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2020.09.21 (公開 2020.01.23) 海水魚図鑑

ツマジロサンゴヤドカリの飼育方法~おとなしめで飼いやすいヤドカリ

ツマジロサンゴヤドカリは、日本では紀伊半島や四国の太平洋岸の磯で採集することができる小型のサンゴヤドカリの仲間です。丈夫で飼育しやすくコケなども少しは食べてくれます。サンゴヤドカリの仲間はどの種も丈夫で飼育しやすいですが、同じサンゴヤドカリ属の種間では争うことがありますので注意が必要です。今回はツマジロサンゴヤドカリ飼育方法をご紹介します。

標準和名 ツマジロサンゴヤドカリ
学名 Calcinus latens (Randall, 1840)
英名 Hidden hermit
分類 節足動物門・十脚目・ヤドカリ科・サンゴヤドカリ属
全長 1cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 ヤドカリを食べるような魚はさける。小型水槽では強いヤドカリとの飼育も避ける
サンゴとの飼育 ハサミや脚でサンゴを落下させることもある。しっかり接着したい

ツマジロサンゴヤドカリって、どんなヤドカリ?

▲ツマジロサンゴヤドカリ

▲近縁種ウスイロサンゴヤドカリ

ツマジロサンゴヤドカリはヤドカリ科・サンゴヤドカリ属のヤドカリです。体や鋏脚などは緑色、脚部の黒い帯と黄色い触覚が特徴的で、派手さはないのですが、魅力的なヤドカリの仲間です。よく似た種類にウスイロサンゴヤドカリというのがいますが、触覚の色や脚部に黒い帯がないことにより見分けることができます。ウスイロサンゴヤドカリも太平洋岸の磯ではよく見られる種類で、控えめな色彩が綺麗なヤドカリです。

ツマジロサンゴヤドカリに適した飼育環境

水槽

小型水槽でも飼育できますが、ろ過がしっかり働いていることが条件です。初心者ならできれば45cm以上の水槽が欲しいところです。

水質とろ過システム

ヤドカリの仲間は硝酸塩濃度の上昇にも耐えられますが、できるだけ綺麗な水で飼育します。小型水槽であれば外掛けろ過槽と外部ろ過槽の併用をおすすめします。60cm水槽であれば上部ろ過槽がおすすめです。もちろんオーバーフロー水槽であれば水量を多く確保でき、飼育も容易になります。

サンゴヤドカリはサンゴ水槽にもよく似合います。ベルリンシステムのようにろ材を持たないシステムでも飼育できます。ただし小型のヤドカリの仲間は魚ほどは水を汚しませんが、数は控えめにしておきたいものです。

水温

基本的に25℃で一定を保つようにしましょう。水温は大体22~28℃くらいで飼育できますが、一定であることが重要です。一緒に飼育している魚に合わせ、低水温を維持します。

宿かえ用の貝殻

ヤドカリは体が大きくなるとその体にあった大きさの貝殻に「宿かえ」をします。ツマジロサンゴヤドカリはレイシガイの仲間やイトマキボラの仲間やマガキガイ、タカラガイの仲間まで実に色々な貝の中に入っています。貝殻を用意しないと水槽にいる貝を襲って食べ、宿を得ることになりますのでできるだけ宿かえ用の貝殻を用意してあげましょう。

フタ

コードをつたい逃げることもあるので水槽にフタはしっかりしておきたいものです。

ツマジロサンゴヤドカリに適した餌と添加剤

餌はなんでもよく食べてくれます。魚の食べ残した餌やクリルなどを与えると喜んでたべます。ヤドカリのことを考えるのであれば餌を沈むタイプにしたり、海水につけた配合飼料をスポイトで与えたりするとよいでしょう。また餌がないと藻類もすこしは食べてくれるのですが、きちんと餌は与えたいものです。

