「種」がつく魚類の分類単位

魚類を分類するのに「種」は基本的な分類単位です。たとえば「ナンヨウハギ」「キンギョハナダイ」「カクレクマノミ」というのはみな「種」の分類単位であり、同時に種の標準和名となります。一方、「種」とついていても、「種」でないものに「亜種」「品種」「交雑種」があります。今回は「種」とは何か、そして「亜種」「品種」「交雑種」とはなにか、について解説します。

分類の順番

まず種について説明する前に、「種」の上の分類単位をご紹介します。大きい単位から界・門・綱・目・科・属・種という風に分けられます。これに必要に応じて亜門・上綱・亜綱・上目・亜目・上科・亜科・族・亜属をつけます。一般的な海水魚、たとえばカクレクマノミを例とすれば脊索動物門・脊椎動物亜門・条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・クマノミ亜科・クマノミ属・カクレクマノミ(種)となります。

一部の魚では種の下に、亜種を組み込むことがあります。亜種には標準和名や学名がつけられます。さらにはカクレクマノミなどのように改良品種がつくられることもありますが、このような品種には標準和名や学名は与えられません。

種(魚種)

「種」は分類学の基本単位となります。同じ種の魚は交配ができ、同じ種の魚は形態的にはほぼ同一ですが、幼魚と成魚、雌雄で大きく異なった特徴を示すものがいます。とくに稚魚と成魚はどの種も大きく異なるので注意が必要です。またカエルアンコウの仲間や、カサゴの仲間のように同じ種でも大きく模様や色彩が変わっているケースもあるので、この点も要注意です。

難しいことは考えなくていいです。たとえばカクレクマノミとほかのカクレクマノミは交配ができ、形態的にほぼ同一ですが、カクレクマノミとハマクマノミは交配できず、できても一代限りで、形態も若干異なるのです。

亜種

▲亜種が設定されることもあるニシキヤッコ

亜種はよく勘違いされている分類群の名称です。一般的には同種のなかの地理的変異の個体群に学名や標準和名が与えられたものです。学名は一般的に属名+種小名というコンビネーションですが、亜種を設定する場合の学名は属名+種小名+亜種名となります。亜種を新しく設ける場合、基本的には基亜種を設定する必要があります。基亜種の亜種名は種名と同様になります。また、亜種にも標準和名が与えられます。例えば淡水魚であるコガタスジシマドジョウの亜種にも、「サンインコガタスジシマドジョウ」とか、「トウカイコガタスジシマドジョウ」といった標準和名が与えられるのです。

「キンギョはフナの亜種」などといっている人もいますが、これは誤まりです。これはフナの亜種、ではなくフナの一種であるギベリオブナの改良品種とみなすべきでしょう。改良品種については後述します。また「ヤマメとサクラマスは亜種の関係」というのもまちがいです。ヤマメとサクラマスは同じ魚の陸封型と降海型で、例外的にそれぞれの型に標準和名が与えられています。なお、サクラマスとサツキマス、ヤマメとアマゴはそれぞれ亜種の関係になります。

亜種は地理的な変異を示す個体群であり、淡水魚には多く見られますが、海水魚の世界では亜種の存在が認められているケースは多くありません。ただしニシキヤッコなど一部の種には亜種が認められることがあります。この場合太平洋産のものがPygoplites diacanthus diacanthusとなり、インド洋産のもの(体の黄色みが強い)がPygoplites diacanthus flavescensとなります。

品種(改良品種)

▲リュウキン(琉金)。キンギョのいち品種で、独自の学名は与えられない

「品種」とは亜種以下の分類単位でありますが、動物の品種の場合、分類学的なものではなく、家畜など産業的なものを指すことになります。

キンギョやニシキゴイの品種は和金、琉金、和蘭獅子頭、コイは黄金、紅白などいろいろありますが、種としては「キンギョ」もしくは「ギベリオブナ」や「ニシキゴイ」(Oujiang river color carp)であり、学名も独自の学名は与えられず、「Carassius gibelio」「Cyprinus carpio」です(ニシキゴイの学名は暫定、変更される可能性が高い)。魚類ではありませんがイヌも柴犬、チワワからレトリーバーまでいろいろな品種がいますが、種としてはどれも「イヌ」か、もしくは「タイリクオオカミの亜種」です。ネコも同様に多くの品種がいますが種としては「リビアヤマネコ」になります。このように動物の品種には学名が与えられません。「動物の品種」とした理由としては、植物には亜種以下の分類階級、例として変種や品種にも学名が与えられるからです。

