ベラの飼育方法~初心者におすすめのベラ&向かないベラ

ベラの仲間はほぼ世界中の暖かい海に分布しています。釣り人からの人気はイマイチですが、それでもキュウセンは食べると美味しいですし、沖縄においてはシロクラベラは高級魚です。そしてカラフルな魚も多く、アクアリウムの世界でも人気がある魚です。しかしベラの仲間であればどれも飼い方はおなじ、というわけではありません。ベラ科魚類はおよそ600近くの種が知られており、それぞれ飼育方法が異なるのは当然といえます。今回はベラの仲間飼育の基本をご紹介します。

ベラの仲間の分類

ベラ科は海水魚の仲間でも極めて数が多いグループで、世界中の暖かい海域でみることができます。ベラ科は3~4つの亜科に分かれており、また、亜科にとらわれないいくつかのグループにわけられることもあるため、ここで合わせて解説します。ここではRudie H. Kuiterのベラ図鑑(Labridae Fishes: Wrasses, 2015年 Reef Builders、inc.)による分類を中心にご紹介します。

Hypsigenyies

タキベラなどの仲間です。タキベラ属、カザリアカボウ属、キスジアカボウ属、イラ属などがこの仲間に含まれています。なおブダイベラは独自の亜科に含めることも多いのですがKuiterの図鑑では、この仲間に含めています。またカリブ海などのサンゴ礁にすむクレオールラスもこの属に含めています。基本的には丈夫ですが、大型になるものや性格がきついものも多く、混泳は注意が必要です。またエビなどの甲殻類は餌になりやすいので混泳するのはやめましょう。深場にすむものもおり、そのような種を飼育するなら低い水温が必要になります。

注意点として、従来シチセンベラ属、イラモドキ属とされていたものはイラ属に含めてあり、コブダイ属とされたものはタキベラ属の中に含めています。

Odacines

日本に生息しないグループで、オダクス科という独自の科に含めることもあります。10種ほどしか知られていない小さいグループではあるものの、多様性に富んでおり、日本のオハグロベラに似たものや、ヤガラの仲間にもにた細長い体のものまでいろいろいます。

Labrines

これも日本には分布しないグループです。北西大西洋、東大西洋、地中海、黒海などに分布するベラの仲間で、ヨーロッパ沿岸ではごく普通に見られるベラです。日本に分布するササノハベラの仲間ににた趣のものもおり、基本的には地味な色彩ですが、クックーラスの雄は極めて派手になります。温帯性なのでもし輸入されたものを飼育するときは強力なクーラーが必要になります。

Pseudocheilines

イトヒキベラ・クジャクベラのほか、ニセモチノウオ属やミゼットラスが含まれます。Kuiterの図鑑ではオハグロベラもこの仲間に含めています。多くの種はサンゴ礁域にすみ、夜間は岩陰で眠ります。インド-太平洋域に生息し、東太平洋や大西洋には見られません。ただし一部の種はスエズ運河経由で地中海に進出しています。

Cheilines

モチノウオの仲間です。ギチベラ属、ハシナガベラ属、モチノウオ属、Doratonotus属の4属からなり、ホホスジモチノウオ属についてはKuiterの図鑑ではモチノウオ属に入れられています。大型種も多く、特にメガネモチノウオはメーターオーバーになるため、しっかりした飼育計画をもってから飼育するようにしなければなりません。基本的にインド-中央太平洋産ですが、大西洋にも1種だけ知られています。

Julidines

種類的に非常に多いグループで、ニシキベラ属、クギベラ属、キュウセン属、ホンベラ属、イトベラ属、ノドグロベラ属、カンムリベラ属、タレクチベラ属、ササノハベラ属、オグロベラ属、シロタスキベラ属、シラタキベラ属、ススキベラ属、カミナリベラ属が含まれ、海外産ではOxyjulisMalapterusMinilabrusSagittalarvaOphthalmolepisLeptojulisなどが含まれます。これらのうち観賞魚としてよく知られるのはコガネキュウセン、ライムラス、クギベラ、ホクトベラ、ヤマブキベラ、オグロベラ、ノドグロベラなどです。

また一般的に「ホンベラ属」とされているものはHalichoeresIridioHemiulisPlatyglossusOctocynodonXenojulisBiochoeresWhitleychoeresCorichoeresJulichoeresHemitautogaHemicorisといった属に細かく分類されていますが、これらの分類については疑問もあります。

