターやマグネシウムリアクターを使用して供給することも可能です。

ブライトウェルアクアティクス(マーフィード)のリキッドリーフ、ケント(同)のリキッドリアクターのようにカルシウムリアクターと同様の効果をもつ添加剤も市販されていますが、この場合でもヨウ素や微量元素などの添加は必要になります。

人工海水

ハードコーラルを飼育するのであればサンゴ用の人工海水を使用するのもおすすめです。具体的にはレッドシーの「コーラルプロソルト」、シーライフの上級品「ヴィーソルト」、インスタントオーシャンの上級品である「リーフクリスタル」などがあります。

これらの商品は無脊椎動物飼育に特化している製品といえます。我が家では「ライブシーソルト」を使用していますが、この商品を使用してもサンゴの長期飼育は可能です。

試薬(テスター)類

サンゴの飼育にはさまざまなものを計測する必要があります。アンモニア、亜硝酸、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、KH(炭酸塩硬度)、pH、カルシウム、マグネシウム、水温、比重…。中でも硝酸塩、KH、カルシウムはチェックした方がよいでしょう。

ただし、試薬類に頼ってもうまくいかないことがあるのがサンゴ飼育の難しいところです。適正値から大きく外れてもうまく飼育できることもあるし、逆に完全に適正値であってもうまくいかないこともあります。硝酸塩は少なければ少ないほどよいのですがあまりに少なすぎてもよくありません。

その他

実際にベルリンシステムを運営するにあたっては、もちろん海水魚飼育の必需品である水温計や比重計、スクレイパーやブラシなどの水槽掃除用品などが必要になります。

ベルリンシステムの環境を向上させるアイテム

カルシウムリアクター

カルシウムリアクター

▲カルシウムリアクター

カルシウムリアクターは、カルシウムメディアと二酸化炭素を反応させて水槽の中にカルシウム分が溶け込んだ海水を供給し、カルシウムやKH(炭酸塩硬度)の値を安定させる器具です。

カルシウムリアクターはすべてのサンゴに必要な器具、というわけではありません。ソフトコーラルや丈夫なLPSなどを飼育するのであれば、添加剤を用いてカルシウムのやKHの値を安定させる、という方法もあります。しかし、SPSの類、とくに水槽いっぱいにミドリイシを埋め尽くすのであれば必須の装備といえます。カルシウムリアクターを使用するのには緑ボンベ(二酸化炭素)や専用のメディアなど、本体以外にも色々購入しなければならないものがありますので、注意が必要です。

UV殺菌灯

魚の飼育にも重宝するUV殺菌灯ですが、ベルリンシステムでも重宝します。ベルリンシステムでも魚の病気を(ある程度)防いだり、サンゴがかかるおそれのある細菌性の病気対策にも役に立ちます。またコケの胞子も殺すので、コケ対策にも適しています。ただし殺菌灯は「よい細菌も悪い細菌も全部殺し」てしまいますので、バクテリアを添加したらしばらく殺菌灯を消灯しておきましょう。また水温を上げるおそれがあることもネックとなります。

海水魚やサンゴを飼育するのに、購入後どんどん機材が増えていくというのはよくあることです。ですからクーラーはできるだけ大容量のものを選択したいところです。

pHモニター

海水魚もサンゴも、上手く飼育するのには水温、比重のチェックは欠かせませんがpH(水素イオン濃度)のチェックも重要になります。原則として夜間はpHが低く、昼間は高くなります。pH値の測定は専用のメーターがマーフィードなどから販売されていますが、四六時中pHの計測を行ってくれるpHモニターを使用するのもよいでしょう。pHの適正値は大体8.1~8.5とされています。これよりも下がってきた場合は専用の添加剤を用いて上昇させます。

RO/DI浄水器

RO浄水器

▲RO浄水器

一般的な水に人工海水を溶かしただけの水槽でもサンゴの飼育は可能です。しかし水道水には不純物が多く含まれていることもあるため、できればRO/DI浄水器が欲しいところです。

RO浄水器は逆浸透膜(RO膜)を利用し通常の浄水器が取り除けないような細かい物質も取り除いてくれます。さらにDI(イオン交換樹脂フィルター)を通してRO膜で取り除けなかったイオンを取り除いてくれます。ミドリイシの仲間はもちろん、できれば他のハードコーラルなどを飼育するときにも用意しておきたいといえます。

