2019.09.03 (公開 2019.02.28) サンゴ図鑑
サンゴとの相性が良い海水魚と悪い海水魚
海水魚の飼育になれたら今度はサンゴの飼育にチャレンジしたくもなるものです。しかし、魚もしくはサンゴの種類によっては一緒に飼育することができないようなものもあります。理由は魚がサンゴを食べる、逆にサンゴが魚を食べる、魚の性質がサンゴを弱らせるなどさまざまです。今回は海水魚とサンゴの相性について、魚のグループごとに考えていきましょう。
サンゴとの相性が悪い組み合わせ
魚がサンゴを食べる
▲チョウチョウウオの仲間はサンゴが大好き
ひとくちに「サンゴと魚の相性が悪い」といってもさまざまなケースがありますが、まず最悪の組み合わせからご紹介します。サンゴを食べてしまう魚は色々いますが、アクアリストに人気のチョウチョウウオや、ヤッコの仲間などがサンゴを捕食することはよく知られています。とくにチョウチョウウオにとってサンゴ、とくにハードコーラルはメインディッシュですので、これらの魚をサンゴ水槽で飼育するということは、サンゴ水槽での飼育ではなく魚に高価な餌を与えているようなものです。
このほかの魚としては、カエルウオの仲間のセダカギンポ、カワハギの仲間のテングカワハギ、ベラの仲間のマナベベラやクロベラなど(チューブリップとも)、フグの仲間などがあげられます。とくにフグの仲間はソフトコーラルもよく食べてしまうのでサンゴ水槽での飼育はおすすめしにくいものです。ニセモチノウオやキュウセンなどはサンゴを食べることはありませんが、サンゴと同様に扱われることがあるシャコガイやケヤリムシなどを捕食してしまうことがあるので注意しなければなりません。
サンゴを魚が食べる
一方、魚を食べてしまうサンゴがいます。とくに陰日性サンゴのウチウラタコアシサンゴや、大型のイソギンチャクの類(ディスクコーラル系)などです。食べられやすい魚としては小型のカエルウオやネズッポ、ハゼの仲間などの底生魚や泳ぎが非常にスローなタツノオトシゴなどです。とくにタツノオトシゴと捕食性サンゴとの相性は最悪ともいえます。
魚の習性によるもの
▲サラサハゼは鰓から砂を吐き出す。砂がサンゴにかかることもある
底砂の中にすむ生物を捕食するハゼの仲間(ベントス食ハゼ)は砂を口に含み、餌だけを食べて残りの砂を鰓から排出する習性があります。ミズタマハゼやオトメハゼなどは水槽の底にいることが多いですが、アカハチハゼなどは水槽の上の方から水槽の底の方へ砂を排出するのでそこにサンゴがあれば砂に埋もれてしまうこともあります。
クマノミの仲間はイソギンチャクがないと、ナガレハナサンゴやハナサンゴ、アワサンゴなどにすり寄ることがあります。しかしこれらのハードコーラルはクマノミにすり寄られることでダメージを受けてしまうこともあるので注意が必要です。
魚のサイズの問題
魚のサイズが大きすぎると、サンゴを配置している岩組を壊されてしまうこともあります。岩組をひっくり返されたら当然サンゴもダメージを受けますので、大型魚とサンゴの飼育はなるべく避けた方がよいといえます。もうひとつサンゴと大型魚の飼育を避けた方がよい理由は、大型魚はよく餌を食べ、その分排せつの量も多いからです。そうなると硝酸塩が蓄積されやすくなります。
水温の問題
▲冷水をこのむ魚と造礁サンゴは一緒に飼育できない
一般的にサンゴに最適な水温は22~25℃とされます。そのような水温で飼育できない魚は、当然サンゴ水槽での飼育は不可能といえます。緯度が高い地域の魚や、深場にすむ魚を飼育するときは注意が必要です。
海水魚別サンゴの相性
中・大型ヤッコの仲間
▲大きめのヤッコを飼育するならサンゴはイミテーションの方がよい