Labrichthyines

ホンソメワケベラ属、マナベベラ属と1属1種のイエローテールラス、レッドシークリーナーラス、クロベラの計5属からなります。どの種もインド-中央太平洋に分布しています。ホンソメワケベラは掃除魚として有名ですが、他の種は幼魚のみクリーナーで、成魚はサンゴを捕食してしまうようになります。

Cheilionines

1属1種で、カマスベラのみが含まれています。観賞魚として流通することもありますが、大きく成長する(最大50cm)ことから家庭の水槽での飼育は難しいです。

Novaculines

テンスの仲間で、テンス属、テンスモドキ属、オビテンスモドキ属などが含まれます。Kuiterの図鑑ではテンス属はXyrichtysに統合し、テンスモドキ属はNovaculopsとしています。またオビテンスモドキもオオヒレテンスモドキも同属にまとめています。観賞魚としてはオビテンスモドキやホシテンスなどごく一部の属が知られるのみです。テンスなど大きくなるものは食用となっています。

初心者におすすめのベラTop5

初心者にお勧めのベラは、以下の条件を満たすものです。

  1. 丈夫で飼いやすいこと
  2. 病気になりにくいこと
  3. カクレクマノミや他の強めの魚と飼育可能であること
  4. 餌付きがよいこと
  5. 初心者におすすめの45~60cmの水槽で飼育できること
  6. 25℃前後の水温で長期飼育できること
  7. サンゴに無害であること

1位:小型のイトヒキベラ・クジャクベラの仲間

▲イトヒキベラの仲間のラボックスラス

▲イトヒキベラ類の小型種ソーシャルフェアリーラス

初心者にとくにお勧めしたいベラの仲間は、イトヒキベラやクジャクベラの仲間です。この仲間はベラ科の中でもとくに種類が多いグループで、インド-中央太平洋に80種ほどが知られています。極めて丈夫で飼育しやすい種で、混泳もしやすいのですが、イトヒキベラの仲間同士では争うこともありますので、小型水槽では雄は1匹のみにとどめておくのが無難です。

初心者におすすめなのはラボックスラス、イエローフィンフェアリーラス、ソーシャルラス(ファイティングラス)、マッコスカーズラスなどです。ソーシャルラスやハリオイトヒキベラ(ピンテールラス)、クロヘリイトヒキベラなども丈夫で飼育しやすいのですが、これらの種は遊泳性が強く、大きな水槽が必要になりおすすめできません。中にはナハッキーズラスやアールズラスなど、非常に高価な種類もいます。

夜間は砂に潜らず岩陰で休息しますので、水槽内には砂は敷かなくてもよいのですが、ライブロックや飾りサンゴ、サンゴ岩などで落ち着いて休息できる場所を作るようにします。また泳いでいて、何かに驚くと水槽から飛び出してしまうこともあるので、しっかりフタをする必要があります。

2位:ニセモチノウオ

▲左がニセモチノウオ、右がヒメニセモチノウオ

ニセモチノウオは全長7cmほどの小型種で、かつ丈夫で飼いやすいです。サンゴ礁の海水魚らしい、派手な模様とかわいい泳ぎ方は魅力たっぷりです。この種もイトヒキベラやクジャクベラの仲間同様、夜間は岩孔やサンゴの中などで眠るため、砂を敷いていない水槽でも飼育できます。

注意すべき点としては性格が若干きついところがあげられます。小さいながら結構きつめなので大きめの水槽での飼育が望ましいです。また、エビなど甲殻類を食べてしまうこともあります。さらに上の写真の右側に写っている魚はヒメニセモチノウオという種で、ニセモチノウオよりも若干大きくなり、性格もニセモチノウオよりもさらにきついので小型水槽での混泳は避けなければいけません。

3位:コガネキュウセン

▲コガネキュウセン

体が真っ黄色の美しいベラです。通称イエローコリスと言われますがコリス(カンムリベラ)の仲間ではありません。キュウセンの仲間は丈夫で飼育しやすいのですがエビの仲間は食べてしまうので気をつけます。また性格は結構強めですがカクレクマノミなどとは一緒に飼育可能です。夜間には砂に潜って寝るので砂を敷いて、眠れるようにしてあげます。遊泳性も強く飛び出しを防ぐためにフタをしっかりしておきたいものです。

