2019.02.12 (公開 2017.11.04) 海水魚図鑑
キイロハギの飼育方法~混泳の注意点・病気対策など
キイロハギは英語圏で「イエロータン」と呼ばれるように鮮やかな黄色い体と可愛い顔が特徴の魚で、非常に人気が高い海水魚です。このキイロハギを上手く飼育するために必要なポイントをまとめました。
なおハギ(ニザダイ)全般に関する内容はこちらにまとめていますのであわせてごらんください。
標準和名 | キイロハギ |
学名 | Zebrasoma flavescens (Bennett, 1828) |
分類 | スズキ目・ニザダイ亜目・ニザダイ科・ヒレナガハギ属 |
全長 | 20cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトグリーン、ナチュラルシーウィード |
添加剤 | アミノメガ |
温度 | 24~26度 |
水槽 | 90cm以上 |
混泳 | 同種同士は注意が必要 |
サンゴ飼育 | 可 |
キイロハギとはどんな魚?
▲キイロハギ
キイロハギはニザダイ科の中のヒレナガハギ属に含まれる魚です。ヒレナガハギ属の魚は口がやや突出していること、その属名の通り背鰭と臀鰭が著しく大きいことが特徴です。インド-太平洋、紅海に7種が分布しており、いずれも観賞魚として人気があります。
和名や英名、学名の通り鮮やかな黄色が特徴的な種類です。同じ黄色のクログチニザやモンツキハギは成長すると色がかわりますが、本種は一生黄色のままです。ただしたまに全身が白っぽく黄色いシミがあるような個体も知られています。
中央太平洋に生息していて、日本では和歌山県串本、高知県柏島、琉球列島、小笠原諸島、南大東島に分布していますが、観賞魚としてはハワイからよく入ってきていました。しかし最近ハワイでは商用観賞魚の採捕が規制されるなどしており、今後入荷が少なくなったり、不安定になる可能性もあります。
キイロハギとよく似た種、見分け方
ゴマハギ
▲近縁種のゴマハギ
キイロハギに似たかたちの魚でゴマハギという魚がいます。キイロハギに似ており、体色や眼の色が違うので区別可能ですが、それ以外はほとんど同じで、同種という説もあるほどです。ゴマハギは駿河湾以南に分布し、自家採集している人もいます。飼育に関する注意点はキイロハギと同じですが、フィリピンなどの東南アジアから来ることも多いため状態はしっかり見極めないといけません。
クログチニザ
▲クログチニザの幼魚。成魚は褐色に
クログチニザの体は一様に黄色で、よくキイロハギと間違えられる種類です。しかしながら背鰭棘数が8本と多く(キイロハギでは5本)、鰭や体の形も大きく異なるので区別は容易です。またクログチニザは幼魚は黄色であったり、灰色と黒のツートンカラーだったりするのですが、大きくなるとチョコレート色に変化してしまいます。
このほか全身が黄色になるニザダイにはモンツキハギや、アトランティックブルータンの幼魚などがおりますが、これらは成魚では色が変化しています。その点キイロハギは幼魚も成魚もずっと黄色いままでユニークといえます。
キイロハギに適した環境
水槽
▲サンゴ水槽で悠々と泳ぐキイロハギ
60cm水槽での飼育も不可能ということはではないのですが、できれば90~120cmの水槽が欲しいところです。キイロハギなどのニザダイ類はなるべく清浄な水で飼育したい魚で、水質が安定しやすい大型水槽のほうが飼育に向いているといえます。また遊泳性が強く、非常によく泳ぐ魚ですので、その点も大型水槽での飼育をおすすめする理由となります。
できればオーバーフロー水槽での飼育をおすすめします。オーバーフロー水槽はサンプ(水溜)でろ過をすることにより、他の水槽に比べて、大量のろ材を入れることができます。
オーバーフロー水槽の設置にはそれなりの投資が必要となりますが、キイロハギの飼育には必須の条件と言えるでしょう。
ろ過装置