バクテリア

ライブロックやライブサンドにはバクテリアが多数付着していますが、バクテリアの種類を増やすためにバクテリアを購入して水槽に添加するのもよいでしょう。

海水水槽用のバクテリアは各社から高品質のものが色々と出回っています。例えばKorallen-zucht(LSS研究所)の「ゼオバク」はゼオビットシステムの根幹をなすバクテリアですが、ベルリンシステムやバイオペレットリアクターを回す水槽にも適しています。アクアリウムシステムズ(ナプコリミテッド)の「ドクターティム」シリーズは用途に合わせたバクテリアのチョイスが可能な商品です。プロディビオ(エムエムシー企画レッドシー事業部)のバクテリアはガラス製の容器に入っており品質の劣化がおこりにくいのですが、ガラス製ということで割れやすいというデメリットもありますので取扱いには注意が必要です。

しかし、先ほど述べたように殺菌灯をつけているとせっかく購入したバクテリアも死んでしまうため、添加してしばらくは消灯しておきます。

サンゴの餌

バイタリスのソフトコーラルフード

▲サンゴの餌、バイタリスのソフトコーラルフード

従来のサンゴ水槽では陰日性サンゴ、ディスクコーラルやマメスナギンチャク以外のサンゴには餌を与えることは少なかったのですが、近年はLPSやソフトコーラルだけでなく、SPS用の餌も市販されています。餌は植物性プランクトンや微細な動物性プランクトンで、水流を停止させた後スポイトなどを用いて直接サンゴに給餌します。ただし与えすぎには注意が必要で、水を汚すおそれがあることを考えると、初心者のうちはあまり与えない方がよいかもしれません。ミドリイシなどのSPSは光だけでの飼育も十分可能です。

ただし、イボヤギやキサンゴ、トゲトサカなどの陰日性サンゴは餌からしかエネルギーを得ることができません。そのため給餌は必須となります。

ベルリンシステムと他のシステムとの比較

強制ろ過

サンプにろ材を詰めた強制ろ過の基本的な例

▲サンプにろ材を詰めた強制ろ過の基本的な例

上部ろ過槽や外掛けろ過槽、あるいは外部ろ過槽などでろ過をする方法で、サンゴよりも魚をメインとした水槽におすすめのシステムです。

水の浄化を行うのは生物ろ過です。魚にとっては猛毒のアンモニアをやや毒性の低い亜硝酸や硝酸に分解するのですが、硝酸は水槽に蓄積されてしまいます。そのためそれらの蓄積に弱いミドリイシなどSPSの飼育には向いていません。

強制ろ過方式でサンゴを飼育するのであれば若干硝酸塩があった方がよいとされる一部のソフトコーラルやLPSなどを飼育するのに向いています。

ゼオビットシステム

ドイツのKorallen-zuchtが提唱し、日本ではLSS研究所が展開しているシステムで、水の浄化を行うのはバクテリアですが、そのバクテリアの餌となる炭素源を投入するバクテリオプランクトンシステムの一種になります。

ゼオビット専用リアクターなどの初期投資費用はかかりますが、ランニングコスト的にはゼオビットシステムのほうが安いというデータもあります(LSS研究所調べ)。このシステムを使用すると、ミドリイシやコモンサンゴなどのSPSがパステルカラーに色揚がりする様子を楽しむことができます。

ただしゼオビットはSPSに特化しているシステムです。栄養塩を取り除きすぎてしまうためLPSなどの飼育にはあまり適していないというデメリットもあります。ミドリイシと同時にキクメイシやハナガササンゴなどのLPSも飼育したいのであればベルリンシステムの方が向いているといえます。また運用マニュアルに従わなければならないなどの制約があります。

ベルリンシステムから転向するのは難しく、ゼオビットシステムをはじめたいのであれば、最初からゼオビットで立ち上げなければなりません。これはベルリンシステムで回していた水槽をそのままゼオビットに転向させるのは難しいからです。

一方、ゼオビットシステムで使用される添加剤や混合バクテリアはその多くがベルリンシステムでも使用可能であり、これらの高品質な製品をベルリンシステムで愛用するアクアリストも多いです。またベルリンシステムとは異なりマニュアル化されているのも大きな特徴で、マニュアルの存在しない、飼育者のカンなどに頼る部分も大きいベルリンシステムよりも扱いやすいシステムといえそうです。そのマニュアルはLSS研究所から入手でき、Eメールが使用可能な環境であればだれでも無料でダウンロードすることができます。

