ヤドカリ(海水)の飼育方法と種類~餌・魚やサンゴとの相性

甲殻類のなかでも、ヤドカリの仲間はそのユニークな生態や、派手な色彩・模様から観賞用として人気です。丈夫で飼育も非常に簡単なものが多く、さらにコケを食べてくれるものもおり、海水魚初心者にもおすすめです。このヤドカリを上手く飼育するためのポイントをまとめました。

ヤドカリとは

▲貝殻の中に入らないヤドカリ、コシオリエビ

ヤドカリは十脚目・抱卵亜目・異尾下目に含まれる生物の総称です。抱卵亜目は他にエビの仲間の多くの種と、すべてのカニの仲間を含みます。つまりヤドカリは、エビやカニに近い仲間です。

姿形はさまざまで、弱い腹部を守るために貝殻の中に体をおさめたりするものがいます。これが一般的な「ヤドカリ」の姿といえます。

しかしこのほかにも色々な姿形のものがおり、コシオリエビやカニダマシ、あるいはタラバガニといった、カニの仲間にしか見えないような種類も多数います。カニの仲間とはハサミを含めた脚の数で区別でき、カニは10本、ヤドカリは8本とされています。ただしヤドカリも脚は10本あり、最後の脚は非常に小さいのです。

基本的にはほとんどの種類が海産なのですが、わずかにヤシガニやオカヤドカリなど陸生のものや、南米に生息する淡水性のコシオリエビの仲間なども知られています。

ヤドカリはマイナーではありますが、エビ・カニ同様に大型種は食用になっています。また陸生のヤシガニや、一見カニの仲間にも見えるが脚の数が少ないタラバガニ、イバラガニといった種類も食用としてよく知られています。

以下、「一般的に観賞用に飼育されるヤドカリ」についてご紹介します。ただし、オカヤドカリやヤシガニなどの陸生種はここでは扱いません

ヤドカリの飼育に必要なもの

以下ヤドカリの飼育に特に必要なものを挙げていますが、海水魚を飼育するための水槽や濾過装置、水温調整のためのヒーターやクーラーなどについては省略しています。

貝殻

▲フネガイの仲間の殻に入っているスベスベサンゴヤドカリの小型個体

ヤドカリの住まいです。多くのサンゴヤドカリはフネガイ類やサザエ類、レイシガイ類などの貝の殻に入りますが、ベニワモンヤドカリは平たい体をしており、マガキガイやタカラガイなどの貝殻によく入ります。

注意したい点としては、貝殻が大きすぎるとヤドカリは動きにくいですし、逆に小さすぎると中にはいれませんので、ヤドカリのサイズに合わせて何種類か貝殻を入れておくようにすることです。

フタ

スベスベサンゴヤドカリやシロサンゴヤドカリなど、タイドプールに生息するヤドカリはコードなどをつたって水槽の外に逃げ出すこともあります。フタはしっかりしておいた方がよいでしょう。

サンゴヤドカリやベニワモンヤドカリなどは魚の残り餌もよく食べてくれますので、特別ヤドカリ用の餌は必要ありません。

ヤドカリのことを考えるなら、フレークフードは水面に浮かんでおりヤドカリには食べにくいので粒状の餌を与えるのがベストといえます。1日1~2回やや多めに与えるようにしますが、もちろん過度に与えると水が汚れてしまうのでそうならないように注意します。

添加剤

ヤドカリの脱皮不全を防ぐためヨウ素や微量元素などの添加が望ましいといえます。

また、ビタミンなども添加しておきましょう。もちろんサンゴと飼育するのであれば、サンゴ用の添加剤も必要になります。

ヨウ素添加剤

微量元素添加剤

ビタミン添加剤

ヤドカリはコケを食べてくれるの?