ろ材を用いた強制ろ過システムでの飼育も、ベルリンシステムのようなナチュラルシステムでの飼育も可能です。ライブコーラル、とくにハードコーラルと一緒に飼育するのであればナチュラルシステムの方がおすすめです。
オーバーフロー水槽にしてサンプ(水溜め)でろ過をする強制ろ過システムでの飼育を考えるのであれば、サンプの中に照明をつけ、海藻を育て、大きくなった海藻をキイロハギの餌にするのもよいでしょう。ただしサンプにもコケが生えますので、サンプ内で海藻を飼育するのであれば、アクリル製のサンプよりもコケ掃除の際に傷がつきにくいガラス製のサンプがおすすめといえます。
照明
キイロハギは照明がイマイチだとその特徴的な色を維持できないことがあります。メタルハライドランプのような強烈な光で水槽を照らしてあげたいところです。
フレームエンゼルフィッシュなどのキンチャクダイの仲間はメタルハライドランプのもとでは色が黒っぽくなってしまうことがありますが、ハギの仲間は浅いところに生息しており、そのような心配がないのがよいところです。
水流
キイロハギに限らずニザダイの仲間は海中ではサンゴ礁域の浅くて水流が強い場所に多く生息しています。水槽でも強い水流をつけてあげた方がよいです。
もちろん、キイロハギによく似合うSPS(ミドリイシ)の仲間などのサンゴと一緒に飼育するのであれば、そのようなサンゴにあった水流が必要となります。
水温
サンゴ礁に生息する他の魚と同様に25℃をキープするのが望ましいと言えます。もちろん水温は安定していることが重要です。
キイロハギに適した餌と添加剤
餌
▲コケを食べてくれるがそれだけでは足りない
キイロハギは基本何でも食べてくれて餌付けは簡単です。ベースは植物食魚用の餌を中心に与えるようにしましょう。たとえばキョーリンから発売されている餌「ひかりプレミアム メガバイト」であれば、肉食性の魚用のレッドよりもグリーンの方が適しています。
さらに海藻を薄い海苔状にした餌や、海藻をそのままフレーク状にした餌なども販売されています。そのような餌を与えるのもよいでしょう。逆に動物プランクトンなどの餌も与えたら食べるのですが、あまり適しているとはいえません。また藻類を好んで食べるニザダイの仲間を「コケとり」として入れていることもありますが、コケを食べさせるだけでは長生きしませんので、必ず植物食性魚用の餌を与えるべきです。
別に水槽を保有し、クビレズタ(ウミブドウ)などの海藻を育てて与える方法もあります。海藻を育てる手間はかかりますが、よく食べてくれるはずです。
幼魚は餌を一日複数回与えないと痩せてしまいやすいので気をつけなければなりません。これはキイロハギだけでなく他のニザダイ科、あるいはアイゴ科の魚も同様です。初心者の方はある程度大きく育った10cm前後の個体を選んで飼育するのが安全です。
ペレット状の配合飼料
海苔状にした海藻
添加剤
ヨウ素はサンゴだけでなく、魚や甲殻類にも重要な成分ですので、ぜひとも添加してあげましょう。餌にビタミンやアミノ酸を添加すると、HLLEの予防や治療にも役立つといわれています。もちろんサンゴ水槽で飼育するならばこのほかにカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ポタシウム、微量元素なども添加する必要があります。
キイロハギの入手方法と注意
海水魚は通販でも購入可能ですが、アイゴの仲間やニザダイの仲間、特にこのキイロハギについては通販より自ら海水魚店へ足を運んで実物の魚を見ることをおすすめします。
なぜならこれらの魚は比較的痩せやすく、観賞魚店でも背の肉が落ちて痩せてしまった個体を販売していることがあるからです。そのような個体はなかなか回復せず、死んでしまうこともあります。特に初心者の方は安価で魚を購入できる通販よりも、なじみの観賞魚店で、アドバイスをもらいながら、よく魚を観察するのが大事です。
キイロハギの病気と対策
白点病
ニザダイの仲間は白点病が出やすいので注意が必要です。とくに汚い(硝酸塩などが多く検出される)水槽や、水温に変動があると、この病気が出やすいといえますので、予防が肝心です。
