2019.12.05 (公開 2017.06.24) 海水魚図鑑
ヒメオニハゼの飼育方法~餌・混泳・個体の選び方
ヒメオニハゼは、ハゼ科オニハゼ属の共生ハゼです。その名の通りオニハゼよりも小型の種で、全長5cmほどになり、同属のオニハゼよりも小さく、小型水槽でも飼育しやすい種といえます。オニハゼ属も共生ハゼのいちグループであり、主にランドールズピストルシュリンプことコトブキテッポウエビと共生します。今回はヒメオニハゼの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | ヒメオニハゼ |
学名 | Tomiyamichthys alleni Iwata, Ohnishi and Hirata, 2000 |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・オニハゼ属 |
全長 | 約5cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 24~26度 |
水槽 | 30cm以上 |
混泳 | 気が強い魚とは注意が必要 |
サンゴ飼育 | 可 |
ヒメオニハゼの特徴
▲ヒメオニハゼの背鰭棘は少し伸びる
ヒメオニハゼはハゼ科・オニハゼ属のハゼです。オニハゼ属もギンガハゼやダテハゼ同様にテッポウエビの仲間と共生する習性をもっています。このヒメオニハゼは全長5cmで、10cmを超えるオニハゼの仲間に比べて小型種です。
ヒメオニハゼとオニハゼの見分け方としては背鰭の形状があげられます。背鰭の部分がやや伸びているのがヒメオニハゼ、伸長せず丸いのがオニハゼです。また背鰭軟条数・臀鰭軟条数はオニハゼの方が多いようです。
ヒメオニハゼと共生するテッポウエビ
▲小型種はコトブキテッポウエビを好むものも多い。
大型種であるオニハゼはパートナーとしてニシキテッポウエビを好むのですが、これと対照的に、小型種である本種は小型のテッポウエビである、コトブキテッポウエビ(ランドールピストルシュリンプ)と共生しています。ほか同じオニハゼ属のホタテツノハゼ、ヤシャハゼやヒレナガネジリンボウといった小型種もコトブキテッポウエビを主なパートナーとしています。
水槽ではニシキテッポウエビなど別の種類のテッポウエビの仲間と共生するかもしれないですが、まだ確認はできていません。
ヒメオニハゼの生息する海域
▲高知県柏島の海。
高知県幡多郡大月町の柏島で採集された個体をもとに2000年に新種記載された種です。海外では西太平洋に生息しています。日本においては柏島のほか静岡県や琉球列島にも分布しているとのことですが、他の共生ハゼと同じく、日本で採集された個体は販売されることが殆どありません。観賞魚店で見られるヒメオニハゼは基本的にフィリピンやインドネシアなど東南アジア産のものです。
ヒメオニハゼに適した飼育環境
水槽
ヒメオニハゼは小型種ですので、35cmくらいの小型水槽での飼育もできます。ただし初心者であればもっと大きい45cm水槽が望ましいでしょう。そうすれば水質が安定しやすいからです。ほかの魚やほかの共生ハゼとの飼育であれば60cm以上の水槽が望ましいです。
水質とろ過システム
硝酸塩の蓄積には強いですが、できるだけきれいな海水で飼育してあげたい種です。ろ過装置は外掛けろ過槽は構造上、水槽の上に隙間ができやすいので、飛び出すことのある共生ハゼの飼育にはあまりおすすめできません。外部ろ過槽か、上部ろ過槽になります。とくに上部ろ過槽は多くのろ材を入れられるため海水魚水槽におすすめです。一方、外部ろ過槽は密閉式で酸欠になりやすいというデメリットもあるため、なるべく上部ろ過槽と一緒に使いたいものです。
なお、一番のおすすめはオーバーフローシステムです。ただしフロー管の上にもフタのようなものをしたほうがいいかもしれません。
水温
やや深場に生息している種ですが、水温はカクレクマノミなど他の熱帯性海水魚の多くと同様の25℃で大丈夫です。これより水温が上がるようなら水槽用クーラーを導入して対処します。もちろん水温は一定にしておかないといくら丈夫なヒメオニハゼといっても病気になってしまうことがありますので、ちゃんと水温を一定に保ちましょう。
砂と隠れ家
▲いくつかのサイズの砂を用意したい
小型種なので30cm位の水槽でも長期飼育できますが、水質の安定を考えると、やはり45~60cm水槽が欲しいところです。勿論水槽サイズだけではなく、ろ過装置も重要な要素です。