添加剤

ツマジロサンゴヤドカリも甲殻類であり、脱皮して成長します。脱皮不全で死んでしまうことを防ぐためにヨウ素などを添加してあげたいものです。

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ツマジロサンゴヤドカリをお迎えする

▲サンゴやウニ・ナマコのいるタイドプール。このような場所で多くみられる。

紀伊半島や四国の太平洋岸などでは潮溜まりで採集できることもあります。岩の上やサンゴの隙間などに潜んでおり、それを素手やピンセットでつまんで採集します。貝殻はレイシガイの仲間やタカラガイの仲間などに入っていることがあり、結構多くの種類の貝に入ることができるようです。欲張って沢山持ち帰っても死なせてしまうことがありますので60cm水槽であれば5匹くらい持ち帰るくらいでちょうどよいでしょう。

ツマジロサンゴヤドカリのいるタイドプールはやや深め(水深1~2mほど)、サンゴがあり、ウニやナマコなどがいるような環境です。サンゴの周辺などでサンゴの骨格にはえる藻類などを啄むように食べています。またカイメンソウの中にいるものを採集したこともあります。

海水魚店では本種だけで販売していることは少なく「ヤドカリミックス」としてほかのヤドカリとともに販売されていることがあります。購入するときはよく動き回っているものを選ぶようにしましょう。

ツマジロサンゴヤドカリとほかの生物との関係

魚との関係

▲魚との飼育もできる

ツマジロサンゴヤドカリは魚のいる水槽で飼育することができます。我が家の水槽では小型のスズメダイ、カクレクマノミ、トカラベラの幼魚、ハナダイ類、各種ハゼ、カエルウオ、テンジクダイの仲間と飼育していますが、特に問題はありません。このほかヤッコの仲間、小型のバスレットやメギス、イトヒキベラなどと飼育することができます。

一緒に飼育してはいけないのは大型になるフグの仲間や同様に大きくなるベラの仲間、モンガラカワハギなど甲殻類を好んで食べてしまうタイプの魚です。我が家の水槽ではベラの仲間であるトカラベラを飼育していますが、このトカラベラも大きく育ったらヤドカリを捕食してしまう可能性もあり、移動先の水槽を確保するべきかもしれません。

サンゴ・ほかの無脊椎動物との相性

▲ユビワサンゴヤドカリなど強いサンゴヤドカリとの飼育は要注意

サンゴ水槽ではサンゴの隙間のコケを食べてくれることもあるため重宝しますが、ツマジロサンゴヤドカリがサンゴを落下させてしまうこともあるため、しっかりサンゴをサンゴ岩やライブロックなどに固着させるようにします。

ほかの甲殻類との飼育は同じようなサイズのサンゴヤドカリやベニワモンヤドカリ、ヨコバサミの類や小型のオウギガニ、アカシマシラヒゲエビなど小型のクリーナーシュリンプとの飼育にとどめておきましょう。大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリとの飼育は避けたいところです。

ほかのサンゴヤドカリとの相性ではユビワサンゴヤドカリスベスベサンゴヤドカリといったサンゴヤドカリはかなり気が強いので一緒に飼育するのは注意が必要です。とくに小型水槽では襲われやすいので避けた方がよい組み合わせといえます。ツマジロサンゴヤドカリは比較的おとなしいですが、それでもおとなしいアカツメサンゴヤドカリなどとの組み合わせには注意が必要です。

ツマジロサンゴヤドカリの飼育まとめ

  • 緑色の体や鋏、黒い帯が特徴の美しいヤドカリ
  • 小型水槽でも飼育できるが、初心者は45cm以上の水槽で飼いたい
  • 硝酸塩の蓄積には耐えるができるだけきれいな水で飼育したい
  • 水温は25℃前後で飼育したい
  • フタはしっかりする
  • 餌は魚の残り餌などをよく食べてくれるが、沈降性の配合飼料がおすすめ
  • ヨウ素はできるだけ添加したい
  • 紀伊半島や四国の太平洋岸で採集できる
  • 水深がありサンゴが見られるタイドプールに見られることが多い
  • ほかの魚との混泳もできるが、肉食性が強い魚はだめ
  • 大型のエビ・カニ・ヤドカリとの飼育は避ける
  • サンゴヤドカリ同士の飼育はユビワサンゴヤドカリ、スベスベサンゴヤドカリには要注意
  • サンゴには無害だが、サンゴを接着剤でしっかり固定したい
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