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2021.01.31 (公開 2018.09.28) 水槽・器具

バイオペレットの効果とリアクターの仕組み~手軽に扱えるバクテリオプランクトンシステム

バイオペレット(リアクター)

水槽の硝酸塩を減らす方法の一つとして「バクテリオプランクトンシステム」が挙げられます。これは、バクテリアの餌となるものを投与して水槽の硝酸塩濃度を下げる、もしくは超低栄養塩状態にするシステムです。

バクテリオプランクトンシステムにはいくつかの方法がありますが、簡単で初心者にも扱いやすいのはバイオペレットを使用し硝酸塩を下げる方法です。

今回はこのバイオペレットをうまく使用する方法、他のバクテリオプランクトンシステムとの違い、バイオペレットリアクターを水槽に設置する方法や注意点などを紹介します。

バイオペレットとリアクター

バイオペレットは炭素源の一種です。その主成分は生分解性樹脂で、もちろん魚やサンゴに無害な素材でできています。

バイオペレットの表面に好気性のバクテリアがつき、その内側に嫌気性のバクテリアがつくことによって硝酸塩が分解され窒素ガスとして水槽から放出されます。またリン酸を好むバクテリアも付着するため、リン酸塩も取り除かれます。

バイオペレットはそのまま水槽の中に入れて使うのではなく、専用のバイオペレットリアクターの中に入れてまわす必要があります。リアクター本体の形状はメーカーによって異なりますが、大体は円筒状の形状です。このほか一部四角い形のものや、ドラム式のものもあります。

このバイオペレットリアクターをうまくまわすことにより、硝酸塩やリン酸塩を安全に水槽から取り除くことができます。これを使った飼育システムはゼオビットシステムやレッドシーによるリーフケアプログラム同様にバクテリオプランクトンシステムの一種ともいえます。ほかのバクテリオプランクトンシステムでは砂糖やアルコールなどがバクテリアの餌になりますがこのシステムではリアクターの内部で回っているバイオペレットがバクテリアの餌となるのです。

炭素源とは

水槽に生息するバクテリアは生物ろ過や脱窒などの重要な役目を背負っていますが、そのバクテリアを活発に活動させるためにはバクテリアの餌が必要です。この餌になるのが炭素源です。

炭素源を水槽に投入するのに「VSVメソッド」と呼ばれる方法があります。これはVodka、Sugar(砂糖)、Vinegar(酢)の頭文字で、これらに含まれる炭素源がバクテリアの餌になり、硝酸塩を効率よく取り除くことができるというわけです。

しかしこのVSVメソッドは危険であり、量をしっかり守って運用できるアクアリストしか使用してはいけません。これらの炭素源はさまざまなバクテリアの餌になるため、魚やサンゴに有害な細菌が大増殖し水槽が壊滅してしまうおそれがあり、バクテリアの数が増えれば酸欠を招くおそれもあるからです。

一方バイオペレットとバイオペレットリアクターをうまく使用すれば、このような崩壊のリスクを極力減らしながら硝酸塩やリン酸塩の濃度を減らすことができます。

バイオペレットリアクターを使用すべき環境

サンゴ水槽

▲ミドリイシなど硝酸塩の蓄積を嫌うサンゴに効果的

サンゴ、とくにミドリイシなどのSPS(ポリプの小さなイシサンゴ)は硝酸塩の蓄積を嫌い、リン酸塩が蓄積されるような飼育環境もよくありません。このような水槽ではバイオペレットが威力を発揮します。ただし硝酸塩などを取りすぎてしまうとLPSやソフトコーラルなどにはよくありません。ほどほどにしたいところです。

バイオペレットリアクターを使用すべきではない環境

海藻水槽

海藻水槽の一例

▲バイオペレットは海藻に必要な栄養も取りのぞいてしまう

海藻は硝酸塩やリン酸塩を吸収して栄養としていますが、バイオペレットリアクターを使用するとこれらの栄養塩が水槽から取り除かれてしまいます。そのため海藻の生育スピードが遅くなり、最悪の場合は死んでしまうおそれもあります。海藻を大事にするのであればバイオペレットを使用しないのが賢明です。