砂についてはパウダーサンドと大きめの粗いサンゴ砂を混ぜてハゼと共生するテッポウエビが巣穴を掘りやすいようにするのがおすすめです。これはほかの共生ハゼも同様です。
フタ
共生ハゼ全般にいえることですが、驚くと飛び跳ねて水槽から出てしまい、死んでしまうことがあります。フタはしっかりしめましょう。また先述したように、水槽の上面に隙間ができやすいタイプのろ過槽(外掛けろ過槽など)はおすすめできません。
ヒメオニハゼの餌
口がかなり大きいわりには温和な魚です。餌は他の共生ハゼ同様に配合飼料が向いています。ペレット状の沈降性のものは共生ハゼ全般に使うことができるのでお勧め。コペポーダやイサザアミなどの各種冷凍餌なども食べますが、水を汚しやすいので与えすぎに注意が必要です。
基本的には配合飼料をメインにして、冷凍餌はたまに与えるくらいで十分です。
ヒメオニハゼをお迎えする
極めてまれに観賞魚店に入荷しますが、小型共生ハゼに強い店でないとなかなか入手することはできない種です。あまり見られないので個体の選び方を述べるのは難しいのですが、スレ傷があるものや赤い爛れがあるもの、鰭が溶けているものは選んではいけません。鰭膜が若干破れている程度は問題ないことが多いです。また入荷してすぐの個体も購入してはいけません。
なお今回の個体は横浜市都筑区の「Kazika」で購入したものです。このお店はカエルアンコウや小型のハゼ類、沖縄便に強いことで知られています。
ヒメオニハゼと他の魚との混泳について
▲ヤエヤマギンポと対峙
大きな口をしている割には案外臆病です。小型ヤッコ、クマノミやスズメダイとの混泳は注意するべきです。できればこれらの魚はヒメオニハゼが落ち着いて縄張りを主張するようになってから入れてあげたいものです。
大きめの水槽であれば遊泳性のハゼやカエルウオ、ハナダイ、テンジクダイの仲間など、さまざまな魚との混泳を楽しめます。ただしエビやハゼをいじめたり、捕食したりするような魚とは一緒に飼育することはできません。大きくて乱暴なスズメダイ(ミツボシクロスズメダイ、ミスジリュウキュウスズメダイ、ヒレナガスズメダイ、ハマクマノミなど)や、メギス(ニセスズメ)の類は性格がきついです。
ヒメオニハゼと他の共生ハゼとの混泳について
▲クビアカハゼなどほかの共生ハゼとの飼育も可能!
同属魚類とは争うこともありますが、クビアカハゼなど他のダテハゼの仲間や、ヒレナガネジリンボウなどとは一緒に飼育することが可能です。ただしダテハゼ属といっても、ニチリンダテハゼのような大型種と一緒に飼育するのは止めた方がよいでしょう。またオイランハゼやギンガハゼといった種も、ほかの共生ハゼをいじめることがあります。近縁のオニハゼも大きくなるためヒメオニハゼとの混泳はやめましょう。
混泳はできれば60cm以上の水槽で行いたいものです。理由は単純で、60cm水槽だと比較的広い底の面積を確保できるからで、共生ハゼ同士の争いも緩和されます(ただしクビアカハゼやアークフィンシュリンプゴビーとはほとんど争うことはありませんでした)。また複数の共生ハゼや他魚をいれると水も汚れやすくなりますので、水質の安定という意味でも60cm水槽をおすすめします。
ヒメオニハゼとサンゴ・無脊椎動物との相性
共生ハゼ全般にいえることではありますが、サンゴを捕食したりすることはないものの、イソギンチャクなどに食べられてしまう恐れがあります。イソギンチャクとは一緒にしないように注意しましょう。また、甲殻類もアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、ホワイトソックス、ペパーミントシュリンプ、モエビの仲間、サンゴヤドカリなどは問題ありませんが、オトヒメエビや大型のエビ・カニ・ヤドカリは本種を捕食する恐れがありますので避けます。
テッポウエビの仲間は岩組をひっくり返したり、水槽下部のサンゴに砂を撒いてダメージを与えることもあります。したがって
ヒメオニハゼ飼育まとめ
- 大型種のオニハゼよりも小型種
- 主に小型のコトブキテッポウエビなどと共生する
- 小型水槽でも飼育できるが45cm以上、できれば60cm以上。
- しっかりしたろ過槽が必要。上部ろ過槽かオーバーフローが最適
- フタもしっかりする
- 水温は25℃で一定をキープする
- スレ傷やただれがあるものや鰭がぼろぼろのものなどは購入しない
- おとなしい魚と混泳できる
- 気が強い魚とは混泳できない
- サンゴはライブロックの上などに接着するなど要配慮