2020.01.25 (公開 2017.07.18) 海水魚図鑑
ホンソメワケベラの飼育方法~餌・混泳の注意点
ホンソメワケベラはクリーナーとして有名なベラです。サンゴ礁を遊泳し、ほかの魚に近づき寄生虫や粘液などを食べているのです。大型魚はホンソメワケベラを食べることはほとんどなく、いわゆる「共生関係」としてよく知られています。なお、本種はベラの仲間ではありますが、一般的なベラとは異なり、夜間は砂に潜るのではなく、岩陰などで粘液を張って休息します。今回はホンソメワケベラの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | ホンソメワケベラ |
学名 | Labroides dimidiatus (Valenciennes, 1839) |
英名 | Bluestreak cleaner wrasse |
分類 | スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・ソメワケベラ属 |
全長 | 約12cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 23~26度 |
水槽 | 60cm以上 |
混泳 | 多くの魚と組み合わせられる |
サンゴ飼育 | 可 |
ホンソメワケベラってどんな魚?
▲他魚(ヒメアイゴ)のクリーニングをおこなうホンソメワケベラ
▲ホンソメワケベラの幼魚
ホンソメワケベラはベラの仲間で、ほかの魚の体表についた寄生虫(白点病には効かない、要注意)を食べるという習性で有名で、「クリーナーラス」と呼ばれています。ホンソメワケベラと大型魚の関係はいわゆる「共生関係」にあり、よく紹介されています。
色彩は青い色に黒い線が美しく、それだけでも美しい魚です。一方幼魚は成魚とは異なり黒い部分が多いのが特徴です。全長10cmを超える種ですので小型水槽での飼育は難しく、できるだけ大きな水槽(60cm水槽)で飼育してあげたいものです。
標準和名は昔は「ホソソメワケベラ」と呼ばれていましたが、現在は「ホンソメワケベラ」です。「ソ」と「ン」を間違えたものともいわれますが、詳しくは不明です。また「チゴベラ」とした本もあります。
ベラの仲間は夜間の睡眠時、砂の中に潜って眠るものと、岩の隙間などで眠るものがいます。ホンソメワケベラは後者で、夜間は岩陰で眠りますが、粘液の寝袋をつくり、その中で眠るのです。ほかの魚ではブダイの仲間の一部の種も同様に眠ります。
ホンソメワケベラのそっくりさん
ニセクロスジギンポ (スズキ目イソギンポ科ニジギンポ族)
▲ニセクロスジギンポ
ホンソメワケベラにそっくりな魚にニセクロスジギンポという魚がいます。これはその名の通りイソギンポ科の魚ですが、このカエルウオと同科の魚とは思えぬほどよく泳ぎます。遠目からはホンソメワケベラとは見分けがつかないのですが、よく見たら頭部の形状がことなり、ホンソメワケベラにある鱗が本種にはないなどの特徴もあります。
そっくりさんですが、クリーニングはしません。それどころか、ほかの魚の鱗や皮膚を食いちぎって食べるという悪癖があります。ホンソメワケベラになりすまして餌を得るのですが、このほかホンソメワケベラに化けることでハタなどに捕食されにくいというメリットもあります。たまに販売されることもありますが、上記の習性から、飼育はあまりおすすめしません。
ネオンゴビー (スズキ目ハゼ科)
▲ネオンゴビー
ネオンゴビーの仲間は何種類か知られていますが、いずれも西大西洋、カリブ海周辺にのみ生息するハゼの仲間です。黒と青のカラーが特徴的で、インド-太平洋域にすむホンソメワケベラの幼魚に似た色彩をもっています。これはやはり大型の肉食魚のクリーニングを行うためです。なお、ホンソメワケベラと同様、白点病は治療できません。またカリブ海産の魚なので水温22℃ほどの環境で飼育してあげたいものです。
このほかホンソメワケベラと同じソメワケベラ属の種もクリーナーとして知られています。このほか、コガシラベラ、ブダイベラ、マナベベラ、レッドシークリーナーラス、イエローテールチューブリップなども幼魚はクリーナーですが成長するとクリーニングしなくなるものも多いです。それどころかサンゴを捕食するようなものもいるので要注意です。
ホンソメワケベラに適した飼育環境
水槽
水槽は原則60cm以上の水槽で飼育したほうがよいでしょう。ホンソメワケベラは遊泳力が強く大きめの水槽が必要になるからです。実際はホンソメワケベラメインではなく、ほかの魚と飼育することが多いと思われますので、一緒に飼育する魚のサイズに合わせるべきです。ヒフキアイゴやカクレクマノミであれば60cm水槽でも十分ですが、サザナミヤッコやタテジマキンチャクダイ、スミレナガハナダイといった魚との混泳では120cm以上の水槽が必要です。
水質とろ過システム
やや水質の悪化には弱いような気がします。そのため綺麗な水を維持するようにしましょう。60cm水槽であれば上部ろ過がおすすめです。外掛けろ過槽は候補にはならず、外部ろ過槽は上部ろ過槽と一緒に使えばよいですが、「パワーフィルター」の名前のわりに、単独ではパワーが低いです。ベストはオーバーフロー方式で、大容量のろ過能力を確保できます。