大型ヤッコはLPSを食べてしまうこともあり、種類や個体によってはSPSを食べてしまうようなものもいるので注意が必要です。また大型ヤッコの仲間は排せつ物の量も多く、さらにはヤッコが遊泳するためのスペースも確保する必要があり、家庭水槽での中・大型ヤッコとサンゴの組み合わせはやや難しい点があります。
中型ヤッコの仲間ではタテジマヤッコ属(ゲニカン)などは比較的サンゴを食べない、といわれていますが、それでもよくチェックする必要があります。またタテジマヤッコ属の魚自体が初心者にはやや飼育しにくい面があります。アクアリストによってはグリフィスやバンディットエンゼルなどをサンゴ水槽で泳がせていることもありますが、何かあった時にサンゴをすぐに隔離できるようにしておいた方がよいでしょう。
小型ヤッコの仲間
▲アブラヤッコやソメワケヤッコなどケントロピーゲ亜属はサンゴをつつく
小型ヤッコの仲間でもアブラヤッコ属のうち、ケントロピーゲ亜属はよくサンゴをつついて食べてしまいます。比較的つつきにくいとされているのがクシピポプス亜属、マルチカラーエンゼルやルリヤッコ、アカハラヤッコといった種類です。ただそれでもLPSをつつかないという保証はなく、大型ヤッコのところでも述べたように、ヤッコとLPSを飼育するのであればどちらかを退避させられるような設備が必要となります。
チョウチョウウオの仲間
▲チョウチョウウオの仲間とサンゴとの飼育は禁物
チョウチョウウオとサンゴの飼育は難しいです、というより無理です。なぜならばチョウチョウウオはサンゴを捕食してしまうからです。チョウチョウウオ科は種が非常に多く、その中にはあまりサンゴをつつかない種もいますが、そのような種でも一度サンゴを食べ出したら止まらないのでチョウチョウウオはサンゴ水槽に入れるべきではないといえるでしょう。チョウチョウウオを飼育した水槽ではサンゴは入れられないので、写真のようなイミテーションのサンゴか、あるいサンゴ岩を入れるようにします。チョウチョウウオは縄張りをつくるものも多く、このような隠れ家は必要です。
スズメダイの仲間
▲スズメダイの仲間はサンゴ水槽によく似合う
ほかの魚との混泳が難しいスズメダイの仲間ですが、ほとんどの種はサンゴには悪さをしないためサンゴとの組み合わせについてはあまり考えなくてもよいでしょう。ただし、アツクチスズメダイなどサンゴのポリプを捕食するような種もいますので注意が必要です。一般的に飼育されるソラスズメダイ、ルリスズメダイ、ネッタイスズメダイ、ミスジリュウキュウスズメダイ、デバスズメダイなどはサンゴ水槽でも問題ありません。浅場SPS水槽ではヤッコの仲間が入れられることが多いですが、生息環境的にはこのようなスズメダイの方が似合っているかもしれません。
クマノミの仲間
▲クマノミとの飼育には注意が必要なサンゴも
クマノミの仲間はほかのスズメダイの仲間とは異なり、サンゴ水槽での飼育には注意が必要なグループといえます。これは先ほども述べたようにクマノミがサンゴにすり寄ってサンゴを死なせてしまうことがあるからです。とくにアワサンゴやハナサンゴの類と相性が悪いといえます。イソギンチャクと飼育すればまだマシかもしれませんが、そもそもイソギンチャク自体がサンゴにダメージを与えることもあるためサンゴ水槽では飼育しにくい生物です。
ハナダイ・メギス・バスレットの仲間
▲キンギョハナダイは初心者にも飼いやすく安心
この仲間は基本的に動物プランクトンや小型甲殻類を捕食し、サンゴに悪い影響を与えません。ただしハナゴイの仲間は餌付きが悪く、幼魚は餌をたくさん与えたいので、水質の悪化には注意したほうがよいでしょう。初心者アクアリストがサンゴとハナダイの仲間を一緒に飼育するのであれば餌付きよく丈夫なキンギョハナダイがおすすめです。
