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2019.01.07 (公開 2018.06.17) 海水魚図鑑

コガネキュウセン(イエローコリス)の飼育方法~餌・混泳の注意点

コガネキュウセン

コガネキュウセンは黄色い体が美しいベラです。

うれしいことに幼魚も成魚も同じように鮮やかな黄色で、しかも成魚でも10cm前後。やや気が強めですがその割にはいろいろな魚と組み合わせることができます。

ただし夜間は砂の中で眠るので、水槽には細かい砂を敷いて、寝床を作ってあげたいものです。

標準和名 コガネキュウセン
学名 Halichoeres chrysus Randall, 1981
英名 Canary wrasse, Golden wrasse, Yellow wrasse
通称 イエローコリス
分類 スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・カンムリベラ亜科・ホンベラ属
全長 12cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド冷凍イサザアミ
温度 24~26度
水槽 45cm以上
混泳 気が強い魚とは注意が必要
サンゴ飼育

コガネキュウセンってどんな魚?

コガネキュウセンは標準和名に「コガネ」とあるように黄色い体が特徴のベラの仲間です。

真っ黄色の体色が美しい魚にはほかにもキイロサンゴハゼやキイロハギ、コガネシマアジ、ヘラルドコガネヤッコなどがいますが、これらの種は白点病にかかりやすかったり、あるいは大きく育ってしまったりするため初心者には飼育しにくい魚たちです。

一方このコガネキュウセンは大きくても10cmを超える程度の小型種で、45cmなど小型の水槽で飼育することも容易、またそれほど気が強くないため初心者にもおすすめです。

西太平洋やココスキーリング諸島などの東インド洋に分布し、幼魚は千葉県以南の太平洋岸でたびたびダイバーに目撃されますが、越冬するのは厳しいようです。

コガネキュウセンを含むホンベラ属はベラの仲間でも最大のグループで、インド-汎太平洋域、西大西洋からおよそ80種(日本には写真のみが知られているものを含め20種)が知られています。従来はキュウセン属ともされましたが、属の和名となっていたキュウセンが別属に移動されたので、ホンベラ属とされました。同じホンベラ属の魚にはライムラスやミツボシキュウセンなどサンゴ礁にすむ鮮やかなベラの仲間が多く含まれます。

「コリス」の名前があるけれど…

コガネキュウセンは「イエローコリス」という名前で販売されていることもあります。「コリス」というのはカンムリベラ属の学名Corisのことのようですが、本種はカンムリベラ属ではなくホンベラ属の魚ですので、混同しないように注意が必要です。

カンムリベラ属の魚はホンベラ属と同じように飼育することができますが、大型になる種が多くそのような種は小型水槽では終生飼育できませんので注意が必要です。

カンムリベラ

写真のカンムリベラは成魚ではメーターオーバーになり、水槽内でも50cmを超えます。そのためカンムリベラの仲間を飼育する前に本当に成魚になるまで飼えるのか、よく考える必要があります。

コガネキュウセンの雌雄の違い

コガネキュウセン(雌)

ホンベラ属の魚は幼魚や雌雄で色彩が異なる種類が多く知られています。

コガネキュウセンは雌雄の色彩の違いは大きくないのですが、雄は頭部に緑色の線が入り、雌は背鰭の中央部に黒色斑が入るので雌雄を識別することができます。

そのため、写真のコガネキュウセンは「」と見分けることができます(ちなみにトップの写真は雄)。

複数飼育していると雌が雄に性転換する様子を観察できますが、成長すると同種同士で争うこともありますのでその点は注意が必要です。

コガネキュウセンに適した環境

水槽

コガネキュウセンは小型種ですが、ほかのベラの仲間と同様水槽をよく遊泳します。ですからそれなりに大きめの水槽で飼育してあげたいものです。水槽でも成長するということを考えますと、45cm以上、できれば60cm以上の水槽を用意しましょう。

