最初に水槽に入れる「パイロットフィッシュ」におすすめの魚

海水魚を複数飼育できる、長期安定した水槽の環境をつくるために、最初は丈夫で飼いやすい海水魚を飼育し、ろ過バクテリアを育成する必要があります。これが「パイロットフィッシュ」です。

このパイロットフィッシュは基本的にスズメダイや小型のハゼといった丈夫で飼育しやすい魚が用いられることが多いです。しかし最近スズメダイの仲間はパイロットフィッシュとして用いられることは少なくなってきました。今回はパイロットフィッシュにはどんな魚が適しているのか、ご紹介します。

「パイロットフィッシュ」のふたつの意味

一般に「パイロットフィッシュ」といえば、二つの意味があります。

魚の種類を指す「パイロットフィッシュ」

▲ブリモドキ(スズキ目アジ科)

一般的にテレビなどでよく「パイロットフィッシュ」として紹介される魚は大きな魚、とくにサメ類について泳ぐ魚です。サメなどの鼻先を泳ぐことも多く、サメを先導して泳ぐように見えることからこの名がついたともいわれています。また英語で「Pilotfish」というとこの習性をもつブリモドキのことなのですが、ブリモドキ以外にも同じアジ科のコガネシマアジも大型魚を先導して泳ぎます。なおこの2種は近い仲間ではなく、ブリモドキは稜鱗がないNaucratinae(ブリなどに近い)、コガネシマアジは稜鱗のあるアジ亜科となっています。

これらの魚を飼育するのにサメなどの大きい魚は不要ですが、巨大な水槽が必要です。遊泳性が強いのももちろんなのですが、とくにコガネシマアジは全長1m近くになる巨大な魚で水槽内でもある程度大きくなります。したがって水槽も巨大なものが必要になります。なお、ブリモドキは食用にもなり、刺身などで食べられそこそこ美味です。

アクアリウム用語の「パイロットフィッシュ」

アクアリウム用語で「パイロットフィッシュ」(またはテストフィッシュ)といえば、水槽内にバクテリアを増やすために、最初に水槽に入れる魚のことをさします。淡水魚・海水魚両方で使用され、淡水魚の仲間では丈夫なメダカ類や小型カラシンなどが入れられ、海水魚の世界ではスズメダイが従来入れられてきました(後述)。

いずれにせよ小型で水質の悪化にも強めで丈夫な魚が入れられることが多いです。

パイロットフィッシュの役割

マリンアクアリウムの水槽システムではベルリンシステムなどナチュラルシステム(や、それらを発展させたゼオビットなど)か、ろ過槽を用いたシステムのどちらかが使用されることがほとんどですが、ろ過槽を用いた水槽システムの場合、生物ろ過を採用することがほとんどです。生物ろ過の詳細についてはこちらをご覧ください。

パイロットフィッシュの役割としては「水槽内でさまざまな海水魚を飼えるようにすること」にあります。ライブロックを入れて、そのあとすぐ液状のバクテリアを入れることもありますが、そのバクテリアの餌も増やしていかなければなりません。

魚を住まわせ、排せつをさせてバクテリアを育てていきます。また魚の調子を確認し、この水槽が海水魚の飼育に適しているかをチェックします。

そのため丈夫で飼育しやすい魚を入れていくのです。ヤッコやチョウチョウウオ、ニザダイの仲間はやや病気にかかりやすく、この役目を果たすことは困難です。さらに水槽立ち上げ初期に殺菌灯をつけてしまうとせっかくのバクテリアも殺してしまうのでよくありません。

パイロットフィッシュをうまく飼育して、1か月ほど経ったらカクレクマノミや小型ヤッコなど飼いたい魚を入れていくのが確実でしょう。

パイロットフィッシュに適した海水魚

スズメダイは適していない!

▲スズメダイの仲間はあまり適していない

従来、このパイロットフィッシュの用途にはスズメダイの仲間がよく入れられてきました。しかしスズメダイの仲間はたいへん気が強く、60cm程度の小さな水槽ではすぐに暴君となってしまい、ほかの魚を入れられなくなってしまいます。デバスズメダイはおとなしいのですが、ルリスズメダイなどと比べるとちょっとばかり水質の変化や病気に弱いところがあり、こちらも適しているといえるか微妙なところがあります。カクレクマノミも最近は養殖個体の流通が多くなりだいぶ安定していますが、汚い水では体調を崩してしまうこともあります。ある程度生物ろ過が働いてから水槽に入れるようにするとよいでしょう。

一方最近はテンジクダイの仲間をすすめることもあるようなのですが、テンジクダイの仲間は種類により丈夫なものとすぐに病気にかかってしまうものがおり、注意が必要です。

ハゼの仲間

▲ゼブラハゼ

ハゼの仲間も色々あり、初心者にはどのハゼを選んだらいいか迷ってしまいます。ただし、一般的に観賞魚店で販売されているハゼの仲間は限られてきます。

個人的にパイロットフィッシュとしておすすめのハゼは遊泳性のハゼで、ハタタテハゼやアケボノハゼ、ゼブラハゼといった種類が丈夫で色も綺麗なのでおすすめです。パイロットフィッシュに向いている遊泳性のハゼは単独でも飼育できるもので、オグロクロユリハゼのような臆病で群れることが多いものは、あまり向いていないともいえます。