メギス(ニセスズメ)の仲間やファインディング・ニモの「ガーグル」役でおなじみのロイヤルグランマはスズメダイ同様、魚同士の組み合わせには注意が必要ですが、サンゴには無害です。バスレットの仲間もいろいろいますが、ツルグエやコレッティバスレット、オレンジストライプバスレットなどは強い照明のもとで「日焼け」をすることもあり、強烈な光のもとで飼育するなら色はあきらめるしかありません。やや深い海域にすむこれらの種は、LPS水槽での飼育が向いているでしょう。
ハタの仲間(ハタ亜科のマハタ属など)
▲ハタは非常に強力。岩組を破壊することもある
ハタ科のマハタ属やユカタハタ属も美しいのがおり、観賞魚として人気がある種もいます。しかしこの仲間は大食いで水質が悪化しやすく、また大きいものだと岩にぶつかりサンゴを落下させてしまうおそれがあります。それを防ぐためには「サンゴを接着剤で岩に固着させればよい」と思いがちですが、ハタの強力な力で岩組を崩されてはどうしようもありません。写真はかごしま水族館で撮影したもので、下に見えるサンゴはひっくり返されたり破壊されてもいいようにイミテーションのものを使用しています。
ベラの仲間
▲ニセモチノウオはサンゴには無害。ただしケヤリムシなどはつつく
ベラの仲間はサンゴ水槽での飼育に向くものと向かないものがいます。ニセモチノウオ、イトヒキベラ属(の小型種)、クジャクベラ属、ハシナガベラなどの小型のモチノウオ類、フタホシキツネベラ、コガネキュウセンなどは小型のサンゴ水槽にも向きます。大型水槽ではススキベラ属、オグロベラ属、ホンベラ属など多くのベラを入れて楽しむことができます。クギベラやニシキベラ属もよいですが、これらは遊泳力が強いためサンゴを置くのは控えめにして、遊泳のためのスペースを確保してあげたいものです。
マナベベラ、ミヤケベラ、クロベラ、イエローテールチューブリップ、レッドシークリーナーラスは幼魚はホンソメワケベラのように魚についた寄生虫を捕食するクリーナーですが、成長するとサンゴのポリプを食べたりするようになります。こういうベラは当然サンゴ水槽での飼育は不可となります。またススキベラやホンベラなどは砂を巻き上げることがありますので、低い位置にサンゴは置かない方がよいでしょう。
全長2mを超えるナポレオンことメガネモチノウオはもちろんですが、ほかのヤシャベラやシロクラベラ、タキベラなど大きくなるベラもレイアウトを崩してしまうこともあるため避けるべきでしょう。
また、ベラの仲間は甲殻類やゴカイ類などを餌にするため、ゴカイの仲間であるケヤリムシなどは突いて食べてしまうこともあります。
遊泳性ハゼの仲間
▲ハタタテハゼは飼育しやすくサンゴ水槽におすすめ
ハタタテハゼやクロユリハゼに代表される遊泳性のハゼはもっともサンゴとの飼育に向いている魚でしょう。色が綺麗なものが多く、サンゴにいたずらすることもないので、安心してサンゴ水槽に入れられます。強い魚との飼育ではサンゴの合間などに隠れて出てこないこともあるため、ほかのサンゴとの飼育に適した温和な魚と飼育しましょう。SPSとの飼育もできますが生息水深を考えるとハナガタサンゴなどのLPSが似合うかもしれません。
ピグミーゴビーの仲間
▲ベニハゼやイソハゼは小型サンゴ水槽での飼育に最適
イソハゼ、ベニハゼ、シマイソハゼ、アワセイソハゼ、ネオンゴビー、アカメハゼなど極小サイズのハゼの仲間です。これらの種はサンゴにいたずらすることはないのでサンゴ水槽でも飼育を楽しめます。
イソハゼなどはSPS水槽でもLPS水槽でも似合いますが、ベニハゼの仲間は若干生息水深が深めですので遊泳性ハゼ同様やはりLPS水槽が似合うかもしれません。このLPSは給餌をすることで状態がよくなることが多いのですが、小型ハゼはそのおこぼれを食べてくれます。陰日性サンゴとの関係も良好ですが、ウチウラタコアシサンゴのような捕食性が強いサンゴはやめたほうがよいでしょう。餌になるおそれもあります。
