2022.08.09 (公開 2017.11.06) 水槽・器具
プロテインスキマーの効果と仕組み~水槽サイズ別おすすめスキマーも紹介
海水魚を飼育していると、色鮮やかなサンゴ、特にミドリイシなどが気になってくるものです。しかしサンゴは海水魚よりも水質の悪化に弱い。「すぐ死なせちゃったらどうしよう…」とお思いの方も多いでしょう。
そんなときにおすすめしたいのがプロテインスキマーです。プロテインスキマーがあれば、魚とサンゴの両方を上手く飼育するのを助けてくれます。ですがこのプロテインスキマーとはどのような機材で、どのような特徴があるのか、初心者にとっては理解しにくいところも多いはずです。値段もピンきりですし、「必要ない」「自作できる」と話す方も中にはいます。
ここではプロテインスキマーの仕組みや種類、具体的なおすすめの商品を紹介していきます。少々読み応えがある(長い)記事内容ですが、プロテインスキマーが何たるかをしっかり理解できるはずです。
プロテインスキマーの仕組み・原理
▲ベンチュリー式スキマーの原理
「プロテイン」というのはタンパク質、「スキマー」というのは掬いとる、という意味です。これらをつなげるとプロテインスキマーとは「タンパク質を掬い取る装置」ということになります。
原理としては海水に空気を吹き込ませて付着性のある泡を発生させ、その泡にタンパク質を吸着させます。泡はプロテインスキマーの汚水カップにまで上がり、飼育水からタンパク質が取り除かれるというシステムです。
プロテインスキマーは海水魚飼育専用のアイテムで、淡水魚用のものは存在しません。これは淡水の水槽では泡がすぐ消えてしまいカップまで上がらず、プロテインスキマーが機能しないからです。淡水魚水槽で使うスキマーというものもあるのですが、これは油膜や浮遊するごみなどをこしとるもので、プロテインスキマーとは異なる商品です。
プロテインスキマーの役割・効果
プロテインスキマーとは、基本的に魚などの排せつ物や残り餌、あるいは微生物の死骸などを生物ろ過が行われる前に取り除くための器具です。大量に泡を発生させ、タンパク質の汚れが泡に吸着する性質を利用し、泡ごと水槽から汚れを取り除いてしまおう、というものです。このほかにプロテインスキマーを使用することにより泡が発生するため、酸素を水槽やろ過槽に棲む魚や生物、ろ過バクテリアに供給する役目もあります。
飼育したい生物の種類や飼育システムにより必要性の有無が異なります。しかしながらサンゴ、とくに硝酸塩の蓄積を嫌うミドリイシの仲間を飼育するのであれば、プロテインスキマーは必須と言えます。
ベルリンシステム
ミドリイシなど、水質にうるさいSPS飼育に適したシステムといえるベルリンシステムはプロテインスキマーなしには成り立ちません。
魚からでた排せつ物など、水を汚す原因となるものはろ過槽を用いず、プロテインスキマーを使って水槽から取り除きます。
▲プロテインスキマーを使わない生物ろ過のしくみ
▲ベルリンシステムのしくみ
ろ過槽を用いて生物ろ過を行ってしまうと、その過程で水槽にはミドリイシが嫌う硝酸塩が蓄積されてしまいますので、硝酸塩になる前にプロテインスキマーの力により水槽から水を汚す物質を取り除きます。そうすれば水替えもしなくていいようにも思えます。
しかし、一般の海水魚水槽ほど必要でないものの、添加剤などの使用により少し崩れてしまった海水のイオンバランスを整えたり、わずかに発生した硝酸塩を水槽からとりのぞくという意味でも水替えはした方がよいでしょう。
プロテインスキマーの選び方
本来プロテインスキマーのことを語る前に、プロテインスキマーをつけたい水槽の形状について考えなければいけません。水槽は大きく二つのタイプにわけられるはずです。
- サンプがなく、外掛け・外部式・上部式フィルターを使用している水槽
- サンプのあるオーバーフロー水槽
