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2022.08.09 (公開 2017.12.27) メンテナンス

カーリー(セイタカイソギンチャク)の対策方法~薬・エビ・カワハギ

水槽でサンゴを飼育していると、かわった茶色のイソギンチャクが出現することもあります。これはカーリーとよばれるイソギンチャクで、強い毒性と凄まじい増殖力をもちサンゴや種類によっては魚にまで悪影響があります。できるだけ早いうちに水槽から取り除く必要があります。

カーリーとは

カーリーは小型のイソギンチャクです。和名ではセイタカイソギンチャクというのですが、この名前でよばれているものにはおそらくいくつかの種が含まれていると思われます。属の学名からAiptasia(アイプタシア)ともよばれることもあり、海外ではこちらの名称で呼ばれていることが多いです。

大きなものでは高さ5cmを超えるものもありますが、サンゴの骨格部やライブロックには数mmほどと非常に小さいものが多く見られます。質の悪いライブロックなどには、購入した時点から棲み着いていることも多く、できるだけ小さいうちに駆除するようにしましょう。

なぜカーリーを駆除したほうがいいの?

▲毒性の弱めのサンゴは要注意

カーリーは小さいながら強い毒をもち、サンゴを死なせてしまうこともあります。一般的なサンゴよりも毒性が強い、クマノミなどと共生するイソギンチャクの仲間も、カーリーにはかなわないようです。それだけでなく繁殖力も強く、カーリーがまだ小さいうちに根本的な対策をしておかないとあっというまに大増殖してしまいます。

またカーリーは光合成もするようですが、餌を与えるとよく食べます。餌が無駄になるどころか大きく成長してしまい、飼育している魚もサイズによってはカーリーのおかずになってしまうおそれもありますので注意します。

駆除をおろそかにしてしまうと巨大なカーリーを発見してびっくりすることになるでしょう。

カーリーの駆除方法

駆除には生物兵器を導入する方法と、薬剤を使う方法の二通りがあります。

生物兵器の導入:ペパーミントシュリンプ

生物兵器として導入されることが最も多いのがペパーミントシュリンプです。赤色の体に白色の縞模様が特徴のエビで、何種類か知られています。属としてはスカンクシュリンプやホワイトソックスなどと同属のエビです。

メリットは薬剤ではないのでミドリイシやウミアザミなどのデリケートなサンゴにも悪影響がないこと。デメリットはマメスナギンチャクなどを食べてしまうことがあること、エビを捕食してしまうことがあるベラの仲間やハナスズキ(リオプロポマ)に代表されるバスレットなどとの飼育ができないこと、ペパーミントシュリンプとして流通されるエビの種類によってカーリーを食べてくれるものとそうではないものがいること、高水温に弱いことなどがあげられます。

ただし、我が家で飼育していたペパーミントシュリンプは水温25℃でも長生きしてくれました。

同じようにマメスナギンチャクなどを食べることがあるサラサエビやキャメルシュリンプ、フシウデサンゴモエビはカーリーも食べる可能性がありますが、残念ながら我が家の水槽においてはその様子を見たことはありません。

ペパーミントシュリンプの飼育についてはこちらの記事もご覧ください。

生物兵器の導入:カワハギの仲間

▲カワハギ科のフチドリカワハギ

カワハギの仲間にもカーリー対策として入れられることがあります。琉球列島やインド-中央太平洋のサンゴ礁域に生息するフチドリカワハギなどはカーリーを捕食してくれますが、カワハギの仲間はフグに近い仲間で他のソフトコーラル、種類やサンゴの状態によってはハードコーラルも突くため、サンゴ水槽のカーリー対策にはおすすめできません。雑食性で甲殻類や軟体動物も食べます。

ただしペパーミントシュリンプと異なり、バスレットやベラなどの魚に食べられにくく、サンゴ礁域の浅瀬に生息するため高水温にも強いというのはメリットといえます。

サンゴや無脊椎動物をいったん水槽から隔離できるような水槽であればこの種も有効ですが、サンゴを頻繁に動かすことはサンゴにとってストレスになってしまうおそれがありますので注意が必要です。

このほかカゴカキダイなどもカーリーを食べてくれるとされますが、サンゴを捕食したりやや性格が強めであるためサンゴ水槽や小魚を混泳させている水槽では注意が必要です。ただフチドリカワハギとは異なり磯でもよく採集できるというメリットがあります。