大きめの水槽でも飼育できますが、この仲間をじっくり観察するならば小型水槽での飼育が適しているといえそうです。ただし小型水槽は初心者にはあまり向いていません。
ベントス食性ハゼの仲間
▲ジュウモンジサラサハゼは中層を泳ぐ。サンゴとの組み合わせはしにくい種
砂を口に含み餌を食べた後、鰓から砂を排出する、いわゆる「ベントスゴビー」とサンゴの組み合わせは注意が必要です。サラサハゼやアカハチハゼ、クロイトハゼといった種は水槽の中層からやや上方を泳ぎ、砂を鰓から排出するのです。それによりサンゴがダメージをうけるおそれがあるため、サンゴとは組み合わせないほうがよいでしょう。一方常に底の方を泳ぐオトメハゼやミズタマハゼといった種類は、まだそういうことを引き起こしにくいといえますのでサンゴ水槽で飼育するならそのような種を選択しましょう。
共生ハゼの仲間
▲サンゴ水槽でもテッポウエビとハゼの共生が楽しめる
テッポウエビの仲間と共生する「共生ハゼ」はどのような造礁サンゴとの組み合わせにも適していますが、やはりウチウラタコアシサンゴや巨大なディスクコーラルなど、捕食性の強いサンゴとは一緒に飼育するべきではないといえます。テッポウエビの仲間は砂を掘ってレイアウトを崩してしまう可能性もあるのでとくに小型水槽では注意したほうがよいでしょう。
底生ハゼの仲間
▲カペラサンカクハゼ。底生ハゼは尾部で砂を巻き上げることも。
底生のハゼのうち、サンカクハゼの仲間は砂を巻き上げることがあります。それにより低い位置に置いてあるサンゴが砂をかぶったりするおそれがあるので注意が必要です。底生ハゼ自体はサンゴに悪いことをすることがなく、上記の点にさえ注意すればよいタンクメイトになるかもしれません。
コバンハゼの仲間
▲ベニサシコバンハゼと思われる種
コバンハゼの仲間はサンゴ、とくにミドリイシなどの合間に潜んでいることが多いです。全身が黄色のキイロサンゴハゼという種はかわいい種でサンゴ水槽に入れてしまいがちですが、ずっとサンゴにいるため小さな水槽ではミドリイシにダメージを与えることもあります。またサンゴの粘液も食べるのですが、共肉も食べているのかもしれません。そしてキイロサンゴハゼ自体も白点病にかかったり、毒を出したりすることもあり、あまり初心者向けではない海水魚です。
カエルウオの仲間
▲ヤエヤマギンポなら安心してサンゴ水槽に入れられる
カエルウオ族の魚で注意しなければいけないのはセダカギンポという種です。この種は造礁サンゴを捕食するためサンゴと飼育してはいけません。一方ナベカ族の魚はサンゴにはあまりいたずらはしませんが、ケヤリムシやカンザシなどにちょっかいを出すことがあるためなるべく一緒にしないほうがよいでしょう。また、ヒトスジギンポは弱ったサンゴをつついてしまうこともあるのでやはり注意が必要です。
逆にウチウラタコアシサンゴや大型のディスクコーラルと組み合わせるとカエルウオが食べられてしまうこともあるようで、十分気を付けた方がよいでしょう。
テンジクダイの仲間
▲おとなしい魚と一緒に飼育したい
テンジクダイ科魚類はサンゴに害を与えることはありません。そのため好日・陰日・SPS・LPS問わず多くの種類と組み合わせられます。水質悪化に弱く病気になることもあります。サンゴ水槽では魚病薬は使えませんので殺菌灯などを使用し病気にならないように注意しますが、殺菌灯よりも水温の急変などを避けるのが病気予防では一番安心です。一部の種は極めておとなしくほかの魚との混泳がしにくいものもいますが、逆にシボリのように肉食性が強くほかの魚や甲殻類を食べてしまうようなものさえいます。温和な種はサンゴ水槽でほかの温和な魚とだけで飼育するのが理想です。