リーフケアプログラム

観賞魚店にならぶレッドシー リーフケアプログラムの商品群(茨城県コーラルタウン)

▲コーラルタウンのリーフケアプログラム関連商品。ベルリンシステムからの転向も容易。

おなじみイスラエルのレッドシーによるシステムです。日本では同社の代理店エムエムシー企画レッドシー事業部が展開しています。このシステムはゼオビットシステムとは異なり専用のリアクターを使用することなく、添加剤の定期的な添加と水質の測定を行うことにより、硝酸塩を取り除いたりサンゴの色揚げなどを楽しむことができます。硝酸塩を取り除くためのバクテリアの餌として炭素源(メタノール)を用いるため、バクテリオプランクトンシステムの一つといえます。

機材はプロテインスキマーなど一般的なベルリンシステムのものと同じものがあれば問題なく使うことができ、ベルリンシステムからの転向も容易であるなど、メリットが大きいシステムです。さらにベルリンシステム以外に、魚水槽でも使用できる硝酸塩除去剤などもあります。

ただし添加剤はいくつかの元素が混ざっているものもあるため、添加剤に何が含まれるのか確認し、成分が過多になってしまわないように注意が必要です。このリーフケアプログラムに限らず、添加剤はできればひとつの水槽にひとつのブランドのみを使用するようにしたいものです。また定期的な水質検査が欠かせないため若干面倒くさいというデメリットもあります。

バイオペレット

▲バイオペレットを使用するのには専用のリアクターが必要

バクテリアの餌になるバイオペレットを入れたバイオペレットリアクターをぐるぐる回して生物ろ過と脱窒を行い、栄養塩を含んだバクテリアをプロテインスキマーを用いて水槽外へ排出、安全に硝酸塩濃度を下げるというシステムで、これもバクテリオプランクトンシステムの一種といえます。ベルリンシステムからの転向もゼオビットシステムに比べたらしやすいのでおすすめですが、転向するなら砂はあまり厚く敷かないほうがよいでしょう。

リーフケアプログラムと異なり毎日添加剤を導入する必要がなく、ペレットが減ってきたと感じたら交換すればよいので手軽といえます。欠点はバイオペレットリアクターや水中ポンプを購入する必要があることです。

バイオペレットとその利用方法はこちらにまとめてあります。

DSBシステム

DSBというのはDeep Sand Bedの略で、細かいサンゴ砂を深く敷き、底砂の下方に嫌気層を作り、生物ろ過から脱窒までをも行うナチュラルシステムの1種です。

ろ過槽どころかプロテインスキマーさえも装備しないシステムですので排せつを行い水を汚してしまう魚は多くは入れられません。そして水槽に入れる魚もよく考える必要があります。たとえばミズタマハゼやオトメハゼなどのベントス食ハゼ、ジョーフィッシュ、テッポウエビなど砂を掘り起こすタイプの魚や生物は水槽に入れられません。

このほか大量の砂を必要とすることや、魚やサンゴにとって猛毒の硫化水素が発生するおそれもあるなどのデメリットがあることから、近年はこのシステムで水槽をまわすアクアリストをあまり見ません。

モナコシステム

名前はモナコ博物館で初めて使用されたことにちなみ、このシステムを考案した人物の名前から「ジョベール法」とも呼ばれるナチュラルシステムの一種です。DSB同様に底砂を厚めに敷きますが、DSBと違い底砂の下にすのこのようなものを敷いて止水域(プレナム)をつくるシステムで、この止水域で脱窒を行わせようとするものです。

モナコシステムも登場したときはよく使用されていましたが、ベルリンシステムが普及した日本国内のアクアリウムにおいては現在ではあまり見られなくなった方式です。

このほかにトリトンメソッドやバイオアクティフ、エコシステムなどのようにサンゴ飼育に適したシステムはいろいろとありますがここでは省略します。

ベルリンシステムのメンテナンス

水換え

ベルリンシステムは「水換え不要」などといわれたこともありますが、水換えは硝酸塩やリン酸塩がたまった水を換えるだけでなく、添加剤などを添加する際に崩れるイオンバランスのリセットなどの役目もあるため、水換えは必須です。

