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2019.01.31 (公開 2019.01.19) 海水魚図鑑

スナビクニンの飼育方法~水温注意!熱帯性海水魚との飼育は厳禁

冬の磯は死滅回遊魚が死滅してしまい、魚の数が少なくなりますが、冬でも採集できる魚がいます。スナビクニンもそんな魚の一種です。スナビクニンはクサウオ科の小型種で、オタマジャクシのような形が特徴でかわいいのですが、高水温に弱いためクマノミなどの熱帯性海水魚と一緒に飼育することはできません。そのため、実際に飼育できるのか考えてから採集するようにしましょう。

標準和名 スナビクニン
学名 Liparis punctulatus (Tanaka, 1916)
英名 不明
分類 スズキ目・カジカ亜目・クサウオ科・クサウオ属
全長 約8cm
飼育難易度 ★★★★☆
おすすめの餌 冷凍イサザアミ
温度 15℃
水槽 45cm~
混泳 熱帯性海水魚との混泳は一切不可
サンゴ飼育 水温の問題により造礁サンゴとの飼育は不可

スナビクニンってどんな魚?

スナビクニンはクサウオ科の海水魚です。ずんぐりした形でおたまじゃくしを思わせる体つきが特徴。色彩や模様の違いからいくつかの亜種(「ホシビクニン」「アカビクニン」など)に分けられたことがありましたが、現在はいずれもスナビクニンにまとめられているようです。

全長は8cmほどとクサウオの仲間では小型といえます。分布域は広く、日本海岸では長崎~青森県、太平洋岸では和歌山県以北~津軽海峡に分布します。このほか、瀬戸内海でも見られます。クサウオ科の魚では浅瀬を好み、潮溜まりなどで採集することもできます。

クサウオ科とは

▲クサウオの仲間いろいろ

種類数は非常に多く、全世界で400種以上が知られている大きなグループです。北の冷たい海や、深海に多くの種類が見られ、その中にはシンカイクサウオ属のマリアナスネイルフィッシュのように水深8000m以深から採集されているものもいます。体はどの種も軟らかいのも特徴です。

▲スナビクニンの腹部にある吸盤

クサウオ科はダンゴウオ科と近いグループ(実際にクサウオ科とダンゴウオ科をひとつの科としていることもあった)で腹部には吸盤があります(ただし、インキウオの仲間など腹部の吸盤がない種もいます)。

またダンゴウオ科魚類は臀鰭基底が短いですが、クサウオ科魚類は臀鰭基底が長く、尾鰭とつながるようなものもいます。数あるクサウオ科の中には全長60cmと大きくなるものもいるのですが、北海道では「ごっこ」と呼ばれて賞味されるホテイウオなど、ダンゴウオの仲間には食用になるものがいるのに対してクサウオ科の魚は大型種であっても食用としては重要なものではありません。

なお寿命は短く、クサウオの場合は1年で成熟、産卵した後に死んでしまうようです。

スナビクニン飼育に適した環境

水槽

スナビクニンはクサウオ科としては小型種ですので、それほど大きな水槽でなくても飼育は可能です。45cm水槽でも十分飼育可能です。

ろ過槽

外掛けろ過槽や外部ろ過槽などで飼育できますが、モーターによる水温の上昇には注意が必要です。魚の数を抑えれば、保冷庫の中に水槽を置き、投げ込み式ろ過槽や底面ろ過装置などを使用しての飼育も可能です。ただしこのようなろ過槽を使用するのであれば水質の悪化、とくに魚の入れすぎや餌の与えすぎなどには注意しなければなりません。

水温

▲低い水温をこのむ

水温は10~15℃前後にとどめておかなければなりません。そのためクーラーのキャパシティには余裕をもちたいところです。例えばゼンスイZC-100αは一般的にカクレクマノミを飼育するような25℃に設定するときには70リットルまで冷やせますが(周囲温度が35℃の場合)、スナビクニンを飼育するときに15℃に設定するときには25リットルまでしか冷やすことができません(同)。このためクーラーのキャパシティは本当に大きなものを選択するべきです。