ゴンベの仲間
▲マルハナガタサンゴの上に乗っかっているクダゴンベ
サンゴを食べてしまうことはないのですが、多くのゴンベの仲間はサンゴの上に乗っかる習性があります。短時間であれば問題はないのですが、長いことサンゴ、とくにLPSの上に乗っかっているとサンゴの調子が悪くなることもありますので、サンゴの開きが悪いというようなときは魚を出した方がよいかもしれません。またゴンベを飼育するということは、小型のハゼや遊泳性のハゼは同じ水槽には入れられなくなります。ゴンベは肉食性が強いため大人しい魚をいじめたり、最悪の場合はゴンベの餌になってしまうことがあるからです。
ニザダイ(ハギ)の仲間
▲弱ったサンゴをつつくおそれもあり要注意
欧米で「リーフセーフ」、つまりサンゴに安全とされ大型サンゴ水槽の主役になることも多いハギの仲間は「コケ取り」としても重宝されるのですが、サンゴの調子がイマイチでコケに覆われるようなことがあるとサンゴの共肉をつついて食べてしまうこともあります。とくにオオバナサンゴやハナガタサンゴ、ウミバラ科などのサンゴは食害されやすいので注意します。
アイゴの仲間
▲シコロサンゴなどのSPSはつつかない
アイゴの仲間もニザダイ同様、SPSやソフトコーラルとの関係は悪くはないのですが、上記のニザダイと同様にLPSをつつくことがあります。サンゴの種類によって、つつかれやすいサンゴとそうでないサンゴがあり、特にオオバナサンゴなどはつつかれやすいので、このサンゴやよく似たハナガタサンゴ、コハナガタサンゴなどを入れるならアイゴの仲間は入れないほうがよいでしょう。
フグ・カワハギの仲間
▲キタマクラの仲間はかわいい。サンゴを食べなければもっと人気がでただろう。
フグの仲間は雑食性です。甲殻類やカイメン、海藻なども捕食していますが、サンゴもつついて食べてしまうことがあります。フグに近いカワハギの仲間もサンゴをつついて食べる種がおり、とくにテングカワハギは派手な色彩で人気がありますが、この種はサンゴのポリプを食べるのでサンゴとの飼育は難しいといえます。またサンゴと同様に扱う必要があるケヤリムシやホヤ、シャコガイなども食べてしまうおそれがあるため、サンゴ水槽での飼育が難しい住人と言えます。
ウツボの仲間
▲ウツボは岩組を崩しやすい
ウツボはサンゴ水槽で飼育することも不可能ではないのですが、このウツボを入れるのであればハゼなど小魚を入れることができなくなります。ただしウツボを入れるとしても幼魚期間、もしくは小型種に限られます。大きく成長するものはレイアウトを崩してしまうおそれがあり、サンゴどころかライブロックを入れることさえ躊躇われます。
サメ・エイの仲間
▲サメの仲間は水を汚しやすい
サメやエイは大食いでしかも生の餌を与えることが多く、水を汚してしまいやすい魚といえます。さらにどちらもものすごいパワーをもっており、ハタの仲間同様、レイアウトを崩されてしまうことがあります。そのためサンゴ水槽での飼育には向いていない魚といえます。
ヨウジウオの仲間
▲オイランヨウジ
ヨウジウオやタツノオトシゴの仲間はサンゴには何ら害を与えないのでサンゴ水槽での飼育を楽しむことができます。ただし、ヨウジウオを入れるのであれば活発に遊泳するスズメダイの仲間やベラの仲間、あるいはヨウジウオを傷つける恐れがあるカニやヤドカリなどは入れるべきではありません。また捕食性のサンゴ、とくにウチウラタコアシサンゴや大型のイソギンチャクは避けるべきです。同じヨウジウオ科の魚で、素手で捕まえることもできるほどに動きがスローなタツノオトシゴの仲間を飼育するのであればなおさらです。
ネズッポの仲間
▲派手な色彩のニシキテグリはサンゴ水槽で飼育するのが一番