ヤドカリの仲間には水槽に発生したコケを食べてくれる種類がいます。

ツマジロサンゴヤドカリや、イソヨコバサミといった種類は藻類食が強いのか、よく食べてくれます。ただ食べる量としては少ないのである程度数を入れておくとよいでしょう。しかしながら過剰な期待をするのはよくありません。またどの種類も魚の残り餌をよく食べてくれます。

飼育におすすめのヤドカリ

ここでは主にカクレクマノミなどの熱帯性海水魚との飼育に適したヤドカリの仲間をご紹介します。

ユビワサンゴヤドカリ

ユビワサンゴヤドカリは、緑色のハサミと青と黒の縞模様の脚という美しい色彩のため、サンゴヤドカリの仲間で最も人気が高い種類です。

海水魚店でもコンスタントな入荷があり、安価で販売されるため入手しやすい種類です。サンゴ礁の潮溜まりにも生息し、採集することも可能です。性格はやや強めです。

スベスベサンゴヤドカリ

スベスベサンゴヤドカリは、先端が白っぽい黒いハサミ、脚はオレンジ色という美しい色彩が特徴的なヤドカリです。

球列島では数が多く、サンゴ礁域の潮溜まりではもっとも普通にみられる種類ともいえます。内湾の潮溜まりにも多く生息し、陸上を歩いていることもあります。性格は強めです。

シロサンゴヤドカリ

シロサンゴヤドカリは八丈島や琉球列島の潮溜まりでよくみられる種です。

ユビワサンゴヤドカリなどと同様やや大きめの種で、脚が白と黒の縞模様になるのが特徴です。小型個体はおとなしいですが大きなものはかなり気が強く激しく争うため複数飼育はあまりおすすめできません。入荷は少ないですがそれほど高価ではありません。

ツマジロサンゴヤドカリ

ツマジロサンゴヤドカリは、和歌山県や高知県などの磯ではごく普通に見ることができる種類です。

脚に黒色の帯があり、先端も黒いのが特徴で、よく似たウスイロサンゴヤドカリと区別することができます。この仲間では温和、丈夫で飼いやすくコケも少しは食べてくれます。採集することもできますが、入荷数も比較的多く入手は容易と言えます。

レッドレッグハーミット

「スカーレットリーフハーミット」ともよばれる種類。大西洋に生息する種で、ほかのヤドカリと比べると若干高価です。その名のとおり赤いハサミや脚が美しい種類。温和なのでほかのヤドカリとの組み合わせは注意しなければなりません。

イソヨコバサミ

イソヨコバサミは、広い分布域をもち、日本でも関東の浅い潮溜まりでも採集できる普通種です。一見地味な種ではありますが、よく見ると緑色の体が美しい種類です。残り餌はもちろん、コケを食べてくれます。

ベニワモンヤドカリ

ベニワモンヤドカリは、赤い脚やハサミに白い縞模様が入るのが特徴のヤドカリです。

主にマガキガイやタカラガイなどの貝殻に入ります。丈夫で飼いやすいですが性格が強いため一つの水槽には1匹しか入れることができません。磯の深さ1mほどの場所で採集できることもあります。

ヤドカリと他の生物との相性

ヤドカリ同士の相性

気が強い種 温和な種
・ユビワサンゴヤドカリ
・シロサンゴヤドカリ
・クリイロサンゴヤドカリ
・スベスベサンゴヤドカリ
・ベニワモンヤドカリ
・ケアシホンヤドカリ
・大型種 他
・アカツメサンゴヤドカリ
・ウスイロサンゴヤドカリ
・ツマグロサンゴヤドカリ
・レッドレッグハーミット 他

ヤドカリを複数組み合わせて飼育すると楽しいですが、気が強いヤドカリと、温和なヤドカリの組み合わせは注意しなければいけません。強いヤドカリと弱いヤドカリを組み合わせて小さい水槽で飼育していると、弱いヤドカリはいつのまにか水槽からいなくなっていた…なんてこともあります。

気が強い種と弱い種は概ね上の表のとおりですが、ツマグロサンゴヤドカリは温和とされる種の中では気が強いヤドカリの中に混ざっても平気なようです。ただし、なるべく大きな水槽で飼育するようにします。

ヤドカリと魚・貝などとの相性

ヤドカリと魚との関係は種類によって異なるため一概にはいえませんが、小型のサンゴヤドカリの仲間とカクレクマノミなど一般的な海水魚の組み合わせは概ね問題ないといえます。

