2020.01.30 (公開 2017.11.26) 海水魚図鑑
オトヒメエビの飼育方法~ペア以外の同種同士混泳は危険
オトヒメエビは、スカンクシュリンプやホワイトソックスと同様「クリーナーシュリンプ」としてよく知られているエビの仲間です。しかしながらスカンクシュリンプなどとはまた別の仲間で、性格が強く小魚を食べてしまうことがあるなど、混泳において注意が必要なエビです。しかし赤色と白色の体がとても美しくてきれいです。
標準和名 | オトヒメエビ |
学名 | Stenopus hispidus (Olivier, 1811) |
英名 | Banded coral shrimpなど |
分類 | 節足動物門・十脚目・抱卵亜目・オトヒメエビ下目・オトヒメエビ科・オトヒメエビ属 |
全長 | 15cm(ひげを含む) |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | クリーナーだが小魚も食べる。逆にハタなどに捕食されることもたまにあり |
サンゴとの飼育 | 概ね可だがサンゴの状態に注意。しっかり岩に固定することも重要 |
オトヒメエビってどんなエビ?
▲オトヒメエビ
オトヒメエビは十脚目・抱卵亜目に属するエビの仲間ですが、マリンアクアリウムで人気のスカンクシュリンプやホワイトソックスなどの含まれるコエビ下目とは別の下目であるオトヒメエビ下目に属するエビの仲間です。オトヒメエビ下目のエビはオトヒメエビ科と、ドウケツエビ科などに分けられていますが、コエビ下目と比べて種類は少なく、基本的に観賞用として流通するのはほとんどがオトヒメエビ科の種類です。
▲スカンクシュリンプ(写真)などとはまた別のグループ
オトヒメエビはスカンクシュリンプと違って、大きなハサミと体の大きさの割には細い脚が特徴的です。ハサミには赤と白の帯があり極めて美しい種類といえます。オトヒメエビ属のエビは種類が少ないとはいえ10種類以上知られており、このほかに頭部や脚が青いアオムネオトヒメエビや、体の一部が黄色くなるキイロオトヒメエビといった種類も輸入されます。
他の魚の皮膚についた寄生虫などを食べる、いわゆる「クリーナー」の一種です。しかしながら動物食性も強く、小魚を食べてしまうことさえあります。
オトヒメエビに適した飼育環境
水槽
▲35cmのオーバーフロー水槽での飼育。オトヒメエビにはちょっと狭い
オトヒメエビは60cm水槽で十分飼育可能です。ただし、ハタやウツボなどのクリーナーをさせたいのであればそれらの魚を飼育するための大型水槽が必要です。小型個体であれば45cm位の水槽でも飼育可能ですが、水槽内でも成長することを考えるとやはり60cmくらいの水槽が必要になります。
水質とろ過システム
オトヒメエビは比較的水質悪化には耐えられますが、できるだけ綺麗な水で飼育したいものです。海水魚を飼うのに使う上部式のろ過槽はろ過能力が高く酸欠にもなりにくくおすすめです。もうひとつおすすめなのは、オーバーフロー水槽にしてサンプ(水溜め)でろ過を行う方法で、他のどのようなろ過槽よりもろ過能力が高いです。
外部ろ過槽は密閉式の製品で酸欠に注意が必要で、パワーフィルターともいわれるわりにはろ過能力がいまいちという問題があります。使用する場合はワンランク上のものを使用したり、酸欠の解消のためにプロテインスキマーなどと併用して使用するとよいでしょう。
サンゴにはあまり害がないのでベルリンシステムでの飼育も可能ですが、そうなると大きな魚は入れにくくなります。また、オトヒメエビを入れてしまうと小魚は入れられなくなるので注意が必要です。
水温
販売されているオトヒメエビは基本的に沖縄や東南アジアなどの暖かい海で採集された個体で、25℃前後で飼育することができます。大型のハナダイなど深場系の魚をクリーニングさせるのであれば、その魚に合わせた水温に合わせますが、20℃を切る水温を好む魚との飼育はあまりおすすめしません。
もちろん水温がすぐに上昇したり下降したりするようではよくありません。一年中安定した水温で飼育するのが重要です。
ライブロック
オトヒメエビは昼間は岩陰に隠れ、夜間に外に出てくることが多い種類です。昼間の隠れ家用にライブロックを複雑に組みあわせます。洞窟のようなレイアウトにすれば雰囲気が出てくるでしょう。