治療法は銅イオンによる治療法や、魚病薬を用いた治療法ですが、とくに初心者は魚病薬を用いた治療がおすすめです。銅イオンはチョウチョウウオなどの治療で多用されるものですが、量を誤ると魚も殺してしまうし、HLLEが発生する可能性もあります。
健康で体力がある成魚をサンゴ水槽で飼育していると、いつの間にか白点が消えていたということもあります。
HLLE
頭部および側線が浸潤される病気です。原因は色々なことがいわれています。白点病の治療で銅を使ったとか、活性炭が問題であるとか、ビタミンやアミノ酸が足りないとか色々と言われています。
この病気に感染してもすぐに死に至るようなものではありませんが、美しい色彩が特徴のキイロハギの魅力を大きく下げてしまうことがあります。餌にビタミンを添加させると改善するともいわれていますが、かなり病気が進行してしまうと難しいかもしれません。
病気の予防
▲テストキットで水質を常にチェックしたい
キイロハギは白点病やHLLEにかかりやすい魚といえます。ではこれらの病気を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
殺菌灯をつければ、病原菌を撃退し白点病にならなくてすむとお思いの方もいるかもしれません。しかし、もともとの飼育水が汚ければ、いくら強力な殺菌灯をつけていても、魚は病気になってしまうおそれがあるのです。
もう一つ重要なのは水温です。水温を25℃に安定させておくことが大事といえます。人間も季節の変わる頃に風邪をひきやすくなるのと同様に、魚だって水温が上がったり下がったりするようでは、病気になりやすくなるといえるのです。
キイロハギの混泳のポイント
キイロハギは同種同士で争うので、ひとつの水槽に1匹だけを入れるのがベストといえます。他の魚との混泳は可能なことが多いです。
キイロハギと他の魚との混泳
▲他の魚との混泳も可能だが、サンゴ水槽では魚の数を少量にとどめたい
キイロハギは強健な魚であり他の魚との混泳も可能です。ただし、気が強い大型のスズメダイやメギスなどとの混泳は避けます。逆に温和すぎる小型ハナダイの仲間や遊泳性のハゼなどの種類も注意するべきです。
カクレクマノミ、キンギョハナダイ、ルリヤッコ、アカハラヤッコ、デバスズメダイなど多くの海水魚と混泳可能です。ただし同じく中部太平洋に生息するフレームエンゼルフィッシュやマルチカラーエンゼルフィッシュなどは先ほども述べたように「照明焼け」を起こすこともありますので注意が必要です。
ハギの仲間同士を混泳させるのであれば、まず(ハギの仲間としては)比較的温和である本種が水槽に慣れて縄張りを主張できるようになってからほかの魚を入れるようにします。
キイロハギとサンゴ・無脊椎動物との相性
▲キイロハギはSPS水槽で飼育したい
キイロハギは魚専用の水槽や、オオバナサンゴなどLPS水槽でも飼育可能なのですが、ミドリイシなどのSPS水槽がよく似合っているといえます。
またキイロハギの鮮やかな黄色い色彩を維持するには強い光と清浄な水が必須なのですが、ミドリイシの仲間を飼育するにもこの二つが必須といえます。
甲殻類はスカンクシュリンプやホワイトソックスなどを入れておくと寄生虫対策に役立ちますが、キイロハギの体表を傷つけたり、捕食してしまうような大型の甲殻類(イセエビなど)との同居は向いていません。
キイロハギの飼育まとめ
- 鮮やかな黄色が特徴のニザダイの仲間
- 90~120cmのオーバーフロー水槽がおすすめ
- 強い光と強めの水流、清浄な水で飼育したい
- 水温は25℃をキープ
- 植物質の餌を与えることが大事。コケを食わすだけでは長生きできない
- 幼魚は痩せやすいのでこまめに餌を与える
- ヨウ素・ビタミン・アミノ酸を添加
- 観賞魚店で自ら魚を見て購入したい
- きれいな水・安定した水温で病気を予防
- 他の魚との混泳は可能だが、強すぎるまたは弱すぎる魚とは混泳させない