2020.07.19 (公開 2020.05.25) メンテナンス
海水魚飼育におけるpH~海水魚が好むのは酸性?アルカリ性?
魚を飼育する時にはよく「pHとは」「pHはいくつ?」と疑問をもたれることがあります。pHは水が酸性なのか、アルカリ性なのかを示す数値で、とくに淡水魚を飼育しているときはよく聞くものです。淡水魚は種類によって、弱酸性を好むのか、弱アルカリ性を好むのか違いがあります。そのため好む水質が大きく変わる魚は一緒に飼うことはできません。では海水魚を飼育するときにもこれはあてはまるのでしょうか。今回は海水魚飼育のpHについて考えてみたいと思います。
pHとは?
pH(水素イオン濃度)は簡単にいえばその液体が酸性なのか、それともアルカリ性なのかをしめす指数です。ペーハー、もしくはピーエッチと読みます。最近はピーエッチと呼ばれることが多く、実査に日本工業規格では「ピーエッチ」とされておりますが、アクアリウムの世界ではいまだにペーハー読みが主流です。ちなみにペーハーというのはドイツ語です。アクアリウムとしてはドイツは先進的なイメージもあり、そういう点もペーハー読みがいまだに使われている理由なのかもしれません。
酸性
▲弱酸性の水を好むディスカスとオトシンクルス
▲アフリカ産シクリッドのうち河川のものは弱酸性の水で飼育できる
一般的に弱酸性はpH6前後をさします。弱酸性の水を好む魚としては南米やアフリカにすむカラシン類やディスカス、ドワーフシクリッド、東南アジアの小型コイ類やグラミーのなかまなどがいます。中性をこのむコイの仲間でも徐々な変化であればpH6前後の弱酸性で飼えるものも多いです。アフリカ産のシクリッドは弱アルカリ性というイメージがありますが、湖産シクリッド(アウロノカラ、ネオランプロログスなど)以外のアフリカ産シクリッドの多く(トーマシーなど)は弱酸性の水で飼育することができます。
中性
▲キンギョやメダカもpH7前後で問題ない
中性はpH7で、これより数値が大きいと弱アルカリ性、少なければ酸性となります。また純水のpHが7です。中性の水を好む淡水魚はコイの仲間やカラシンの仲間、中・大型魚です。日本の淡水魚も多くは中性から弱酸性で飼育することができます。キンギョやニシキゴイ、メダカなどもこの数値前後で飼育して問題ありません。
アルカリ性
▲汽水域を好むテッポウウオ
▲マラウィ湖やタンガニーカ湖のシクリッドはアルカリ性の水を好む
pH7以上ではアルカリ性になります。淡水魚でアルカリ性を好むものは少ないですが、アフリカのマラウィ湖やタンガニーカ湖などの湖産シクリッド(通称アフリカンシクリッド)や、托卵という変わった習性をもつものが含まれる湖産シノドンティス(ナマズの仲間)などを飼育する際には弱アルカリ性の水で飼育する必要があります。またヒメツバメウオやミドリフグなどの汽水魚を飼育する際も弱アルカリ性の汽水で飼育することになります。
海水魚のpHは?