ホンソメワケベラはサンゴにはあまり害を与えることはないので、サンゴ水槽でも飼育することができます。サンゴはベルリンシステムで飼育されることが多いのですが、ベルリンシステムでは魚は多くは入れることができません。
水温と病気予防
一般的には他のサンゴ礁の魚と組み合わせることが多いでしょうから、23~26℃くらいで飼育するようにします。温帯で採集されたものはもう少し低くてもよいかもしれません。もちろん、水温が安定していることが重要で、そうしないと病気にかかってしまうこともあります。病気予防のために殺菌灯、という意見も聞かれますが、殺菌灯を付けるまえに水温が上昇したり下降したりしているのではどんな魚も病気にかかる可能性があります。しっかり水温を安定させ、きれいな水質をキープしましょう。
フタ
よく泳ぎ、勢い余って水槽の外に飛び出してしまうという事故が発生することがあります。そのため水槽にはしっかりフタをしておきたいところです。ただし小さな隙間から出てしまうこともあるため、しっかり隙間埋めもしておきたいところです。
水流
遊泳性が強いので水中ポンプを使って適度に水流を作るとよいでしょう。注意しなければいけないのがタイマー附属で動かしたり静止させたりするタイプのポンプで、この中でホンソメワケベラが寝ていた場合ポンプが動作した場合怪我をしたり最悪死んでしまうおそれもありますので、注意しなければなりません。
飾りと底砂
水槽に飾りサンゴ、サンゴ岩、もしくはライブロックなどを入れてあげましょう。これはホンソメワケベラの夜間の寝床になるためです。ホンソメワケベラは砂の中に潜って眠るタイプのベラではないため砂を敷いてあげなくてもよいです。魚水槽では砂を敷かないベアタンクが主流です。砂に潜るタイプのベラと一緒に飼育するときや、サンゴ水槽で飼育するとき、底面ろ過装置を使用するときは底砂を敷きますが、厚すぎるのはよくありません。
ホンソメワケベラに適した餌
ホンソメワケベラは他の魚についた寄生虫や粘膜などを食べてくれますが、そればかりを食べているわけではありませんので、他にも餌をあげる必要があります。基本的には動物食性といえ、肉食魚用の配合飼料Sサイズを与えるようにしたいものです。メガバイトのSサイズでもだめならもっと細かい餌を与えるか、配合飼料をすりつぶして与えるしかありません。
ホンソメワケベラは口が小さいので配合飼料のサイズはSがおすすめ。Mだと食べたくても口元でずっとお手玉状態になり、中々食べられません。
このほかコペポーダなどもよく食べますが、これらの餌は水を汚すおそれがあり、あまり与えないほうがよいでしょう。
ホンソメワケベラとほかの生物との関係
ホンソメワケベラと他の魚との混泳
▲テールスポットブレニーをクリーニングするホンソメワケベラ
ホンソメワケベラはクリーナーとして知られており、ヤッコの仲間やハナダイの仲間のほか、さまざまな魚と混泳させることもできます。その習性から自然界では大型魚に食べられることはないようですが、水槽ではハタなどに捕食されるおそれもありますので、注意が必要です。
自然下ではハーレムで見られるホンソメワケベラですが、水槽内では同種同士ではクルクル泳ぎ追いかけまわすなど激しく争うので混泳は避けなければなりません。成魚が幼魚を追いかけまわすこともあり、サイズ差があっても混泳はしにくいといえます。
ホンソメワケベラとサンゴ・無脊椎動物の相性
ホンソメワケベラはサンゴに有害なクロベラやマナベベラに近い仲間とされますが、サンゴ水槽での飼育も可能です。
ベラの仲間としては大人しめの性格で、甲殻類にもあまり害がなく、小型のサンゴヤドカリやクリーナーシュリンプなどとは一緒に飼育することができます。ただし大型のエビ・カニ・ヤドカリはホンソメワケベラを食べてしまうので一緒に飼育できません。クリーナーシュリンプはアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)やシロボシアカモエビ(ホワイトソックス)との飼育は可能ですが、オトヒメエビは大きなハサミでホンソメワケベラを襲うこともありますので一緒にしないのが賢明でしょう。
ホンソメワケベラ飼育まとめ
- 大型魚のクリーニングをおこなう
- 夜間は砂に潜らず岩陰で眠る
- よくにたニセクロスジギンポに注意
- よく泳ぎ10cmほどに育つため60cm水槽が欲しい
- 水質悪化にはやや弱め、上部ろ過槽が最適
- 安定した水温と綺麗な海水で病気を予防する
- 飛び出し注意。フタは必須
- 水流ポンプは停止時にホンソメワケベラがもぐりこまないよう注意
- 砂は敷かなくてもよいがサンゴ岩やライブロックなどで隠れ家をつくる
- 口が小さいのでメガバイトレッドはSサイズがよい
- ほかの魚と飼えるが大型魚に食べられることも
- 色々なサンゴ礁の魚と飼育できるが、同種同士の混泳は避ける
- 大型の甲殻類は危険
- サンゴとの飼育は問題なし