基本的には長くても1か月に1回は水かえをしたほうがよいでしょう。推奨は大体2週間に1回、大体総水量の1/3程度を換えることをおすすめします。とくに魚が多めに入っているベルリン水槽であれば水かえのスパンはより短くするべきといえます。

コケ対策

▲ニザダイ(ハギ)はコケを食べてくれる

サンゴ水槽、とくにミドリイシ水槽であれば強い照明が必要で、水槽の硝酸塩濃度などが低くてもコケが発生してしまうことがありますので、コケ対策も当然必要になります。

ガラスや壁面であればコケとりの巻貝が清掃し、底砂面ではマガキガイやベントスゴビーが綺麗にしてくれます。アイゴの仲間やニザダイ(ハギ)などは海藻やヒゲ状のコケを食べてくれます。しかし、やはりスクレイパーやマグネットクリーナー、スポンジなどを使ってきれいにすることも大事です。

添加剤

▲ブライトウェルのリプレニッシュ

添加剤では主にマグネシウム、ストロンチウム、ポタシウム、ヨウ素、そして微量元素を添加します。光合成に必須である鉄分も添加するべきなのですが、鉄の過剰な添加はコケの大発生につながるおそれがあるため、ブライトウェル「リプレニッシュ」など、鉄分を含んだ微量元素の添加がおすすめです。リフジウムを用いた水槽であれば海藻が鉄分を欲して足りなくなってしまう可能性もあるのでブライトウェルの「フェリオン」などを添加します。

微量元素(トレースエレメント)系のものはメーカーによって入っているものが違いますので、成分の過多などが起こらないように気をつけます。添加は正確に計測し、水槽の中でもっとも水流が強いところに流してやります。

カルシウムやカルクワッサーなどはもちろんサンゴに必要な元素であり、これらも添加する必要があります。添加剤を用いてもよいのですがミドリイシ類の飼育についてはやはりカルシウムリアクターがあったほうが有利といえます。とくに初心者はリアクターを使用した方が安全です。リアクターを使用するのであれば二酸化炭素ボンベの交換、メディアの補充、交換などが必要になります。

器具の掃除

▲汚水がたまったプロテインスキマー。こうなる前に掃除したいところだ

ベルリンシステムの心臓部でもあるプロテインスキマーは定期的なメンテナンスが必要です。プロテインスキマーのカップ部はできれば一週間に1回は掃除したいものです。水流をつくる水中ポンプもコケが生えてしまうと見栄えも悪くなりますのでこちらもコケが生えてきたらその都度ブラシで掃除します。

ウールマットの掃除と交換

基本的にベルリンシステムではろ過槽を使用しませんが、大きなごみを取るという目的でウールマットを使用することもあります。ウールマットを使用するのであれば、当然のことながらウールマットの清掃も必須となります。

ウールマットに魚の排せつ物や残餌、デトリタスなどが付着すれば、いくら強力なプロテインスキマーを使用していてもそのウールマットに付着したそれらの物質が硝酸塩のもとの温床となってしまいます。ですからこまめに洗浄する必要があるのです。

一週間に一度は掃除した方がよいでしょう。汚れが落ちにくくなったり、ぼろぼろになったりしたら交換します。

ベルリンシステムまとめ

ベルリンシステムとは

  • ろ過槽は使用せず、プロテインスキマーで汚れを水槽から取り除く
  • バクテリアが硝酸塩を窒素にまで分解する
  • サンゴ、とくにミドリイシの飼育に適したシステム
  • 魚は多く入れられない。とくに最初に魚を多く入れると失敗しやすい

必要なもの

  • オーバーフロー水槽とサンプ・循環ポンプ
  • 水流ポンプとコントローラー
  • プロテインスキマー
  • クーラーとヒーター
  • サンゴ飼育に適した照明
  • 添加剤
  • 人工海水
  • テスター類
  • 良質なライブロックと底砂
  • ほか海水魚飼育の基本的な用具(水温計など)

あった方がよいもの

  • カルシウムリアクター
  • 殺菌灯
  • pHモニター
  • 浄水器
  • バクテリア
  • サンゴの餌

メンテナンス

  • 2週間に1回1/3程度の水替えを推奨
  • 添加剤の定期的な添加
  • 水質測定
  • ウールマットを使用するならマットの洗浄もしくは交換
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