2020.09.21 (公開 2018.10.09) 海水魚図鑑
スベスベサンゴヤドカリの飼育方法~餌・混泳・サンゴとの相性
スベスベサンゴヤドカリは、観賞用の海産ヤドカリの代表的な種であるユビワサンゴヤドカリと近い仲間のヤドカリです。
サンゴヤドカリ属のヤドカリでは大きめの種類で、小型のヤドカリとの飼育には注意が必要です。丈夫で飼育しやすく長期飼育も容易なので初心者にもおすすめのヤドカリといえます。
標準和名 | スベスベサンゴヤドカリ |
学名 | Calcinus laevimanus (Randall, 1840) |
分類 | 節足動物門・十脚目・ヤドカリ科・サンゴヤドカリ属 |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
餌と添加剤 | 各種配合飼料、クリルなど。添加剤はヨウ素、カルシウム、微量元素など |
温度 | 23~25℃ |
水槽 | 小型水槽でも飼育可 |
混泳 | 可。ヤドカリ同士の飼育は注意 |
サンゴ飼育 | 可。ただしひっくり返されないように |
その他 | コードなどをつたい外にでる恐れあり。しっかりとフタをする |
スベスベサンゴヤドカリってどんなヤドカリ?
スベスベサンゴヤドカリは名前に「サンゴヤドカリ」とあることからもわかるように、サンゴ礁に生息するヤドカリの仲間であるサンゴヤドカリ属のメンバーです。この属の種は他にユビワサンゴヤドカリが含まれますが、ベニワモンヤドカリは含まれません。
本種は他のサンゴヤドカリとは左のハサミ(鉗脚)が黒っぽいこと、脚(歩脚)は茶色っぽく黒い線が入ること、指節が白く、黒い斑点が入ることなどにより容易に区別できます。眼は青っぽく、意外とカラフルです。
海産ヤドカリの基本的な飼育方法についてはこちらをご覧くださいませ。
スベスベサンゴヤドカリに適した飼育環境
水槽・水質とろ過システム
ヤドカリは小型水槽でも飼育できる生物です。とくにこのサンゴヤドカリの仲間は色が綺麗でかつ丈夫で飼育しやすく、初心者が小型水槽で飼育するのにも適しているといえます。ただし、ろ過槽なしというのはよくありません。外掛けろ過槽や底面ろ過装置でもよいのでちゃんとろ過槽をつけてあげましょう。もちろんほかに魚やサンゴと飼育するのであればそれなりのろ過装置が必要となります。
水温
サンゴヤドカリはどの種も飼育しやすいですが一定の水温で飼育した方が安定して飼育できます。適温は23~25℃ですが短時間であればかなり高めの水温でも耐えられるようです。
フタ
本種やシロサンゴヤドカリのようにタイドプールにすむサンゴヤドカリの類にはフタが必須です。
フタをしておかないとコード類などを伝って脱走するおそれがあるからです。脱走したらふたたび水槽に戻ることなく死んでしまうことが多いので、フタはしっかりしましょう。なお、スベスベサンゴヤドカリは潮溜まりの上を歩いていることもありますが、オカヤドカリと異なり、基本的には水中で生きている種ですので、水槽内にわざわざ陸地を作る必要はありません。
貝殻
▲コケ取りの貝を襲い貝殻を得たスベスベサンゴヤドカリ
貝殻はヤドカリ飼育に必要なもののひとつです。ヤドカリは水槽内でも成長し、そのうち今入っている貝殻が狭くなってしまうことになります。そのため、ヤドカリの成長のことも考えて今入っている貝殻より少し大きめのサイズの貝殻を購入する必要があります。
また貝殻がないと、ヤドカリは生きたコケ取り貝などの巻貝を襲って食べてしまうこともありますので、必ず入れておきましょう。
スベスベサンゴヤドカリに適した餌と添加剤
餌
スベスベサンゴヤドカリには特別な餌を与える必要はありません。配合飼料をよく食べてくれ、魚の残り餌も捕食します。
魚の数が多すぎて餌がヤドカリにいきわたらない…というときはヤドカリがよく活動する夜間にクリルやペレット状の配合飼料(メガバイトなど)を撒いてあげるとよいでしょう。冷凍餌でもよいのですが水を汚すおそれがあるので、ほどほどにしたいところです。このほかコケも少しは食べてくれるようですが過度な期待は禁物です。また餌が無くなるとコケ取り貝などを襲撃するおそれもありますので注意が必要です。
