2020.10.30 (公開 2020.10.29) 海水魚図鑑
リュウキュウイシモチの飼育方法~赤い体が美しいが飼育は難しい
リュウキュウイシモチは赤いガラス細工のような、美しい魚です。実際に本種は繊細な魚であり、傷つきやすいので初心者にはやや難しい魚といえます。夜行性で昼間はライブロックの中などに隠れていますが、夜間には積極的に泳ぎ回ります。今回はこのリュウキュウイシモチの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | リュウキュウイシモチ |
学名 | Apogon indicus Greenfield, 2001 |
英名 | Indian cardinalfish |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・テンジクダイ科・テンジクダイ亜科・コミナトテンジクダイ属 |
全長 | 4cm |
飼育難易度 | ★★★☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドS(最初は冷凍餌でないと食べないことも) |
温度 | 25℃ |
水槽 | 35cm~ |
混泳 | 非常に繊細なため混泳には向かないことも多い |
サンゴとの飼育 | サンゴとの飼育はおおむね問題ないがイソギンチャクなどはだめ |
リュウキュウイシモチって、どんな魚?
▲リュウキュウイシモチ
リュウキュウイシモチはテンジクダイ科コミナトテンジクダイ属の魚で、半透明の赤い体が魅力的な魚です。この仲間には何種類かいますが、すべて赤い体をしており、見分けるのが難しいところがあります。本種はやや体高が高く、背鰭の棘が伸びていない、胸鰭の軟条数が13本、などの特徴があり、ほかの近縁種と見分けられます。学名は従来Apogon erythrinus という学名が使われていましたが、2001年にリュウキュウイシモチに似た魚の分類学的再検討が行われリュウキュウイシモチの学名はA. indicusとなりました。A. erythrinusはハワイ諸島特産とされますが、リュウキュウイシモチはインドー太平洋域に分布し、学名は「インドの」を意味し、は本種がこのコンプレックス(複合種群)で唯一インド洋にもいることにちなむようです。タイプ標本もインド洋で採集されています。ちなみに「リュウキュウ」と種の標準和名についていますが日本では八丈島や高知県にも生息しています。
コミナトテンジクダイ属とは
▲コミナトテンジクダイ属のヤミテンジクダイ
コミナトテンジクダイ属はテンジクダイ科でも大きなグループで、およそ50種類以上が知られています。大きくても3cmくらいのものから、全長15cmくらいに達する大型種までいます。色は赤いものが多く、幼魚、種類によっては成魚でも透明感があるものがいます。また黒い斑点があったりするものもいますが、一部の種類をのぞき同定が難しいこともあります。分布域はひろく、テンジクダイ科としては三大洋すべてに複数種が分布している唯一の属といえます。もっとも古くから知られている地中海産の真っ赤なカーディナルフィッシュもこの属のものです。
従来Apogon属(旧テンジクダイ属)にはキンセンイシモチやネンブツダイ、イトヒキテンジクダイなど多くの種が入れられてきましたが、近年再検討がなされ、多数の属に分割されています。Apogon属は混乱を避けるためにコミナトテンジクダイ属という標準和名がつけられました。これについてはリンクもご参照ください。
リュウキュウイシモチ飼育に適した環境
▲実際にリュウキュウイシモチを飼育していた水槽
水槽
リュウキュウテンジクダイのような小型種をしっかり観察するのであれば、35cm以上の小型水槽が最適です。大体45cmくらいの水槽で飼うのに適しているでしょう。これらの水槽は初心者向けの水槽ではないのですが、リュウキュウイシモチ自体が初心者向けの魚とはいえないところがあります。
水質とろ過システム
