2020.09.22 (公開 2019.10.31) 海水魚図鑑
サイズや環境 水槽別おすすめの共生ハゼを紹介
ダテハゼやクビアカハゼ、ネジリンボウなどテッポウエビと共生するハゼ(以下、共生ハゼ)とテッポウエビの共生は、クマノミとイソギンチャクの共生と並んでよく知られた共生関係といえます。クマノミとイソギンチャクの共生を水槽の中で再現しようと思っても初心者はイソギンチャクを死なせてしまったり、イソギンチャクの性質により水槽を崩壊させてしまうことが多いのですが、共生ハゼとテッポウエビの共生は初心者でもカンタンにできます。しかし、すでにほかの生き物を飼育しているうえでこの共生関係を再現するには注意が必要になることもあります。
共生ハゼとテッポウエビを水槽に追加する
共生ハゼとテッポウエビは初心者でも簡単に楽しめる共生関係です。しかし共生ハゼといっても、全長デリケートでほっそりしたヤツシハゼの類やでかくて粗暴なオイランハゼまでいろいろといます。ここではすでにほかの魚を飼育している水槽に、新たに共生ハゼとテッポウエビを追加するのにはどうすればいいか、あるいはどんな種類がいいのかを水槽の種類別にご紹介します。
なお、共生ハゼ飼育の基本についてはこちらをご覧くださいませ。
カクレクマノミを飼育している小型~60cm水槽
▲カクレクマノミとクビアカハゼ
小型~60cmの水槽で、人気のカクレクマノミを飼育しているというのは初心者にはよくあるパターンです。これに共生ハゼとテッポウエビを追加で飼育することもできます。追加する種類はクビアカハゼなどの小ぶりのダテハゼ類や、ギンガハゼなどがよいでしょう。これらの種類は共生ハゼとしては性格がタフでカクレクマノミとの飼育にも向きます。
新しく入れるハゼが心配なら入れるときにまずカクレクマノミを水槽から取り出し、別のバケツなどに移してから、レイアウトを変更して(ただしあまり大きく変えないように)、共生ハゼとエビを追加し、最後にカクレクマノミを水槽に入れるやり方がよいでしょう。またカクレクマノミだけでなくマガキガイやムシロガイなど、底砂を攪拌する生物が入っているとよりよいです。
また、共生ハゼとテッポウエビの共生は水槽で再現しやすい共生関係といえますが、カクレクマノミとイソギンチャクを飼育している水槽では共生ハゼとテッポウエビを飼育しない方がよいでしょう。これはイソギンチャクがハゼを捕食してしまうおそれがあるからです。
60cm~90cmサンゴ水槽
▲ニチリンダテハゼは強健だがほかの共生ハゼとの飼育に不向き
60~90cmのサンゴ水槽で、おとなしい魚や小型ヤッコを入れている水槽では多くの種類の共生ハゼが飼育できます。ヤノダテハゼ、クビアカハゼ、ハチマキダテハゼ、ヤマブキハゼ、ニチリンダテハゼなどのダテハゼ類、ギンガハゼなどのイトヒキハゼ類、ヒレナガネジリンボウ、ドラキュラゴビーなどのネジリンボウ類、ヒメオニハゼなどのオニハゼ類です。ただギンガハゼやニチリンダテハゼなどはほかの共生ハゼと争うので、これらの共生ハゼをいれたらほかの共生ハゼは入れにくくなってしまいます。
ただしネジリンボウの仲間の小型種は岩陰に隠れてしまい、観察することが難しいこともあります。共生するテッポウエビはネジリンボウの仲間やヤノダテハゼはコトブキテッポウエビ(ランドールズピストルシュリンプ)、その他のハゼはニシキテッポウエビやコシジロテッポウエビです。また、クビアカハゼはコトブキテッポウエビでもコシジロテッポウエビでもよいです。
底砂を攪拌するマガキガイやムシロガイ、ベントス食ハゼなどを飼育しているなら砂中のデトリタスが舞い上がることをあまり気にする必要はないでしょう。ただ、テッポウエビが砂をまき散らすこともあるので低い位置に置いているサンゴは注意しなければなりません(サンゴは砂の上に直接置いてはいけません)。とくに大きなテッポウエビの場合、注意が必要になります。