前者については基本的に外掛けのプロテインスキマーをつけるしか方法がありません。一方、サンプの有るオーバーフロー水槽ではインサンプ式(内部式)プロテインスキマー、初心者には扱いにくく高価ですがそのぶん高いパフォーマンスが自慢のダウンドラフト式プロテインスキマーなども使用することができます。
サンプがない水槽
外掛けのプロテインスキマーについては、レッドシーの「プリズム」やカミハタ「海道達磨」などがありますが、前者についてはもうすでに在庫分のみで販売終了となってしまいます。
一方海道達磨はベルリンシステムで飼育する場合150リットル以下、他のろ過装置との併用であれば360リットル以下の水量(いずれもろ過装置やサンプなどを含めた総水量)に対応と謳っていますが、現実にはそれの半分~2/3くらいの総水量対応と考えたほうがよいでしょう。現実的には90cm以下の水槽に適したプロテインスキマーといえそうです。
このほかにも小型のエアリフト式と呼ばれる、エアポンプを使用するタイプのプロテインスキマーがありますが、これは小型水槽用で、大きいものでも45~60cm水槽くらいまでしか対応しません。
外部式プロテインスキマー(H&S HS-Aシリーズなど)のような製品はサンプがない水槽でも使えそうに思えますが、使用することはおすすめしません。絶対に使用できないわけではないのですが、底砂に使っているサンゴ砂やライブロックの小片や貝殻などの異物がつまって、故障してしまうおそれがあるからです。一方インスタントオーシャン「スキム2.0」のようにインサンプ、外掛け両方に対応するプロテインスキマーもあります。
サンプがなく、ろ過槽と併用する場合
▲外部式ろ過槽を使用するときはスキマーを併用したい
ろ過槽、とくに外部式ろ過槽を使用するときにはプロテインスキマーを併用するのがおすすめです。外部式ろ過槽は静かで置き場所を選ばず、また、上部ろ過槽と異なり、水槽の上に多くの照明を置くことができ、サンゴ水槽にも使用しやすいというメリットがあります。しかし、密閉式のろ過槽である外部ろ過槽ではろ材に酸素がいきわたりにくく、ろ材も酸素を消費し、水槽全体が酸欠になってしまうおそれがある、というデメリットもあります。
プロテインスキマーを併用するとろ過される前に有機物を水槽から取り除き、水槽に酸素を供給するため、外部ろ過槽の弱点をカバーします。
もちろん外掛け式ろ過槽や上部ろ過槽など、他のろ過槽とも併用して使うことができます。90cm以下の水槽で使う場合先述したスキム2.0などのプロテインスキマーがおすすめですが、120cm以上の大型水槽用のものはありません。
なお、ろ材はサンゴ砂や専用ろ材のように、多孔質であり、ろ材のサイズが大きく、水をアルカリ性に傾けるものを使用します。間違っても熱帯魚用のピートモスなど、水を酸性に傾けるものを使用してはいけません。ろ材の量としては、プロテインスキマーを使用していてもろ過槽に多めにいれるようにします。ろ材の量が多いほどバクテリアがつく場所が増えるからです。
あまりたくさんろ材を入れてしまったら水の通りが悪くなるのでは、と思いがちですが、そうならないようになるべく大きなサイズのろ材を使用するとよいでしょう。
プロテインスキマーは水泡を発生させ、海水に酸素を供給するという役割もしてくれます。
サンプがある水槽
サンプがある水槽では、筒状やコーン状、ハーフコーン状のインサンププロテインスキマーを自由に選ぶことができます。ベンチュリー式のプロテインスキマーの他、パワフルなダウンドラフト式のプロテインスキマーを選ぶこともできますが、ダウンドラフト式のスキマーは他のスキマーよりも初心者には若干扱いにくくまた高価であるため、初心者アクアリストにはベンチュリー式のスキマーがおすすめといえます。
プロテインスキマーの方式とメンテナンス
日本で販売されているプロテインスキマーにはエアリフト式、ベンチュリー式、ダウンドラフト式などの種類があります。
ここではそれらのうち、小型水槽に適した「エアリフト式」と、中~大型水槽でサンゴ水槽にも使える「ベンチュリー式」の二つをご紹介します。
エアリフト式プロテインスキマー