海水魚においてはカクレクマノミの改良品種である「ブラックオセラリス」「スノーフレーク」などといった改良品種が見られるようになりました。これらの魚もそれ独自の種としての学名は与えられず、種としてはカクレクマノミ、もしくはクラウンアネモネフィッシュ(ペルクラ)ということになります。最近この2魚種の交雑のものも出回っているようですが、そうなると次の「交雑個体」の扱いとなります。

また、あまり魚に詳しくないサイト(とくに飼育系のサイト)では、種のことを「品種」といっていることがありますので(イヌやネコのような品種と勘違いしている可能性も)、魚類飼育系のサイトの品質を測るモノサシになりえます。

交雑種(交雑個体)

品種に近いものに「交雑種」があります。ただしこれは正しい表記とはいえないので注意が必要です。正しくいうなら「交雑により生じた個体」もしくは「交雑個体」とでもいうべきでしょうか。基本的に種間交雑(イシダイ×イシガキダイの交雑など)や、属間交雑(淡水魚のコイ×フナや後述するベステル)などがあり、科間交雑というのは魚類ではほとんど聞かないです。

なぜ「交雑種」は正しい表記でないか、といいますと交雑個体は通常は1代限りであり、種として認められていないからです。ただし、一部の交雑個体では不妊でないものがおり、世界三大珍味と呼ばれるキャビアをとるために養殖されるチョウザメの仲間の属間交雑個体「ベステル」(ベルーガ×スターレット)は交雑個体であってもキャビアをとれます。

キンチャクダイ科キンチャクダイ属のアカネキンチャクダイという魚がいますが、これはキンチャクダイとキヘリキンチャクダイの交雑個体の可能性も指摘されており、そうであれば「種」ではなくなってしまいます。大西洋産のクイーンエンゼルとブルーエンゼルの交雑個体はタウンゼントエンゼルと呼ばれ、種として扱われ学名もついていましたが、これらの魚も交雑種とわかり種としては認められなくなっています。

イシダイとイシガキダイの交雑個体は近年、本州中部以南の太平洋岸でよく見られるようになりました。これらは「キンダイ」などと呼ばれていますが、これは交雑個体につけられた愛称のようなものであり、交雑種で一代限りと考えられているため、標準和名とはみなされません。

学名における種

魚に限らず動物の種を学名であらわすときは、属の学名+種の学名(種小名)で表記し、これを二名法といいます。これを基本に亜属を認める場合は属の学名と種小名の間にカッコをつけて表記します。海水魚ではヨウジウオ科のいくつかの属やアイゴ属、スジイシモチ属などで亜属を表記することがあります。亜種を認める場合は亜種名も表記し、属の学名+種小名+亜種の学名を表記します。こちらの記事もご覧くださいませ。

種と標準和名

▲ヒフキアイゴ

一般的に「種名」と標準和名はごちゃごちゃになっています。たとえば写真の魚種は標準和名「ヒフキアイゴ」なのですが、これはあくまで「種の標準和名」です。標準和名は種だけに与えられるものではなく、目や科、属といった分類単位にも与えられるのです。

魚の分類で目名/科名/属名/和名としているサイトもありますが、これは誤りといえます。このような分類をするなら、目名/科名/属名/種名としなければなりません。このような誤りは魚類系の大手サイトでもおかしている間違いなので、注意が必要です。

当サイトではさまざまな魚類や甲殻類の飼育方法を紹介していますが、飼育方法を紹介するページにおいて魚類の基礎情報に「標準和名」とありますが、これは魚種の紹介なので「種の標準和名」という意味にとらえていただければと思います。

「種」の名前まとめ

  • は分類の基本単位、同じ種の魚同士では交配が可能
  • 亜種はおもに地理的に分化された個体群。キンギョはフナの亜種、といわれることもあるが誤り
  • 品種は動物では分類学的なものではなく、産業的なもの。キンギョやニシキゴイなど。
  • 交雑種は交雑個体と表記するのが正しい。基本的に一代限りで学名や標準和名はない
  • 魚種を学名であらわすときは属名+種小名であらわす「二名法」
  • 亜種は属名+種小名+亜種名であらわす
  • 種名と標準和名は厳密には異なるので注意

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