2018.11.14 (公開 2018.11.13) 海水魚図鑑
オニハゼの飼育方法~近縁種との区別方法、餌や混泳時の注意など
オニハゼはサンゴ礁域や浅い砂底に生息し、千葉県以南の太平洋岸でもその姿を見ることができる共生ハゼの一種です。
以前紹介したヒメオニハゼと同属ですが、ヒメオニハゼの2倍のサイズになり、大型の共生ハゼといえます。小さなピグミーゴビーなどと一緒に飼うと捕食される恐れもありますので注意が必要です。
標準和名 | オニハゼ |
学名 | Tomiyamichthys oni (Tomiyama, 1936) |
英名 | Monster shrimpgoby |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・オニハゼ属 |
全長 | 約11cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 25℃ |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | 気が強い魚とは注意が必要 |
サンゴ飼育 | 可 |
そのほか | ニシキテッポウエビなどと共生する |
オニハゼってどんなハゼ?
ハゼ科オニハゼ属の種類です。標準和名も学名にも「Oni」とついており、英語ではモンスター シュリンプゴビーと呼ばれるようにいかつい顔が特徴的な種類です。
最初はイトヒキハゼ属とされていましたが、1956年に本種をタイプ種としたオニハゼ属Tomiyamichthysが設立されました。ホタテツノハゼ属は従来は有効属とされていましたが現在はオニハゼ属の中に含められています。オニハゼ属の魚には鮮やかな色彩をしたものは少ないですが、おもしろい見た目のものもおり、観賞魚として飼育されている種も多いです。
共生関係
▲ニシキテッポウエビなどのエビと共生する
海ではニシキテッポウエビなどと共生しています。しかし我が家ではオニハゼと一緒に入れていたニシキテッポウエビやトウゾクテッポウエビはいなくなってしまいました。トウゾクテッポウエビの体が半分に千切れており、ライブロックが動いた形跡もなかったため、オニハゼが襲ったのかもしれません。ニシキテッポウエビもある日突然姿を消してしまいました。
なお、オニハゼは強健な種ですので、水槽内ではテッポウエビがいなくても問題ありませんが、隠れ家は作るようにしたいものです。
共生ハゼについてはこちらもご覧ください。
近縁種との見分け方
▲オニハゼの特徴
▲近縁種・ヒメオニハゼの特徴
オニハゼ属には10数種が知られています。日本には和名がついているものがオニハゼ、ウシオニハゼ、オニツノハゼ、ホタテツノハゼ、ヤジリハゼ、ヒメオニハゼの計6種が知られていますが、このほかに複数のまだ和名がない種がダイバーの水中写真により知られてきました。これらが公表されればもっと数が増えるでしょう。
日本に分布するオニハゼ属の中で、オニハゼに最もよく似ているのはヒメオニハゼです。高知県柏島で採集された個体を基に新種記載されましたが、観賞魚としてはもっぱらインドネシア(バリ)やフィリピンなどから輸入されてきます。
オニハゼとヒメオニハゼの違いは背鰭の形状の違いが一番わかりやすいです。オニハゼの背鰭は台形で、背鰭棘の何本かが特に長く伸びるということはありませんが、ヒメオニハゼは背鰭第1・第2棘が長く伸びオニハゼと区別することができます。またヒメオニハゼは大きくても全長5cmほどですが、オニハゼは全長10cmを超える大きさになります。
またオニハゼはニシキテッポウエビなどと共生していますが、ヒメオニハゼはコトブキテッポウエビ(ランドールピストルシュリンプ)を好むなどの違いもあります。ただしヒメオニハゼもコトブキテッポウエビ以外の種と共生することもあります。
ヒメオニハゼの飼育方法については、こちらをご覧ください。
オニハゼに適した飼育環境
水槽
45cm水槽でも飼育できますが、オニハゼは共生ハゼの仲間では比較的大きく成長するため、ほかの共生ハゼよりも大きめの水槽、できれば60cm水槽で飼育するとよいでしょう。
水質とろ過装置
ハゼの仲間ですので小型ヤッコやハギ、チョウチョウウオの類ほどには水質に気をつかう必要はありませんが、できるだけきれいな水で飼育することを心がけましょう。
ろ過槽は上部ろ過槽がおすすめです。上部ろ過槽であれば水槽の上面がふさがるので飛び出しにくくなります。ろ過能力も高くなるのでおすすめといえます。外部ろ過槽では酸欠に陥りやすいリスクがあり、外掛けろ過槽は酸欠に陥ることはないでしょうがろ過能力は低く、上にどうしても隙間ができやすいので飛び出しやすいハゼの飼育にはあまり適していないかもしれません。
水温
水温は他の熱帯性海水魚と同様に25℃をキープするようにします。もちろん、水温の急な変動がおこらないように注意する必要があります。
底砂
▲底砂を敷いてあげたい
