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2020.07.17 (公開 2020.07.16) 海水魚図鑑

メジナの飼育方法~すぐ大きくなり性格もきつめ!持ち帰る場合は注意

メジナは「磯魚」の代表的な魚で、釣りの対象魚および食用魚としてよく知られている魚です。幼魚のうちは潮だまりで群れをつくり、丈夫で飼育もしやすいため、持ち帰ろうとするアクアリストも多いのですが、水槽内でも大きく育ち、性格もきつくなってしまうので、持ち帰る前によく考えるようにしなければなりません。今回はメジナの飼育方法をご紹介しますが、個人的にはあまりおすすめはしません。

標準和名 メジナ
学名 Girella punctata Gray, 1835
英名 Largescale blackfishなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・メジナ科・メジナ属
全長 30cm(海では50cm)
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド海藻70など
温度 25℃
水槽 90cm~
混泳 性格はややきつい。弱い魚とは組み合わせないほうがよい
サンゴとの飼育 LPSとの飼育は注意が必要かもしれない

メジナって、どんな魚?

▲藻場で群れるメジナの幼魚

スズキ目・メジナ科・メジナ属の海水魚です。メジナ科はイスズミ科の魚と習性などよく似ており、カゴカキダイ科やタカベなどとともにイスズミ科に含められることもありますが、今回はカゴカキダイのときと同様、独立した科(メジナ科)として扱います。

シルエットはタイの仲間のようにも見え、実際に「クロダイ」とよぶ地方名もあるのですが、タイ科ではありません。海では大きいものは60cm近くになり、釣りの対象魚として人気があります。また食用になり冬には脂がのり刺身などにして美味です。そんなメジナは春から夏にかけて沿岸で小さな個体を多数みることができます。体色は黒っぽく、鱗に小さな黒色斑がありますが、驚くと白っぽいまだら模様が出ることもあります。日本の幅広い地域に分布し、北海道南部から九州南岸、沖縄諸島にいますが、沖縄県では希少な魚です。海外では韓国、台湾、中国(タイプ産地)に分布しています。

メジナの仲間の分布域

メジナの仲間は太平洋、大西洋の温帯域に生息しています。このうち日本近海には3種が分布しています。この仲間はオーストラリアに多く生息しており、その中でもゼブラフィッシュとよばれるGirella zebraは日本にも輸入されたことがあります。熱帯域に少なく、北半球と南半球の温帯域に広く分布しているという点ではイシダイの仲間と分布が似ているようにもみえますが、イシダイ科はインド洋では南アフリカに多いのに対し、メジナの仲間はインド洋ではオーストラリア周辺に限られ、その代わりに大西洋(カーポベルデ)にも分布しています。

オーストラリアやカーポベルデのものは日本のメジナにまだ似ていますが、東太平洋のものなどは本当にこれがメジナ属?と疑問を抱いてしまうような種類もいます。Doydixodon属とするべきかもしれません。

メジナとクロメジナの違い

日本には3種類のメジナ科魚類がいます。そのうちオキナメジナは幼魚や若魚の体側に黄色い横帯が入り、黄色い横帯が不明瞭、または消失する成魚であっても独特の顔つきでほかの種との区別は容易ですが、メジナとクロメジナの2種はかなりよく似ています。

▲メジナ(上)とクロメジナ(下)

よくこの2種を見分ける方法として、「鰓蓋後縁が黒いのがクロメジナ」とされがちなのですが、メジナの中にも鰓蓋後縁が少し黒っぽいのがいるため、この部分だけで同定すると間違えやすいといえます。鱗の色彩や数で同定するとよいでしょう。

メジナは鱗に黒点があり(たまにないものもいる)、鱗が粗いのが特徴です。もう一方のクロメジナは鱗に黒点がなく、鱗が細かいのが特徴です。鱗数にも違いがあり、メジナは側線有孔鱗数(LLp)50~56、背鰭棘条部中央下側線上方横列鱗数(TRac)6~9で、クロメジナではLLpが57~65、TRacが8~13となっています。クロメジナのほうが鱗が細かくその分数も多い感じです。ただし鱗の色彩などは小さすぎるうちは特徴が出てこないこともあります。この2種は非常によく似ており、初心者にはわかりにくいかもしれません。多くの個体を見たり触ったりすることで覚えるとよいでしょう。

生息場所についてはクロメジナのほうがやや暖かい海の外海に面した磯を好み、メジナの方は内湾から外海に面した磯まで広く生息している感じです。メジナは日本海岸・太平洋岸どちらでもよく見られますが、クロメジナは日本海側ではまれな種とされています。またメジナと同じく、沖縄でもあまり見られない種のようです。太平洋岸の紀伊半島や高知、宮崎、あるいは長崎といったところではメジナ同様によく見られます。

メジナは地方名は関西など西日本方面で「グレ」「クロダイ」といいますが、釣り人の間では「口太」とも呼びます。クロメジナは釣り人の間では「尾長」と呼ばれて区別されています。サイズという点ではクロメジナのほうがメジナより大きくなり人気です。