同じように砂に潜るベラとしては背中に橙色斑がふたつ、背鰭に黒色斑が二つあるカンムリベラや、赤い体のツユベラなどいますが、これらの魚はかなり大きくなってしまいますので初心者にはおすすめしません。

 

4位:フタホシキツネベラ

▲フタホシキツネベラとカクレクマノミ

キツネベラの仲間で遊泳性が強く、岩組を縫うように泳ぎます。タキベラの仲間は全長80cmを超えるような魚もいますが、このフタホシキツネベラはその中でも小型種で全長10cmにしかなりません。小さくても動物食性がかなりつよく、小さなエビなどは食べてしまうためこれらの生物との飼育には向きません。性格はタフで、カクレクマノミやスズメダイなどと飼育しても、怯えることもありません。この仲間も夜間は岩の隙間などで寝ます。

初心者に向かないベラ

さまざまな理由で、初心者に向いていないベラの仲間がいます。たとえば、病気になりやすかったり、あまり丈夫でなかったり、初心者にも人気のカクレクマノミと飼育できなかったり、大型の水槽が必要になったり、というのがその理由です。

オグロベラ・ススキベラの仲間

オグロベラやススキベラの仲間は色彩が鮮やかなので観賞魚として人気がありますが、食が細く、ベラの仲間としては飼育が難しい魚です。そのためあまり初心者にはむいていません。オグロベラ属、ススキベラ属、いずれも綺麗な魚が多く泳がせてみたくなりますが、さまざまな魚が泳いでいる環境では短命に終わりやすいといえます。気が強い魚のいない静かな環境で飼育したいものです。夜間の睡眠時、昼間でも危急時には砂の中に潜ることがありますので砂を敷いてあげましょう。そして勿論、強い魚との混泳は避けるべきです。このほかノドグロベラやカミナリベラなどのベラも安価で販売されていますが、これらもオグロベラやススキベラほどではなくても、臆病で飼いにくいところがあります。

クロベラ・マナベベラの仲間

▲特徴的な筒状の口をもつクロベラ

東南アジアから輸入されるベラの仲間です。この仲間はサンゴを専門に食する魚で、口の形が筒状でユニークなものもいます。サンゴを食べてしまうということと、一般的な配合餌をなかなか食べないということで、飼育が難しいです。クロベラやマナベベラ、ミヤケベラのほか、アレンズチューブリップ、ポリネシアンチューブリップのほか、イエローテールラスやレッドシークリーナーラスなどもこの仲間で、これらは幼魚期はホンソメワケベラ同様クリーナーなのですが、成長するとライブコーラルのポリプを食べてしまうようになります。

ホンソメワケベラ

▲ヒメアイゴをクリーニングするホンソメワケベラ

海の掃除屋さんとして有名な魚で、魚の体表や鰭についた寄生虫を食べてくれます。しかし白点病などは食べてくれないので注意が必要で、逆に本種を白点病で弱らせてしまうこともあります。餌付けも難しいことがありますが、沖縄や自家採集した個体の飼育は比較的容易です。

ホンソメワケベラは複数で飼育すると激しく争うことがあるため、小型水槽では原則としてひとつの水槽に1匹まで。飛び出したり喧嘩したりする恐れがありますのでフタは必須です。夜間は砂の中ではなく岩の陰などで休息します。

大型になるベラ

▲ミツバモチノウオは40cmになる大型種

全長2mにもなる、ベラ科最大種のメガネモチノウオ(通称ナポレオン)も海水魚店で販売されていることがあります。メガネモチノウオは特別枠としてもモチノウオの仲間の成魚は40cmを超えることが多く、小型水槽の飼育には適していません。また幼魚は少し気難しいところがあります。しかし成魚は小魚をばりばりと捕食してしまいます。そのため、カクレクマノミとは一緒に飼育できません。

ツユベラやカンムリベラは派手な幼魚が販売されていますが、これらの種もモチノウオの仲間同様大きくなりますので、初心者向けとは言えません。特にカンムリベラは全長1mにも達し、水槽でもそれなりのサイズに成長しますので注意が必要です。

ほかに大きくなるベラとしてはタキベラ、キツネベラ(70cm)、シロクラベラ(1m)、ヤシャベラ(40cm)、コブダイ(80cm)などが知られています。

ベラ飼育に適した水槽は述べることができない

ベラの仲間の飼育に必要な水槽はここではあえて述べません。小型種のミゼットラスのように小型水槽でも飼育可能なものからメガネモチノウオのようにメーターオーバーになるものまでいます。また大きさはそれほどでなくても遊泳のために広いスペースが必要な種類もいます。このように多様なサイズや生活様式のため、「ベラ」とひとくくりにすることはできません。それぞれの種に適した水槽サイズは今後それぞれの魚種紹介のところで述べたいと思います。

寝床はどこ?

