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2020.09.22 (公開 2019.10.23) 海水魚図鑑

中型ヤッコ飼育の基本~種類とサンゴとの相性、餌など

ヤッコ(キンチャクダイ科)の仲間はサンゴ礁を中心に分布し、色彩が鮮やかであることや、よくなつくことから観賞魚の中ではもっとも人気があるグループのひとつ。サザナミヤッコやタテジマキンチャクダイなど大きく育つ「大型ヤッコ」、サンゴ礁域にすむ可憐な種を多く含みサンゴ水槽でもよく入れられる「小型ヤッコ」が人気ですが、その中間的なものである「中型ヤッコ」は人気がイマイチな感じです。しかしそんな中型ヤッコの中にも魅力的な種が多く含まれます。今回はこの中型ヤッコについてご紹介します。

中型ヤッコとは

▲アクアリスト的ヤッコの分類

まず学術的に中型ヤッコという分類があるわけではありません。一般的に、大型ヤッコ(サザナミヤッコ属およびホラカンタス属)でも、小型ヤッコ(アブラヤッコ属およびシマヤッコ属)でないものが含まれます。簡単に言えばキンチャクダイ属(カエトドントプルス属)、シテンヤッコ属(アポレミクティス属)、ニシキヤッコ属、タテジマヤッコ属(ゲニカンタス属、通称ゲニカン)のことです。ただし、ほかの属のヤッコでも中型ヤッコのような扱いをすべきものもいます。レンテンヤッコや、アブラヤッコなどは大型になるので中型ヤッコのような扱いをすべきかもしれません。またサザナミヤッコやクイーンエンゼルなどの大型ヤッコと同属に入れられることが多いイナズマヤッコやロックビューティ(ヌリワケヤッコ)などは弱めの性格をしており混泳には注意が必要です。

中型ヤッコの仲間たち

キンチャクダイ属

▲チリメンヤッコはアクアリウムショップでもおなじみ

キンチャクダイ属は一般に「中型ヤッコ」とされるものの中では数が多く、10数種が知られています。日本にはキンチャクダイ、キヘリキンチャクダイ、アカネキンチャクダイ、チリメンヤッコ、まれなクロキンチャクダイが知られていますが、アカネキンチャクダイはハイブリッドである可能性が高いとされます。

海外ではチリメンヤッコの色違いのようなグレイテールエンゼルやフィリピン特産で黒い体に微小な青色斑が多数入るホシゾラヤッコ、南太平洋の高級種コンスピキュオスエンゼルフィッシュやスクリブルドエンゼルフィッシュは人気が高いです。オーストラリア近海に生息するバリナエンゼルフィッシュをいつか観賞魚店で拝みたいものですが、生息地が保護されており、養殖でもされない限り入荷は見込めません。

飼育についてはやや神経質な面があり、強い魚との混泳は避けなければなりません。また、鱗が細かく病気にかかりやすいところもあります。とくにホシゾラヤッコやチリメンヤッコは病気に注意が必要です。水温はチリメンヤッコやホシゾラヤッコは25℃、キンチャクダイなど温帯の種は21℃前後での飼育を心がけましょう。ベトナム産のキンチャクダイ(ブルーフェイスとも)はやや高めの水温(25℃)でも耐えられるようですが、病気予防のためにも水温は一定を保つようにしなければなりません。小型のものは餌付けはしやすいですが体力がなく、大きすぎるものは体力がありますが餌付けが難しいので注意します。

シテンヤッコ属

▲シテンヤッコ幼魚

▲インド洋産のイエローテールエンゼル

インド-太平洋から8種がしられ、西インド洋の深場にすむレユニオンエンゼルフィッシュ以外のすべての種が観賞魚として流通しますが、その中には南アフリカのタイガーエンゼルフィッシュのようにごくまれにしか流通しない種もいます。

なお、アーミテージエンゼルフィッシュと呼ばれているのはシテンヤッコとイエローテールエンゼルの交雑種とされています。ほかグリフィスとゴールドフレークのハイブリッドなど交雑個体の話題が多い属です。

飼育は比較的容易なものが多く、はじめて中型ヤッコを飼育するのであればこの仲間がよいかもしれません。ただし入荷直後は体調を崩していることもあり注意が必要です。サンゴ礁の浅瀬に生息するシテンヤッコやイエローテールエンゼルなどは25℃で飼育してよいですが、やや深場にすむグリフィスやハワイ諸島にすむブラックバンデッドエンゼルなどは20~22℃ほどの低めの水温のほうがよいでしょう。水槽サイズは90cm以上、できれば120cm以上の水槽で飼育したいものです。

ニシキヤッコ属

▲ニシキヤッコ

ニシキヤッコ属は1属1種ですが、太平洋のものとインド洋・紅海のものではやや色彩に差があり、インド洋のものは黄色みが強いです。またバンドに乱れがあるものなど、変異個体の入荷も見られます。ほかの中型ヤッコよりも臆病なようで、ニシキヤッコを飼育するならばまずはニシキヤッコだけで飼育した方がよいかもしれません。

小さいものは餌付きはよいのですが、頻繁に餌をあげなければならないことを考えると7~8cmくらいのものから飼育したほうがよいかもしれません。逆に大きいものはなかなか餌を食べないこともあり、なかなか難しいヤッコです。

