2020.06.17 (公開 2020.06.16) 海水魚図鑑
アイゴの飼育方法~痩せと毒棘に注意!餌や飼育環境まとめ
アイゴは本州から九州、琉球列島まで広い範囲に分布し、釣り人にはお馴染みの魚ですが、その一方漁師さんにとっては海藻を食べてしまうということもあり、あまり有り難がられない魚といえます。このアイゴは夏ごろ海藻の生える場所で群れていることも多く、このような個体を採集して飼育することもできます。しかし鰭棘に毒があるため取り扱いには注意が必要です。今回はアイゴの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | アイゴ |
学名 | Siganus fuscescens(Houttuyn, 1782) |
英名 | Mottled spinefoot, Dusky rabbitfishなど |
分類 | スズキ目・ニザダイ亜目・アイゴ科・アイゴ属 |
全長 | 30cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | 海藻70など |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 90cm~ |
混泳 | おとなしい魚とであれば混泳も可能 |
サンゴ飼育 | ハードコーラルは種類や状態によってはつつくこともある |
アイゴって、どんな魚?
▲神奈川県三浦半島で釣ったアイゴ
アイゴはインド―西太平洋の温暖な海域に生息していますが、日本においては青森県以南に生息するなど、温帯域にも多く見られる魚です。琉球列島にも見られますが、琉球列島のものは体に白い斑点があり、従来はシモフリアイゴと呼ばれてきましたが、これは現在アイゴと同種とされています。関西地方や九州では「バリ」などと呼ばれ、非常に引き味が強く、釣り魚として人気があります。食用としても知られていますが、においがきついことなどもあり、関東ではあまり人気がなく西日本のほうで食べられることが多いです。また海藻を食べることも多く、漁業従事者にはあまりありがたがられない魚ともいえます。新種記載されたのは1782年で、オランダのHouttuynにより日本(長崎)で採れた個体をもとに記載されています。
アイゴの仲間
▲ヒフキアイゴ
▲ヒメアイゴ
アイゴ科の魚は世界で28種ほどが知られていますが、本州には少なく、奄美大島以南の琉球列島に多く生息しています。中にはカラフルな色彩のものも知られており、ヒフキアイゴやヒメアイゴ、マジリアイゴなどのように、海水魚専門店では必ず見られるような魚も多く含まれていますg、標準和名アイゴは海水魚店ではほとんど見られません。アイゴ科の魚はアイゴ属のみが知られていますが、Siganus亜属(アイゴ科のほとんどの種を含む)とLo亜属(吻がとがるヒフキアイゴのグループ、5種)の二つに分けられます。アイゴ科の魚類について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
アイゴの毒棘に注意!
▲赤く囲んだ場所に毒棘がある!
アイゴ科の魚はどの種も背鰭13棘10軟条、腹鰭1棘3軟条1棘、臀鰭7棘9軟条で、特に腹鰭の形状(前後に各1本の棘が1対ある)がほかの魚と大きく異なる特徴です。そしてアイゴの仲間の大きな特徴は背鰭などの鰭棘に毒があることです。この鰭棘に刺されると激しく痛みます。近くにいなければ問題はないのですが、水槽内に手を入れてコケをとるときなど近寄ってくることもあります。アイゴの仲間が水槽にいることに十分注意して作業をしなければなりません。万一刺されてしまった場合はやけどしない温度のお湯に患部をつけると痛みが和らぐことも多いのですが、痛みが引かない場合は医師の診察を受けるようにします。
アイゴに適した飼育環境
水槽
▲水族館で飼育されているアイゴ
アイゴは海中では全長30cmになる大型魚です。家庭水槽内ではそれほど大きくなることは少ないとは思いますが、それでも20cm近くには育ちますので最低でも90cm以上の大型水槽が欲しいところです。また混泳を考えるのであれば120cm以上の水槽が欲しいところです。
水質とろ過システム
アイゴの仲間はニザダイと比べたら若干水質の悪化には耐えられるものの、スズメダイやハゼなどと比べると水質悪化には弱いところがあります。ろ過装置については外掛けろ過槽や外部ろ過槽の単独使用は候補からはずれ、上部ろ過槽を使用するか、上部ろ過槽+外部ろ過槽を使用することになります。ですが、オーバーフロー水槽を用意できるのであればオーバーフロー水槽で飼育したほうがずっと安定して飼育できるようになるでしょう。