ベラの仲間は夜間の睡眠時に、サンゴや岩の隙間で眠るものと、砂の中で眠るものがいますが、仲間(属)によって異なります。なお、砂の中で眠るものは、緊急時にも砂の中に退避するので常に砂を若干厚めに敷いておくようにします。ホンソメワケベラなど、夜間は体から粘液をだして「寝袋」を作って眠ることが知られています。

サンゴや岩の隙間で眠るもの

イラの仲間 タキベラの仲間 クギベラの仲間 イトヒキベラの仲間 クジャクベラの仲間 モチノウオの仲間 オハグロベラの仲間 ホンソメワケベラの仲間 他

砂の中で眠るもの

キュウセンの仲間 カンムリベラの仲間 ススキベラの仲間 オグロベラの仲間 カミナリベラの仲間 シロタスキベラの仲間 テンスの仲間 オビテンスモドキ 他

フタは必要

ベラの仲間は争いなどの際に勢い余って飛び出してしまうことがあります。つねにふたをきちんとしておき、飛び出しの事故に備えましょう。特にベラの仲間を複数種飼育しているときは必須ともいえます。

遊泳のためのスペースを作る

ベラの仲間は強い遊泳性をもち、水槽内でもよく泳ぎまわります。特に大型のイトヒキベラの仲間やクギベラの仲間、シロタスキベラの仲間などは遊泳性が強く、60cm水槽でさえ狭く感じることがあります。単純に大型水槽にするのではなく、ライブロックやサンゴ岩、レプリカライブロックなどの組み方も工夫が必要です。遊泳のスペースを広くとるようにしたいものです。これらの魚は水の流れが強いところにいるので、水流ポンプなどで水流も生み出してやるとより効果的です。

強力なろ過装置が必要

ベラの仲間は餌をよく食べますので、その分生物ろ過をきかせる必要があります。90cm水槽だと水槽上面にぴったりフタができるオーバーフロー水槽が適していますが、そうでない場合は上部ろ過槽がろ材を大量に入れられるのでお勧めです。勿論上部ろ過槽に外部式ろ過槽を追加してろ過能力を向上させたり、補助的にプロテインスキマーや殺菌灯を使うのも効果的と言えます。

ベラの仲間の中には病気に罹りやすい種類もいますので、殺菌灯は有った方が良いです。そうするとクーラーも必要になります。水温の安定も病気の予防には欠かせません。

甲殻類は餌に?

ベラの仲間と甲殻類の飼育は甲殻類が餌になることがあると言われますが、種類にもよります。たとえばイトヒキベラの仲間とベラより大きめのスカンクシュリンプとはあまり問題にならないなど、種類やサイズを考慮すれば可能なケースもありますが、口に入る甲殻類は餌になってしまいます。

逆にオトヒメエビや大型の甲殻類はベラの仲間を捕食してしまうことがあり、おすすめできません。以前私も大きなオトヒメエビに貴重なセイテンベラとミツボシキュウセンの甲殻類を襲われてしまいました。ベラの仲間だから大きな甲殻類でも問題ないだろう…と考えるのは禁物です。

なお、他の魚との混泳はいちいちここで述べることは難しいので各魚種のページで述べるようにしたいと思います。

まとめ

  • ベラの仲間は種類が豊富
  • 初心者には60cm水槽で飼える種がおすすめ
  • イトヒキベラの小型種、ニセモチノウオ、キュウセン類、テンス類、フタホシキツネベラなどは初心者向き
  • ススキベラ、オグロベラ、モチノウオ、ホンソメワケベラなどは初心者には飼いにくい場合あり
  • 夜間はサンゴや岩の隙間で寝る種と、砂中に潜って寝る種がいる。
  • 砂の中に潜って寝る種には砂が必要。
  • ふたがないと干物になる恐れも
  • 遊泳のためのスペースを作るように、岩組も工夫が必要
  • 強力なろ過槽、殺菌灯の設置をすることがおすすめ。
  • 甲殻類と一緒に飼うのは要注意。

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