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2020.12.09 (公開 2018.10.22) 餌・添加剤

生き餌のストック方法と与え方~カサゴ・オコゼ・カエルアンコウなどに最適な餌を紹介

ツマジロオコゼ

カサゴ・オコゼの仲間、あるいはカエルアンコウといった魚は、ユニークな姿形から人気が高い海水魚です。しかし、これらの魚を飼育する際に注意しなければならないことがあります。それは生き餌をキープしておく必要があるということです。

これらの魚の多くは、最初から配合飼料やクリルを食べてくれるわけではありません。ですが、魚は餌を食べなければ死んでしまいますので、最初のうちはこれらの魚が海で食べていたような生き餌を与える必要があります。今回は生き餌の種類や、生き餌をキープしておく方法についてご紹介します。

生き餌とは

ミノカサゴ

▲ミノカサゴの仲間はまず生き餌から与える

生き餌とは、その名の通り生きた餌です。魚の切り身など、生(なま)の餌と区別するため「活き餌」と表記されることもあります。動くものにしか反応しない魚食魚、たとえばミノカサゴオコゼの仲間、カエルアンコウなどに最適の餌といえます。

ミノカサゴやフサカサゴ、ハオコゼの仲間などは慣らせばクリルなどの餌も捕食するようになります。ただし頑なにクリルを拒むような個体もおり、そのような個体には生き餌を与えるしかありません。ほかにもヤッコやニザダイなどのような藻類を食する魚にも生きた海藻などを与えることがありますが、ここでは主に生きた甲殻類や小魚を捕食する魚の餌についてご紹介します。

なお、カサゴの仲間の基本的な飼育方法は以下をご覧ください。

生き餌の種類

エビ

テナガエビ科のスジエビモドキ

▲テナガエビ科のスジエビモドキ

エビは多くの魚に好まれる餌です。しかしハタやフグ、ベラ、テンジクダイなどエビを好む多くの魚は配合飼料にも餌付くため、生きたエビを与える必要があるのはミノカサゴ、オコゼ、大型のタツノオトシゴなど動くものしか食べない、もしくは飼育のスタート時に生き餌しか食べない魚くらいです。ハゼが大きすぎて食べられないミノカサゴ類の幼魚やツマジロオコゼなどにも適しています。

生き餌として販売されているのは主にイソスジエビやスネナガエビ、スジエビモドキなど小型のテナガエビ科のエビで、いずれも海、もしくは汽水域に生息するエビの仲間です。淡水域に生息するスジエビやヌマエビなどのエビは栄養価の違いから、海水魚の餌としてはあまり適していません。

大手観賞魚店でも大量にストックされているところがあり、近くに扱っているお店がなくても通販で購入できるため入手は容易、また種類によってはタイドプールでも採集できるため海が近くにあるなら磯採集のついでに獲ってくる、なんてことも可能です。ただしイソスジエビの大きいものは性格がきつめで小魚を捕食したり、殺してしまうおそれがあるので注意が必要です。持ち帰るときは魚と一緒に運ぶことはせず、別の容器に入れて運搬するとよいでしょう。

カニ

オウギガニの仲間

▲オウギガニの仲間は毒化するおそれもあるので与えない方がよい

生き物によってはエビよりもカニなどを好んで食べるものがいます。タイの仲間などは「海老で鯛を釣る」ということわざの通り、エビを好んで食べるように思いますが、クロダイやキチヌなどの種類はエビだけでなくカニなども好んで捕食します。また初心者向きの生き物ではありませんが、タコなどもカニを好んで捕食します。

しかしエビと異なり扱っている店が少ないため入手しにくいのが難点と言えます。磯遊びでは簡単に採集できます。

また、オウギガニの仲間はテトロドトキシンや、サキシトキシンなど猛毒をもつおそれがある種類もいるのでやめたほうがよいでしょう。ガザミやイシガニなど、ワタリガニの仲間は気が強くなり、魚などを捕食してしまうおそれもありますのでこれも注意が必要です。魚やタコなどの餌にするのにはイソガニやイワガニなどの仲間が適しています。

ハゼなどの魚類

ハゼ科のアゴハゼは沖縄をのぞきほぼ日本各地に生息

▲ハゼ科のアゴハゼは沖縄をのぞきほぼ日本各地に生息

主に魚を捕食する魚に適した餌です。ミノカサゴ、ボロカサゴ、オコゼ類、カエルアンコウ、ハタ、イカなどの餌に最適といえます。ただしハタなどはクリルや魚の切り身、配合飼料もよく食べるようになります。

餌として多用されるのは本州から九州にかけて広く分布するアゴハゼかドロメなどのハゼが多いです。これらの種類は浅いタイドプールなどに多く生息するため、水温や水質の変化に強く丈夫なのでストックも容易といえます。観賞魚店で扱われるほか、潮溜まりに行けば容易に採集できるため入手性もよいといえます。ただし奄美や沖縄にはいませんので、同じような場所に生息するクモハゼなど別の小型ハゼを与えます。

生き餌としては、ボラなどの幼魚も優れているのですが、シーズンを逃すと入手が難しくなります。スズメダイの仲間を餌としているアクアリストもいますが、スズメダイの仲間は鰭棘が鋭く骨も硬いため、餌としては優れていません。キンギョやドジョウ、モロコ、メダカなどの淡水魚は栄養的な問題などから海水魚の餌としては適していませんので、与えない方がよいでしょう。

そのほかの生物

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▲アルテミアの卵は最も入手性に優れた生き餌

そのほかにもさまざまな生き餌が販売されています。ゴカイ類は安定してキープするのは難しいのですが底生のヒメジの仲間やネズッポの仲間などが好んで食べます。活イサザアミはエビよりも小さな甲殻類で、タツノオトシゴやヨウジウオなど、口が細くエビなどをなかなか食べることができない魚に適しているといえます。

