「海水魚」「淡水魚」「熱帯魚」それぞれの違い

お客さんの来訪時、よくカクレクマノミなどの海水魚を指さされ「これは熱帯魚ですか」ときかれたアクアリストも多いかと思います。たしかにカクレクマノミやルリスズメダイ、ヤッコの仲間などは熱帯域を中心に分布している「熱帯魚」ではあるのですが、一般的にアクアリストが使用する「熱帯魚」とは少し意味が異なるようです。今回は、「海水魚」「淡水魚」、そして「熱帯魚」という言葉の意味と飼育の考え方をご紹介したいと思います。

海水魚とは

▲アクアリストのいう海水魚の代表的な存在、アケボノチョウチョウウオ

海水魚とは文字通り「海に暮らす魚」のことをいいます。私たちにお馴染みのクマノミ、スズメダイ、チョウチョウウオ、ヤッコのほぼすべてが含まれ、食用魚や釣り魚としてもお馴染みのイワシ、アジ、サバ、カツオ、タイ、カサゴ、カワハギ、キスなどのほぼすべての種もこの中に含まれています。

ただしアクアリウムの世界で海水魚というのはまた別の考え方になります。アクアリストのいう海水魚は当然「アクアリウムで飼育できる海水魚」ということになるため、マグロやカジキ、ジンベエザメ、サンマ、イワシなどは対象外になってしまいます。

海水魚はひとつの種類が広く分布しているものも多いです。とくにチョウチョウウオ科のある種は南アフリカの南東岸から中南米の太平洋沿岸にまで見られます。同様にニザダイ科やベラ科、ウツボ科なども広い分布域をもつものもいます。逆にスズメダイの仲間、メギスの仲間、テンジクダイの仲間など、卵が大きい魚で、親魚が卵を保護するような魚は分散能力が乏しく、一部の海域の固有種となっているものがいます。アクアリストにお馴染みの「プテラポゴン」ことバンガイカーディナルフィッシュや、「フリードマニー」ことオーキッドドティバックなどがまさにその例です。

海水はどこも大体pHが8.1~8.3くらいなので、好むpHの違いでほかの魚と一緒に飼育できない、という魚はいませんが、水温と比重は海水魚の生息する海域により違いがあります。オホーツク海やアメリカ西海岸の寒冷な海域に生息している魚は当然、カクレクマノミなどと一緒に飼育することはできません。また紅海(周囲を砂漠に囲まれ蒸発が激しい)は比重が高くなるため、紅海特産の魚は飼育においても高めの塩分で飼育してあげたいものです。比重は比重計を使ってしっかりと見てあげたいものです。

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淡水魚とは

▲日本産淡水魚の代表的な種、コイ科のオイカワ

▲エンゼルフィッシュも南米のアマゾン川水系などにすむ淡水魚

淡水魚はその名の通り淡水域に生息している魚です。熱帯から亜寒帯の河川に生息していて、中には水系ごとに独自に分化した集団が知られていたりもします。そのため外来種や開発の影響を受けやすく、滅んでしまったものもいます。また絶滅しそうだからと異なる水域から別の地域集団を持ち込んだために在来集団を駆逐し滅ぼしてしまったという例もあります。その一方で淡水魚は海水魚より増やしやすく、養殖で間に合ってしまう種も多くいます。また、多くの改良品種も作出されています(コイ科やカワスズメ科などで顕著)。

ただし魚は海水魚・淡水魚とひとくくりにできない現状があります。例えばサケの仲間は卵を産むときに海から河川へとのぼりますし、アユやヨシノボリなども稚魚は河川から海へおりていくなどの回遊を行います。また淡水と海水のまじりあう汽水域を好む魚も多くいます。

