ヤマブキベラの飼育方法~幼魚と成魚の違い、近縁種との見分け方など

ヤマブキベラ

ヤマブキベラはベラの仲間で、雌雄ともに美しい色彩をしています。とくに雄(上写真)はカラフルで、雌も綺麗な黄色い体をしています。しかしやや大きくなり、昼間は活発に水槽内を泳ぎ回るため、幼魚を除いて小型水槽では飼育しにくいといえます。夜間は砂に潜らず、岩陰などで休息します。

今回はヤマブキベラをうまく飼育するためのポイントをご紹介します。

標準和名 ヤマブキベラ
学名 Thalassoma lutescens (Lay and Bennett, 1839)
英名 Yellow-brown wrasseなど
分類 条鰭綱・スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・ニシキベラ属
全長 25cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 クリル
温度 25℃
水槽 90cm~
混泳 強すぎる魚は避ける
サンゴ飼育 シャコガイやケヤリムシなどは突くおそれあり

ヤマブキベラってどんな魚?

ヤマブキベラはベラ科・ニシキベラ属(後述)のベラの一種です。千葉県以南の太平洋岸にすみ、海外ではスリランカからハワイ諸島までのインド-太平洋域に見られます。

遊泳性が強く、サンゴ礁の海ではごく普通に見られる種類です。熱帯の島々では食用となりますが日本ではあまり食用とはされていません。しかし磯釣りの外道として釣れることはあります。

成長による色彩の違い

ヤマブキベラの成魚

▲ヤマブキベラの成魚

ベラの仲間は幼魚と成魚、または成魚の雌雄で色彩が異なるものが多く、このヤマブキベラも幼魚と成魚で色彩が大きく異なります。成魚の雄は非常に派手な色彩で、頭部の縞模様が明瞭で体は青みをおびます。雌は一様に黄色か黄緑色、幼魚は背中が茶色っぽく、眼から後方に伸びる黒い線が特徴的です。また腹部には褐色の線があります。

ヤマブキベラと近縁のベラ

オトメベラ

▲オトメベラ

ヤマブキベラによく似たものに、オトメベラというベラがいます。オトメベラとヤマブキベラは非常によく似た色彩ではありますが、胸鰭の色が異なります。ヤマブキベラの成魚は胸鰭が黄色っぽく、青~暗色斑があるのに対し、オトメベラは紺色の地色に赤紫色斑があります。またオトメベラは緑色が強いのも特徴といえます。

オトメベラの幼魚

▲オトメベラの幼魚

オトメベラの幼魚は背鰭と尾の付け根に黒色斑があり、腹部が青っぽくなります。また、背中に白くて細い横帯が出ることもヤマブキベラの幼魚とは違うところです。

日本では房総半島以南太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島に生息し、海外では南アフリカからライン諸島までのインド-中央太平洋に生息しますが、ヤマブキベラとは異なりハワイ諸島にはいません。一方ヤマブキベラはオトメベラと異なりアフリカ東岸には生息せず、Thalassoma genivittatumという種に、北米西岸ではT. grammaticum(英名Sunset wrasse)という種にそれぞれ置き換わるようです。

なお、オトメベラの飼育方法はヤマブキベラと同様で問題ありません。高知県ではヤマブキベラよりもこのオトメベラの方が多いようです。

クギベラ

クギベラの雌

▲クギベラの雌

クギベラは吻が非常に長いのが特徴のベラです。雌雄や幼魚と成魚で色が大きく異なり、雄は体が緑色、雌が灰色と黒ですが、幼魚は吻があまり長くなく、ヤマブキベラの幼魚の背中の部分を緑色にし、腹部の褐色の線を黒い目立つ線にしただけというような色彩や模様をしています。分布域は館山湾以南の太平洋岸、天草、琉球列島、伊豆-小笠原諸島で、海外ではスリランカ以東のインド洋からハワイ諸島までの広範囲に見られます。成魚は非常にすばやいので手網を使用した採集は難しいですが、釣りで釣れることがあります。

クギベラ属は2種が知られますが、属としてはニシキベラ属と近縁であります。吻が長いのを除けばニシキベラ属と大して違いはありません。クギベラと、ニシキベラ属の種の交雑個体が太平洋のいくつかの場所から知られています。おそらくクギベラ属はニシキベラ属のなかに入れられるべきでしょうが、そうなればニシキベラやクギベラが含まれる属の属名は先取権の原則からThalassomaではなくGomphosusになるでしょう。一方、学名と標準和名は連動しないため、属の和名はクギベラ属ではなくニシキベラ属となる可能性もあります。