魚混泳水槽

魚水槽の一例

▲魚混泳水槽での使用は要注意

魚混泳水槽でバイオペレットを使用することもできますが、この場合はセット初期に注意しなければなりません。

魚混泳水槽では多量の硝酸塩やリン酸塩が蓄積されやすいのでバイオペレットを使ってこれらを取り除きたくなるものですが、硝酸塩やリン酸塩が多い水槽でバイオペレットを使用するとバクテリアが過剰に繁殖してしまうため、酸欠を起こして魚が死んでしまったり、水が白く濁ったりするおそれもあります。

いったん大量に換水などしてからの使用するのをおすすめします。分からないことがあったら専門店の人に相談するのもよいでしょう。

他のバクテリオプランクトンシステムとの違い

ゼオビットシステム

ゼオビットシステム添加剤

▲ゼオビットの添加剤

ゼオビットシステムはドイツのコラレン-ツフト(Korallen-Zucht、KZ)社によるシステムです。このシステムではミドリイシなどのSPSがパステルカラーに美しく色揚がりします。

専用に配合されたゼオライトがアンモニアを引き寄せ、その周辺にアンモニアや亜硝酸を餌とするバクテリアが付着して被うことによりその覆われた内部では嫌気層ができ脱窒も行わうなど、ほかのバクテリオプランクトンシステムと大きく異なるシステムです。

ゼオビットシステムはマニュアル化されており、それに従えばだれにでも美しいパステル色に色揚げされたサンゴの水槽をつくることができますが、SPSメインの飼育方法であること、マニュアルに従う必要があったり、専用のリアクターなどが必要なため高額な初期投資が必要だったりします。また添加剤も他社のものは使用せずKZ社のものに統一しておくべきです。その一方でこのゼオビットシステムの根幹をなすバクテリアであるゼオバクや同社で販売されるハイグレードの添加剤などはベルリンシステムなどでもよく使用されています。

ゼオビットシステムのマニュアルの入手方法はKZ社日本総代理店LSS研究所のサイトをご参照ください。

VSVメソッド

VSVメソッドとは、ウォッカ、砂糖、酢を炭素源とするバクテリオプランクトンシステムの一種です。

これらのうち砂糖と酢はどこの家にもあるものですが、「家にあるものを添加するだけでいいので簡単なシステム!」とはいえません。このシステムでは炭素源を過剰に添加すると雑菌が繁殖したり魚の病原菌も発生するおそれがある、酸欠になりやすいという大きなリスクをはらむシステムであることを理解する必要があります。

安易に真似をするのは禁物で、ここでは詳細を述べるのは控えます。ただアルコールを炭素源にするというのは後述するレッドシーのリーフケアプログラムでも採用されている方法です。

リーフケアプログラム/アルジーマネージメントプログラム

観賞魚店にならぶレッドシー リーフケアプログラムの商品群(茨城県コーラルタウン)

▲観賞魚店にならぶレッドシー リーフケアプログラムの商品群(茨城県コーラルタウン)

リーフケアプログラム/アルジーマネージメントプログラムは、イスラエルのレッドシーが展開し、日本においてはエムエムシー企画レッドシー事業部が取り扱うシステムです。

リーフケアプログラムはサンゴの飼育と維持、色揚げのために4つのサブプログラムに分かれています。リーフファンデーションエレメンツ(カルシウム・マグネシウム・重炭酸塩を添加しサンゴを飼育するのに重要な安定した環境をつくる)、コーラルニュートリューションプログラム(サンゴに必要な栄養をおくる)、コーラルカラー(サンゴの色揚げ)、そしてアルジーマネージメント(硝酸塩・リン酸塩の濃度をコントロール)です。

アルジーマネージメントプログラムにおいては硝酸塩を下げるのにメタノール(メチルアルコール)などが含有されたNO3:PO4-Xという添加剤を使用します。これが炭素源となり、バクテリアを増やし硝酸塩やリン酸塩を水槽から取り除いてくれます。プロテインスキマーは必須で、これにより硝酸塩を含んだバクテリアを水槽から取り除くのです。またバイオペレットを用いたシステム同様に酸欠になるのを防ぐ効果もあります。

