2019.12.17 (公開 2017.06.23) 海水魚図鑑
ハチマキダテハゼの飼育方法~餌・混泳・個体の選び方
ハチマキダテハゼはほかのダテハゼ属魚類同様、テッポウエビの仲間と共生する「共生ハゼ」の一種です。性格も共生ハゼの仲間では大人しめで、丈夫で飼いやすく長期飼育もできるなど、初心者向けの共生ハゼです。今回はこのハチマキダテハゼの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | ハチマキダテハゼ |
学名 | Amblyeleotris diagonalis Polunin and Lubbock, 1979 |
英名 | Diagonal shrimp gobyなど |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ダテハゼ属 |
全長 | 8cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、シグマ グロウ D(ペレットタイプ) |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | 気が強い魚との混泳は要注意 |
サンゴ飼育 | 可 |
ハチマキダテハゼって、どんな魚?
▲ハチマキダテハゼとニシキテッポウエビ
ハチマキダテハゼはインド-西太平洋に生息するダテハゼの仲間です。ダテハゼの仲間なので体側のオレンジ色の、やや斜めに入る横帯がめだちます。そしてほかのダテハゼの仲間と同じく、テッポウエビの仲間と共生します。全長8cmほどで丈夫で飼育しやすいハゼです。
ほかのダテハゼとの見分け方
ハチマキダテハゼはほかの多くのダテハゼ属魚類と同様、体には橙色の横帯が入ります。そのため見分けるのはやや難しいのですが、上顎後端から項部にかけての斜帯があること、鰓蓋より後方の体側にある横帯は4本であること、背鰭は赤く縁どられないこと、などの特徴によりほかのダテハゼと見分けることができます。とくに上顎後端から延びる斜帯の有無で見分けるのが簡単でしょう。
▲横帯が薄くなったハチマキダテハゼ
また、ハチマキダテハゼは警戒したり、ほかの共生ハゼと争っているときなど、少し色合いが変わることがあります。体側の橙色の横帯が薄くなり、臀鰭の模様がより鮮明になります。
ハチマキダテハゼと共生するテッポウエビ
▲ニシキテッポウエビ
海中ではニシキテッポウエビと共生することが多いようですが、コシジロテッポウエビなど他の共生テッポウエビの仲間とも共生するものと思われます。入手できる、サイズにあった共生テッポウエビを入れるようにするとよいでしょう。
ハチマキダテハゼに適した飼育環境
水槽
水槽は60cmほどあれば終生飼育可能です。単独であれば45cm水槽でもいいかもしれませんが、初心者であればほかの魚も入れたくなるものですので、その意味でも60cm水槽の方がよいでしょう。
水質とろ過システム
▲オーバーフローパイプの上にアクリル製のフタをする
比較的水質悪化にも耐えますが、さすがにアンモニア濃度の高い水槽では飼育できません。ろ過槽はしっかりしたものが必要になります。外掛けろ過槽は水槽の上に隙間が大きくなることから飛び出し事故がおこりやすいのでおすすめできません。底面ろ過槽も砂を掘ったりするテッポウエビがいる限り入れられません。おすすめは上部ろ過槽で、これに外部ろ過槽を補助で使用するのがベストです。外部ろ過槽は単体で使用すると酸欠を招くのでこれもだめです。
ある程度の大きさがある本種は、オーバーフロー水槽での飼育が最適といえるでしょう。ただしフローパイプの上にフタをするなど、対策したほうがよいかもしれません。
サンゴには無害ですので、サンゴ水槽でも飼えます。ただしベルリンシステムでの飼育はできますが、モナコシステムやDSBシステムでの飼育は望ましくありませんので注意が必要です。また、ベルリンシステムは魚を多く飼育できるシステムでないことも頭に入れておく必要があります。
水温
水温は原則25℃をキープするようにします。22~28℃の範囲で飼育できますが、一定の水温をキープするようにします。そうしないと体調を崩してしまい病気になってしまいやすくなります。
砂
砂はサンゴ砂を使用するのが一般的です。パウダー状の砂を敷くほか、少し粗めのサンゴ砂を一緒に混ぜてあげれば、テッポウエビが巣を作りやすくなるのでおすすめです。
生息地の環境を再現し、微妙な色彩の違いを楽しむのであれば、黒っぽい砂を敷くのもよいでしょう。ただし、熱帯魚用のソイルなどは絶対に使用してはいけません。シーケムから販売されている「グレイコースト」はソイルのような黒い底砂でありながら、pHが低下しにくいようになっており、海水魚飼育や淡水魚のアフリカンシクリッドなどの飼育に最適です。
フタ
共生ハゼは驚くと水槽から飛び出すこともあるので、フタは必要です。また、小さい隙間から出てしまうこともありますので、アクリル板などで隙間埋めをするのがおすすめです。
ハチマキダテハゼに適した餌
共生ハゼの主食は、沈降性ペレットフードがおすすめです。具体的にキョーリン「メガバイト レッド」のMサイズや、どじょう養殖研究所の「シグマ-グロウD」などです。シグマ-グロウシリーズはダテハゼなどの肉食性海水魚には消化しにくい小麦粉類を使用しないプレミアムフードです。ただDサイズでは大きいかもしれないので、小ぶりな個体にはCサイズを使用するなどの配慮も必要です。