薬剤を使ってカーリー駆除

レッドシーから出ている「アイプタシアX」、トロピックマリンの「ELIMI-AIPTAS」などの商品があります。いずれの商品もカーリーに直接注射を行い、薬剤の力でカーリーを溶かしてしまうというものです。

これらの薬剤はサンゴ水槽での使用も可能、とメーカーは謳っています。たしかに薬剤を散布するよりも安心なように思え、残った薬剤も溶けて分解されてしまうようです。しかし、もしデリケートなサンゴが入っていて心配なのであれば、カーリーが付着しているライブロックなどを取り除き、別の水槽で薬剤を使うようにするとよいでしょう。

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人力でカーリーを駆除

▲カーリーが複数ついているオオタバサンゴ

▲ピンセットでオオタバサンゴについたカーリーを取り除く。骨格の隙間にいることも多い

ライブロックなどに付着したカーリーを削ってしまう方法です。ピンセットなどでつまんだり削りとるなどして、水槽から取り除くとよいでしょう。ただし体の一部がついているようだとカーリーはまたすぐに発生してしまい、逆に増加してしまうこともありますので難しいものです。半田ごてなどで焼いてカーリーを駆除している方もおります。

サンゴに付着しているような状態のものは、カーリーが付着している部分を割って水槽から取り除くなどして駆除することもできます。カーリーがついてしまって一部箇所が死んでしまったという場合には効果的な駆除方法になりますが、オオバナサンゴやハナガタサンゴ、クサビライシなどにはあまり向いていない方法といえます。

写真のオオタバサンゴは飼育してから5年半たつもので、硝酸塩の増減にも強いですがイソギンチャクの毒性には弱いようですので、見つけたら早めに取ってあげることが大事です。骨格の隙間にカーリーの破片が入っていることもありますので、ライトを当てながらカーリーを取り除きます。カーリーにやられて完全に骨格だけになっているところはニッパーなどで割って捨ててもよいです。

最も効果的なカーリー対策の方法は?

ここまでカーリー退治に必要な生物、薬剤など紹介してきました。上記に挙げた方法にはそれぞれメリット、デメリットがありますので改めて表でまとめてみます。

対策 メリット デメリット どんな時に?
ペパーミントシュリンプ ・薬物を使用しない
・多くのサンゴに安心
・入手しやすい
・カーリーを食べない種類も
・マメスナは危険
・高水温に弱い
・エビを食べるバスレットやベラと飼育しにくい
サンゴメインの水槽
フチドリカワハギ ・薬物を使用しない
・高水温に強い
・魚に食べられにくい
・サンゴを食べてしまうおそれもある
・甲殻類などを食べることも
・入手しにくい
・魚メインの水槽
・サンゴの状態がよく、サンゴを隔離可能な水槽
薬剤 ・即効性がある
・生き物ではない
・デリケートなサンゴには不安という人も
※メーカーは安全と謳っていても、心理的に
・やや高価
・LPSやマメスナギンチャクなどの水槽
・バスレットなどを飼育している水槽
ピンセット ・サンゴにも安心
・低コスト
・上手く剥がせないとすぐに再生する ・沢山のライブロックにカーリーがついている
・ライブロックを水槽から取り出せる水槽
・お金がないなどの特殊事情

最も確実なカーリー対策としては「水槽に入れない」ことですが、カーリーはライブロックなどの中にも多く潜んでおり、駆除が難しいのが現実です。私の経験では、サンゴ用の薬浴剤「コーラルRXプロ」ではウミウシや貝類などの生物、RTNなどの病原菌は駆除できますが、カーリーはうまく駆除できませんでした。

水槽の状態、サンゴの状態などを考慮してどのようにして駆除するか考え、上記の選択肢から選択するのがベストといえるかもしれません。

カーリー対策のまとめ

  • セイタカイソギンチャクとも呼ばれる小型イソギンチャクの仲間
  • 強毒で繁殖力も強いので早めに駆除する必要がある
  • 強い毒でサンゴを弱らせてしまう
  • 大きく育ったカーリーは小魚を食べることも
  • ペパーミントシュリンプやフチドリカワハギはカーリーを食べる
  • サンゴに安全とされるカーリー駆除用薬剤も販売されている
  • ピンセットでつまんで除去する方法も

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