アイゴはサンゴの共肉をつつく可能性もありますが、チョウチョウウオやヤッコほどではないため、ベルリン水槽などサンゴ水槽での飼育も不可能ではありません。また生息環境を考えればLPSよりはSPSやソフトコーラルとの飼育が望ましいです。しかしこれらを全く食べない、という保証はありません。とくにベルリン水槽で魚を多く入れすぎるとサンゴの調子が悪化することもあるのですが、そうなると魚につつかれやすく負の連鎖に陥りやすいので注意しなければなりません。
水温と水流
温帯の個体でも高水温には比較的強く、25℃ほどで飼育できます。また本州から九州産のものは比較的低水温(20℃くらい)でもよいのですが、水温が頻繁に上下するのはよくありません。ヒーターとクーラーを使ってできるだけ一定の温度を保つようにしましょう。温度の変動が大きいと白点病などの病気が発生しやすいからです。また水流があまりなくよどんでいて汚いとウーディニウム病などにもかかるおそれがあります。病気予防には殺菌灯!と思ってしまいますが、実際にはきれいな水とほどよい水流、安定した水温がずっと大事なのです。
アイゴに適した餌
▲藻類食魚には海藻70が最適
アイゴの仲間は雑食性ですが、主に藻類を捕食しています。捕食する藻類はライブロックにうっすら生えたコケ(茶ゴケはあまり食べない)から大きな海藻まで食べます。幼魚のうちは配合飼料もよく食べますが、ある程度育ったものは配合飼料を最初から食べるとは限らないため注意が必要です。配合飼料はメガバイトレッドも食しますが、おすすめの餌は「海藻70」もしくは「メガバイト グリーン」で、これらは海藻やそのほかの藻類を食する魚のために、海藻が強化配合されています。最悪の場合は餌用として販売される「ウミブドウミックス」などの餌を与えなければならないこともあります。またアイゴやニザダイの仲間はやせやすいのでこまめな給餌が必要になります。
また釣りでアイゴを専門に狙うときは練り餌を使いますが、この練り餌は水を著しく汚してしまうおそれがあるので絶対に与えないでください。
アイゴをお迎えする
▲福岡県沿岸で採集したアイゴの幼魚
アイゴは夏ごろに磯で潜ると幼魚を見ることができます。とくに海藻が多い場所などではアイゴが海藻類をつついて食べる様子をみることができます。これを網で掬って飼育するのがよい方法です。ただしアイゴの仲間は成長が早く、あっという間に大きく育ちます。餌を控えると先述のように体がぺらっぺらになってやせて死んでしまいますので、餌をしっかり与えて大きくしましょう。もちろん飼育できなくなっても海に逃がすのはいけません。
販売されていることは少ないのですが、まれに海水魚店で販売されていることもあります。販売されている個体を購入するときは、鰭がぼろぼろになっていうもの、体表や鰭にただれがあるもの、体表や鰭に体側の白色斑よりもかなり細かい点がついているもの(白点病)などは避けます。また背肉がおち頭部が大きく見えるような個体は避けたほう無難です。
アイゴとほかの生物の関係
アイゴとほかの魚との関係
アイゴはニザダイの仲間よりは協調性がありますが、大きくなる魚ですので小型水槽に同種を多数詰め込まないほうがよいでしょう。ほかの魚との相性はおおむね問題はないですが、かなり大きくなるスズメダイやメギスなどとは組み合わせないほうが無難です。
アイゴとサンゴ・無脊椎動物などとの相性
アイゴは雑食性で藻類を中心に捕食しますが、サンゴが弱っているとサンゴを食べてしまうこともあります。そのためサンゴ水槽での飼育には注意が必要となります。サンゴを食べてしまうようであればアイゴ、もしくはサンゴを水槽から退避させるしかありません。甲殻類はスカンクシュリンプなどクリーナーシュリンプやサンゴヤドカリであれば飼育可能ですが大きな甲殻類(イセエビや大型のカニ、大型のヤドカリなど)との飼育は避けたほうが無難です。そして海藻類はアイゴに食べられてしまうので一緒に飼育することはできません。アイゴの餌として海藻を育てるのであれば、海藻はアイゴを飼育する水槽と別に維持するとよいでしょう。
アイゴ飼育まとめ
- アイゴの仲間ではもっとも一般的な魚
- アクアリウムではヒメアイゴやヒフキアイゴなどカラフルな種のものが人気
- 背鰭・腹鰭・臀鰭の棘に毒があるので取り扱い注意
- やや大きくなるため90cm以上の水槽で飼育したい
- ろ過槽もパワーがあるものを使用する
- 水温を一定に保ったり、適切な水流を作ったりして病気を防ぎたい
- 藻類食が強く「海藻70」がおすすめ
- 幼魚は磯で採集できる
- やせているものや白点病にかかってるものなどは購入してはいけない
- ほかの魚には無害だが性格がきつい魚とは飼育しない
- 弱ったサンゴを食べてしまうことも
- 海藻は食べてしまうので海藻水槽では飼育できない