本種同様に低い水温を好むダンゴウオを飼育するために(スナビクニンもダンゴウオと同様に飼育できる)、改造した冷温庫を使用してその中で飼育するという方法もあります。ただ改造する手間がかかりますし、素人が改造するのには危険が伴うこともあります。そのためここでは詳しくは述べませんが、興味がある方は調べてみてもよいでしょう。

アクセサリー

ライブロック使用禁止

▲ライブロックは使用禁止

スナビクニンの水槽にライブロックは入れてはいけません。

スナビクニンを飼育するような水温15℃の環境では熱帯のサンゴ礁にすんでいた付着生物などが死んでしまうおそれがあるからです。

ですからスナビクニン水槽にはサンゴ岩やセラミック製の土管、飾りサンゴなどのアクセサリーを入れるようにします。ライブロックを使用せずバクテリアを住ませるために、スナビクニンを採集した際に一緒に水も持ち帰ってくるとよいでしょう。ただし最初のうちは魚は少なめにしておき、海水中のバクテリアが定着するのを待たなければなりません。

スナビクニンに適した餌

▲ホワイトシュリンプはよく食べるが、低水温を保つことが絶対条件

スナビクニンは底のほうにいることが多いですので、餌は沈降性ものを選ぶとよいでしょう。我が家で飼育していた個体は翌日から水温11℃で配合飼料(メガバイト レッドM)を捕食していました。餌付かないようであればホワイトシュリンプなどを与えるとよいでしょう。

ただし、どんな餌を使用していても水温が適切でないと餌を食べず衰弱して死んでしまいますので、水温を低く保たなければなりません。餌付く、餌付かない以前の問題です。

スナビクニンの入手方法

近海魚に強いお店では販売されていることもありますが、自分で採集して飼育するのが一般的といえるでしょう。冬は夜の方が潮がよく引くので、夜間の磯採集で採集するほうがよいでしょう。ただし、夜磯採集は危険を伴いますので単独採集は禁物、サザエなどを獲る密漁者と間違われることもあるなど注意すべき点が多いです。

動きはそれほど素早くなく、驚いて岩の隙間などに逃げ込んでも小さな網で楽に掬うことができます。

スナビクニンと他の生物との混泳

他の魚との混泳

▲混泳相手はダンゴウオ科の魚など冷水性の海水魚に限られる

スナビクニン飼育での問題はほかの魚との混泳が難しいという点があげられます。スナビクニンと同様に冷たい海に生息するダンゴウオやカジカの仲間、あるいはタウエガジの仲間のカズナギ類といった種類であれば混泳は可能ですが、カクレクマノミや小型ヤッコといった熱帯性の海水魚との飼育は不可能です。なお、スナビクニン同士の混泳は可能です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲ホッカイエビ。甲殻類はスナビクニンを捕食するおそれがあるので注意が必要

無脊椎動物も魚と同様、熱帯性種のサンゴや貝類、甲殻類との飼育は不可です。冷水性の甲殻類であれば混泳は可能ですがこういう甲殻類は大型になるものが多いので、スナビクニンを襲うことがあります。また深海性のサンゴは水温の面はクリアできるのですが、褐虫藻を持たず捕食性が強いためスナビクニンを捕食してしまうおそれもあります。無脊椎動物との混泳はなるべく避けたほうがよいでしょう。

スナビクニン飼育まとめ

  • 全長8cmでクサウオ科としては小型種
  • 小型水槽での飼育も可能だが低温をキープする
  • クーラーはキャパシティが大きいものを必要とする
  • ホワイトシュリンプのほか配合飼料を食べる
  • 水温が上がりすぎると餌を食べなくなるので要注意
  • 長崎・和歌山県以北の本州や瀬戸内海で採集可能
  • クマノミやヤッコなどとの混泳は一切不可
  • 冷たい海水を好むダンゴウオなどとの混泳は可能
  • エビやカニなどには捕食されるおそれもあるので避けた方がよい
  • 深海性サンゴには捕食される可能性もある
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