キョーリンの「クリーン ホワイトシュリンプ」は、このイサザアミの栄養強化を行い冷凍したものですが、生き餌ではないためタツノオトシゴなどの反応は生き餌ほどよくはありません。ただし冷凍され殺菌されているので清潔であるというメリットはあります。

このほか、アルテミア(ブラインシュリンプ)という甲殻類の耐久卵をふ化させて幼魚や小魚の餌にすることもあります。観賞魚店はもちろん、ホームセンターでも卵を購入できるため入手がとてもしやすいといえます。また、大昔「シーモンキー」などの名前で玩具店などで販売されていたこともあり、ほかの餌よりもずっと購入しやすいでしょう。

ただしアルテミアは栄養的には欠陥があるという指摘もあり、植物プランクトンなどの餌を与えて栄養を強化してから与えるのがよいでしょう。小魚にはよい餌になりますが、クマノミの稚魚などを育てるときには最初のうちは袋形動物の一種であるワムシを生きたまま与えるのが一般的です。また育てるのが面倒くさいと思う人がいるかもしれません。

魚が成長し、アルテミアが必要なくなった場合でも、近所の河川や海に放つようなことは絶対にやめましょうこれはこのほかの生き餌についても同じことがいえます。

フリソデエビの仲間はかわいいので観賞魚店でも見ることができますが餌に難があり簡単に手をだしてはいけません。コブヒトデなどのヒトデを食する変わった食性をもっています。同じく餌に難ありなのがウミウシの仲間で、種類ごとに餌が異なるので注意が必要です。なかにはサンゴを捕食してしまう種類もおり、そのようなウミウシは餌となるサンゴに付着していることも多いので、サンゴ購入時には薬浴が必要と言えます。

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エビのストック方法

今回は生き餌の中で最も一般的な餌である生きたエビをストックする方法を中心に紹介します。写真はスネナガエビと思われるエビです。

容器とフタ

まずエビをストックする容器が必要です。予備の水槽やバケツなど、最低でも10リットル以上入るものが適しています。エビは飛び跳ねて外に出てしまい、死んでしまうこともあるので、フタができることも大事です。私がおすすめする投げ込み式ろ過器だと滴が水槽の外に飛び跳ねてしまうこともあるので要注意です。

ネット

エビが掴まるためにネットも用意します。バケツの中に入れておけば、エビの隠れ家となります。我が家では普段「チャーム」で購入した餌用エビを利用していますが、生き餌に限らず生きたモエビ類やテナガエビ類を購入すると、多くのお店でこのような掴まるためのものを袋に入れてくれるはずです。他にもスポンジや海藻などを入れてくれるお店がありますが、何も入れないのはいけません。運搬中に弱って死んでしまうおそれがあります。このネットにエビが掴まっていることが多く、このネットごとバケツから出せば容易にエビを魚に与えることができます。

投げ込み式ろ過器

エビに酸素を供給したり、ストック水槽のろ過を行います。エアレーションだけでは水がろ過されませんので、投げ込み式ろ過器を使い水をきれいな状態でストックするようにしましょう。水作「エイト」などが適しています。

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きれいな海水

なるべく綺麗な海水でエビをストックしたいものです。投げ込み式ろ過器を使う場合は水が汚れやすいので、1週間に1回は水替えしてあげます。餌とはいえ、生きているものですから尊厳をもって接してあげたいものです。

ストックしているエビも生きているため、餌を与えなければなりません。餌がなければ死んでしまったり、共食いをしたりすることもよくあります。餌は魚用の配合飼料でもかまいません。もちろんエビにとって大きすぎたり、小さすぎたりするようではよくありません。メガバイトレッドのSサイズなどが適しているでしょう。

水温調整

チャームで販売されているエビの多くがスネナガエビなどの暖かい海域をこのむ種類ですので、冬にはヒーターを使用して水を温めてあげる必要があります。逆に温帯にすむモエビ類などを与えるときは夏季に冷却を行うためのクーラーが必要になります。イソスジエビなどは比較的高水温に耐えられますが直射日光が当たり水温が大きく上昇するようではよくありません。

生き餌を実際に給餌する

ミノカサゴに生き餌を与えている様子

実際に給餌する方法は、網でエビを掬う、もしくはネットに掴まったエビをつまんで与えます。

網で掬ったあと、エビのひげをつまんで、肉食魚の前に放してやると、肉食魚が餌のエビに近寄り素早くパクッ!と呑み込みます。餌やりは肉食魚に限らず、どんな魚においても飼育の醍醐味といえますが、楽しいからといって、餌を与えすぎると消化不良になることもありますので頻繁に給餌するのは避けるようにします。

生き餌まとめ

  • カサゴやオコゼ、アンコウなど生きたものしか食べない魚には必須の餌
  • エビはカサゴやオコゼ、大型のタツノオトシゴなどに最適
  • カニはタイの仲間やタコなどに最適。毒をもつものもいるので注意
  • ハゼはカサゴやオコゼ、カエルアンコウなどに最適
  • スズメダイの仲間は骨が硬くあまり適さない
  • 淡水魚のキンギョやモロコなども不適
  • 小型のタツノオトシゴやヨウジウオにはイサザアミなどを与える
  • アルテミア(ブラインシュリンプ)はもっとも手軽な生き餌のひとつ
  • ウミウシやフリソデエビなど専用の餌を必要とする生き物もいる
  • エビを与えるときには別水槽でストックしておく必要がある
  • 綺麗な水とろ過装置を用いてストックしたい
  • 水温にも注意が必要
  • 餌を与えすぎると消化不良をおこすこともあるので注意
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