同じアルコールを炭素源として使用するVSVメソッドとは異なり、安心して運用できるシステムといえます。レッドシーから販売されているアルジーコントロールプロ マルチテストキットなどを用いた水質測定のキットが必要不可欠となりますが、高いコストパフォーマンス、レッドシーによる商品であり多くの観賞魚店で販売されていること、バイオペレットを使用する方法と違いリアクターが不要である点などが優れているところです。

一方アルジーマネージメントプログラムの欠点としてはバイオペレットと異なり毎日添加する必要があったり、専用のテストキットが必要できちんと添加量を把握する必要があったり、NO3:PO4-Xという炭素源自体が可燃性物質であるため取り扱いや保管に注意が必要である点があげられます。

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バイオペレットリアクターを使用するために必要な環境

バイオペレットリアクターを稼働させるために必要な環境(オーバーフロー水槽サンプ)

▲サンプの中に収納されるバイオペレットリアクター

バイオペレットリアクターを稼働させるために必要な道具や環境を紹介します。

バイオペレットリアクター本体

バイオペレットを回すにはまずバイオペレットリアクターが必要になります。水槽に適したサイズや形状のものを購入しましょう。オーバーフロー水槽にはインサンプのものを、それ以外の水槽ではハングオン式のものを選びたいところです。

水中ポンプとホース

BPリアクターの種類によっては水中ポンプが付属している製品もありますが、付属していない製品は自分でポンプを調達しなければなりません。なお適したポンプは機種ごとに異なります。実際にBPリアクターを運用しているお店で聞いてみるとよいでしょう。また水中ポンプが必要な場合は当然ホースも必要になります。適合した径のホースを使用しましょう。

バイオペレット

バイオペレット

バイオペレットはさまざまなメーカーから販売されています。主な商品としてはカミハタ「NPRバイオペレット」「オールインワンバイオペレット」、ゼンスイ「オリジナルフォーミュラバイオペレット」などが選んで間違いないものです。白か茶色、ベージュの小さな粒状です。

写真のバイオペレットはLSS研究所が輸入販売する蘭D.ヴァンホーテン社のオールインワンバイオペレットで、これひとつでリン酸や硝酸塩を減少させることができる優れモノですが、消耗がやや早いのが難点です。ほかリン酸の吸着に優れているもの、消耗しにくく長く入れっぱなしにしてもよいものなど、さまざまな特性をもつ商品がラインナップされており、自分で選ぶことができますが、その分どのバイオペレットを使っても同じ効果が得られるわけではないということに注意します。

プロテインスキマー

バイオペレットを使用するのにはプロテインスキマーが必要になります。

プロテインスキマーを使用することで、硝酸塩を取り込んだバクテリアやペレットのカスを水槽から取り除いたり、好気性バクテリアの増殖により酸欠に陥るリスクを解消します。このプロテインスキマーが無かったり、調子がイマイチだと、バクテリアを取り除けず水槽が酸欠になってしまったり、ペレットのカスが水中に舞ってしまうおそれもあります。

バクテリア

バイオペレットはバクテリアの餌のようなものです。バクテリアが増殖することでリン酸や硝酸塩が水槽から取り除かれます。添加は必須ではありませんがバクテリアを追加することで効果アップが期待できます。KZ社から出ているゼオビット用のバクテリアであるZeobakなどのバクテリアを添加するとよいでしょう。

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バイオペレットリアクターを実際にセットしてみる

FMR75にバイオリアクターを入れた状態

▲FMR75にバイオリアクターを入れた状態

今回使用したBPリアクターはDD H2Ocean FMR75という製品です。これは「流動性メディアリアクター」と呼ばれるもので、バイオペレットのほかリン酸吸着剤などを入れて使用することもできます。

