2020.02.24 (公開 2017.06.20) 海水魚図鑑
ハタタテハゼの飼育方法~餌・混泳・個体の選び方
ハタタテハゼは海水魚を扱っているお店であれば、ほとんどどこのお店でも見られる普通種です。カクレクマノミと並んで「海水魚」の定番といえる魚でしょう。
頭部が薄らと黄色になり、体の前半分が白っぽく、後半部が赤いという美しい色彩、第1背鰭の特徴的な形など海水魚飼育の魅力にあふれる魚です。このハタタテハゼをうまく飼育するにはどうしたらいいのかをまとめました。
標準和名 | ハタタテハゼ |
学名 | Nemateleotris magnifica Fowler, 1938 |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・ハタタテハゼ属 |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 23~25度 |
水槽 | 35cm以上 |
混泳 | 同種、気が強い魚とは注意が必要 |
サンゴ飼育 | 可 |
ハタタテハゼって、どんな魚?
ハタタテハゼは第1背鰭がぴん、と伸びた姿が特徴のハゼの仲間です。ハゼ、といっても天ぷらでお馴染みのマハゼなどとは異なり、クロユリハゼ科(後述)の魚です。色彩はカラフルで、前半分が白っぽく、後ろ半分は赤みを帯びています。英名の「Fire goby」(火のハゼ)もこの色彩に因んだものでしょう。サンゴ礁域に生息している普通種です。
ハタタテハゼの分類
▲クロユリハゼ科の分類
従来はハゼ科に含まれていましたが、最近はハゼ科から分離されたオオメワラスボ科の中のクロユリハゼ亜科に分類されたり、そのクロユリハゼ亜科を、クロユリハゼ科に昇格させるという考えもあります。日本においては、クロユリハゼ科を採用するのが一般的ですので、「海水魚ラボ」でもそのようにしています。
クロユリハゼ科にはほかにもサツキハゼ属、クロユリハゼ属、Aioliops属、タンザクハゼ属、カグヤハゼ属がいて、これらのうちクロユリハゼ属は観賞魚店で見る機会が多い仲間といえます。ハゼの仲間にはサンゴ礁域の砂地にすむもの、汽水域にいるもの、磯の潮溜まりにいるものなど色々な種がいますが、この種類はサンゴ礁に生息し、数匹で海底から少し離れた場所をホバーリングします。
ハタタテハゼ属は世界で4種類が知られ、日本にはそのうちの3種が知られています。
ハタタテハゼに適した飼育環境
水槽
単独、またはあまり魚を入れない水槽ならば、35cm位の小型水槽でも飼育することが出来ます。しかし小型水槽は水質が安定しにくいため、初心者アクアリストであれば45~60cm水槽で飼育するのがよいでしょう。とても丈夫な魚で初心者の方が最初に飼育する「パイロットフィッシュ」にも最適な魚です。
水質とろ過システム
オーバーフロー水槽をのぞくろ過槽でおすすめなのは上部ろ過槽で、ろ過能力がとても高いです。外掛けろ過槽は小型のためろ過能力がイマイチで、かつ水槽上に隙間ができやすいのでハタタテハゼが飛び出てしまうおそれがあろます。外部ろ過槽を使うときは酸素量に常に気を使ったほうがよいでしょう。
初心者向け、とはいい難いのですがベルリンシステムなどのナチュラルシステムや、ゼオビットシステムなどのサンゴを飼育システムでも飼育できます。ただしこれらのシステムでは魚はたくさん入れることはできません。
水温
水温26℃で飼育できますが、サンゴ礁域のやや深場にも生息する種ですので、23℃くらいの低めの水温にするのも良いでしょう。重要なのは水温が安定していることで、朝は23℃、夜間25℃、というのではよくありません。ヒーターとクーラーを使用して水温を一定に保つようにします。
フタ