ダテハゼの仲間、ギンガハゼ、ヒレナガネジリンボウといった共生ハゼの仲間も初心者におすすめです。共生ハゼもテッポウエビも大変丈夫で飼育しやすく、最初の水合わせに失敗しなければ、ユニークな習性を水槽で観察することができるでしょう。ただし砂を敷いておく必要があります。

砂中の生物を食べるミズタマハゼやオトメハゼといったハゼもおすすめですが、この砂中のハゼの中にはアカハチハゼなどサンゴ水槽に向かない種もいますので注意が必要です。また、これらのハゼも砂を敷いていない水槽では入れられません。

なお、私はハタタテハゼを最初に飼育しました。

初心者にはおすすめできないハゼの仲間

一方、初心者におすすめできないハゼもいます。キイロサンゴハゼやコバンハゼといったハゼは皮膚から毒をだし、ほかの魚を死に至らしめることもあります。アカハチハゼやサラサハゼといったベントスゴビーの中でもよく浮かんでいるタイプはサンゴに砂を撒きちらすこともあり、将来サンゴ水槽にしたい!と思っている方にはおすすめできません。

このほか小型のイソハゼやベニハゼの仲間は小さく臆病でほかの魚との混泳を難しくするので、これもだめな組み合わせといえます。逆にクモハゼやクツワハゼ、アカオビシマハゼなどは大きく育ち性格もきつく、ほかの魚を食べてしまうこともあります。

カエルウオの仲間

▲ヤエヤマギンポ

小型でかわいいテールスポットブレニー

カエルウオの仲間もハゼの仲間ほどではないですが豊富な種類がいます。ヤエヤマギンポは水槽やライブロックに付着するコケをある程度食べてくれるので人気です。しかしヤエヤマギンポは全長10cmほどになるため注意が必要です。

小型水槽ではニラミギンポ属のテールスポットブレニーなど色々いますが、中には弱ったサンゴにダメージを与えることもあるので十分注意しなければなりません。この属のカエルウオは掃除係ではなく、カラフルな色彩を楽しむタイプです。

なおカエルウオの仲間は争うことがあるので、小型水槽では一つの水槽にカエルウオの仲間を1匹しか入れられないこともあります。とくにヤエヤマギンポやカエルウオ、インドカエルウオ、フタイロカエルウオといった種はやや気が強めなので注意が必要です。

フタはしっかり

上にあげた魚にはある「共通点」があります。それは「飛び出しやすい」ということです。遊泳性のハゼなどは何かに驚くと狭い隙間から飛び出してしまうこともありますし、カエルウオの仲間のある種は岩の上をぴょんぴょんと飛び跳ねることさえありますので、フタはしっかりしましょう。できれば隙間もプラ板などでふさぎ、対策をしっかりしておきたいものです。

パイロットフィッシュの数

1匹だけいれましょう。ハタタテハゼなどは自然下で群れをつくりますが、水槽内、特に狭い水槽では争うのでとくに当初は1匹だけで飼育するのがよいでしょう。一方、極めて臆病なオグロクロユリハゼなどは水槽内でも群れで飼育したいため、パイロットフィッシュには向いていません。共生ハゼを飼育する場合はテッポウエビ+ハゼで大丈夫です。

水槽を立ち上げて間もない時期に沢山魚を入れてしまうと生物ろ過が追い付かず魚が死んでしまうことがあります。次々いろいろな魚を入れるアクアリストもいますが、この時期に多数魚をいれると失敗しやすいので、どれだけがまんできるかが大事です。

パイロットフィッシュの餌

▲配合飼料を与える

餌もできるだけ少なくとどめておきます。とくに魚が来たばかりのころは、餌やりというのは一番楽しいものですが、ここで餌を与えすぎてしまうと水が汚れ、魚が死んでしまいます。一例として45cm水槽でハタタテハゼ1匹くらいであれば、「メガバイトレッドS」を付属のスプーンの半分からすりきり1杯くらい与えます。

冷凍餌はどうしても餌付かないときに与えますが、この手の餌は特に水を汚すため、絶対に与えすぎないように注意しましょう。

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パイロットフィッシュまとめ

  • 丈夫で飼育しやすい魚を最初に水槽で泳がせる
  • 海水魚でパイロットフィッシュといえばブリモドキなどを指すことも
  • パイロットフィッシュに排せつをさせてバクテリアを増殖させる
  • ハタタテハゼなどのハゼやカエルウオの仲間が最適
  • これらの魚を飼育するためにフタはしっかり
  • 魚の数は少なく抑える。ここで失敗するアクアリストも多い
  • 餌の量も少なくしなければならない

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