2020.05.07 (公開 2020.04.24) 海水魚図鑑
ヨスジリュウキュウスズメダイの飼育方法~ミスジリュウキュウスズメダイとの違いに注意
ヨスジリュウキュウスズメダイはスズメダイの仲間で、同じ属の魚であるミスジリュウキュウスズメダイによく似ていますが、若干性格には違いがあるようです。また背鰭や尾鰭の模様もミスジリュウキュウスズメダイと異なっているところがあります。ほかのスズメダイ同様枝状のサンゴのそばに見られることが多いですが、日本のサンゴ礁では少ない種類です。今回はこのヨスジリュウキュウスズメダイの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | ヨスジリュウキュウスズメダイ |
学名 | Dascyllus melanurus Bleeker, 1854 |
英名 | Black-tail dascyllus, Black-tail humbugなど |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ミスジリュウキュウスズメダイ属 |
全長 | 8cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトグリーン、海藻70など |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | 性格は強めだが幼魚は臆病なところも |
サンゴとの飼育 | 問題なし |
ヨスジリュウキュウスズメダイって、どんな魚?
▲ヨスジリュウキュウスズメダイ
ヨスジリュウキュウスズメダイはスズメダイ科ミスジリュウキュウスズメダイ属の魚で、西太平洋からカロリン諸島に生息しています。日本においては沖縄島や慶良間諸島、宮古諸島に生息していますが数は多くありません。主に東南アジアから輸入されてくるようです。
なおミスジリュウキュウスズメダイ属のうち、「~リュウキュウスズメダイ」と名前についている3種を「リュウキュウスズメダイ」としてひとまとめにする風潮がありますが、それには賛同できません。なぜならば、この「~リュウキュウスズメダイ」と名前についている3種はそれぞれ性格などが若干ことなっているところがあるからです。
この仲間を英語でハンバクといいますが、humbugとは「ばかばかしい」とか「ごまかし」といったほか、イギリスなどでみられる白黒のキャンディのことをそういったりするようです。たしかにヨスジリュウキュウスズメダイの模様は、そのキャンディによく似ています。
ミスジリュウキュウスズメダイとの見分け方
▲ヨスジリュウキュウスズメダイの特徴
▲よく似たミスジリュウキュウスズメダイ
ヨスジリュウキュウスズメダイは体側に太い横帯があり、ミスジリュウキュウスズメダイによく似ています。写真はヨスジリュウキュウスズメダイの特徴をまとめたもので、このうち「体側の黒色帯が背鰭でつながらない」、「尾鰭にも黒色帯がある」という特徴でミスジリュウキュウスズメダイと見分けることができます。ミスジリュウキュウスズメダイでは、体側の黒色帯が背鰭でつながり、尾鰭には黒色帯がなく真っ白になります。
ファインディング・ニモ
映画「ファインディング・ニモ」に登場する歯科医の水槽で飼育されているスズメダイの「デブ」のモデルについては、多くの媒体で「ヨスジリュウキュウスズメダイ」として紹介されています。確かに、「デブ」の尾鰭に黒い帯があり、これはヨスジリュウキュウスズメダイの特徴なのですが、体側にある横帯が背鰭でつながっているところはミスジリュウキュウスズメダイの特徴になります。この2種の両方の特徴を併せ持ったキャラクターといえるでしょう。
なお、ヨスジリュウキュウスズメダイとミスジリュウキュウスズメダイの間で交雑個体が出てくることがあります。ただしこのような個体は尾柄部に細い黒い線があるだけで「デブ」ほどははっきりとしていません。また近年インド洋に生息するDascyllus abudafurという種が復活し、この種も尾鰭に黒い帯が入りますが、ヨスジリュウキュウスズメダイほどはっきりしたものではありません。
ヨスジリュウキュウスズメダイ飼育に適した環境
水槽
▲90cm水槽での混泳例
小型水槽でも飼育できますが、安定して長期飼育を目指すのであれば少なくとも45cm水槽は用意してあげたいところです。ほかの魚と混泳するのであれば60~90cm水槽で飼育するようにしたいところです。
水質とろ過システム
