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2020.04.22 (公開 2020.04.16) 海水魚飼育の基礎

群れ・複数の混泳におすすめの海水魚と注意点

海水魚は鮮やかな色彩をしているものも多く、同じ種類の海水魚を水槽内で群れで泳がせてみたくなるものです。しかしながら、実際には海の中で群れている海水魚であっても、狭い水槽の中では激しく争うなんていうこともあります。しかし、中には群れで飼育することもできるような海水魚がいます。今回は同じ水槽で何匹も入れても大丈夫な海水魚をご紹介していきます。

海水魚の群れ

海水魚は海の中では群れでいるもの、単独でいるもの、あるいはペアやハーレムを形成するものなどがいます。しかし、これらの魚を狭い水槽で飼育すると争いがおこることもあります。魚は餌をめぐって、縄張りをめぐって、あるいは繁殖の相手をめぐって争うのです。しかし中には同じ種類であっても、水槽でも群れで飼育できる魚もいますし、逆に群れで飼育してあげるのが望ましい魚もいます。

海で群れていても水槽内では争うものも

▲ニザダイ(ハギ)は1匹だけにとどめたほうが無難かもしれない

一方海で群れていても飼育水槽内では争うものもいます。ヤッコの仲間は海の中ではハーレムをつくるのがいますが、水槽内では争うことも多くペアしか残らないことも多いです。ニザダイの仲間は海では非常に大きな群れをつくるのですが、水槽内で同じようなことをすれば激しく争うことになりますので、水槽内ではニザダイは1匹にとどめたほうが賢明です。

水槽内でも群れてくれる魚

ここに挙げたほかにも水槽内で群れる魚はいます。小型のハナゴイの仲間や、スカシテンジクダイ、ネオンテンジクダイ、一部のイソハゼの仲間などです。しかしながらこれらの魚は初心者に難しいこともあり、今回は除外とさせていただきました。

キンセンイシモチ

▲キンセンイシモチは群れで飼育できる

キンセンイシモチはテンジクダイの仲間でも複数個体で飼育しやすい魚といえます。オレンジ色の体に白い線が入るという美しい体が特徴的で、性格もおとなしめということで同種同士での飼育に向きます。ただし、この種はやや水質悪化に弱いところがあり、汚い水で飼育していると病気になりやすいので注意が必要です。またキンセンイシモチの含まれるスジイシモチ属の魚には、スジイシモチやオオスジイシモチなど気が強めの魚もいるので注意が必要です。

イトヒキテンジクダイ

▲イトヒキテンジクダイも群れで飼育できる

イトヒキテンジクダイもおとなしいテンジクダイで、群れで飼育することができます。内湾のサンゴ礁に多く、枝状のハマサンゴと一緒に飼育すると雰囲気がでます。ただし本種はスレ傷にやや弱い面もあり、輸送に弱いところもありますので、できれば沖縄などから入荷したものを購入することをおすすめします。また近縁種であるウスモモテンジクダイも同様に温和で混泳向きのテンジクダイです。

このほか、おなじように半透明の体をしているスカシテンジクダイやネオンテンジクダイなども群れを作りますが、このようなテンジクダイはスレ傷に非常に弱いため初心者には飼育しにくい面があります。また筆者も長期飼育の経験がなく、今回は省略させていただきました。

クロユリハゼの仲間

▲オグロクロユリハゼは臆病なので要注意

クロユリハゼの仲間も海水魚店で多くみられ、いずれも同種同士の混泳が可能です。そのため群れで飼育することができます。特にクロユリハゼの仲間は臆病なので群れで飼育してあげたいものです(それでもスズメダイやクマノミ、メギスといった性格がきつい魚との混泳は避ける)。特にオグロクロユリハゼは多くの個体を入れてあげるようにします。

この属でもっともカラフルなものはスジクロユリハゼですが、この種も臆病なので多数入れてあげましょう。しかしながらこの種は高価な魚ですので数をそろえるのはちょっと難しいかもしれません。

サツキハゼの仲間

▲サツキハゼの群れ。中央はハタタテハゼ

サツキハゼの仲間も群れでみられるクロユリハゼ科の遊泳性ハゼです。派手さはないものの薄いグリーンがよく見るときれいな種です。この種は海でも大きな群れでみられますが、水槽でも群れてくれます。というよりは大変臆病な魚のため、できるだけ群れで飼育してあげたい魚といえるでしょう。けんかもせず同種同士の組み合わせで悩むことはほとんどない魚といえます。サンゴ岩に隠れていることも多いため、存在を忘れてサンゴ岩を干してしまうことのないよう注意が必要です。沖縄にはサツキハゼのほか、ヨスジハゼやミヤラビハゼといった種もおり、同様に飼育できます。

基本的に遊泳ハゼは多くの種が同種同士で飼育できますが、ハタタテハゼ属はペア以外の同種同士で争うこともあるので注意が必要です。

デバスズメダイ

▲デバスズメダイの群れ

性格がきついスズメダイの仲間としては例外に、おとなしいデバスズメダイであれば複数飼育可能です。ブルーグリーンの美しい魚で、群れで飼育してあげると本来の魅力を発揮する魚です。スズメダイらしく丈夫で飼育しやすい面もありますが、水槽の水が汚かったりするとウーディニウムなどにかかりやすくなるのできれいな水で飼育してあげることが重要です。また輸入されてくるものはダメージをうけていることもあり、状態が落ち着いた個体を飼育するようにしましょう。