水質・ろ過

ホンベラ属の魚は概ね硝酸塩の蓄積にも耐えられますが、できるだけ綺麗な水で飼育するようう心がけます。外掛けろ過槽に外部ろ過槽を組み合わせたり、ろ過スペースを多くとることができる上部ろ過槽の使用をおすすめします。外掛けろ過槽や外部ろ過槽の単用は酸欠になりやすかったり、ろ過能力がいまいちなことが多くおすすめしません。底面の砂をろ材にする底面フィルターも砂を動かすため使用してはいけません。

魚の数を抑えられるのであればサンゴ水槽にして、ベルリンシステムなどのナチュラルシステムで飼育するのもよいでしょう。

水温

サンゴ礁に生息するほかの多くの魚と同様、25℃前後が適温です。低すぎる水温だと砂の中から出てこないこともあります。もちろん、なるべく一定の水温で飼育したいものです。

コガネキュウセンのように、睡眠時や危急時砂に潜る習性があるベラにとって砂を敷くことは寝床や隠れ家を作るということであり重要です。水槽に移してすぐは砂やライブロックの間から出てこないこともありますがあまり心配ありません。

飼育水槽には必ずパウダー状、または小粒のサンゴ砂を敷いてあげましょう。深く敷く必要はなく、2~3cmほどで問題ないでしょう。あまり深く敷いてしまうと硫化水素などが発生してしまうこともあります。

フタ

ベラの仲間は遊泳性が強いものが多く、何かに驚き水槽から飛び出して干物になってしまうことがあります。そのような事故を防ぐためにも、きちんとフタをしておきましょう。

コガネキュウセンに適した餌

本種を含むベラの仲間の多くに当てはまることですが、甲殻類が大好物で、エビや小型のカニなどを捕食しています。乾燥オキアミ(クリル)はもちろん、動物食性魚用の配合飼料にもすぐに餌付いてくれるので助かります。

もちろん冷凍のホワイトシュリンプなどもよく食べますが、このような餌は水を汚しやすいのでたまに与えるくらいにしましょう。添加剤はヨウ素や微量元素を添加するとよいでしょう。

コガネキュウセンの選び方

コガネキュウセンを自分で採集することは不可能ではないのですが、やや深い場所(水深5m以深)にいることが多いため採集は難しいといえます。そのため観賞魚店で販売されているものを購入することになるでしょう。

自然の海では全長12cmになりますが、それほど大きい個体はあまり入ってきません。小型水槽でも飼育できそうな、4~5cmほどの個体が多く販売されています。水槽をチェックし、水槽の底に砂を敷いていない水槽で販売しているものは購入しない方がよいでしょう。コガネキュウセンは先述の通り砂中に潜って眠るため、眠りにくくストレスになったり、吻を底にぶつけてしまい、すれていたりすることもあります。

それ以外の購入の注意点はほかの魚と同様で、鰭がぼろぼろ、鰭や体表が赤くにじんでいる、吻がすれている、鰭や体表に白い点がついている、などです。もちろん入荷直後の個体も避けたほうがよいでしょう。

なお、ホンベラの仲間はどの種も丈夫で、白点病などの病気にもかかりにくいといえますが、水質が悪化したり水温の変動が大きかったりすると病気になってしまうこともありますので注意が必要です。

コガネキュウセンと他の生物との混泳

他の魚との混泳

ラボックスラスモンガラ

肉食魚との混泳はNG.

ホンベラ属の魚は小型でもやや気が強いものが多く、極小サイズのイソハゼなどは種類によっては食べてしまうおそれがあります。クマノミ類、スズメダイ類、ハナダイの大型種、イトヒキベラ、ハギ、小型のゴンベなど、さまざまな魚との混泳ができますが、小型のハゼや遊泳性ハゼ、ハナゴイなどのような温和すぎる魚との混泳はやめたほうがよいでしょう。メギスの仲間も、争うおそれがあり避けた方がよいかもしれません。

逆に本種を捕食してしまうおそれがあるウツボやハタ、モンガラカワハギなど肉食性の魚との混泳もやめましょう。細めの体であるコガネキュウセンは他の魚に捕食されやすいようで注意が必要といえます。