タテジマヤッコ属

▲ヤイトヤッコは雌雄で色彩が大きく異なる

タテジマヤッコ属(ヒレナガヤッコ属としていることもあるが誤り)は10種類がインド-中央太平洋に広く分布しています。そのうち日本にはタテジマヤッコ、ヒレナガヤッコ、トサヤッコ、ヤイトヤッコ、フカミヤッコ(ベルス)、ミズタマヤッコの計6種が分布しています。小笠原諸島特産のミズタマヤッコを除くすべての種が観賞魚として流通していましたが、ロードホウ島周辺の特産種であるハーフバンデッドエンゼルフィッシュやピトケアン島の特産であるピトケアンエンゼルフィッシュなど、今後の入荷が望めないような種もいます。その一方ハワイ諸島にのみ分布する貴重なマスクドエンゼルはブリードに成功したらしく極めて珍しいながら入荷が見られるように。

この属は雌雄や幼魚で色彩や斑紋が大きく変わるものが多いです。属の和名にもなっているタテジマヤッコはその中では雌雄の色彩・斑紋差は小さいのですが、ほかの種は大きく異なっています。雌を2匹飼育しているとどちらかが雄に性転換することがありますが、雄の大きいのを採集し販売しているものの場合、餌付きにくく飼育が難しいものもいるので注意が必要です。

全長20cmを超えるものが多く、遊泳性が強いものが多いので、小型水槽では上手く飼育しにくいものです。幼魚であれば90cm水槽での飼育もできますが、できれば120cm以上の水槽で飼育したほうがよいでしょう。またやや深場にすむという特徴から、水温は低め(22℃前後)をキープしたいものです。

中型ヤッコ同様の扱いをした方がよさそうな種

▲イナズマヤッコ

アブラヤッコ属のアブラヤッコ(19cm)やレンテンヤッコ(15cm)といった種は「小型ヤッコ」として扱われることも多いのですが、その中では比較的大きく育つため中型ヤッコを飼育するような感覚で飼育したいものです。これらを終生飼育するのであれば少なくとも90cm水槽が必要でしょう。

逆に西太平洋に生息するイナズマヤッコや、カリブのロックビューティなどは属としては大型ヤッコとして扱われることが多いサザナミヤッコ属とHolacanthus属ですが、神経質で体もそれほど大きくはならず、中型ヤッコと同じ扱いをするべき種といえます。無理な混泳は禁物です。

中型ヤッコに適した水槽

中型ヤッコはほかの多くの魚との混泳を楽しむことができます。ただしスズメダイの大きいものなど気の強い魚との混泳は避けた方が無難です。中型ヤッコと大型ヤッコとの混泳では、大型ヤッコのプレッシャーに負けていないかよくチェックし、中型ヤッコの方が押されているようであればどちらかを退避できるような環境が必要です。逆に中型ヤッコの幼魚を小型ヤッコの成魚と一緒に飼育するのもよくありません。いくら20cmくらいになるといっても幼魚は幼魚、成魚とは分が悪いのです。大型水槽にして小型ヤッコの成魚と中型ヤッコの成魚との混泳が理想的です。

サンゴはつつくことがあります。とくにLPSとの相性は悪いといえます。ヤッコの種類としては、チリメンヤッコ、キヘリキンチャクダイ、シテンヤッコなどはサンゴをつつきやすい傾向があります。ソフトコーラルは比較的ヤッコからはつつかれにくいですがソフトコーラルの状態がよくないとつつくこともあります。また、ソフトコーラルの中でもウミアザミなどのやわらかいものはつつかれやすいので注意が必要です。

水族館では?

▲水族館のサンゴ水槽に入れられているニシキヤッコ

水族館ではニシキヤッコやチリメンヤッコなどの中型ヤッコとサンゴを飼育していることがありますが、これは大きな水槽でサンゴがたくさん入っているような環境で飼育しており、若干サンゴをつついても被害が分散され深刻な事態になりにくいということもあります。ただしこの組み合わせを再現するのであれば、サンゴが多少つつかれても健全に生育できる水質と、ヤッコの健康を維持できるような飼育環境(サンゴ水槽では病魚を隔離することができず、原則魚病薬が使えない)を両立しなければならず、それをできるのは水族館の水槽くらいで、ハードルは極めて高いといえるでしょう。ソフトコーラルのトサカやウミキノコなどであれば比較的つつかれにくいということもあり、入れられていることが多いです。

中型ヤッコの餌

中型ヤッコは餌食いは悪くはないのですが、最初のうち、とくに大きいものは餌をなかなか食べてくれません。アサリの身やイカなど、食べる餌を与えるのが正解です。タテジマヤッコ属の場合はプランクトンフードを食べますが、タテジマヤッコ属の成魚にプランクトンフードだけでは腹を満たすことは困難です。プランクトンフードを撒くようにして与え、それを食べるようならその中に配合飼料などを混ぜる手も使えます。

また餌食いをよくする添加剤も販売されています。ブライトウェルの「ガーリックパワー」はニンニクの栄養を魚に与えるだけでなく、ニンニクのにおいで魚の食欲を増す効果もあります。「エンジェリクサー」はカイメンの組織と同じ比率の有利アミノ酸の複合物で、水槽への導入直後にとくに有効です。

中型ヤッコまとめ

  • キンチャクダイ属・シテンヤッコ属・ニシキヤッコ属・ヒレナガヤッコ属が含まれる
  • キンチャクダイ属は中型ヤッコの中でも種類が多い
  • キンチャクダイ属はやや気難しく高水温にも注意が必要
  • シテンヤッコ属は中型ヤッコの仲間では比較的飼育しやすい
  • ニシキヤッコはややデリケートで飼育は要注意
  • タテジマヤッコ属は遊泳性が強くやや大型になる
  • タテジマヤッコ属は雌雄で色彩が異なるものが多い
  • どの種も大きいものは餌付けに難儀することも
  • イナズマヤッコやロックビューティなどは神経質
  • 他のヤッコとの混泳は要注意
  • サンゴ水槽での飼育は難しいものが多い
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