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2019.10.23 (公開 2017.08.28) 海水魚図鑑

テンジクダイの仲間の飼育方法~産卵・繁殖を楽しめるかも

テンジクダイの仲間は、海水魚飼育で主役級の魚とはいえないのですが、それでも鮮やかな色彩や、透明で透けるようなボディをもつものもおり人気があります。

また種類によっては自分で採集することもできたり、さらには産卵し、親の口腔内で卵や孵化したばかりの仔魚の保育も観察できる可能性が高いなど、魚飼育の醍醐味を味わうことができるでしょう。

テンジクダイってどんな魚?

スズキ目テンジクダイ科の魚。分類学的な位置については、ハタの仲間やアジの仲間などと同じスズキ亜目とされましたが、近年はハゼ亜目との関係が注目されたり、スズキ亜目は単系統ではないとされるなど、分類学上の位置づけについては意見が分かれます。基本的には以下のような特徴をもちます。

  • ほとんどの種で背鰭は2つに分かれる
  • 臀鰭棘数は2
  • 頭部に大きな耳石を持つ
  • 鱗は櫛鱗(縁辺が櫛のよう)であることが多い

また口腔内で親が卵や孵化したばかりの仔魚を保護する習性があります。その中でもバンガイカーディナルフィッシュはかなり大きな個体も口腔内で保護されるという変わった習性をもちます。

テンジクダイの仲間を入手する方法

▲釣りで採集したシボリ

海水魚店でもテンジクダイの仲間が販売されていますが、一般的な観賞魚店で販売されているものはマンジュウイシモチ、バンガイカーディナルフィッシュ、キンセンイシモチなどごく一部の種に限られます。

テンジクダイの仲間は輸送に弱いものがいるので、輸送距離の短い沖縄などからも入荷します。沖縄の海水魚に強いようなお店だと、多くの種のテンジクダイを入手することができるでしょう。

一部の種類は釣りや磯採集などで、自分で採集することも可能です。ただし、テンジクダイの仲間は水の汚れに弱く、採集したらなるべく早く持ち帰るようにするべきです。

テンジクダイの選び方

観賞魚店でテンジクダイを購入するときの注意点は以下の通りです。

テンジクダイは水が綺麗でないと鰭が溶けてしまうことがあります。特に輸入された直後、数日でこのような状態になってしまうこともありますので、輸入直後の個体を購入するのは避けるようにします。

体表

テンジクダイの仲間は体表が弱いので、なるべく傷がついていないものを選ぶようにします。網によるスレにも弱いので、なるべく水ごと掬う、目の細かい網を使用するなどの工夫も必要です。

もちろん、白点がついているものは選んではいけませんし、体側が赤くにじんでいる(水槽内では体側の他の場所より色が薄くなっている)などの個体は論外。スカシテンジクダイなど半透明な体の種は体が白く濁っていないものを選びます。

眼は白っぽく濁っているものは状態が悪いことが多いので、絶対に避けて下さい。水質が悪化すると眼が突出したようになってしまうこともあります。

口に傷がついているのは避けます。可能ならばお店の人に餌をあげてもらう、あるいは餌を食べていたかどうか尋ねるのもよいでしょう。

泳ぎ方

穏やかにゆったりと泳いでいる個体を選ぶようにします。水底から表層を行ったり来たりしているものや腹を上に向けたものなどはすぐ死んでしまうのでやめたほうがよいでしょう。

テンジクダイの仲間の病気

テンジクダイはチョウチョウウオほどではないのですが病気にかかりやすいといえます。

白点病にかかることもあり、また硝酸塩の数値が高い水槽だと、鰭が溶けるようになってしまうことがあります。薬にもあまり強くないので、病気の治療よりも予防を第一に考えましょう。

テンジクダイの仲間に適した環境

水槽サイズ

魚にあった水槽サイズを選びます。バンガイカーディナルフィッシュやマンジュウイシモチなどの小型種や、シボリなどあまり活発に泳がない種は30cmほどの小型水槽でも単独であれば飼育できるのですが、キンセンイシモチやヤライイシモチなど若干大きめに育つ種類は最低でも45cm水槽を用意したいものです。

水温

キンセンイシモチやマンジュウイシモチなど、熱帯の浅瀬にするものは25℃前後で飼育します。それより高めの水温でも水が綺麗なら問題なく飼育できることが多いです。

ネンブツダイなどの温帯種や、やや深めの場所に生息するものは水温22℃前後が望ましいといえます。

いずれにせよ水温が安定していることが大切です。水温の急な変動は魚の体調を崩し、病気を招くおそれがあるので望ましくありません。

水質

硝酸塩などの栄養塩の数値はハードコーラルほどシビアになる必要はありませんが、それでも多量に蓄積されると鰭が溶けたりするおそれがあります。特に小型の水槽で、たくさん魚を飼っているようなときは注意です。

