2019.07.19 (公開 2017.08.28) 海水魚図鑑
テンジクダイ科の分類
▲馬渕ほか(2015)を基にしたテンジクダイ科の分類図(クリックで拡大)
テンジクダイの仲間は世界で350種、日本にもおよそ100種類ほどが知られています。世界の350種のテンジクダイ科は4つの亜科に分類されますが、2種のみからなるオニイシモチ亜科、1種のみのパクストン亜科(仮)、7種が知られるヌメリテンジクダイ亜科をのぞき、すべての種がコミナトテンジクダイ亜科に含まれます。
輸入されるテンジクダイの仲間はほぼすべての魚がコミナトテンジクダイ亜科の魚です。このほかヌメリテンジクダイの仲間も輸入されてきますがごくまれなものです。しかしながら日本の観賞魚店で販売されるのは350種のうち50種程度で、一般的な海水魚店でよく見られる種、となるとマンジュウイシモチやイトヒキテンジクダイなど10種くらいのものでしょう。
生息場所はほとんどの種類が海域ですが、マングローブ域などにもみられ、東南アジアやオセアニアに生息するGlossamia属は淡水に生息しています。
なおここではテンジクダイの分類に関する解説です。具体的な飼育方法については以下の記事を御覧ください。
マンジュウイシモチ属 Sphaeramia
▲マンジュウイシモチは飼いやすく多くの海水魚店で見られる。
「アポゴン」の名前で販売されることもありますが、Apogon (コミナトテンジクダイ) 属とは別の属になります。サンゴ礁域に生息するマンジュウイシモチと、マングローブ域にすむホソスジマンジュウイシモチの2種が知られ、いずれも観賞魚として販売されています。比較的温和な性格をしていますが、口に入るような魚は食べてしまう恐れがありますので、注意します。
プテラポゴン属 Pterapogon
▲バンガイカーディナルフィッシュ
種小名から「カウデルニィ」とも呼ばれる、バンガイカーディナルフィッシュのみを含みます。インドネシアの限られた海域にのみ生息し、雄の成魚は卵だけでなく、大きくなった稚魚も口腔内に含み保護するという海水魚としては極めて珍しい習性をもちます。絶滅が心配されていますが、アクアリストによる繁殖の成功例も聞かれます。英名は生息地であるインドネシアのバンガイ諸島にちなみます。
カクレテンジクダイ属 Apogonichthyoides
熱帯性のカクレテンジクダイやモンツキイシモチ、日本の太平洋岸でもよくみられる温帯性のヨコスジイシモチやクロイシモチなどの種類が知られています。体は茶褐色で地味ですが、丸みのある体が特徴的です。モンツキイシモチはたまに観賞魚として輸入されることがありますが他の種はまず入荷することはありません。しかし温帯にすむ種は釣りで入手することもできます。
ナミダテンジクダイ属 Nectamia
▲ホソスジナミダテンジクダイ
カクレテンジクダイ属の魚同様に丸みを帯びた体と大きな眼が特徴の、熱帯性の魚です。観賞魚として販売されることは殆どなく、沖縄などで自分で採集する以外の方法では入手困難な種類といえます。温和な種で飼育は容易です。
コミナトテンジクダイ属 Apogon
▲赤い体が美しいヤミテンジクダイ
ヤリイシモチ、ヤミテンジクダイ、リュウキュウイシモチなど比較的小型の種から、ハナイシモチなど10cmを超えるような大型種まで50種あまりが知られています。観賞魚としてはあまり一般的なものではなく、ごくまれにしか輸入されません。赤みを帯びた体で、小ぶりの可愛い種類が多く、人気が出そうな種が多いです。小型種は透明感のある色彩で、温和なものが多いですが、デリケートな種類が多いです。
ヤライイシモチ属 Cheilodipterus
▲涼しげな色彩のスダレヤライイシモチ幼魚
口には鋭い歯が並ぶ肉食性の強いグループです。性格はかなり強く、小魚を鋭い歯で捕食したりすることもありますが、スレ傷に弱いなど、意外にもデリケートなところもあります。また、この属はテンジクダイの仲間のなかでも大きく育つため、小型水槽では飼育しにくいものです。
この仲間には牙に毒があるイソギンポ科のヒゲニジギンポの仲間に擬態する種も知られていますが、そのような種の入荷に期待したいものです。
スジイシモチ属 Ostorhinchus
▲黄色が鮮やかなキンセンイシモチ
▲青い眼が綺麗なヒラテンジクダイ
テンジクダイ科でも最大のグループで、インド-中央太平洋域からおよそ90種類が知られており、観賞魚として販売されているテンジクダイの仲間ではもっとも多くの種類を含みます。多くの種類が体側に縦縞模様があり、なかにはネオンテンジクダイなど体が透き通っている魚もいます。大きさや種類によっては若干の差がありますが、比較的おとなしい種が多いです。きれいな水で飼育するとよいでしょう。酸欠にも比較的弱いです。
イトヒキテンジクダイ属 Zoramia
▲涼しげな色のイトヒキテンジクダイ
体が半透明なで眼が青いイトヒキテンジクダイを中心に何種かが知られていますが、日本に輸入されているのはほとんどがイトヒキテンジクダイです。イトヒキテンジクダイはフィリピンからも入りますが、沖縄から来るものは状態がよいものが多く、おすすめです。
一方ウスモモテンジクダイは沖縄からごくまれに入ってくる程度です。お店によっては別属の魚であるサンギルイシモチやアマミイシモチを「ウスモモテンジクダイ」として販売しているので、注意が必要です。
スカシテンジクダイ属 Rhabdamia
体が半透明のテンジクダイの仲間です。見た目がよく似ているクロスジスカシテンジクダイなどと混同して販売されていることがあります。温和で網によるスレに弱く、飼育には注意が必要です。同種間で争うこともなく、できれば群れで飼育したい魚です。
シボリ属 Fowleria
▲シボリは口に入る魚なら意外な大きさのものまで食べるので注意。
約8種類が知られるテンジクダイの仲間です。見た目はテンジクダイというよりは、アカメや淡水魚のオヤニラミなどにも似ています。これらの種は保護色を有しており、本種も褐色の斑紋でカモフラージュして、近寄ってきた魚などを捕食してしまいます。水槽でも小魚を食べてしまいますので要注意です。飼育自体は容易です。