底砂は敷いてあげた方がよいでしょう。とくにテッポウエビと共生させるのであれば、底砂は必須といえます。テッポウエビはパウダーサンドだけでは巣を作りにくいため、それよりも大きい粒のサンゴ砂や貝殻の破片などを混ぜてあげるとよいでしょう。
ライブロック・サンゴ岩・隠れ家
テッポウエビと共生させないのであれば、本種が隠れられるようなライブロックやサンゴ岩が必要不可欠となります。体が全体的に露出してしまうようでは、ほかの魚につつかれるおそれがあるからです(特にスズメダイやクマノミは要注意!)。ライブロックのほか、塩ビ管などを入れてもよいのですが、やや人工的な感じになってしまいます。幼魚であればミニテムの「ハゼ土管」などを使用するのもよいでしょう。成魚であればやや狭くなってしまいます。
フタ
オニハゼ属の魚もイトヒキハゼ属やダテハゼ属の共生ハゼと同様飛び出して干からび死んでしまうケースが多いです。そのためフタはしっかりとしておかなければなりません。この手のハゼの困ったところは水槽の壁面やガラス面を伝って水面付近にまでいたりする…ということがあること。そこからジャンプすれば死に直結してしまいます。小さな隙間もふさぐくらいの慎重さが欲しいところです。
オニハゼに適した餌
▲餌に反応したオニハゼ
幼魚であればメガバイトレッドのSサイズ、大きめの個体はメガバイトレッドのMが食べやすいでしょう。とくにメガバイトレッドMは沈降性で、オニハゼなど底生の動物食性にはぴったりのフードといえます。
基本的にはすぐに配合飼料を食べてくれると思いますが、釣りで入手した大きめの個体は最初から配合飼料を食べてくれないこともあります。我が家のオニハゼもそうで、最初のうちはホワイトシュリンプやクリルなどを与えていました。一旦配合飼料に餌付けば大食いでばくばくと餌を捕食します。冷凍の餌をメインに与えると栄養の面で偏りが出てきますし、水も汚れやすくなるので早めに配合飼料に慣らしたいものです。
オニハゼの入手方法
日本における分布域は房総半島~九州までの太平洋岸、琉球列島です。かつては日本固有種とされていましたが、インドネシアやフィリピンといった海水魚輸出国にも生息していますので、入手は難しくありません。
このほか、インドネシアからは本種によく似た別の種類もやってくる可能性があります。こういうものを飼育しても楽しいでしょう。しかしインドネシア産のハゼの着状態は決して良好とはいえない面もありますので、しっかり旅の疲れが癒えた個体を購入するべきでしょう。鰭が切れている程度であれば問題はないですが、鰭がぼろぼろで赤く充血しているようなもの、体表に赤いただれがあるものなどは絶対に選んではいけません。
採集することは不可能ではなく、今回の個体も房総半島で釣りにより採集されたものです。ただし釣りは運試し的な方法で、釣れないことのほうが多いです。また針を深く呑んでしまったものは飼育には向きません。運よく釣れたら丁寧に針を外して綺麗な海水をはったバケツに生かしておきましょう。
オニハゼと他の生物との関係
ほかの魚との混泳
▲他魚との混泳例。口に入るような魚とは一緒にしない
オニハゼは大きな口をもちますが比較的臆病な種です。そのためスズメダイやクマノミ、メギス(ニセスズメ)系、ニセモチノウオなど、強すぎる魚との混泳は避けた方が無難です。とくにメギスの仲間は丈夫で飼育しやすいのですが、とくに似た形態の魚には激しく攻撃を仕掛けるので注意が必要です。
逆にオニハゼの口に入ってしまうような魚との混泳もやめたほうがよいでしょう。以前飼育していたスジクモハゼが襲われてしまったことがあります。
サンゴ・無脊椎動物との相性
共生ハゼはサンゴには全く無害ですので、サンゴ水槽での飼育も可能です。サンゴに対して問題を起こすおそれれがあるのは、ハゼではなく共生相手のテッポウエビで、砂を大きく動かしてしまうので、クサビライシなど水槽の底の方に配置することが多いサンゴはテッポウエビが砂を動かすことにより埋もれないように注意が必要です。また岩組はテッポウエビが砂を掘り起こしても崩れないようにしっかりと組む必要があります。クリーナーシュリンプは可能ですがオトヒメエビは大きなハサミでハゼなどを襲うこともありますので、一緒に飼育するのはおすすめできません。
オニハゼまとめ
- 全長11cmになり、共生ハゼとしては大型になる種
- ニシキテッポウエビなどと共生する
- ヒメオニハゼとは大きさと背鰭の形状で見分けられる
- 水槽は60cmがよい
- ろ過槽は上部ろ過槽がおすすめ
- しっかりフタをする
- 底砂と隠れ家も入れるようにしたい
- 餌は配合飼料を中心に
- 釣りで採集された個体は最初から配合餌を食べないことも
- 入荷してすぐの個体は購入しない
- 鰭がぼろぼろ、赤いただれがあるような個体もだめ
- スズメダイやクマノミ、メギスなど強い魚との混泳は注意
- 逆に小さい魚を食べてしまうこともある
- テッポウエビは砂を動かす。サンゴ水槽では注意