2018.10.22 (公開 2017.06.20) 海水魚図鑑
アケボノハゼの飼育方法~餌・混泳・個体の選び方
アケボノハゼは、そのゴージャスな色合いと凛としたその姿が見るものを魅了します。
ハゼの仲間の中でも人気が高く、最近は海水魚店でなかなか見つけることができません。ここではアケボノハゼの飼育方法を、事例を交えて紹介していきます。
標準和名 | アケボノハゼ |
学名 | Nemateleotris decora Randall and Allen, 1973 |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・ハタタテハゼ属 |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 23~25度 |
水槽 | 35cm以上 |
混泳 | 同種、気が強い魚とは注意が必要 |
サンゴ飼育 | 可 |
アケボノハゼの分類
アケボノハゼはハタタテハゼと同じく、クロユリハゼ科のハタタテハゼ属に含まれる種類です。
ハタタテハゼとは分類的に近い種のようで、本種とアケボノハゼの交雑個体がダイバーにより撮影されていますが、残念ながらまだ観賞魚としての流通はないようです。
従来は「フレームゴビー」とも呼ばれていましたが、現在は標準和名のアケボノハゼの方がよくつかわれています。ただし、この「フレームゴビー」の名称は日本以外ではあまり使用されていないようで、英語では「エレガントファイヤフィッシュ」もしくは「パープルファイヤーフィッシュ」「パープルファイヤーゴビー」と呼ばれていますが、このうち最後の「パープルファイヤーゴビー」は、日本ではシコンハタタテハゼの流通名となっており、注意が必要です。
遊泳性ハゼの基本についてはこちらもご覧くださいませ。
アケボノハゼが生息する海域と個体の選び方
▲尾鰭が切れているからと言って不健康とは限らない。
アケボノハゼの分布域は西太平洋~中央太平洋に及びますが、ハワイ諸島には生息していないようです。日本においては伊豆諸島や高知県、琉球列島にかけて分布します。かつてはインド洋にも分布する、とされていましたが、それについてはまた別に解説します。
観賞魚としては、西太平洋産のものがフィリピンなどから入ってきます。フィリピンも最近の魚は状態がよくなってきましたが、皮膚につくベネデニアなどを持ち込むケースもありますので注意します。最近はフィリピンでも治安が急速に悪化、さらに南部地域ではIS(イスラム国)の影響もあり、魚獲りどころではなくなったところもあります。それに伴い流通も少なくなってきているようです。
アケボノハゼの選び方は、泳ぎがふらふらしていないこと。そして、病気にかかっていないこと。鰭(ひれ)については、この仲間は闘争することもあり、鰭が切れているからといって、不健康な個体とは言えません。また鰭は1~2日ほどで回復しますので、海水魚店で見られるそのタイミングによって異なります。
しかし明らかに鰭が溶けてしまっているような個体は絶対に避けるようにします。
アケボノハゼの飼育に適した水槽
アケボノハゼもハタタテハゼ同様に全長7~9cmと小型の魚ですので、本種のみの飼育について考えた場合、大型の水槽は全く不要です。大体35cm位の小型水槽でも飼育できますが、他の魚との飼育を考えた場合、60cm水槽があると良いでしょう(写真は60cm水槽)。
大体水槽の真ん中から下をじっとしています。元気に泳ぐ魚が近付いてくるとすぐ岩場に隠れてしまうので、そうした魚をたくさん入れるのは避けたほうがよさそうです。
本種は水深20~70mの海底に多く生息し、やや深い場所に多いと言われています。温度の理想は23~24℃くらいですが、我が家の水槽では25℃でも長期飼育できています。
アケボノハゼの餌
水中では主に動物プランクトンを捕食する種です。ハタタテハゼ同様に粒状の配合飼料を与えるのがベストといえます。これに副食として、冷凍のコペポーダやイサザアミ、あるいは海水魚店で販売される各種冷凍餌などもたまにあげればベスト。
冷凍餌は水を汚すので、十分に生物ろ過がきいたろ過槽と、2週間に1回くらいの水替えがベストといえます。
餌を与えても水槽の上部を泳ぐことがほとんどないため、できれば適度に沈む餌を与えましょう。メガバイトレッドは浮遊性の餌ですが、一度水に湿らせたり、スポイトで中域に与えてみましょう。
アケボノハゼと他の魚との混泳について
▲クロユリハゼ属のスミゾメハナハゼと一緒に泳ぐアケボノハゼ。
近縁の種であるハタタテハゼとも一緒に飼育してみたくなるものですが、アケボノハゼは、ハタタテハゼと比べて気が強めなので、まず最初にハタタテハゼを入れて、十分に慣れてからアケボノハゼをいれます。同種同士ではけんかすることもあり、十分に気を付けます。ハタタテハゼ属をのぞく、他の遊泳性ハゼ(パープルファイヤーゴビーなど)との相性は概ね良好といえます。
注意したいのは他の魚で、カクレクマノミを飼育している水槽にアケボノハゼを追加すると、カクレクマノミにいじめられることもあります。カクレクマノミと一緒に飼いたいのでしたら、まず本種を飼育してしばらくたった後にカクレクマノミを入れるようにすると、たいていは上手くいくように思います。
ただ、我が家ではお互いに全く見向きもしない仲なので、正直のところ入れてみないとわかりません。
勿論ハタタテハゼと同様に、性格が強いキュウセンやニセモチノウオ、メギスの仲間には注意が必要ですし、肉食性のカエルアンコウやハタ、フエダイの仲間などと本種を一緒に飼育するということはそれらの魚に高級な活き餌を与えるということにもなります。
アケボノハゼとサンゴや無脊椎動物との相性
アケボノハゼもほかの遊泳性ハゼと同様、サンゴに悪さをするわけでないので、サンゴ水槽でも容易に飼育できます。注意しておきたいのが甲殻類との相性で、大型のイセエビの仲間であったり、オトヒメエビ、大型のカニの仲間との混泳も避けるべきです。
小型の甲殻類であるアシナガモエビ、スカンクシュリンプ、キャメルシュリンプ、ホワイトソックス、ペパーミントシュリンプなどとは問題なく飼育できます。
“インド洋産のアケボノハゼ”の正体
▲最近新種記載されたエクスクイジットファイヤーゴビー。
以前からマニアの間では、インド洋から来る“アケボノハゼ”は、体全体がやや黄色っぽいなどと話題になっていたのですが、2013年になり、本種は太平洋に分布しているアケボノハゼとは別種として、新種記載されました。
英語名:Exquisite firefish
学名:Nemateleotris exquisita Randall and Connell, 2013
英名は「この上なく美しいハタタテハゼ」という意味のようです。西太平洋の個体も綺麗ですが、インド洋の派手な黄色の個体もまた美しいものです。飼い方は、西太平洋産のものと全く同じ。寧ろインド洋産のものは概ね丁寧な採集がされていて飼育しやすいかもしれません。ただしお値段は太平洋のものと比べると少し高めです。
ちなみに我が家のアケボノハゼはインド洋モルディブ産。個体の体色がはっきりして美しく状態は非常に良好、通常のものより“お高い”買い物でしたが元気に泳いでいます。