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2020.07.17 (公開 2018.05.16) 海水魚図鑑

カゴカキダイの飼育方法~カーリー対策になるがサンゴ水槽では難しい

カゴカキダイ

カゴカキダイは古くから飼育されてきた海水魚です。熱帯性の魚というものではないですが、きれいな色彩から観賞魚として知られています。

カーリー対策として飼育することもできて、また食べて楽しむのもOK。チョウチョウウオに似た外見をしていますが実際にはメジナなどに近い仲間とされます。

ここではそんな魅力が詰まったカゴカキダイの飼育についてまとめていきます。

標準和名 カゴカキダイ
学名 Microcanthus strigatus (Cuvier, 1831)
英名 Stripey, Convict fish, Footballerなど
分類 スズキ目・スズキ亜目・カゴカキダイ科・カゴカキダイ属
全長 20cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド
温度 20~25度
水槽 60cm以上
混泳 小型のハゼや臆病なバスレットは注意
サンゴ飼育 ハードコーラルはつついてしまう

カゴカキダイってどんな魚?

カゴカキダイの分類

カゴカキダイに近いとされる魚たち

カゴカキダイ科の魚は4属5種が知られていますが、全ての種がオーストラリアやその周辺海域に分布し、北半球に生息するのはカゴカキダイだけです。ただこのカゴカキダイにも何種かいるのではないかといわれ、海域により微妙な違いがあることから別種とされることもあります。

たとえばRudie H. Kuiter氏の図鑑「Coastal fishes of South-eastern Australia」では、日本やその周辺にすむものとオーストラリア産の西海岸にすむものは異なるかもしれない、とされており、その場合Microcanthus vittatus (Castelnau, 1873)、東海岸に生息するものにMicrocanthus howensis (Whitley, 1931)の学名があてられる可能性があるとのことです。日本産の個体をタイプ標本として学名がつけられており、日本産カゴカキダイの学名変更はなさそうです。

なお、カゴカキダイ科の魚はタカベ科やメジナ科と近縁とされ、これらの科とあわせ「イスズミ科」とされていることもあります(Fishbaseなど)。なお、「海水魚ラボ」における科や属の扱いは原則として日本産魚類検索 全種の同定 第三版(東海大学出版会、2013年)を参考としております。外国産種についても上記のFishbaseなどを含む様々なデータベースや図鑑などを参考にしております。

カゴカキダイの生息場所

水深100mを超える海底から漁獲されたカゴカキダイ

水深100mを超える海底から漁獲されたカゴカキダイ

体色が鮮やかなことから熱帯性の魚と勘違いされがちですが、東北地方以南のほとんど各地の沿岸にみられる魚です。ただ、ナベカと違って奄美諸島や琉球列島でも見られます。生息場所は沿岸の岩礁域で、春から夏にかけては潮溜まりでかわいい幼魚にも出会えます。しかし生息する水深は幅広いようで、水深100m以深で網をひく沖合底曳網漁業でも採集されます。

内湾にも出現し、時には河川の汽水域でも見られることがあります。低塩分にもある程度耐性があるのかもしれません。

カゴカキダイに適した飼育環境

水槽

カゴカキダイは水槽でも10cmを超えます。そのため小型水槽では終生飼育するのは困難といえます。最低でも60cm水槽が必要になります。大型個体を複数飼育するのであれば90cm水槽で飼育するとよいでしょう。

水質

比較的水質悪化には耐えますが、つねに綺麗な水を保つことが重要です。60cm水槽であれば上部ろ過槽をメインに、外掛けプロテインスキマーや外部ろ過槽を使用するとよいでしょう。複数匹で飼育すると排せつ物の量が多くなり水が汚れやすくなるため、ろ過槽の増強は必須となります。

水温

20~25℃くらいの水温で飼育するのがベストといえます。近縁の科であるイスズミやメジナ同様高めの水温でも飼育可能ですが、28℃くらいに抑えるようにしましょう。水槽用クーラーを使用し、安定した水温で飼育することが大切です。

レイアウト

カゴカキダイの生息地をイメージしたレイアウトを組みましょう。おもに岩礁域に見られる魚なので、擬岩やライブロックなどを複雑に組みあげレイアウトします。ライブコーラルは食べられてしまうこともありますので、あまり組み合わせない方がよいでしょう。

