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2020.01.20 (公開 2017.06.16) 海水魚図鑑

カクレクマノミと一緒に飼えない・飼い難い無脊椎動物

前回、初心者の方がカクレクマノミと一緒に飼育するのに適した無脊椎動物をご紹介しましたが、今回は逆に初心者の方がカクレクマノミと一緒に飼育するのにあまり向いていない無脊椎動物をご紹介します。もっとも、種類によっては上級者の方でも難しいものがありますが。

カクレクマノミと一緒に飼育するのが難しい理由は以下にあげられます。

1.トラブルが発生した場合初心者には対応が難しいもの

イソギンチャクの仲間や、ナマコの仲間がこれにあてはまります。ナマコは弱ったり死ぬとサポニンという強毒をだして致命的な事態を引き起こす恐れがあり要注意です。イソギンチャクの場合はろ過槽やオーバーフローのパイプに詰まって水をあふれさせたりろ過槽が動かなくなったりという深刻なトラブルを引き起こす恐れもあり、初心者にはあまり向いていません。

2.水温の問題でカクレクマノミと一緒に飼育しにくいもの

シッタカと総称される巻貝の仲間がいます。これらは水槽のガラス面についたコケを食べてくれるので飼育したくなりますが、この種は温帯に生息する種で、低めの水温を好みます。カクレクマノミなど熱帯性の魚と一緒に飼育するなら熱帯性のニシキウズなどの種の方がよいです。

3.カクレクマノミなどの小魚を捕食してしまう可能性があるもの

シャコや大型のエビ・カニ・ヤドカリなどの甲殻類、イモガイやイカの仲間はカクレクマノミなどの小魚を食べてしまう恐れがあります。このほかにイソギンチャクの仲間も、クマノミの仲間以外の魚を捕食してしまいますので、あまり向いていません。

4.そもそも初心者には飼育が難しいもの

イソギンチャクの仲間やイカ・タコ・オウムガイの仲間はカクレクマノミと一緒に飼育するのが難しいのですが、そもそも海水魚飼育初心者の方にはこれらの生物を上手く飼育すること自体が難しいかもしれません。

初心者の方は水槽にさまざまな生物を入れたくなるのですがこれらの種は単独で飼育するべき種といえます。とくにオウムガイはやや深場の生物で、クマノミとの飼育も難しいものです。

5.咬まれる・刺される等した場合危険なもの

海には危険な生物がたくさんいますが、そのような生き物も観賞魚店では販売されています。ヒトが刺されると危険な毒がある生き物ではミノカサゴの仲間、オニオコゼの仲間、イットウダイの仲間、アイゴの仲間、ナンヨウハギ、オールドワイフ、エイの仲間、ヒョウモンダコなども観賞魚店で見ることができます。

危険生物の特集を最近テレビでやっていますが、これはやや誇張も含んでいます。海の中で生き物の方から何も危害を与えることはありません。ただし水槽の掃除中にうっかり触ってしまったりすると、咬まれたり刺されたりして危険なことになるおそれがあります。エイの仲間、ヒョウモンダコの仲間やイモガイの仲間などでは実際に咬まれたり刺されたりしたことによる死亡例も報告されています。取扱いには十分な注意が必要です。

カクレクマノミと飼い難い無脊椎動物たち

ナマコ

観賞魚店ではクロナマコ、リュウキュウフジナマコ、アカミシキリなどが販売されています。底砂を攪拌して有機物を食べてくれるとして水槽に入れられる場合が多いのですが、万が一岩組が崩れて死んでしまったりすると、サポニンという毒を水槽に放ってしまいます。この毒は魚に対して致命的なものになるので、注意が必要です。

大型のエビ・カニ・ヤドカリ

大型のエビ・カニ・ヤドカリなどの甲殻類の仲間もカクレクマノミと一緒に飼育するのは避けるべきでしょう。人気の「イセエビ」の仲間、あるいは大型の「コモンヤドカリ」などの種類ですが、これらの生物は夜行性で、夜に寝ている魚を襲って食べてしまうことがあります。また岩組も崩してしまいますので、これらの生物と小魚を一緒にするのはやめましょう。

オトヒメエビ

名前はカワイイですし、実際にとてもきれいなエビなのですが、かなり性格が強く、同種同士では争うことが多いです。さらに、大きな鋏足をもち、動きが遅い魚などは捕食されてしまうことがあります。

水族館ではウツボと一緒に飼育されていることが多いですが、これはウツボの皮膚につく寄生虫を食べてくれるためです。大きな魚がたくさん入っているような大型水槽で飼いたい種です。