DDは英国の観賞魚器具メーカーで、日本においては「レッドシー」や「H&S」などのブランドと同様にエムエムシー企画レッドシー事業部が取り扱います。

NJ2300N。オーバーフロー水槽の循環ポンプにも使用できるパワーをもつ

▲NJ2300N。オーバーフロー水槽の循環ポンプにも使用できるパワーをもつ

FMR75にはポンプが付属していませんので、ポンプは別に購入して用意する必要があります。エムエムシー企画が推奨するポンプは流量1000リットル/hのものとなっています。今回はナプコリミテッドジャパンの「NJ2300N」を使用しました。1200~2300リットル/hの流量を誇ります。ポンプの流量は強すぎても弱すぎてもペレットが固まってしまいよくありません。

今回のBPリアクターの設置には例のごとくコーラルタウン(茨城県)にお世話になりました。ありがとうございました。こちらは中古品で水漏れのおそれがあったため、サンプ(水溜め)にインする方法で使用しましたが、FMR75はインサンプでもサンプのフチにかけて使用することもできます。

ンプインされたFMR75

▲サンプインされたFMR75

今回はメンテナンスがしやすいようにプロテインスキマー(H&S HS850)の手前において使用します。またバイオペレットリアクターは水の流れで必ずプロテインスキマーの前に置くようにしたいところです。

これはバイオペレットの残りカスや栄養塩を取り込んだバクテリアをプロテインスキマーによって取り除く必要があるためです。また、先ほども述べたように、プロテインスキマーは水槽に酸素を送る役目もあり、バクテリアや飼育する生物が酸欠で弱ったり死んだりするのを防ぎます。

また左に殺菌灯がうつっていますが、バイオペレットを使用するなら使わない方がよいかもしれません。というのは殺菌灯はよいバクテリアも悪いバクテリアも皆殺しにしてしまうのです。一方バイオペレットを使用することでバクテリアが増殖しますがこのバクテリアにはよいものも悪いものも含まれており、悪いバクテリアが増殖するおそれがあることも考慮して今回は設置しています。ただ浮遊して殺菌灯に殺されるバクテリアにも硝酸塩が含まれているためそうなると極端に硝酸塩を減らすことは難しくなるでしょう。

バイオペレットリアクターのメンテナンス

バイオペレットはバクテリアの餌ですので、当然ながら使用しているうちに徐々に数が減っていきます。そのため大体3~6か月をめどに追加していきます。減りが早いと感じたらもっと交換スパンを短くしてもよいでしょう。

もちろんプロテインスキマーの汚水カップの中を清掃することを忘れてはいけません。バイオペレットを使用するとスキマーに汚水がたまるのが早くなりますので、掃除はこまめにしたいところです。このほか定期的な換水や添加剤の添加など、海水魚やサンゴを飼育する上での通常の世話も必要となります。またバイオペレットリアクターを回すのに必要な水中ポンプのメンテナンスもたまにはしたいところです。

バクテリオプランクトンシステムまとめ

バイオペレット

  • 専用のリアクターにバイオペレットを投入してペレットを回すバクテリオプランクトンシステム
  • 毎日バイオペレットを添加することなく安全に硝酸塩やリン酸塩を下げる
  • バイオペレットの種類によっては思うような効果が得られない

ゼオビット

  • ゼオライトとバクテリアを用いた高度なバクテリオプランクトンシステム
  • サンゴがパステルカラーに色揚がりする
  • 初期投資が高額
  • SPS以外のサンゴに不向き
  • マニュアルに従えば安全性は高い

VSVメソッド

  • ウォッカ・砂糖・酢を炭素源としたバクテリオプランクトンシステム
  • 低栄養塩が実現できSPSが色揚がりする
  • 雑菌が繁殖し水槽崩壊のおそれあり
  • 危険性が高い

リーフケアプログラム/アルジーコントロールプログラム

  • レッドシーが開発したシステム
  • アルジーコントロールプログラムは硝酸塩・リン酸塩をコントロールするバクテリオプランクトンシステムの一種
  • 添加して水質を測るだけ、リアクターが不要
  • 毎日添加する必要がある
  • 水質検査には専用のテストキットが必要
  • 危険性は低いが添加剤が可燃物であるため保管場所などに注意
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