ヨスジリュウキュウスズメダイは丈夫で飼育しやすいですが、あまりにも水が汚いとウーディニウムなどの病気に罹ってしまう可能性があります。なるべくきれいな海水で飼育することを心がけましょう。そのためにはろ過槽が重要で、外掛けろ過槽や外部ろ過槽はあまりおすすめできません。上部ろ過槽かオーバーフロー水槽が初心者に扱いやすく、しかもろ過能力が高いのでおすすめです。
サンゴを飼育するためのベルリンシステムでの飼育もできます。ただしベルリンシステムはあくまでもサンゴを飼育するためのシステムであり、魚を多く入れることができるシステムではないので注意が必要です。
水温
サンゴ礁の魚なので、基本的には25℃前後の水温で飼育するようにしましょう。もちろん水温の変動が大きいと病気にかかってしまうこともありますので、一定の水温で飼育することが大切です。病気の予防には殺菌灯、と思ってしまいがちですが、実際にはそれよりも水温を安定させることのほうがずっと大切です。
ヨスジリュウキュウスズメダイに適した餌
ヨスジリュウキュウスズメダイは動物プランクトンなどを捕食しています。水槽内ではおおむね海水魚用の配合飼料を最初から食べてくれることが多いので助かります。海水魚の定番フードである「メガバイト」を与えるのであれば小型個体はSサイズ、ある程度育った個体はMサイズというように、魚の大きさに合わせて餌の粒サイズを選ぶようにします。なお、本種は藻類も食するようで、メガバイトグリーンや、これをベースにした海藻70をメインに与えるのもよいでしょう。このほか、各種プランクトンフードも与えると食べますがこのような餌は与えすぎると水を汚しますのでほどほどにしましょう。
ヨスジリュウキュウスズメダイをお迎えする
ヨスジリュウキュウスズメダイはミスジリュウキュウスズメダイと異なり数が少なく採集はしにくいので、購入に頼ることになります。主にフィリピンやインドネシアなどから入ってくるので、高価なものではありません。ただし安価な分魚の状態をしっかり見極める必要があります。これは安価なため雑に扱われがちだからです。入荷直後のものは買わず、落ち着いた状態の個体を購入するようにしましょう。もちろん体が赤くただれていたりとか、白い細かい点がついている、泳ぎ方がおかしいなどの個体は購入してはいけません。
ヨスジリュウキュウスズメダイとほかの生物の関係
ほかの魚との混泳
▲成魚は大型水槽で大型魚と混泳してもおびえない
ヨスジリュウキュウスズメダイもミスジリュウキュウスズメダイ同様きつめの性格をしていますが、幼魚のうちはミスジリュウキュウスズメダイよりも幾分おとなしいように思え、気が強い魚と飼育する際はおびえていないか、よく観察しましょう。一方大きく成長したものは気が強いところがありますので、ヤッコやニザダイ、アイゴ、ベラ、マツカサなど大きめの魚との混泳も大丈夫です。逆に成長したものは小魚との混泳は難しくなってしまうことがあります。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲ヨスジリュウキュウスズメダイとマメスナギンチャク
サンゴを食べるタイプの魚ではないので、サンゴ水槽での飼育にも適しています。どんなサンゴとも飼えますが、生息環境を考えると浅場のSPSやソフトコーラルがよく似合うでしょう。ただし本種を入れるとサンゴ水槽に適した小魚は入れにくくなってしまうこともありますので注意が必要です。一方イソギンチャクは捕食性が強いため入れないほうが無難です。なお、マメスナギンチャクの類やディスクコーラルとは問題ありません。
一方甲殻類は大型のカニ、大型のヤドカリ、大型のエビ(イセエビなど)との飼育もやめましょう。これらは魚を捕食してしまうこともあるからです。クリーナーシュリンプやサンゴヤドカリ、ベニワモンヤドカリなどは問題ありません。
ヨスジリュウキュウスズメダイ飼育まとめ
- ミスジリュウキュウスズメダイに似るが背鰭や尾鰭の斑紋が異なる
- ファインディング・ニモの「デブ」の尾鰭はヨスジリュウキュウスズメダイに似る
- 小型水槽でも飼育できるが混泳するときは60~90cm水槽で飼育したい
- 水質悪化には強いが、できるだけきれいな水で飼いたい。ろ過はしっかり
- 水温は25℃で一定を保つ
- 配合飼料はよく食べてくれる
- 高価な魚ではないが雑な扱いを受けている可能性が高い。状態はよくチェック
- 成魚は大型水槽で大型魚と飼ってもおびえないが、幼魚はおとなしめなので注意
- サンゴには無害だがイソギンチャクとの飼育は避ける
- 大型の甲殻類との飼育も避けたい