サンゴ・無脊椎動物との相性

スカンクシュリンプ

コガネキュウセンはサンゴを捕食することはありませんので、サンゴ水槽での飼育も可能ですが、寝る時や危険が迫った時などは砂の中に潜る習性があります。

その際、底の方におかれることが多いクサビライシやオオバナサンゴに砂がかかってしまうこともありますので注意が必要です。ただしこれらのサンゴも直接砂の上に置くのは避けた方がよいでしょう。

先ほども述べたように甲殻類は大好物です。クリーナーシュリンプではないサラサエビやキャメルシュリンプ、エビやカニなどは捕食してしまうことがありますので、一緒に飼育するのはやめたほうがよいでしょう。しかしスカンクシュリンプとの混泳は可能です。

コガネキュウセン以外の黄色いベラ

コガネキュウセンが含まれるホンベラ属はおよそ80種も知られておりますが、本種のようにからだが一様に黄色のものは少ないです。

カナリートップラス

Halichoeres leucoxanthusというインド洋に分布しているベラはコガネキュウセンと近い仲間のようで、体の背部が黄色、腹部は白色という色彩です。インド洋産のカナリーラス(コガネキュウセンの英語名)、ということでアクアリストの間ではインディアンカナリーラスと呼ばれますが、ダイバーの間では色彩からかレモンメレンゲラスとも呼ばれています。比Fishbaseで使用されている名前は「カナリートップラス」です。

フタホシキツネベラ

フタホシキツネベラ

タキベラ亜科・タキベラ属の小型種であるフタホシキツネベラも黄色が綺麗なベラです。

体は一様に黄色ではなく、細い赤色の縦帯があり、鰓蓋と尾鰭の付け根に斑点があるのが特徴です。また産地によっては赤みをおびた色彩のものもいます。

フタホシキツネベラを大型水槽で飼育している例

タキベラ属のベラとしては全長10cm弱と小さいため、小型水槽での飼育も可能ですが、性格はきつめなので他の魚と混泳するときは大きめの水槽で飼育するとよいでしょう。写真は90cm水槽での混泳例。他の魚のために隠れ家を豊富に作るのが理想です。

本種に限らずタキベラの仲間はどの種も性格がきつめです。もちろん甲殻類との飼育もNGといえます。夜間は砂に潜らず、サンゴやライブロックの中で休息します。詳細な飼育方法はこちらをご覧ください。

ヤマブキベラ

ヤマブキベラの雌

ヤマブキベラの雌

ヤマブキベラはカンムリベラ亜科・ニシキベラ属の魚です。ニシキベラ属はクギベラ属と近いグループのベラで、ひとつの属となる可能性もあります。ニシキベラ属のベラはいずれも砂に潜らず夜間はサンゴやライブロックの陰で眠ります。

ヤマブキベラの飼育例

他魚との混泳例。遊泳性が強いため90cm水槽での飼育がおすすめ

ヤマブキベラが黄色いのは雌で、雄はカラフルな色彩になります。水槽で雌を複数飼育していると雌から雄に性転換するのを見ることができるかもしれません。全長20cmを超えるやや大きめの魚であり、遊泳性が強いため90cm以上のサンゴ水槽で飼育するのがおすすめです。タキベラ属の魚と比べほかの魚との協調性はありますがエビやカニなどは捕食する恐れがあります。

ヤマブキベラの飼育方法はこちらをご覧くださいませ。

コガネキュウセンの飼育まとめ

  • 成長しても体は一様に黄色
  • 「コリス」の名があるがカンムリベラ属ではない
  • 雄は頭部に細い線が出る
  • よく泳ぐのでできれば60cm水槽で飼育したい
  • 水温は25℃
  • 寝るときは砂に潜るので底砂は必ず必要
  • フタは必要
  • 配合飼料もよく食べ餌付けは容易
  • 観賞魚店で安価で購入可能
  • ストック水槽に砂がないところでは購入するのは避ける
  • 鰭や体がぼろぼろのもの、赤いただれがあるものも避ける
  • 慣れれば病気にもなりにくく飼育しやすい
  • 温和な魚や小型甲殻類との混泳は避ける
  • 逆に強すぎる魚との混泳もだめ
  • サンゴにはいたずらしないが、砂を撒くので置く場所に注意
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