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2020.09.26 (公開 2019.03.29) 海水魚図鑑

キリンミノの飼育方法~ミノカサゴとしては小型だが背鰭の棘に毒あり!

キリンミノはインド-太平洋のサンゴ礁に生息するミノカサゴの仲間です。ミノカサゴの仲間としては小型で60cm水槽でも終生飼育できる人気の種類です。しかしながら鰭棘に毒があることや、最初は生きた餌を与えなければならないなど、カクレクマノミなど一般的な海水魚よりも飼育はやや難しいといえます。

標準和名 キリンミノ
学名 Dendrochirus zebra (Cuvier、1829)
英名 Zebra turkeyfish
分類 条鰭綱・スズキ目・カサゴ亜目・フサカサゴ科・ミノカサゴ亜科・ヒメヤマノカミ属
全長 20cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 海産のエビやハゼ、クリルなど
温度 25℃前後
水槽 60cm~
混泳 ほかの魚を捕食するおそれあり。小魚とは組み合わせてはいけない
サンゴとの飼育 丈夫なソフトコーラルなどが適

キリンミノってどんな魚?

分類

▲キリンミノ

フサカサゴ科はいくつかの亜科に分けられていることが多かったのですが、最近はメバル亜科はメバル科に、ハチ亜科はハチ科に、というふうに従来亜科にされていたものが科に昇格したことがありますが、ミノカサゴ亜科は現在もフサカサゴ科のなかに含められることが多いです。

キリンミノはミノカサゴ亜科のなかのヒメヤマノカミ属の魚です。ヒメヤマノカミ属の魚は小型種が多いのですがその仲間では大きくなり、自然下では20cmを超えるくらいになります。なお、同じヒメヤマノカミの仲間にはシマヒメヤマノカミやヒメヤマノカミ、ヒレボシミノカサゴなどがいますが、観賞魚店ではこのキリンミノが多く見られます。

ヒメヤマノカミ属の魚は胸鰭上部の軟条が分岐していることで、胸鰭軟条が分岐しないミノカサゴ属と区別できます。キリンミノはほかのヒメヤマノカミ属とは模様のほかに吻端に3本の皮弁があること、背鰭軟条部に眼状斑がないことなどの特徴により区別できます。ミノカサゴ属は食用種も多いのですが、ヒメヤマノカミ属の魚はあまり食用になるものは多くありません。小型種が多いからでしょうか。

キリンミノの和名について

本種の標準和名を「キリンミノカサゴ」としていることがありますが、これは誤りです。日本魚類学会の標準和名検討委員会は標準和名の起点を「 日本産の魚類の標準和名は、原則として「日本産魚類検索: 全種の同定、第二版」(中坊徹次編、東海大学出版会、2000)を起点とする。」と定めており、その後2013年に販売された同書第三版でも和名はキリンミノとなっています。ここでもこの魚の名称については「キリンミノ」を採用します。和名はおそらく空想の動物である「麒麟」に由来するのでしょうが、英語名は「シチメンチョウ」にちなむようです。いずれも派手な本種にはよく似合う名前です。

取扱注意

キリンミノは背鰭、臀鰭、腹鰭に強い毒を有しており、刺されると強く痛みます。赤く記した鰭の棘条に毒があるため、刺されないように注意が必要です。一方背鰭、臀鰭、腹鰭の軟条部と、軟条のみからなる胸鰭や尾鰭には毒がありません。眼の上の皮弁には毒がありませんが頭部には多数の棘があり、種類によっては刺されると痛むような種類もいますので注意が必要です。刺された場合は熱いお湯につけておくと痛みが和らぐという報告があります。痛みがとれない場合は病院で手当てを受けるのが望ましいでしょう。

キリンミノに適した飼育環境

水槽

▲悪い例。サテライトでの飼育にはあまり向いていない

キリンミノはミノカサゴほど大きくならず、単独で飼育するのであれば60cm水槽で終生飼育することもできます。よくある隔離ケースではキリンミノをうまく飼育するのは難しいです。隔離ケースの中は水が動きにくく、コケが生えやすかったりすることもあります。水槽の縁にかけて使うタイプの隔離ケースである「サテライト」を使用しても水の循環量が少なく、キリンミノをうまく飼育することはできませんでした。

ろ過装置

▲キリンミノを小型水槽と外掛けろ過槽で飼育している例

ミノカサゴの仲間は動物食性ですので、生きたエビやハゼ、魚肉などを与えることになります。これらの餌を与えると水を汚すおそれがあるため、ろ過槽も強めのものが必要になります。オーバーフロー水槽か、上部ろ過槽と外部ろ過槽を併用するのが安心でしょう。幼魚は写真のような小型水槽と外掛けろ過槽で飼育することもできますが、餌の与えすぎによる水質悪化に注意します。

水温

基本的に熱帯性ですので25℃前後の水温で飼育するのが望ましいです。もっと低めの22℃前後での飼育も可能ですが、水温が安定していることが重要です。

飾りサンゴ

キリンミノは海の中では大きな岩の下などに隠れていることが多いです。水槽でもライブロックや飾りサンゴなどを組み合わせてアーチを作り水槽内でも生息環境を再現してあげるとよいでしょう。