スズメダイ科の魚としてはソラスズメダイやオヤビッチャなども海では群がっていることが多く、水槽に多数入れてしまうことが多いですが、小型水槽ではすぐに激しく争うのでやめたほうが無難です。一方あまり群れを作らないシマスズメダイやメガネスズメダイはかなり気性が激しいので同種同士はもちろん、ほかの魚との混泳さえ厳しいこともあります。

水槽内で群れを再現する際に気を付けるべきポイント

90cm以上の水槽で飼育したい

上記の魚を入れて群れを再現するとなると、当然ながら多くの魚をひとつの水槽に入れることになります。しかし狭い水槽だと水量が足りない状態に陥りやすいので、成魚サイズが極めて小さいサツキハゼなど、一部の魚をのぞき90cm以上の水槽で飼育してあげるのが賢明でしょう。

問題発生時には退避させられるように

海水魚店では同じ種類のニザダイ(ハギ)やヤッコなど、同種同士を組み合わせていることがありますが、実際に家庭用水槽でおこなうのは問題があります。海水魚店であればある程度魚のパワーバランスを把握しており、いっしょにするのが難しいと思ったら別の水槽に移動させるということもできます。ただし、これができるのは海水魚店のみ。家庭の水槽ではどうしてもほかの同じくらいの大きさの水槽に~なんてことはできないのです(たくさんの水槽を所有している方は別です)。

今回ご紹介した魚も基本的には同種同士で飼育できる比較的おとなしい魚ですが、産卵期で卵を守っているときなど、なにかが原因でほかの個体を追い掛け回すこともあるのでできるだけ問題発生時に対処ができるよう、ほかの水槽もあったほうがよいでしょう。デバスズメダイを隔離するのであれば45cm水槽があれば十分でしょう。もちろんそれに適したろ過槽や水温調整も必要です。

隔離用のケースは小型の魚には最適ですが、大きい魚を隔離することはできないので注意が必要です。「ビックフィッシュハウス」はその中では大きいほうですが、小魚2~3匹が限度でしょう。

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水流を発生させてあげよう

▲水流は海水魚飼育にも重要な要素

魚が増えると当然呼吸をしますので、水中の酸素量は減っていきます。水槽に酸素を増やすためには波を発生させ酸素を水に溶け込ませるとよいでしょう。とくに外部ろ過槽しか使用していない水槽では酸欠になりやすいため、水槽にしっかりと酸素を溶け込ませるようにしたいものです。水流といえばサンゴ水槽ですが、魚水槽でも効果があるので設置してあげたいものです。また隔離ケースを使用するならばケースの中がよどまないよう水流をしっかりあてておきたいところです。

ろ過装置は大丈夫?

魚が増えると酸素が減る一方、餌を食べて排せつ物の量も増えますので、当然ろ過装置も大きな能力を持つものが必要になってきます。外部ろ過槽はパワー不足の状況に陥りやすいので補助的に使用するにとどめ、上部ろ過槽をメインに使用するようにしましょう。もちろんオーバーフロー水槽で飼育できるのであれば、オーバーフロー水槽の導入が最適です。

購入時には状態をよく観察しよう

群れをつくる魚を購入する前に注意しておかなければならないポイントとしては「購入時に状態をよく観察すること」です。群れをつくるタイプの魚は比較的安価なものが多く、雑に扱われてしまうものが多いからです。スカシテンジクダイのような体が透けている種やイトヒキテンジクダイなど、体に透明感がある種は、妙に白っぽくなっているものは絶対に避けます。もちろん体や鰭に赤いただれがあるもの、白い点がついているもの、傷がついているもの、泳ぎ方がおかしいものなども購入してはいけません。

またオグロクロユリハゼなどのクロユリハゼの仲間や、ハナダイの仲間の小型のものなどはやせやすいので特に状態には気を使うべきです。腹部がへこんでいるものや背中の肉が落ちているものなどは購入しないほうがよいでしょう。

混泳相手にも注意をはらおう

▲メギス(ドティバック)の仲間は美しいが気性も激しい

群れをつくる魚は混泳相手にも注意をはらわなければなりません。そもそもなぜ魚は群れをつくるのか。それは肉食性の強い魚から逃れるためです。一匹でいると肉食の魚に狙われやすいのです。水槽のような狭い環境下では、群れていても肉食性の魚に狙われることがあります。また肉食性でなくても、攻撃性の強い魚は避けます。とくにミツボシクロスズメダイやヒレナガスズメダイ、メギスなどはほかの魚をいじめてしまうことがあるのでやめたほうが無難です。イトヒキテンジクダイの群れであればカクレクマノミやデバスズメダイ、ハナダイ、各種カエルウオや各種ハゼは問題ありません。デバスズメダイは大きめの魚との混泳もでき、大型ヤッコや大きめのハナダイ、ニザダイ(ハギ)類との混泳もこなします。

群れを作る海水魚まとめ

  • 海水魚は海では群れていても水槽内では争うものも多い
  • 水槽内でも群れをつくるものがいる。複数飼育するならそういう種を選びたい
  • キンセンイシモチやイトヒキテンジクダイなどテンジクダイの仲間は複数飼育できる種が多い
  • 遊泳性ハゼも多くの種類が同種同士群れで飼育できる
  • スズメダイ科ではデバスズメダイが温和で群れで飼育できる
  • 海水魚を群れで飼育するならば90cm以上の水槽で飼いたい
  • 問題発生の際には退避できるように別水槽が欲しい
  • 水流やろ過能力にも気を使いたい
  • 群れる魚は安価な魚が多く魚の状態にも気を付けるべき
  • 強いスズメダイやメギス、肉食魚との混泳はさせてはいけない
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