ハタタテハゼを飼育する上で絶対に必要なものがあります。それが「フタ」です。フタがないと水槽から飛び出して、死んでしまう恐れがあります。特に驚くと跳ねて水槽外に出てしまいますが、混泳水槽でなくても、ちゃんとふたをしておく必要があります。
ハタタテハゼの餌
一般的に販売されている各社配合飼料を与えます。小型の魚なので細かい粒のものをできれば2~3種類ほど。このほかにプランクトンフードなどの生の餌も与えれば文句なしでしょう。
乾燥餌でない、生の餌は冷凍のイサザアミ、コペポーダ、あるいはショップオリジナルの冷凍フードなが使いやすいのですが、いずれの冷凍餌にも共通していえるのが、与えすぎは水を汚してしまう恐れがあるということです。生物ろ過が機能したろ過装置と、しっかり水かえを行うことで、水質の悪化を防ぐようにします。
ハタタテハゼと他の魚との混泳
▲ハタタテハゼを先に入れて落ち着いてからカクレクマノミを入れるとうまくいく
▲ニセモチノウオは気が強いので小型種といえど注意が必要
ハタタテハゼは大人しい性格ですが、小型水槽では仲間同士で小競り合いをすることがあります。特に水槽に入れたばかりの時などはよく観察するようにします。近縁種のアケボノハゼは、ハタタテハゼと比べると気が強めなので、ハタタテハゼと混泳するときは、まずはハタタテハゼを入れて落ち着いてからアケボノハゼと一緒に飼育すると上手くいくことが多いです。
カクレクマノミやハナビラクマノミなど、比較的温和なクマノミの仲間との混泳も可能です。その場合は、まずこのハタタテハゼを数匹水槽に泳がせておき、それらが縄張りを作り始めてからカクレクマノミなりハナビラクマノミなりの魚を足していきます。
他にもデバスズメダイなど、スズメダイ属の小型種、イトヒキベラやクジャクベラなどの小型のベラ、ハナダイの仲間、近い仲間の遊泳性のハゼ、カエルウオの仲間など、さまざまな魚と組み合わせられます。ただしキュウセンの仲間やニセモチノウオなどの小型ながら気が強めの魚と組み合わせるときには注意が必要です。できればこれらの魚と組み合わせるときは、カクレクマノミとの混泳と同様に最初にハタタテハゼを入れるようにしたいものです。
ミツボシクロスズメダイなどの大型のスズメダイの仲間や小さくてもルリスズメダイ、ハマクマノミなどはかなりきつい性格のためおすすめできません。カエルアンコウやハタなどは本種を捕食してしまう恐れがあり論外といえます。
ハタタテハゼとサンゴや無脊椎動物との相性
ハタタテハゼの仲間はサンゴを食べたり突いたりするということはないので、サンゴ水槽で泳がせることも容易です。ハタタテハゼは臆病なので、サンゴの配置を工夫したり、ライブロックを沢山組み合わせる、などして隠れるためのスペースを作ってあげるとよいでしょう。
無脊椎動物については、スカンクシュリンプ、ホワイトソックス、キャメルシュリンプ、アシナガモエビ、サンゴヤドカリ、など多くの種類と飼育することができますが、ショウグンエビの仲間、イセエビの仲間、大型のカニの仲間、オトヒメエビ、イモガイ、イカなど、本種を捕食してしまう恐れがある大型甲殻類や肉食性の強い軟体動物との飼育は避けるべきです。
ハタタテハゼ飼育まとめ
- 背鰭が長く伸長する遊泳性ハゼ
- 初心者なら45~60cm水槽が望ましい
- 外掛けろ過槽は隙間からハタタテハゼが飛び出しやすいので注意
- 外部ろ過槽を使用するときは酸欠に注意
- 上部ろ過槽がおすすめ
- 水温は23~26℃で安定していることが重要
- フタは必需品。しっかりとフタをしめて飛び出し防止
- 小粒の配合飼料がもっとも適している
- 肉がえぐれているもの、泳ぎがおかしいもの、体表や鰭が赤くただれているものなどは避ける
- 入荷直後の個体も購入を見合わせるのが無難
- カクレクマノミと混泳する場合はまずハタタテハゼが慣れてからカクレクマノミを入れる
- ほかにも多くのおとなしい小魚と混泳できる
- サンゴには全く無害
- 肉食性の強い甲殻類とは一緒にしない