キリンミノに適した餌

餌は最初のうちは生き餌しか食べません。生き餌をずっと与え続けてもよいのですが、生き餌はいつも手に入るというわけではありませんので、空腹のうちにクリルや小さなイワシなどに餌付かせるのがベストといえます。

キリンミノが死んだ餌には反応しない場合はピアノ線に餌を結わえたり、ピンセットに餌をつまんでキリンミノの目の前で動かすなど、工夫が必要なことがあります。クリルは栄養的にはやや難という意見もあり、できるだけイワシの切り身など、複数の種の餌を食べさせるようにしたいものです。我が家では何度かキリンミノを飼育しましたが、配合飼料をたべるようになる個体はいませんでした。ただ慣らせば配合飼料を食うようになる個体もいるということですので、そうなれば飼育はさらに楽になるでしょう。また、淡水のヌマエビやヌカエビなども食べますが、海水魚に淡水性のエビやメダカなどの魚は与えない方がよいです。とくにキンギョなどは厳禁です。

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生き餌のストック

キリンミノを飼育するのに、とくに飼育初期は生き餌をストックするための水槽が必須です。たとえクリルなどに餌付いても何かの拍子に食べなくなることもあるので、生き餌はストックしておいたほうがよいでしょう。

生き餌については、こちらの記事もご覧ください。

キリンミノをお迎えする

たまに幼魚が販売されていることがあります。キリンミノの幼魚はかわいいのですが、小さすぎると餌の確保がしにくいのでおすすめしにくいです。逆に大きすぎるものはエビなど動いているものしか食べないこともあるので注意が必要です。

日本においては南日本や琉球列島に分布し、年によっては千葉県館山などでも獲れることがあり、自分で採集することもできます。採集する場合はスレ傷に注意が必要です。網で海水から上げてしまうと傷がつき弱ってしまうこともあるので、網で水から掬い上げずにカップなどの容器で水ごと掬うとよいでしょう。

キリンミノの混泳

ほかの魚との混泳

▲キリンミノ2匹とサツマカサゴとの混泳例

ほかの魚との混泳は不可能ではないのですが、スズメダイなどとの混泳はやめた方が賢明でしょう。スズメダイのほうが小さければキリンミノに捕食されてしまいますし、逆にスズメダイの方が大きければぼろぼろにされてしまうおそれもあるからです。もちろん小型のハゼやギンポの類なども食べられやすいので注意します。またチョウチョウウオの仲間は鰭をつつくこともあるようです。

ミノカサゴ類やその他のカサゴ類(同じくらいのサイズのサツマカサゴなど)と組み合わせることはできます。同種同士の組み合わせもできますが、カサゴの仲間は水を汚すので大きめの水槽での飼育や強力なろ過槽の追加が前提となります。我が家ではキリンミノを2匹とサツマカサゴを飼育していましたが、ろ過槽は上部ろ過槽と外部ろ過槽を組み合わせていました。外部ろ過槽は単体では酸欠になりやすいというデメリットがありますが、上部ろ過槽と組み合わせるならばサブろ過槽としてその威力を発揮してくれるでしょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ゆったりした泳ぎの種ですので、捕食性がつよいイソギンチャクなどとの飼育はいけません。食べられてしまうおそれがあります。サンゴ水槽で飼育するならばディスクコーラルやスターポリプ、マメスナなど丈夫なサンゴと組み合わせるのがベストでしょう。ミドリイシなどは水質の悪化に弱いため、生きたエビなどを好んで食べ水質を悪くしやすいミノカサゴの仲間との飼育にはあまり適していないといえます。また、このキリンミノを入れてしまうとほかの小魚を入れることはできなくなってしまいます。

甲殻類のうちエビなどはミノカサゴが捕食するのでやめたほうがよいでしょう。カニやヤドカリはまだ食べられにくいのですが食べないという保証はありません。イセエビや大型のカニ・ヤドカリは魚を襲って食べてしまうこともありますので避けましょう。

キリンミノ飼育まとめ

  • ミノカサゴの仲間では小型の種
  • 背鰭・臀鰭・腹鰭の棘に毒がある
  • 60cm水槽でも飼育することができる
  • ろ過槽はしっかりしたものが必要
  • 水温は25℃前後で安定していることが大事
  • サンゴ岩や飾りサンゴなどで隠れ家をつくる
  • 最初のうちは生き餌しか食べない
  • クリルや魚の切り身などに慣らしたい
  • ピアノ線などに餌を結わえ眼の前で動かしたら食べることも
  • 淡水のエビや淡水魚は与えない方がよい
  • 小さすぎず大きすぎないものがよい
  • スズメダイやハゼなど小魚との混泳は避ける
  • エビなども捕食するが逆に大きな甲殻類に襲われることも
  • サンゴは水質変化に強い種がよい
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