万が一の時の隔離ケース

シャコ

シャコと言えばお寿司のネタのあの生物です。エビの仲間ににていますが、実際にはエビとは違う仲間です(寧ろカニやヤドカリのほうがエビの仲間に近いとされます)。鎌のような前足を使った打撃技で魚や貝を捕食します。場合によっては水槽もひびを入れるほどというので、甘く見てはいけません。派手な色彩のモンハナシャコなどは観賞用として人気がありますがこのシャコ1匹で飼うしかありません。

シャコは水槽に入れなくても、ライブロックの中から出現することもあり、注意が必要です。多孔質で隙間が多数あるライブロックは見栄えがよいですが、このような生物がかくれていることもあり、水槽に持ち込んでしまうというリスクもあります。

イカ・タコ・オウムガイ

写真は咬まれると危険なヒョウモンダコの仲間、オオマルモンダコ。

イカやタコには色々面白いものがいますが、いずれもほかの魚と飼育するのには向いていません。タコは飼いやすいですが、他の生き物に悪さをしてしまうことがあります。一方イカの飼育も難しいところがあります。イカはほとんどの場合、生きた餌しか食べることがないのです。また水質にもうるさい面があります。

オウムガイという殻をもったものは、「生きた化石」としてシーラカンスやカブトガニなどとともによく知られていますが、水槽での長期飼育は難しいものとされます。

タコの仲間で特に注意しなければならないのはヒョウモンダコ、オオマルモンダコという、ヒョウモンダコの仲間です。タコの仲間はほとんどすべての種が有毒で、咬まれると危険ですが、ヒョウモンダコの仲間はこの毒が強く、海外では死亡例もあります。また日本の太平洋岸に生息するサメハダテナガダコなども強い毒をもち咬まれるとしびれますので注意が必要です。

イモガイ

イモガイの仲間は磯やサンゴ礁域で見られる巻貝の仲間です。見た目はマガキガイににているのですが、別の仲間です。

イモガイの仲間には様々な種類がいますが、そのうちアンボイナガイなどの種類は魚食性で、魚は食べられてしまいますし、この貝には極めて強い毒があり、ヒトが死に至る場合もあるほどです。また貝類を食するタガヤサンミナシガイなども強い毒をもつことが知られています。

他の多くのイモガイはそれほど強い毒性を持ちませんが、注意が必要です。奄美諸島以南のタイドプールではこれらの貝にはよく遭遇しますが、触らなければなにも問題はありません。

シッタカ

主に水槽のコケ取り用として観賞魚店で販売されているのですが、販売されているシッタカ、と呼称されている貝は温帯性の種類が多く、クマノミを飼うような25℃前後の水温では長生きさせにくいようです。私も温帯性の巻貝を飼育していましたが、あまり長生きしませんでした。観賞魚店ではチョウセンサザエやニシキウズ、ザラサバテイラなどのサンゴ礁域に生息する巻貝の仲間が販売されていますが、これらの貝のほうをお勧めします。

シャコガイ

サンゴ礁に見られるシャコガイの仲間は、二枚貝の一種なのですが外套膜に藻類を共生させて光合成することによって生きている、サンゴの様な生き物です。飼育には強い光が必要で、できればミドリイシなどのサンゴが飼えるような水槽で飼育したい生物です。またライブロックから発生するウミケムシなどに襲われることもあります。

シャコガイの貝殻は水槽のアクセサリーとしても使うことができます。

イソギンチャク

「カクレクマノミの飼育」といえば、イソギンチャクとの共生を思いつく方が多いでしょう。しかし、イソギンチャクの飼育は注意しなければいけないポイントが多いのです。イソギンチャクは光合成し、また捕食し、サンゴと似ている面もありますが、毒をもち、水槽で飼育している魚を食べてしまうことがあります。

そのほか一部の種のイソギンチャクは水槽でもよく移動します。移動する際中にサンゴがあるとイソギンチャクの毒でサンゴが弱ってしまいます。

しかしそれらの問題はまだ良い方でフィルターの水の取り入れ口に詰まってしまったり、オーバーフロー水槽ではフロー管に詰まってしまい水があふれてしまうなどの重大なトラブルを引き起こすことさえあります。

またイソギンチャクの選び方や飼育法も初心者には難しい場合があります。特にカクレクマノミと共生するハタゴイソギンチャクは強い光ときれいな水を必要とするなど難しい面が見られます。しかし、一般的な海水魚やサンゴを長期飼育できるようになったらいつかは魅力的な共生の様子を見て楽しんでほしいと思います。なお、飼育下でクマノミの仲間はイソギンチャクがいなくても、全く問題ありません。

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