ただし、ベラの仲間やフグ、カワハギといった魚はヤドカリを好んで食べてしまうことがあるので注意が必要です。逆にヤドカリの中でも極端に大きな種類は夜間寝ている魚を襲うことがありますので小魚との混泳は避けた方が無難です。ベニワモンヤドカリなどの種類は生きたマガキガイを襲って食べてしまうことがありますのでこちらも注意が必要です。

コシオリエビなどは貝殻に入っていませんのでとくに小型のものは他の魚に襲われてしまう危険があるといえます。ベニハゼなどとは一緒に飼育できますが、他の魚との飼育は難しいです。

ヤドカリとサンゴとの相性

サンゴの種類にもよりますが、基本的にヤドカリとの相性は問題ありません。ごく一般的なサンゴヤドカリの仲間はサンゴ水槽で飼育してこそ本来の生息環境を再現できるというものです。ただし、ヤドカリの仲間がサンゴやライブロックの岩組の上を歩いたり、ハサミを使って餌を探したりすることにより、サンゴがひっくり返ったり、ライブロックの岩組が崩れたりすることもあります。

そのようなことを防ぐために、サンゴをライブロックやサンゴ岩に接着しておくとよいでしょう。サンゴ用の接着剤を使い、しっかりと固定します。またライブロックやサンゴ岩同士の固定にはニオスリーフセメントなどを使用してくっつけ、岩組が崩れてサンゴが落下するのを防ぎます。

サンゴ用の接着剤

ライブロック用セメント

コモンヤドカリなど、大型のヤドカリはかなり力が強く、接着剤で固定しても岩組を壊してしまい、最悪ガラスを割ってしまう可能性さえあります。そのような種はサンゴやライブロック、サンゴ岩などを入れないのがベストです。深海性のヤドカリもごくまれに入荷しますが、水温や好む光との関係上、深海性の陰日サンゴとの組み合わせしかありません。

ヤドカリとイソギンチャクとの共生

▲ベニヒモイソギンチャクをつけたソメンヤドカリ

▲トゲツノヤドカリとヤドカリコテイソギンチャク

ヤドカリの種類によってはイソギンチャクとの共生を楽しむことができます。アカホシカニダマシなどはハタゴイソギンチャクの中で見られ、共生の一例とされます。

しかし「ヤドカリとイソギンチャクの共生」でよく知られているのは、ソメンヤドカリなどとベニヒモイソギンチャクのような共生関係です。ソメンヤドカリは貝殻にベニヒモイソギンチャクをくっつけて移動し、イソギンチャクの毒で外敵から身をまもります。「宿換え」のときには、イソギンチャクも一緒に移動させます。

トゲツノヤドカリはハサミにヤドカリコテイソギンチャクをくっつけています。以下でご紹介したカニの仲間のキンチャクガニと同様の方法で身を守っているのかもしれません。

ヤドカリの飼育まとめ

  • エビやカニに近い仲間
  • 弱い腹部を守るのに貝殻に入る
  • コシオリエビやカニダマシなど貝殻に入らないヤドカリも多い
  • 淡水にすむものや陸にすむものもいるが、大部分は海産
  • 水槽にヤドカリに適した種類やサイズの貝殻を入れる
  • フタもしっかりする
  • フレークフードは食べにくいので粒餌を与える
  • ヨウ素や微量元素、ビタミンなどを添加する
  • 種類によってはコケを食べてくれる
  • ユビワサンゴヤドカリやベニワモンヤドカリは気が強い
  • レッドレッグハーミットやツマグロサンゴヤドカリは温和
  • 気が強い種と温和な種の組み合わせは要注意
  • ベラやフグ、カワハギなどに捕食されることもある
  • 大型のヤドカリは魚を襲うこともある
  • ベニワモンヤドカリはマガキガイを襲って餌にしてしまうことも
  • サンゴをひっくり返したり岩組を崩すおそれもある。接着は確実に
  • イソギンチャクを貝殻やハサミにつける種もいる

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