中型ヤッコを飼育している水槽
▲オイランハゼなど大型種でないと混泳は難しい
中型ヤッコを飼育している、ということは必然的に90cm以上の水槽になります。また中型ヤッコはその大きさから小型の共生ハゼだと怯えてしまい、引きこもってしまうこともあります。ある程度大きくそだったギンガハゼやムラサメハゼ、オイランハゼ、ニュウドウダテハゼといった大型の共生ハゼに限られます。また、これら大型の共生ハゼはほかのハゼに対して攻撃的ですので、水槽に入れるハゼはこれ1匹のみにします。共生するテッポウエビはニシキテッポウエビやテッポウエビなどで、大きめの個体を買ってきて組み合わせましょう。
共生ハゼを追加しない方がよい水槽
一方、こんな水槽では共生ハゼとテッポウエビの共生を楽しもうとしない方がよいでしょう。
底砂を敷いていない水槽
▲ベアタンクは海水魚飼育には有利だが…。
いわゆるベアタンクと呼ばれる水槽です。このような水槽では魚の排せつ物や魚の餌などを容易にスポイトやホースなどで取り除くことができるというメリットがあり、魚水槽に最適な方法といえます。しかし、底砂を敷いていない水槽では、テッポウエビが巣穴を作ることができず、共生ハゼがその巣穴に入ることができません。そうなると強い魚から攻撃されたり、ハゼが落ち着かなかったりするので、底砂と隠れ家を入れてあげたいところです。大きな岩を置けばテッポウエビがその下に巣を作ってくれるでしょう。
セットして年月が経っている水槽
▲砂の状態はチェックしたい
セットして何年か経った水槽では底砂にさまざまな有害物質が蓄積されている可能性があり、テッポウエビが砂を掘り起こして魚が白点病にかかってしまった…なんていうケースも起こる可能性があります。同様にベントス食のハゼもセットして時間が経った水槽では新しく追加しにくいです。マガキガイやムシロガイなどを入れて、常に底砂が攪拌されるようにするとよいでしょう。
写真のような状態では色々な物質が蓄積されていそうです。場合によっては底砂を取り除き新しい砂を導入するべきかもしれません。
大きな魚が多数入っている水槽
▲メギスの仲間は正確きつめで動物食性が強い。混泳は避けたい
大きな魚や、小さくても気が強いスズメダイなどが多数入っていると共生ハゼがびびって巣穴から出て来なくなり、衰弱して死んでしまうこともあります。ハタやメギスの大きいものなど動物食性の魚は共生ハゼを襲ってしまうこともあります。
また大きい魚が入っていて、砂も入っているような水槽ではこれまでも述べたように砂の中に排せつ物がもとになった有機物などが蓄積されやすく、テッポウエビが砂を掘ることによりそ砂中の汚れが舞い、魚が病気になるおそれもあり注意が必要です。
キュウセン系などのベラがいる水槽
▲ベラはエビが大好物
キュウセンの類やタキベラ、ニシキベラの仲間などのベラの仲間は性格が強いだけでなく、甲殻類が大好きでテッポウエビの仲間を捕食してしまうこともあります。ベラ類が小さいうちは一緒に飼育できるのですが、大きくなると捕食性が強くなり、一緒に飼育することはおすすめできません。共生ハゼとテッポウエビといっしょにベラを飼うなら小型のミゼットラスや、動物プランクトンを主食としているイトヒキベラ、クジャクベラの類がよいでしょう。
まとめ
- カクレクマノミを飼育している水槽に共生ハゼを入れるならクビアカハゼやギンガハゼがおすすめ
- サンゴ水槽では共生ハゼを色々入れられる
- 大きめの魚がいる水槽ではオイランハゼやニュウドウダテハゼなど大型種が望ましい
- 底砂がないベアタンクでの飼育は不向き
- 立ち上げて年月が長いと砂中のデトリタスがたまりエビを入れると病気を招くことも
- 大型魚がいるとハゼはおびえてしまう
- 肉食のベラなどはエビを食べてしまう