リュウキュウイシモチはテンジクダイの仲間でも水質にややデリケートなところがあります。あまりよくない環境で飼育していると、赤い体が白っぽくなってしまうことがあります。きれいな水を維持するためにシステムにも注意しましょう。ろ過槽については外部ろ過槽と外掛けろ過槽の組み合わせなど、ある程度のろ過槽容量を確保しながら、酸欠になりにくい方法を考えなければなりません。サンゴには無害なためサンゴ飼育のためのベルリン水槽でも飼育することができますが。あまり複雑なレイアウトだどこへ行ったかわからなくなってしまうこともあり、注意が必要です。
水温
水温は25℃前後を保つようにします。もちろん、水温の変動が大きいと体調を崩しやすく、そこから病気になってしまうこともあるので、年中クーラーとヒーターで一定の温度を保つことが重要となります。とくにリュウキュウイシモチのようにややデリケートな魚を飼育するのであればなおさらです。写真の水槽ではヒーターを設置し、夏季は室内のエアコンで管理していましたが、一般家庭で飼育するならクーラーがあったほうがよいでしょう。
隠れ家
臆病な魚なので、ライブロックなどで隠れ家を作ってあげましょう。
リュウキュウイシモチ飼育に適した餌
リュウキュウイシモチの飼育がやや難しいとされているところは、最初から配合飼料を食べない場合があるということです。多くの魚と同様に最初は粒餌で餌付かせますが、食べないときはホワイトシュリンプなどの冷凍餌を与えなければならないこともあります。慣れて配合飼料を食べるようになってもやせてしまうようなときには冷凍餌も併用して与え続けますが、水を汚しやすいのでこまめな水かえで対応したいところです。
リュウキュウイシモチをお迎えする
リュウキュウイシモチは購入のほか、採集することもできます。沖縄では浅い礁湖でも採集することができますが、九州以北では本種は浅瀬ではあまり見ません。そのため購入することが多くなるでしょう。
注意したいのはお店での扱いです。小さくて弱い魚なので網で掬わないで、必ずプラケースで掬ってもらうようにします。採集するときも同様です。網でリュウキュウイシモチを掬いますが、水から上げずに、プラケースを使用して水からあげるようにしましょう。また必ず沖縄のものを購入するようにします。フィリピンやインドネシアで採集されたものも入ってきますが、これらの産地のものはどうしても扱いが雑で、輸送時間も長くなりがちだからです。
購入するときは、体表に白い点がついていないか(テンジクダイ類は若干白点病になりやすいところがある)、体の一部が白くなっていないか、泳ぎ方はおかしくないか、体に赤いただれはないか、などの点をチェックしましょう。もちろん入荷直後の個体もいけません。
リュウキュウイシモチとほかの生き物との関係
ほかの魚との混泳
小さく臆病な魚なので、ほかの魚との混泳は難しいところがあります。混泳させるなら小型のハゼや小型のカエルウオなどしかありません。大きめの魚はいるだけでプレッシャーがかかりやすいのでやめましょう。
サンゴ・無脊椎動物との相性
サンゴとの相性はよいです。小型水槽ではサンゴの飼育が大型水槽よりも難しいですが、ある程度経験を積んだら小型水槽でソフトコーラルと飼育すると楽しいでしょう。ただしイソギンチャクの仲間は魚食性が強く一緒に飼育してはいけません(ディスクコーラルやスナギンチャクの仲間は問題なし)。一方甲殻類はリュウキュウイシモチを襲ってしまうことがあるのでやめましょう。
リュウキュウイシモチ飼育まとめ
- 赤い体がきれいなテンジクダイの仲間
- きれいだが小さく、やや飼育は難しいので初心者には不向き
- 夜間は盛んに泳ぎ回る
- 小型水槽での飼育に向く
- 綺麗な水を好む。ろ過システムはしっかり。
- 水温は25℃で安定した環境にすることも重要
- 臆病なのでライブロックで隠れ家をつくりたい
- 最初から配合飼料を食わないことも。ホワイトシュリンプなどを与えたい
- 沖縄産の個体がよい。魚の体の様子や掬い方などもしっかりチェック
- あまりほかの魚との飼育には向かない
- 一般的なサンゴとは問題なく飼育できる