ネズッポ科魚類もサンゴ水槽に適した魚で、よく泳ぐ魚との混泳には向きません。サンゴにいたずらしないのでサンゴ水槽でおとなしい魚と一緒に飼育するのがよいでしょう。ただしネズッポの仲間は最初の餌付けに難があることが多く、初心者には飼育するのが難しい魚たちです。おっとりした泳ぎをしており、捕食性の強いサンゴやイソギンチャクとの飼育もやめた方がよいでしょう。
クサウオ・ダンゴウオの仲間
▲冷水性の魚は造礁サンゴと飼育はできない
ダンゴウオの仲間はサンゴ礁には分布していない魚です。北の海に生息しており、サンゴ礁のような水温25℃の環境では生存できないからです。したがって一般的な造礁サンゴとの飼育は禁物です。この仲間とサンゴを飼育するのであれば深海性のサンゴと飼育するしかありません。
エビ・カニ・ヤドカリの仲間
▲ペパーミントシュリンプはマメスナギンチャクなどを捕食することもある
エビの仲間にもサンゴを捕食するおそれがある種がいます。サンゴにからみつくひげ状のコケはフシウデサンゴモエビなどのモエビ類が食べてくれるのですが、中には全くひげ状のコケを食べてくれないばかりか、サンゴを捕食してしまうような個体もいます。ペパーミントシュリンプはイソギンチャクの仲間である「カーリー」を食べてくれるのですが、カーリーだけでなくマメスナギンチャクなども捕食することがあるので、マメスナギンチャクを飼育している水槽でのカーリー退治は薬剤などを用いて行うようにしましょう。
ヤドカリやカニなどは水槽内を歩き回ることによってサンゴを落下させてしまうおそれがあります。サンゴなどはあらかじめライブロックやサンゴ岩などにしっかり固定させましょう。
魚に食べられやすいサンゴ
▲共肉を膨らませるタイプのサンゴは食害されやすい
サンゴも種類によって魚に食べられやすいものがあります。とくに食べられやすいのはオオバナサンゴやコハナガタサンゴなど共肉を大きく膨らませるようなタイプのサンゴです。ほかにはハナガタサンゴ、カクオオトゲキクメイシ、キクメイシなども魚につつかれやすいサンゴです。経験上ではウミバラやキッカサンゴなども魚に食べられやすいようでした。とくに少しでもサンゴに傷みがあると、そこから食べられてしまうことが多いようですので、サンゴは常によい状態をキープしておくように努力しましょう。
ソフトコーラルの仲間では分類上イソギンチャクの仲間に近いとされるマメスナギンチャクやグリーンボタンなども魚につつかれやすいといえます。
サンゴと魚の相性まとめ
- サンゴを食べる魚とは当然サンゴとの組み合わせはできない
- 捕食以外の習性によってもサンゴにダメージを与えることがある
- 大型魚は水を汚しやすいのでサンゴとは一緒に飼育しにくい
- 生息水温が大きく異なる魚とサンゴの飼育も不可
- 中・大型ヤッコはサンゴを捕食することがあるだけでなく水を汚しやすい
- 小型ヤッコも種類によってはサンゴを食べることも
- チョウチョウウオとサンゴの飼育は無理
- スズメダイの仲間はサンゴ水槽での飼育に最適
- クマノミはアワサンゴやハナサンゴなど一部LPSとの相性がよくない
- ハナダイやバスレット、メギスはサンゴ水槽での飼育に向く
- ハタは大型になりレイアウトを壊すこともあり不向き
- ベラはサンゴ水槽では小型種を飼育するのがおすすめ
- 遊泳性ハゼもピグミーゴビーもサンゴには無害
- ハギ、アイゴはサンゴを食害することも
- サメやウツボは水を汚しやすくサンゴと組み合わせにくい
- ネズッポやヨウジウオはスローな動きでサンゴの種によっては捕食されることも
- エビやカニはサンゴを食べたり岩組を崩すことがある
- 共肉を広げるオオバナ系やマメスナギンチャク、キッカサンゴは食べられやすい