フレークフードは視認性がよく、スズメダイやクマノミなどにはよいのですが、うすっぺらく餌の量が少ないことや、底の方にいる魚にとってはいちいち水面まで上がって捕食する必要があることなどから、個人的にはダテハゼに対する餌としては、あまりおすすめしません。
ハチマキダテハゼをお迎えする
ハチマキダテハゼは海水魚店で販売されていますが、あまり入荷がない種類です。ハゼなどに強いお店でたまに販売されていることもありますが、取り寄せになってしまうこともあります。参考までに、今回の個体は横浜市都筑区の海水魚店「Kazika」で購入したものです。分布域は広く、伊豆半島から琉球列島、海外では紅海・東アフリカ~ソロモン諸島に至るインド-西太平洋に分布します。フィリピンやインドネシアから輸入されることが多いため、あまり高価な魚ではありません。
購入するときに確認したいポイント
ハチマキダテハゼはフィリピンやインドネシアから来るため、安価な魚ではありますが、この海域の魚は雑な扱いをされていることも多く、購入するときは注意が必要です。具体的にいえば、入荷してすぐの個体、体表に赤い爛れや傷があるもの、白い点が体表や鰭に多数ついているもの、口に傷がついているものは購入してはいけません。鰭が少し裂けている個体は問題ないことが多いですが、鰭が溶けているようなものや赤くなっているものなどは危ないです。
ほかの生物との関係
他の共生ハゼとの混泳
比較的おとなしいので、60cmくらいの水槽であれば他の共生ハゼとの混泳も可能です。同じような性格の種と組みわせるようにし、ギンガハゼ、オイランハゼ、ウォッチマンゴビーなど気が強い種はできれば避けます。
同じダテハゼ属の魚であれば混泳可能です。同じくらいの大きさのクビアカハゼや、ダンダラダテハゼなどとの混泳が向いているかもしれませんが、ニチリンダテハゼのような気がつよい大型種との混泳はやめた方が無難です。逆にヤノダテハゼは臆病なのでこちらも避けた方がよいかもしれません。このほか小型のオニハゼ属や、ヒレナガネジリンボウなどとの混泳もできますが、これらは臆病ですので、これらのハゼが慣れてからハチマキダテハゼを追加するようにします。
ほかの魚との混泳
▲ハチマキダテハゼとアオモンギンポ
ほかの魚との混泳もできますが、ハチマキダテハゼをいじめるような気が強い魚はいけません。ベラの仲間はカラフルで飼育しやすく人気ですが、ライムラスなどはハチマキダテハゼにとっては脅威になり、エビを襲うこともありますので、一緒に飼育しない方がよいでしょう。
カクレクマノミなどとの飼育もできますが、まずはハチマキダテハゼを先に入れ、慣れたころに追加するようにしたほうがよいです。また、狭いバケツなどで何も隠れ家を入れずにカクレクマノミと一緒に入れると他魚をいじめることがありますので、隔離ケースに入れるなどの対策が必要になることもあります。
カエルウオの仲間やベントス食性のハゼ、ハナダイの仲間、おとなしめのスズメダイなどとであれば一緒に飼育できます。遊泳性ハゼのうち、ハナハゼと飼育すると、ハチマキダテハゼとテッポウエビが共生する巣孔に居候する様子を観察することができます。
肉食性が強いゴンベ、メギス(ニセスズメ)、ハタなどや気が強い大型のスズメダイなどとの混泳は危険ですのでやめましょう。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲ハチマキダテハゼとサンゴ
ハチマキダテハゼはサンゴに危害を加えることがないため、サンゴ水槽での飼育もできます。一般的にハチマキダテハゼと共生するニシキテッポウエビはやや大きくなり、サンゴの岩組を壊してしまうという話も聞くのですが、しっかりした岩組にサンゴを接着しておけば、そうそう崩れるものではありません。また、底の方にサンゴを置いておくと砂にうずもれてしまうこともありますので、サンゴは底砂の上に直接置かないようにしましょう。
一方、捕食性が強いウチウラタコアシサンゴ、巨大なディスクコーラル、クマノミと共生するタイプのイソギンチャクにはハゼが捕食されてしまうこともあるので、一緒にしてはいけません。
甲殻類はニシキテッポウエビのほか、小型のサンゴヤドカリやヨコバサミの類、サンゴモエビ、サラサエビなどは問題ありませんが、イセエビなど大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリなどはハチマキダテハゼを捕食することもあるので、これもだめな組み合わせです。またクリーナーシュリンプもアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)や、シロボシアカモエビ(ホワイトソックス)は問題ないのですが、オトヒメエビはハゼやカエルウオなど動きが遅い魚を襲ってしまうので一緒に飼育してはいけません。
ハチマキダテハゼ飼育まとめ
- ダテハゼの一種で飼育しやすい
- ニシキテッポウエビなどと共生する
- 60cm水槽でも終生飼育できる
- 水槽の上部におき隙間ができやすい外掛けろ過槽は不向き
- 底面ろ過槽、モナコシステムなどでの飼育もしないほうがよい
- 上部ろ過槽もしくはオーバーフロー水槽が現実的な選択肢
- 水槽の上やオーバーフローパイプにフタをしておきたい
- 沈降するペレットフードがおすすめ
- フィリピンやインドネシアにすむため入荷時の状態はしっかりチェック
- ゴンベやメギス、肉食魚、強いスズメダイとの混泳は避ける
- 共生ハゼ同士の混泳は可能だが、ギンガハゼなどは避けた方がよい
- サンゴとの相性は概ね良好。捕食性の強いサンゴやイソギンチャクは要注意
- テッポウエビのほか、小型甲殻類とも飼える