▲オルカの「ミニット」。水槽の縁にかけて使うタイプのプロテインスキマー。
エアポンプとウッドストーンを使って微細な泡を発生させる方式です。マメデザイン「マメスキマー」シリーズや、オルカ「ミニット」などの商品があります。日本のアクアリウムにおいては大型水槽用のものはなく、小型水槽向けの商品が中心です。
なおこの方式の商品はポンプが付属していないのが多いですので、かならず適合したサイズのエアポンプを購入しておく必要があります。
エアリフト式のデメリット
エアリフト式のプロテインスキマーはそれほど高い能力はなく、単体でベルリンシステムなどという用途には適していません。あくまで補助的、小型水槽(最大60cmまで)で魚を飼育し、汚れにくくするという使い方が有効です。
60cmでも魚・サンゴをたくさん入れている場合はほとんどその役目を担えない可能性があります。
メンテナンス方法
▲ウッドストーンはそれぞれのスキマーの専用品を使用する
メンテナンスとしてはまずカップにたまった汚れをスポンジやブラシなどで落とす作業が必要になります。
このほかエアリフト式のみの消耗品としてウッドストーンの交換が必要になります。目詰まりして泡が出なくなったら早めに交換(1ヶ月に1回程度)しましょう。ウッドストーンは木なのでどうしても腐ります。「洗えば大丈夫」というよくわからない口コミを見かけますが、これは消耗品です。
ベンチュリー式プロテインスキマー
※クリックで拡大
▲筆者宅で使用しているベンチュリー式スキマー「H&S HS850」
ベンチュリー式のプロテインスキマーは、水中ポンプで水流を発生させ、それに空気を噛ませる方式です。現在もっともよく普及している方式で、さまざまな形がありますが、初心者の方は内部式の筒状のものを使用すれば間違いありません。「H&S」や、「スキムズ」、「リーフオクトパス」などさまざまなメーカー、ブランドのものがさまざまな大きさの商品を販売しています。
ベンチュリー式のメリット・デメリット
ベンチュリー式の最大のメリットは、ハイパワーであること、サンゴ飼育、あるいは大型水槽で魚を飼育するときにろ過の補助を担うのに最適な方式であることです。
しかしポンプを水中に置く方式で水温上昇を招いたり、ポンプが故障した際、交換するときは専用のポンプが必要、エアリフト式とくらべかなり高価、スペースを取ってしまうという点もあげられます。
なおスキマーの種類によっては50Hz用と60Hz用のものがありますので、お住まいの地域にあった周波数のものを購入する必要があります。
メンテナンス方法
▲採取カップに汚水や泡がたくさん入っている様子。掃除が必要
▲内側のパイプにも汚泥がびっしりこびりついている。ブラシなどで洗おう。
エアリフト式同様カップの中にたまった汚れを取り除くということが必要となります。放置しているとかなり臭います。たまに泡を発生させるためのインペラーの掃除も行うとよいでしょう。またポンプに何か詰まっていると泡の出が悪くなったり、大きな破片が詰まるとポンプの故障にもつながりますので、気をつけなければなりません。
スキマーの調整
セットしてすぐの状態、あるいは足し水をした後などは、泡が立ち上がりすぎてねばりけの少ない泡がカップの中にあふれてしまう「オーバースキム」を起こしてしまうこともあります。
オーバースキムを防ぐためにエアーや排水量を調節していきましょう。カップに汚泥や褐色の泡がたまるような状態にします。どうしても調節が難しいときは販売店の方に尋ねるのがベストといえます。
水槽サイズ別おすすめプロテインスキマー
ここからは具体的な水槽にあったプロテインスキマーの選び方、おすすめの商品を紹介していきます。
小型水槽(幅60cm以下)
幅60cm以下の小型水槽にはエアリフト式のスキマーがおすすめでしたが、今では小型水槽にも使えるベンチュリー式の外掛けスキマーも販売されています。カミハタ「海道達磨」ゼンスイ「QQ1」などがそれです。