プロテインスキマー

生物ろ過は排せつ物や残り餌などから発生するアンモニアを亜硝酸、硝酸に分解しますが、その過程で多量の硝酸塩を放ちます。それを排せつ物や残り餌の段階で水槽から取り除くのがプロテインスキマーです。水質をよい状態に保つのにぜひとも導入したいところです。

殺菌灯

テンジクダイの病気予防には最適の器具ですが、これはきれいな水で飼育して病気を予防するためのものであり、栄養塩が多すぎる汚い水ではあまり効果がないといえます。また殺菌灯は殺菌灯本体と水中ポンプが水温の上昇を招きますのでその対策も必要となります。

テンジクダイの仲間に適した餌

▲粒状餌を食べるテンジクダイの仲間たち

動物食性が強く、小魚や甲殻類、動物プランクトンを捕食します。しかしたいていの種は配合飼料もよく食べるので、餌付けについては心配はいりません。

もっとも心配しなければならないのは、同居の魚や甲殻類を食べてしまうおそれがあることです。

特にシボリやリュウキュウヤライイシモチなどの大型種は気を付けるべきです。釣りだと夜釣りでよく釣れますが、飼育していると照明がついているときにも餌を捕食します。

テンジクダイの混泳

▲テンジクダイ同士の混泳パターン

▲他の魚との混泳も可能。ただしスズメダイとの混泳は、種類によっては厳しいことも

テンジクダイは温和なものと、かなり気が強いものに分けられます。

かなり気が強いものはシボリなどの肉食性が強い種、リュウキュウヤライイシモチなどの大型になる種です。逆に比較的温和なものはコミナトテンジクダイの仲間の小型種、マンジュウイシモチ、キンセンイシモチなどの種です。ただし比較的温和な種でも、小型の甲殻類などは食べてしまうことがあります。

ちなみに我が家で飼育しているキンセンイシモチは、「温和」と言われていますが自分よりも小さいハゼなどはかなりいじめています。全て影に隠れて出てこなくなってしまったため混泳を諦めました。水槽に入れる順番や混泳する個体の大きさ、種類による個性なども関与します。

大型魚との混泳は、肉食性が強い魚はテンジクダイの仲間を捕食してしまうことがあります。メギスや気が荒いスズメダイの仲間も、かなり気が強いため混泳には不向きです。

カクレクマノミとの混泳は問題ありません。

テンジクダイとサンゴ・無脊椎動物との相性

テンジクダイの仲間は基本的に、サンゴをつついて食べてしまうようなものはいません。逆に、サンゴなどの無脊椎動物と飼育するのが望ましい魚も知られています。たとえばヒカリイシモチはウニの一種であるガンガゼ類と、イナズマヒカリイシモチはトサカの仲間やヤギの仲間が群生しているところを好みます。

甲殻類の仲間との飼育は可能ですが、テンジクダイ科の中でも大型になる種はサラサエビの仲間、ペパーミントシュリンプ、モエビの仲間などを捕食してしまうことがあります。夜間、他の多くの魚が寝静まっているときに活動的になり、同じく夜間活動的になる甲殻類は食べられてしまいやすいのでしょう。

逆にイセエビの仲間、ショウグンエビの仲間、オトヒメエビの仲間はテンジクダイを襲うこともあります。

テンジクダイの繁殖

▲バンガイカーディナルフィッシュはアクアリストの繁殖例もあり

テンジクダイの仲間は雌雄のペアがいれば、産卵させることも可能です。この仲間は残念ながら外見で雌雄を判別することはほぼ不可能ですので、数匹の個体を飼育しておき、自然にペアが出来るのを待つとよいでしょう。

しかし産まれた仔魚を育てるのはなかなか難しいことです。シオミズツボワムシなどの生きた動物プランクトン餌料を与える必要があるからです。このようなワムシをいかに入手し、テンジクダイの仲間に与えられるかで、その後が決まります。

テンジクダイ飼育まとめ

  • 350種が知られるが観賞魚として販売されるものは少ない
  • 綺麗な色彩や半透明な体をもつ種もいる
  • 水の汚れに弱いため清浄な水質を維持する
  • 購入時、鰭が溶けていたり体側に白点がついている、赤くにじんでいるものなどは避ける
  • 購入時、泳ぎがおかしいものや入荷したばかりの個体も避ける
  • 粒状の配合飼料をよく食べる
  • 温和な種類が多いが、シボリなどかなり大きめの魚を食うものも
  • スズメダイやメギスなどとの混泳は要注意
  • サンゴなどの無脊椎水槽での飼育も楽しめる
  • 繁殖も楽しめるかも?
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