メジナに適した環境

水槽

▲かわいい稚魚もすぐに大きくなってしまう

▲メジナの成魚

メジナの仲間は自然下では全長50cmに達し、水槽内ではそれほどにはならないでしょうが、ある程度は大きくなります。そのため、成長するに従い大型の水槽が必要になります。また成長も早く、5月に採集した稚魚は秋に手のひら大の大きさに成長してしまいます。そのため、当然ながら早めに大きめの水槽を用意するようにしましょう。最終的には90cm、できれば120cm水槽を用意するのが無難でしょう。それができないなら持ち帰らず海に逃がしてあげるようにしましょう。

ろ過槽

おすすめのろ過槽は上部ろ過槽です。外部ろ過槽は酸欠になりやすいため単用を避け、プロテインスキマーや外掛けろ過槽を使用し、酸欠にならないように注意します。メジナは極めて丈夫な魚ではありますが、ろ過が中途半端だとうまく飼育することはできないでしょう。

オーバーフロー水槽での飼育はおすすめです。メジナは大きくなる魚で排せつの量も多くなります。またほかの魚と飼育するのであれば必然的に大型水槽が必要になりますので、そうなるとオーバーフロー水槽が有利となるのです。

水温

メジナは温帯性の魚ですが、水温の変化には強いようで、比較的高めの水温でも飼育できます。夏が来て魚の調子がイマイチの中でも、メバルやアイナメ、カワハギといった魚が弱っていくなかメジナはピンピンしていました。ただし高水温に耐えられるといっても、25℃前後での飼育が理想です。メジナは極めて丈夫な魚ではありますが、水温が大きく変動するようでは丈夫なメジナであっても病気になってしまうことがありますので、できるだけ一定の水温を保つようにします。

メジナに適した餌

雑食性でエビやカニなどの甲殻類、海藻類を捕食しています。理想は肉食魚用・藻類食魚用、両方の餌を与えることです。状態さえ悪くなければ、ペレット、フレークいずれの餌もよく食べてくれるでしょう。生餌はよほどのことがない限り、与える必要はありません。逆に与えすぎると水を汚してしまうことがあります。もちろん釣り餌のオキアミであるとか、撒き餌などは絶対にあたえてはいけません。

私がかつてメジナを飼育していたのは学科内の水槽であり、養殖用の配合飼料を与えていました。しかしこのような餌は一般家庭ではもてあましやすいので注意が必要です。

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メジナをお迎えする

▲高知県で釣れたコッパサイズのメジナ

メジナは北海道南部から琉球列島まで、日本のほとんどの海岸に生息しています。多いのは関東地方・能登半島から九州沿岸で、沖縄ではあまりみられません。沖縄ではクロメジナも少なく、一番多いのがオキナメジナという種類です。オキナメジナは南方系で幼魚期には黄色い模様が入る美しい魚で、幼魚期には千葉~九州の太平洋岸でも採集できます。コッパサイズ、とよばれるやや大きいもの(それでも幼魚ですが…)が欲しいときはオキアミを釣り針の先端につけ、釣ってみるとよいでしょう。

ただしここでよく考えてみましょう。90cm、できれば120cm水槽で終生飼育できる覚悟がありますでしょうか。もしそれができないのなら逃がしてあげる(か、食べる)べきです。一度水槽に入れた魚は、海に再放流すべきではありません。

メジナと他の生物との関係

メジナと他の魚との混泳

メジナの性格はやや強めで、他の小型魚をいじめることがあるため、混泳には注意が必要です。ただし大きめのサイズの他魚とは混泳可能です。近縁科とされるカゴカキダイ、タカノハダイ、温帯性のベラ、メバルの仲間など、さまざまな魚と飼育できます。ただし同種同士では群れていますが大きくなると争うこともあるので混泳には注意しましょう。実際に同じメジナ同士を飼育するときはかなり大型水槽が欲しいところです。

メジナとサンゴ・無脊椎動物との相性

私が以前メジナを飼育していたときは魚水槽で飼育していたのですが、近い仲間ともされるカゴカキダイはサンゴをつついたという例もあります。それを考えるとLPS水槽での飼育はやめたほうがよいのかもしれません。また、海藻は餌になってしまうおそれがあり、入れてはいけません。甲殻類はメジナに捕食されない・またはメジナを捕食しないもので、水温など生息環境が同じものであれば、いっしょに飼育することができます。具体的にはアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、シロボシアカモエビ(ホワイトソックス)、サンゴヤドカリなどです。メジナの大型個体はサラサエビなどを食べてしまうこともあり、一緒にしてはいけません。オトヒメエビはメジナの大きいのとは入れても大丈夫のようですが、大きなオトヒメエビと小さなメジナを組み合わせると、オトヒメエビの大きなハサミで襲われる危険もあり、注意が必要です。

まとめ

  • 日本の広い範囲に分布する磯魚の代表種
  • 春から夏に幼魚がよく見られる
  • 成長は早く大きくなるので最低でも90cm水槽が必要になる
  • ろ過槽もしっかりしたものが必要
  • 温帯性だが25℃前後でも飼育できる。一定の水温を保つことを心がけたい
  • 配合飼料をよく食べてくれる
  • 動物質・植物質のもの両方を与えるのが望ましい
  • 販売されることはまずなく採集にたよることになる
  • 採集しても持ち帰って飼ってもいいのかかよく考えたい
  • 気が荒いが混泳不可というほどでもない。ただし巨大水槽は必要
  • サンゴ飼育には注意が必要かもしれない
  • 甲殻類との飼育も注意が必要
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