添加剤
ヤドカリなど甲殻類の飼育にはヨウ素が欲しいところです。とくに甲殻類はヨウ素が足りていないと脱皮不全で死んでしまうことがあるので添加したい成分です。このほかカルシウムや微量元素なども甲殻類の健全な成長のために添加しておくとよいでしょう。
スベスベサンゴヤドカリの入手方法
▲潮溜まりで採集したスベスベサンゴヤドカリ
スベスベサンゴヤドカリは、クリイロサンゴヤドカリやツマジロサンゴヤドカリとともに、ヤドカリミックスとして販売されていることもあり、そのような個体は安価(500円程度)で購入することができます。
ヤドカリを購入するときの注意点としてはよく歩いているもの、よく餌を食べているものを選ぶことです。またハサミや脚がもげているものや眼、触覚がないものなどは避けます。基本的には大変丈夫な生物ですから、ことさら気を付ける必要があるわけではないのですが、この部分だけはチェックしたほうがよいでしょう。
また、本種は磯で採集することもできます。生息場所は浅い潮溜まりで、干潮時水深50cmほどの場所で多数みられ、陸上を徘徊していることさえあります。伊豆諸島・小笠原諸島・和歌山県南部以南に分布していますが、奄美諸島以南では非常に多くみられる種類です。
他の生物との相性
魚との混泳
▲スジイシモチとスベスベサンゴヤドカリ
一般的に飼育されることが多い小型ヤッコ、クマノミ、スズメダイ、小型のハゼ、バスレット、カエルウオ、イシモチ、ハギ、イトヒキベラやクジャクベラなど多くの魚と混泳可能です。
ただしチョウチョウウオの仲間や大きめのベラなどは本種を襲うこともありますので気をつけましょう。また「宿換え」のときにほかの魚に襲われることもあります。イソギンポやベラの仲間など、甲殻類を襲って食べるおそれがある魚との飼育はとくに注意した方がよいでしょう。
他のヤドカリとの相性
▲アカツメサンゴヤドカリなどの小型種との飼育は避けた方が無難
本種は(サンゴヤドカリの中では)大型になり、同じサンゴヤドカリ属の温和な小型種であるアカツメサンゴヤドカリなどを駆逐するおそれがありますので注意が必要です。
サンゴヤドカリを複数種入れるのであればユビワサンゴヤドカリやシロサンゴヤドカリなど、やや大きめのサンゴヤドカリとの組み合わせが適しています。このほかオイランヤドカリやホンヤドカリ類、ベニワモンヤドカリなどとの組み合わせもよいでしょう。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲サンゴはあらかじめ接着剤などで固定させたい
サンゴとの飼育そのものは問題ありません。ただしヤドカリの仲間は散策や餌を探すときにそのハサミでサンゴを動かしたり落下させてたりすることもありますので、サンゴは専用の接着剤などで固定させておく必要があります。
クリーナーシュリンプなど、ほかの甲殻類との混泳は問題ないことが多いですが、極端にサイズの差があるような組み合わせは避けた方が賢明です。タコやシャコなどは本種を食べることもありいっしょに飼育するわけにはいきません。
スベスベサンゴヤドカリまとめ
- 色が綺麗で丈夫で飼育しやすく小型水槽での飼育もできる
- 魚の食べ残しなども食べてくれる。コケを食むこともある
- ヨウ素やカルシウム、微量元素も添加したい
- 餌や貝殻がないとコケ取りの巻貝を襲うことも
- 餌は配合飼料やクリルなどをよく食べてくれる
- よく動いているもの、眼や触覚などに欠けがないものを選ぶ
- 紀伊半島以南の磯で採集することも可能
- ベラやイソギンポなど甲殻類を好む魚との飼育は要注意
- サンゴヤドカリの中では強め。おとなしい種は駆逐するおそれも
- サンゴ水槽での飼育も可能。ただしサンゴは接着剤で固定したい
- タコやシャコなどとの組み合わせは不可