淡水は河川や湖によってpHもまちまちです。コイやキンギョ、日本産淡水魚は水道水を中和したpH7の中性の水で飼育できますが、ディスカスやカラシン、ある種の淡水エイなどはおおむねpHが低めの水で飼育し、アフリカのマラウィ湖やタンガニィカ湖などの魚はアルカリ性の水で飼育したいものです。したがってこれらの魚は一緒に飼育するべきではありません。淡水魚は海水魚に比べて簡単なように思われがちですが、水質や入れる魚については淡水魚以上に気をつけなければなりません。もちろん海水魚同様水温にも注意を払わなければなりません。

熱帯魚とは

▲(狭義の)「熱帯魚」の代表種ネオンテトラ

熱帯魚は文字通り「熱帯に生息する魚」のことです。「コトバンク」(朝日新聞社や講談社、小学館などの辞書から用語検索ができるサービス)によれば、「熱帯地方の水域に産する魚」のことを熱帯魚といいますが、コトバンク内に収録されている「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」には「~淡水産のものと海水産のものがあるが、一般には淡水魚が愛好されている」とあり、やはりコトバンクに収録されている「日本大百科全書(ニッポニカ)」にも「~広義には淡水・海水産の両方の魚種を含めるが、狭義には淡水産のもののみをさす」とあります。簡単にいえば熱帯から亜熱帯のサンゴ礁に生息するカクレクマノミは日本大百科全書でいう広義では熱帯魚のなかに含まれていますが、狭義では熱帯魚の中に含められません。もちろん、熱帯性海水魚のカクレクマノミと、熱帯の河川に生息するネオンテトラやエンゼルフィッシュなどと同じ水槽ですることもできません。

実際に筆者が以前所有していた熱帯魚カタログでは、淡水の熱帯魚と一部の汽水魚が掲載されていましたが、海水魚は掲載されていませんでした。やはり熱帯魚=熱帯域に生息する淡水魚、という考え方がアクアリストの考えに近いように思います。なお、熱帯域に生息する海水魚を「熱帯性海水魚」と呼ぶことがあります。当サイト「海水魚ラボ」では、この表記を採用していますし、冒頭のようなシチュエーションであったら、「これは熱帯性の海水魚ですね」と答えるでしょう。

いずれにせよ「海水魚」「淡水魚」「熱帯魚」という分け方は分類学的なものではなく、生息している場所で分けているものです。ただしコイの仲間やドジョウの仲間、カラシンの仲間、ナマズの仲間、メダカの仲間、カダヤシの仲間はほとんどが淡水魚で、海水魚はごくわずかです。古代魚(ガーやポリプテルスなど)も淡水魚は多いのですが海水魚は少ないといえ、河川と海を行き来するチョウザメや、南東アフリカやインドネシアの深場にすむシーラカンス類くらいといえます。

海水魚と淡水魚と熱帯魚の違いまとめ

一般的な意味 アクアリストの間での意味
海水魚 主に海に生息する魚。マグロ、カツオ、サバ、イワシ、タイ、チョウチョウウオ、クマノミ、サメなど。 アクアリストが飼育できる海の魚。チョウチョウウオ、クマノミ、ナンヨウハギなど。
淡水魚 主に淡水域に生息する魚。改良品種も含む。キンギョ、コイ、フナ、オイカワ、ナマズ、エンゼルフィッシュ、ネオンテトラなど。 主に淡水域に生息する魚。改良品種も含む。キンギョ、コイ、フナ、オイカワ、ナマズ、エンゼルフィッシュ、ネオンテトラなど。
熱帯魚 熱帯域に生息する魚。広義ではネオンテトラ、エンゼルフィッシュ、ディスカス、ベタ、カクレクマノミ、ナンヨウハギなど。 熱帯に生息する淡水魚。ネオンテトラ、エンゼルフィッシュ、ディスカス、ベタなど。

このほか、海と河川を行き来する回遊魚(サケ、アユ、ウナギなど)や汽水域に生息する魚も多数知られている。

参考資料

コトバンク―熱帯魚

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