オトヒメエビに必要な餌と添加剤
▲エビにはヨウ素の添加が重要
オトヒメエビの餌は基本的に配合飼料で問題ありません。スカンクシュリンプなどの他のエビ同様、フレークフードよりは沈降するタイプの粒状餌を与えるとよいでしょう。また水でふやかしたクリルなどを与えるのもよいですが、クリルの単食は避けるようにします。食いつきが悪いようでしたら、イカの足をちぎったものなどもあげればよいでしょう。
エビの仲間は病気にはかかりにくいのですが、脱皮不全で死んでしまうこともあります。このようなときはヨウ素などの不足が疑われており、ヨウ素や微量元素、ビタミンなどは添加しておきたいものです。
脱皮不全についてはこちらもご覧ください。
オトヒメエビにもおすすめの沈降性配合飼料
クリル(乾燥させたオキアミ)
ヨウ素添加剤
微量元素添加剤
オトヒメエビをお迎えする
オトヒメエビはインド-太平洋と西大西洋の暖海域に生息しているとされる種で、日本でも南日本の太平洋岸で採集できることもありますが、観賞魚店で入手するのがもっとも簡単で確実な方法です。
基本的には丈夫で飼育しやすいのですが、ハサミや脚がほとんどなくなっているような個体は回復させるのに時間がかかるので避けた方がよいでしょう。できるだけハサミと脚がそろっているものを選ぶようにしたいものです。
またエビをストックしている水槽の水の色が妙に黄色っぽいのもやめたほうがよいかもしれません。ペアで飼育をしたいというときは、販売店の水槽でペアとして長く飼育されている個体を選ぶのがよいでしょう。
オトヒメエビの混泳
オトヒメエビと魚との混泳
▲自慢のハサミで小魚を捕食してしまうこともあるので要注意
オトヒメエビと魚との混泳は不可能ではありませんが、大きなハサミでほかの魚を攻撃したり捕食したりすることがよくあります。とくにハゼの仲間などの動きが遅い魚や、イトヒキベラやセナスジベラなど夜間じっとしている魚は注意が必要です。他の魚との同居でも、鰭が切れていないか、けがをしていないか、などよく観察しなければいけません。かなり大きなヤッコなどでなければ混泳は難しそうです。
オトヒメエビは大型のウツボやハタのいる水槽などで飼育されていることも多いです。しかし、それらの魚にもたまに捕食されることもありますので、要注意です。
オトヒメエビとサンゴ・無脊椎動物との混泳
▲ペア以外の同種同士は激しく争うので要注意
オトヒメエビは気が強い性格をしていますが、サンゴを捕食することはほとんどありませんので、サンゴ水槽で飼育することは可能です。ただし、大型個体は大きなハサミでサンゴを動かすこともありますので、サンゴ専用の接着剤できちんと固定しておかなければなりません。またオトヒメエビの大きいのを入れるのであれば、サンゴ水槽の主役になりうる小魚は入れられないことに注意します。
オトヒメエビは同種同士でも激しく争うため、ペア以外の同種を一緒の水槽で飼育することは無理です。他種でも小型のエビとの飼育は難しく、持て余してしまうアクアリストもいるようです。そのため、購入はよく考えてからにしたほうがよいでしょう。もちろん、持て余しても海に放してしまうのは禁物です。
オトヒメエビはウミケムシ対策になる?
オトヒメエビは水槽内でウミケムシを食べるともいわれており、実際に食べているようですが、オトヒメエビ自体の性格がきつすぎるので、小魚が入っている水槽でウミケムシ対策として飼育するのはおすすめできません。ウミケムシが発生して困るようなときは魚たちが寝静まった深夜に水槽に餌をまいてピンセットで取り除く方法が一番確実といえます。
オトヒメエビの飼育まとめ
- スカンクシュリンプなどはと異なるグループで大きなハサミをもつ
- 60cm水槽でも飼育可能
- 上部ろ過またはオーバーフロー水槽を推奨
- 水温は20~25℃
- ライブロックで隠れ家をつくる
- 餌は粒餌をよく食べる。脱皮不全を防ぐためヨウ素の添加も
- 動きが遅いハゼやイトヒキベラなどとの混泳は避ける
- サンゴは捕食しないが、大きなハサミでサンゴを動かすことも
- 小魚の水槽でウミケムシ駆除用に入れるのは避ける
- ペア以外の同種飼育は無理