カゴカキダイに適した餌

カゴカキダイは雑食性で様々な餌を食べます。釣り針により口に小傷がついた個体はなかなか餌をたべないこともありますが、配合飼料にもすぐになれます。

配合飼料はペレット・フレーク、いずれもよく食べます。クリル(乾燥オキアミ)もよく食べますが、釣り餌のオキアミは防腐剤などが入っているおそれがあるため、飼育している魚には絶対に与えないでください。

カゴカキダイを入手する

カゴカキダイは近海産海水魚を中心に取り扱っている店舗を除き、観賞魚店では販売されていることは少ないです。そのため、自分で採集するのが一番早いといえます。

▲千葉県で撮影されたカゴカキダイの稚魚

カゴカキダイの幼魚は関東地方の磯では春から初夏に磯の浅場で見ることができます。幼魚も成魚と同じような模様をしており、小さくてもはっきりとわかります。太平洋側だけでなく、日本海岸でも採集することができます。写真は千葉県の磯で撮影した幼魚。

高知県で釣れた掌サイズのカゴカキダイ

高知県で釣れた掌サイズのカゴカキダイ

福岡県福津市で採集されたカゴカキダイ。日本海岸にもいる

▲福岡県福津市で採集されたカゴカキダイ。日本海岸にもいる

成魚は俊敏な泳ぎをするので、釣りで採集することになります。細かいサヨリ針などに餌のオキアミなどをつけると簡単に釣れますが、針を深く飲み込んでしまったものは飼育には向きません。

逃がしても死んでしまうことが多く、そういうものは食べてあげたほうがよいでしょう。防波堤の上に放置したままにしておくことのないように。

カゴカキダイと他の生き物との相性・混泳

他の魚との混泳

水族館で飼育されているカゴカキダイ

水族館で飼育されているカゴカキダイ

カゴカキダイの性格はやや強めです。小型のハゼや臆病なバスレットなどとの混泳は避けた方がよいでしょう。

大きめのハナダイや、メジナ、イスズミ、カサゴなどとの混泳は問題ないようです。水族館でも、大きなサメやエイ、アジなどがいる水槽で本種が飼育されていることも多いです。逆にほかの魚をつついたりするコトヒキなどの魚との混泳は避けたほうがよいでしょう。広い水槽では同種同士の混泳も可能なようです。

サンゴ・無脊椎動物との相性

カゴカキダイの食性は雑食性で、甲殻類や軟体動物などを捕食し、水槽に蔓延るカーリーなどを食べてくれますが、個体によってはカーリーだけでなくハードコーラルをつついて食べてしまうこともあります。そのようなサンゴとの飼育は避けた方が無難といえます。

サンゴ水槽のカーリー駆除には本種よりもペパーミントシュリンプや、アイプタシアZなど専用の薬品を使用して駆除した方がよいかもしれません。

甲殻類は小型のものは食べてしまいます。スカンクシュリンプなどのクリーナーは問題ないことが多いですが、イセエビやイシガニなど大きな甲殻類はカゴカキダイを捕食してしまうことがありますので避けなければなりません。

食べても美味しい

カゴカキダイとハタタテダイの塩焼

カゴカキダイの塩焼。左の魚はハタタテダイ

カゴカキダイは観賞魚として飼育されるだけでなく、食用としても知られています。見た目は鮮やかで、食するのをためらってしまいそうになりますが、実は脂がよくのっており塩焼や煮つけなどで美味しく食べることができます。

主な漁法としては刺網、定置網、底曳網ですが、カゴカキダイを専門に狙うことはまずありません。またこれらの漁法で漁獲されたカゴカキダイは擦れなどがあったり、揚がった時点で弱っていたりするため、残念ながら飼育にはあまり適しません。

カゴカキダイの飼育まとめ

  • 黄色と黒の縞模様が美しく熱帯魚と思われがち
  • チョウチョウウオに似ているが、メジナやイスズミに近い仲間とされる
  • 沿岸から水深100mを超える深場にまでみられる
  • 終生飼育には60cm以上の水槽が必要
  • 水温は25℃でよい。それより上がるようならクーラーを設置したい
  • 配合飼料もよく食べてくれる
  • 小型のものは磯採集、大きめのものは釣りで採集する
  • やや気が強め。小魚との混泳は避ける
  • 甲殻類やサンゴは食べられることがある
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