2020.08.18 (公開 2017.12.04) 海水魚図鑑
ライムラスの飼育方法~甲殻類との相性・混泳などの注意点
ライムラスは海水魚の中ではあまり多くない、鮮やかな緑色が特徴的なベラ科の魚です。安価で丈夫、病気にもならず、成長にともなう斑紋の変化を楽しむことができます。ただし大きいものは気が強くなるのでエビなどの甲殻類との飼育はやめた方がよいでしょう。今回はライムラスの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | なし |
学名 | Halichoeres chloropterus (Bloch, 1791) |
英名 | Pastel-green wrasse |
通称 | グリーンラス、ライムラス |
分類 | スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・カンムリベラ亜科・ホンベラ属 |
全長 | 20cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 22~28度 |
水槽 | 60cm以上 |
混泳 | 温和なハゼや小型のハナダイ、気が強い魚、甲殻類は注意 |
サンゴ飼育 | 可 |
ライムラスってどんな魚?
「ライムラス」という名称は日本以外ではあまり使われず、「パステルグリーンラス」や「グリーンラス」と呼ばれています。いずれの英名も、体色が由来になっているようです。なお「ラス」というのは英語で「ベラ」のことです。
幼魚や若魚は鮮やかな緑色で綺麗なのですが、成長すると雌は薄い体色になりますが、雄は若干色が暗くなり、体側に黒いしみのような斑紋が出るなどします。この特徴から英名で「ダークブロッチドラス」とよばれることもあります。分類学的にはホンベラ属の魚ですので、コガネキュウセン(イエローコリス)と近いものです。
西太平洋のサンゴ礁域にひろくすんでいます。フィリピンやインドネシアに産し、日本にいてもよいと思われますが確実な記録はないようです。タイプ標本は日本で採集されているのですが、これはフィリピンの誤りである可能性が高い、ともいわれています。
ライムラスに適した飼育環境
水槽
▲ライムラスを実際に飼育している90cm水槽
ライムラスは海では全長20cmを超えるサイズにまで成長するようですが、一般家庭での水槽ではそれほど大きくなることは少ないようです。しかし、それでも10cmを超えるくらいのサイズにはなりますので、できれば60cmくらいの水槽で飼育したいものです。
ろ過槽
ライムラスを含むホンベラ属は基本的には丈夫なベラの仲間ですが、ろ過槽がうまく機能していないと、飼育することは難しいです。
60cm水槽であれば上部ろ過槽、または上部ろ過槽と外部ろ過槽の併用を推奨します。もちろんオーバーフロー水槽にしてサンプ(水溜め)でろ過するようにすれば、他の方式よりも圧倒的な広さのろ過スペースを確保でき、大量にろ材を入れることができるのでおすすめです。
水温
ライムラスは22~28℃くらいの水温で飼育できますが、高水温で飼育すると色があせる可能性もありますので、他の熱帯性海水魚と同じく、25℃前後での飼育が適しているといえます。もちろん水温が安定していることも大事です。水槽用クーラーやヒーターを使って、故郷である熱帯の海を再現してあげましょう。
底砂
ライムラスは夜間砂に潜って眠るため、細かいパウダー状の砂を敷いてあげましょう。数cmほどの厚さで十分です。あまりにも厚く敷いてしまうと有害物質のたまり場になってしまうおそれがあります。
フタ
本種に限らずベラの仲間はよく泳ぎ、驚いたときに飛び出してしまうこともあります。飛び出して干物になってしまうことはベラの仲間ではよくあることですので、そのような事故を防ぐために、きちんとフタをしておく必要があります。
ライムラスにおすすめの餌
状態がまともな個体さえ購入できれば、とくに餌付けを行う必要はありません。ライムラスは水槽に入れた翌日から餌を啄むようにして食べることが多いです。餌はフレークのものも食べるのですが、沈降性の粒状餌を与えるのが望ましいといえます。
このほかにクリルやホワイトシュリンプなどもよく食べますが、これらの餌は水を汚しやすいので「おやつ」程度に与えるくらいにとどめます。
ライムラスの販売・入手方法
▲ライムラスの混じりで輸入されたパーリースポッテッドラス
ライムラスはホンベラ属のなかでも、コガネキュウセンに次いで入荷量が多い種類です。日本には分布していないため輸入に頼ることになりますが、主な生息地が海水魚を世界中に輸出している二大産地、フィリピンやインドネシアなので、安価で入手することができます。
購入の際に注意するべきところは、基本的に他の魚と同様です。体に傷がついていたり、赤くにじんでいたりしていないか、鰭が溶けたりしていないか、体表に白い点がついていないか、口が傷ついていないかなどです。また、ライムラスをストックしている水槽に砂が敷かれていないようなお店では購入するのを避けたほうがよいでしょう。
なお、「ライムラス」の名前で入ってくるベラの中には別の種類が混ざっていることもありますが、同じような条件で飼育できる種が多いです。
ライムラスの病気対策
ライムラスは大変丈夫な魚であり病気にかかることもほとんどありません。ただし水温の変動が大きかったり、汚い水で飼育していると病気になるおそれもあります。病気になりにくいベラの仲間ではありますが、水かえをおろそかにしていたり、ヒーターやクーラーをつけず水温の変動の大きい水槽では上手く飼育することはできないのです。
ライムラスの混泳
ライムラスと他の魚との混泳
▲ライムラスとキツネベラとの仲間は相性が悪い
ライムラスは多くの魚と一緒に飼育することができます。ただし、ライムラスの存在がプレッシャーになるような魚、たとえば温和なハゼや小型のハナダイなどとの混泳はなるべく避けたいところです。
逆に大きなベラの仲間や大型のスズメダイなど、ライムラスを驚かすような魚との飼育は避けたいところです。ハタやウツボなどは、ライムラスを捕食してしまうことさえあります。これらの魚に脅かされると、砂の中に隠れてしまいそのまま出てこない、なんてこともあります。
同じくらいの大きさの魚でも、ニセモチノウオの仲間や小型のキツネベラの仲間など、よく似た体形の魚と争うことがあります。同様の理由で、ニセスズメの仲間などとの混泳もあまりおすすめできません。
同種同士の混泳は大きめの水槽であれば不可能ではありません。ただし雄同士の混泳はやめたほうがよいでしょう。本種に限らずベラの仲間は大きくなるほど気が強くなるので注意します。
ライムラスとサンゴ・無脊椎動物との相性
▲ライムラスと甲殻類との飼育は要注意
ライムラスはサンゴをつついたりすることはないのでサンゴ水槽での飼育も可能です。ただし夜間の睡眠時に砂を巻き上げることがありますので、水槽の底の方に置くサンゴに砂がかかっていないかよく観察する必要があります。
甲殻類はスカンクシュリンプやホワイトソックスとの飼育は可能ですが、サラサエビやキャメルシュリンプ、ペパーミントシュリンプなどクリーニングをしないタイプのエビはライムラスのごちそうになってしまうことがあります。
逆にライムラスがオトヒメエビやイセエビなど大型のエビに襲われないように注意する必要があります。サンゴヤドカリについては大丈夫なことが多いようです。
ライムラスの飼育まとめ
- 成長すると色彩が変化する
- 夜間砂に潜るので砂は必需品
- 60cm水槽、ろ過は上部と外部ろ過槽の併用がおすすめ
- 飛び出し事故を防ぐためフタが必要
- フレークよりも粒状の餌が適している
- 東南アジアの魚で安価で入手できるが、状態には注意
- 気が弱い小魚や逆に気が強すぎる魚との混泳はダメ
- エビの仲間を捕食することも
- サンゴには基本的に無害