ヤマブキベラ飼育に適した環境

水槽

▲よく泳ぐので60cm水槽では小さく感じられる

ヤマブキベラは過去この「海水魚ラボ」の中でも紹介してきたコガシラベラやニシキベラ同様ニシキベラ属のメンバーです。このニシキベラ属魚類の特徴としては遊泳性が強く、飼育にはそれなりの広さが必要になることがあげられます。ヤマブキベラの幼魚は60cm水槽でも飼育できますが、成長することを考えると小さくても90cm規格水槽以上のサイズが欲しいところです。

水質とろ過システム

「丈夫」なイメージがあるベラの仲間としてはやや水質の悪化には弱いようです。しっかりとしたろ過システムでなければうまく飼えません。60cm水槽で幼魚を飼育する場合は上部ろ過槽と外部ろ過槽の併用、それ以外では大容量のろ過槽をもつオーバーフロー水槽が適しているといえるでしょう。

水温

温帯域でも見られますが、サンゴ礁域に生息する魚ですので水温は25℃前後で飼育します。もちろんそれよりも低めの22℃くらいで飼育してもよいのですが、いずれの温度で飼育するにせよ水温が一定であることが絶対条件です。

フタ

ヤマブキベラはよく遊ぎ、成長するとサンゴ礁を飛び回る黄色い鳥のようです。遊泳中に何かに驚いたりすると水槽から飛び出してしまうおそれがあります。そうなるともう自分で水槽に戻ることができません。飛び出し事故を防ぐためには水槽を静かな場所に置く、照明を一気に消さないなどの方法もありますが、しっかりとフタをしておくのが確実といえます。

ライブロックとサンゴ岩

ヤマブキベラは砂の中に潜るベラではありませんので水槽の底に砂を敷いておく必要はないのですが、夜間は岩の陰や岩の隙間などで眠りますので、このような隠れ家を用意しておく必要があります。

ヤマブキベラに適した餌

▲クリルを栄養剤に浸している様子

ニシキベラ属の魚は甲殻類を食べていることが多いというイメージですが、実際には甲殻類だけではなくさまざまな餌を食べています。人工の配合飼料にも早くなれてくれるので餌付けはしやすいでしょう。ただし海で長い事くらしており甲殻類などを捕食していたものはなかなか配合飼料を食べてくれないこともあり、クリルなどから餌付けなければならない個体もいます。クリルは栄養が偏りやすく、ビタミン剤などをしみこませてから与えるなどの工夫が必要になることもあります。

ヤマブキベラを入手する

採集

高知県の磯で採集されたヤマブキベラ

▲高知県の磯で採集されたヤマブキベラ

幼魚は房総半島、伊豆半島以南の太平洋岸で採集できます。浅い磯に生息していますが動きは素早いので採集にはある程度の経験が必要となります。和歌山や高知、沖縄などでは大きめのものが浅い海を泳いでいることもあり、サヨリ針など小さな針をつけて釣り上げるのもよいでしょう。

写真の個体は高知県の磯で採集した幼魚です。千葉県では冬の寒さに耐えられないと思われますが、高知県大月町では産卵を行う様子がダイバーにより観察されており、死滅回遊とはいえないかもしれません。

購入する

ヤマブキベラは小型の個体は安価で購入できますが、成長するに従い高めになっていきます。とくに大型の雄個体はカラフルですが結構高価になってしまいます。購入するときの注意点は鰭に白い点がついていないか、体表に傷やただれがないかどうか、鰭が溶けてぼろぼろでないか、口に傷がないかなどをチェックしましょう。もちろん、入荷直後ではなく、入荷してしばらく日にちの経った個体がよいでしょう。