カミハタからは上記の商品の他にフィルターとプロテインスキマーの両方がセットになった「海道河童」という商品も販売されています。このシステムでベルリンシステム…となるとまず無理なのですが魚や丈夫なサンゴを小型水槽で状態よく飼育するという点では優れたパフォーマンスを見せてくれるでしょう。
ただし水槽のふちにかけるタイプのプロテインスキマーはガラスの厚みやフレームありの水槽では使用不可なことがありますので、注意が必要です。
大型水槽・オーバーフロー水槽
大型水槽用のもので外掛け式のものはあまり現実的ではありませんので、オーバーフロー水槽でどんなプロテインスキマーを使うか考えたほうがよいでしょう。大型のオーバーフロー水槽であればサンプにベンチュリー式の内部式スキマーおよびダウンドラフト式のものを使用するのをおすすめします。
実際に私も使用しているベンチュリー式のプロテインスキマーが最も大型水槽には適しています。ベンチュリー式には筒のようなものやコーンのようなものなど色々な形のプロテインスキマーがありますが、初心者の方であれば筒状の形状のものが水位の変動にも強く、扱いやすくてよいように思います。コーン型よりもパワーが落ちる、とかいわれることもありますが、パワー不足が気になるときはワンランク上のものを購入するのもよいです。
たとえば筆者の水槽は90cm水槽で、水槽とサンプを合わせ220リットルほどですが、H&S(エムエムシー企画レッドシー事業部)の製作する筒状のプロテインスキマーの中でも850リットルまで対応できるHS850を使用してサンゴや魚を飼育しています。
ただこの手のものはかなり高額となります。できれば店舗で吟味し、店員さんとも相談しながら購入したいところです。なお中古品・アウトレット品市場で探すのもおすすめです。お宝がゴロゴロ転がっていますし、十分なパワーを発揮してくれますのでそちらも参考までに。
主なベンチュリー式プロテインスキマー比較表
※クリックで拡大できます。
プロテインスキマーを使うデメリット
ここまでの説明を読むと、いいことばかりのように思えるプロテインスキマーですが、デメリットもあります。
プロテインスキマーが水槽から取り除くのはデトリタスや排せつ物、残り餌ばかりではなく、ヨウ素や微量元素なども水槽から取り除いてしまうのです。これらの定期的な添加が重要です。
サンゴ用のリキッドフードなどはプロテインスキマーなどにこしとられることもあります。そのような餌をサンゴに与えるときはいったんプロテインスキマーを停止させてから与えるとよいでしょう。オーバーフロー水槽ではメインポンプを停止させてもよいのですが、再始動を忘れてしまうと魚が死んでしまうおそれもありますので、注意が必要です。魚の粘膜を保護する薬剤のようにプロテインスキマーと相性が悪いものもあり、そのようなものは使ってはいけません。
またプロテインスキマーの種類によっては音がうるさいなどの問題点もあります。音対策としては比較的音が静かなDCポンプを使用した製品を選択するなどにより改善される場合があります。DCポンプは流量を調節できるなどのメリットも大きいので、近年人気があります。しかしながら耐久性という面ではACポンプの方が優れている、といえます。
プロテインスキマーまとめ
- プロテインスキマーとは排せつ物や残り餌などを生物ろ過が行われる前に取り除くための器具
- 海水魚専用の機材で、泡が立ちあがらない淡水では使用不可
- ミドリイシ水槽ではマストアイテム
- 生物ろ過との併用もおすすめ。酸素を供給する役割も
- エアリフト式・ベンチュリー式・ダウンドラフト式などがある
- エアリフト式はエアポンプがなければ働かない。小型水槽向け
- エアリフト式はウッドストーンの目詰まりに注意
- ベンチュリー式はサンプのあるオーバーフロー水槽に使用したい
- ベンチュリー式はポンプのメンテナンスも重要
- カップに汚水や汚泥がたまるので取り除くことも大事
- ヨウ素や各種微量元素を取り除くというデメリットも
- DCポンプの使用で駆動音が低減されることも