2020.12.14 (公開 2020.12.14) 海水魚図鑑
シコンハタタテハゼ(パープルファイヤーゴビー)の飼育方法~餌・混泳のポイント
ハゼ亜目魚類最高峰的な種といえるシコンハタタテハゼ。アケボノハゼに似ていますが、尾が黄色く、顔にも黄色が入る美しい種類です。高価な魚なので飼育には覚悟が必要かもしれませんが、ハタタテハゼ属の魚を飼育したことがある方ならば、飼育は容易です。
ただ非常に臆病であり、「飼育難易度が高い」というわけではありませんが、高価なお値段もあわせ、初心者におすすめできるものではありません。飼育にあたっては特に混泳や飛び出しに注意する必要があります。
標準和名 | シコンハタタテハゼ |
学名 | Nemateleotris helfrichi Randall and Allen, 1973 |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・ハタタテハゼ属 |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 23~25度 |
水槽 | 35cm以上 |
混泳 | 同種、気が強い魚とは注意が必要 |
サンゴ飼育 | 可 |
シコンハタタテハゼの分類
まずは、タイトルの括弧の中にある、「パープルファイヤーゴビー」という名称について解説いたします。日本では本種のことを「パープルファイヤーゴビー」なんていう名前で販売しているのですが、英語ではヘルフリッチダートフィッシュと呼びます。英語で「パープルファイヤーゴビー」と言ったらアケボノハゼを指すことが多く注意が必要です。英語や、英語風の名前は、万国共通の名称ではありません。学名は全世界で通じますが、考え方によって属など違ってくる場合があります。日本のアクアリストは、標準和名も覚えておくとよいでしょう。
初心者にもお勧めできる海水魚、ハタタテハゼと同じ仲間ですが、本種はこの属としてはもっとも高価なものです。以前は1万円を切るような値段でも販売されていましたが、最近はじわじわと値段が上がってきているようです。それでも人気があります。
なおハタタテハゼ属の交雑は、ハタタテハゼ×アケボノハゼがよく知られていますが、ハタタテハゼとシコンハタタテハゼの交雑も水中で撮影されています。残念ながら観賞魚としてはまだ流通はしていないようなのですが…。
なお遊泳性ハゼ飼育の基本についてはこちらもご覧ください。
シコンハタタテハゼの生息する海域と個体の選び方
分布域はハタタテハゼと比べるとやや狭く西~中央太平洋に限られます。ハワイ諸島には分布していません。日本における分布域は高知県、琉球列島、小笠原諸島に限られますが、殆ど入ってくることはありません。
日本にはマーシャル諸島など西―中央太平洋の深場から輸入されてきます。また色彩の変異も見られ、南太平洋には体だけでなく頭もピンク色の鮮やかなものが生息しています。しかし、そのような個体はなかなか入ってこず、また値段もまた極めて高価であり、なかなか入手しにくい魚といえます。
シコンハタタテハゼの飼育に適した水槽
大きくても7cmまでの小魚なので水槽はそれほど大きくなくて良いです。35cmくらいの水槽でも冷却装置をしっかりしておけば飼育可能です。しかし、やや深場の魚なので水槽用クーラーが欲しいところです。他の魚との混泳を考えるならば、60cm水槽が必要になってくるでしょう。
シコンハタタテハゼの生息水深はアケボノハゼよりも深めで、潮がよく流れるサンゴ礁域の深場、水深40mから、深い場所では水深90m位までの深さに生息するとされます。ですから、暑いのは苦手なようです。やや温度低めの23℃くらいがよいかもしれません。25℃でも飼育できましたが、半年しか飼育できていません。また驚くと跳ねることもあるので、フタは用意しておきたいところです。
シコンハタタテハゼの餌
基本的に口に入るサイズの粒状餌を与えるのが適しています。このほかに、おやつみたいな感じでたまにイサザアミやコペポーダなどの冷凍餌を与えると、かなり喜ぶでしょう。
もちろん、冷凍の餌は水を汚すことがあるので、水質には十分気を付ける必要があります。冷凍の餌はたまに与えるくらいでちょうどよいのです。
シコンハタタテハゼと他の魚との混泳について
ハタタテハゼやアケボノハゼとは混泳も可能ですが、サイズや導入の順番などによっては争う可能性があるので、チェックを怠らないようにしたいものです。クロユリハゼ属やサツキハゼ属、あるいはハゼ科・ベニハゼ属のアオギハゼなど、他の属の遊泳性ハゼとの飼育は、特に大きな問題にはなりません。またカクレクマノミやスズメダイの仲間の比較的温和な種、カエルウオの仲間、小型のイトヒキベラややはり小型のハナダイの仲間などとも混泳できます。生息環境から考えると、特に小型のイトヒキベラやハナダイの仲間はいい混泳相手になるのではないでしょうか。
難しいのはハタタテハゼやアケボノハゼの仲間同様にキュウセンの仲間やニセモチノウオの仲間、あるいはメギスの仲間など強い魚です。これらは気がかなり強いので、要注意です。勿論カエルアンコウの仲間やハタの仲間、ウツボの仲間、フエダイなどの肉食性の魚とも一緒に飼うことはできません。豪華なご飯になってしまいます。
ヤッコ、ベラ、テンジクダイの仲間なども混泳は危険です。一度一緒に入れてしまうと、岩場に隠れて姿を見せなくなるということもあります。
シコンハタタテハゼ(パープルファイヤーゴビー)とサンゴや無脊椎動物との相性
他の遊泳性ハゼと同様、サンゴには特に危害を与えることはありません。やや深場に生息する種ですので深場ミドリイシやLPSなどと組み合わせると似合います。
できればペアで導入して泳がせてみたいところですが、ハゼの仲間とは思えないほど高価な種であり、なかなか難しいかもしれません。しかしもしそれが叶うとすればそれは最高の水景となることでしょう。