ヤマブキベラの混泳

他の魚との混泳

ヤマブキベラの幼魚とヤエヤマギンポの混泳例

▲ヤマブキベラの幼魚とヤエヤマギンポの混泳例

ヤマブキベラは大きな水槽では複数飼育も不可能ではないのですが、狭い水槽では同種・同属の間で追いかけまわすこともありますので注意が必要です。ハナダイの仲間、大小問わずヤッコの仲間、カクレクマノミ、ハゼ、カエルウオの類などとの混泳は可能です。ただし大きすぎるスズメダイやメギス、モチノウオ、タキベラなどとの混泳は避けた方が無難でしょう。またハタなど本種を捕食するおそれがある魚もやめましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ヤマブキベラの幼魚とアマクサオオトゲキクメイシ

▲ヤマブキベラの幼魚とアマクサオオトゲキクメイシ

サンゴには無害なのでサンゴ水槽での飼育も可能ですが、ウチウラタコアシサンゴやイソギンチャク類でも大型のもの(ハタゴイソギンチャクなど、クマノミと共生するタイプ)は魚食性が強いですので避けた方が無難でしょう。

一方甲殻類、とくにエビなどはヤマブキベラの餌になることがあるため入れない方がよいでしょう。ヤマブキベラが幼魚のうちはよいのですが大きくなると積極的に捕食するようになります。逆に大きなオトヒメエビやイセエビなどは夜間眠っているヤマブキベラを襲ってしまうことさえあります。貝類もシャコガイをこのんでつつきますし、ケヤリムシやカンザシなどを捕食してしまいます。ベラの仲間と無脊椎動物の飼育はタブーといってもよいでしょう。

ヤマブキベラと他の黄色いベラの違い

コガネキュウセン

コガネキュウセン

▲コガネキュウセン

通称イエローコリスと呼ばれています。値段は安価で、安いお店では1000円を切るような値段で販売されていることもあり、初心者にもおすすめのベラです。ヤマブキベラは雌雄では大きく色彩が異なりますが、コガネキュウセンは雌雄での色彩の違いは少ないです。つまり雌雄ともに綺麗な黄色なのです。

ヤマブキベラとコガネキュウセンの飼育方法で最大の違いは、夜間の睡眠場所の確保でしょう。ヤマブキベラは岩の影で眠りますが、コガネキュウセンは夜間砂の中にもぐって眠ります。そのためサンゴ水槽ではなくても砂を敷いて寝床を確保する必要があります。性格は若干きつめで甲殻類は大好物です。

ヤマブキベラと比較すると大きくならず(全長10cmほど)、遊泳性もヤマブキベラほどは強くはないため60cmほどの水槽でも終生飼育できます。初心者アクアリストがカクレクマノミなどと一緒に小型水槽で飼育するならコガネキュウセンの方が適しているといえます。

フタホシキツネベラ

フタホシキツネベラ

▲フタホシキツネベラ

フタホシキツネベラはタキベラ属のベラです。飼育自体は容易で初心者にもおすすめのベラといえるのですが、やや性格がきつめなため、混泳には注意が必要です。色彩は成魚、幼魚や雌雄で大きな違いはないのですが、若干赤みをおびたものもいます。値段はコガネキュウセンよりも高めで、ヤマブキベラよりも高いことが多いようです。

なおフタホシキツネベラもヤマブキベラと同様、夜間は岩影で眠ります。砂を敷いていない水槽でも飼育することができます。ヤマブキベラと違い小さくても黄色なので小型水槽で黄色いベラが欲しいというときによいのですが、本種を入れてしまえば甲殻類や温和な魚は入れにくいのでよく考えてから水槽に入れることをおすすめします。

ヤマブキベラ飼育まとめ

  • ニシキベラ属の種でサンゴ礁で見られる普通種
  • 夜間は砂に潜らず岩陰などで休息する
  • 雌雄および幼魚と成魚で色彩や模様が大きく変わる
  • 遊泳性が強いので水槽は大きいものが必要
  • ろ過はしっかりしたものを
  • 飛び出し防止のためフタは必須
  • 水温は25℃でよい。一定をキープ
  • 砂は不要だが飾り用のサンゴ岩が必要
  • 餌はよく食べるが大型個体は餌付けが難しいことも
  • 千葉県以南の磯で採集可能
  • 購入する場合は病気や傷、ただれなどないか確認する
  • 入荷後すぐのものは購入しない
  • 同サイズの魚なら混泳可能。スズメダイやメギスなど大きい魚は注意
  • 肉食性のハタなどとの飼育も不可
  • サンゴには無害だが捕食性の生物に注意
  • 甲殻類、シャコガイ、ケヤリムシなどは捕食することもある

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