海水魚の水はアルカリ性です。アルカリ性であればpHの値がいくらでもいいというわけではなく、おおむね8.1~8.4の間になるのがベストですが、夜間はpHが下がりやすい傾向にあります。酸素呼吸によっても生成されるので、昼間は光合成していた藻類なども夜間は呼吸するためですね。
また有機物の分解によっても生成され、魚を中心とした水槽ではpHが下がりやすい傾向にあります。サンゴ砂を敷けばある程度はpH維持に役立つのですが、それ以上に魚の排せつや生物ろ過によっても低下していくからです。そのため水替えや添加剤を使用してpHの維持につとめたいところです。なお海水魚はどの種もpH8.1~8.4くらいの水で飼育することができますので混泳についてpHはあまり重要な要素ではないのですが、新しい魚を水槽にいれるの際のpHショックには注意が必要です。そのため水合わせが必要です。魚ではないのですがエビの仲間は水質の急変に弱いので注意が必要です。
アルカリ度(炭酸塩硬度、KH)
pHをアルカリ性に維持するためにはアルカリ度を高めるためのバッファー剤もいっしょに添加したいものです。これはアルカリ度の値もpHの変動に影響を及ぼすためで、アルカリ度が低いとpHも下がってしまいやすいからです。またアルカリ度はサンゴの骨格を形成するのにも使用されており、サンゴ水槽でも減っていってしまいます。そのため添加剤を使用して添加しておきたいものです。
添加剤でのpH調整
いくつかのメーカーからpHやKHを調整するための添加剤が販売されています。
ブライトウェル pHプラス&アルカリン8.3
▲pHプラスとアルカリン8.3
マーフィードが輸入販売するブライトウェルアクアティクスの添加剤です。我が家ではおおむねこの方法でアルカリ度を上げています。pHプラスはpHを生物にとっては安全に上昇させることができます。しかしながらアルカリ度が低いとpHも上がっていかないので、アルカリ度を上昇させる必要もあります(説明書によれば2.5~4.3meq/l、炭酸塩硬度で7~12dKHをキープしておく必要があるとのこと)。そのためアルカリ度を上げるアルカリン8.3も同時に添加したいところです。なお、アルカリ度が低い場合は「アルカリン8.3」を添加してからpHプラスを添加するとよいようです。また、できるだけpHメーター、もしくはテストキットを用いて添加量をしっかりと計測したいところです。
レッドシー ファンデーションB KH/アルカリニティ
▲レッドシーのファウンデーションB
レッドシーの添加剤「ファンデーションB」は「リーフケアプログラム」と呼ばれるサンゴの健康維持や成長を促すためのプログラムのなかの4つのサブプログラムのひとつ「リーフファンデーションエレメンツ」の中に含まれます。このサブプログラムではサンゴの健康維持や成長に重要な安定した環境を維持することに重点がおかれています。リーフファンデーションエレメンツには「A」「B」「C」の3種の添加剤があり、「A」はカルシウムやマグネシウム、「B」は炭酸塩、「C」はマグネシウムが含まれます。またこれら3種すべてをふくむセットも販売されています。
このうちpHやKHの維持に役に立つのはファンデーションBで、KH/アルカリニティでは炭酸塩やバッファー成分が混合されておりサンゴに適切なアルカリ度やpHを維持します。注意点としてはマニュアル化されている添加剤ですので、レッドシーのWEBサイトでダウンロードできる添加マニュアルに従う必要があります。また同様に添加の際には適切なテストキットでの測定が必要になることがあげられます。
pHの計測
▲マーフィードの「エコペーハー」
古くからあるリトマス紙のようなものもありますが、昨今はアクアリウム用のpHメーターを使って計測するほうが簡単でわかりやすいため、よく使用されます。マーフィードなどからpHメーターが販売されているので、できれば購入して計測しておきたいところです。また水槽に設置し、pHの値を監視してくれるpHモニターも各社から出回っていますので、このようなアイテムを使用するのもよいでしょう。
ただし正確に測りたいのであれば試薬タイプを使用するとよいでしょう。現在日本においてもっとも入手しやすい試薬はイスラエルのレッドシーのもので、pHとKHを測定できるテストキットが市販されています。
海水魚飼育におけるpHまとめ
- 水素イオン濃度とよばれ液体が酸性なのかアルカリ性を示す
- pH6前後が弱酸性、カラシン類や河川のシクリッドを飼育するのに適する
- pH7が中性、純水は中性で日本産淡水魚などの飼育にも適する
- pH7より上はアルカリ性、アフリカの湖産シクリッドはアルカリ性で飼育する
- 海水魚はpH8.1~8.5ほどで飼育する
- アルカリ度が低いとpHは上がっていかない
- 魚水槽ではpHが下がりやすい
- 添加剤などを使用してpHを維持する
- pH計測のためには専用のpHメーターを使用する
- 試薬を使うと詳細にpHやKHを測定できる